短編集 作:黒猫ヨル
バーの喧騒、そして「彼女」の怒り
薄暗いネオンの灯りが、上質なベルベットのソファに反射する。
ヴィオレッタは、いつものようにステージの中央でスポットライトを浴びていた。
顔には完璧な化粧が施され、深いスリットの入った優雅なイブニングドレスが、その女性的な振る舞いを際立たせる。
だが、その華やかな装いの下には、女性とは思えぬほどの広い肩幅と、引き締まった筋肉質な体格が隠されていた。魅惑的なアルトの声が紡ぐメロディは、店に集う客たちの心を捉えて離さない。
バーテンダーはグラスを磨き、常連客はうっとりと瞳を閉じている。
それは、この街の片隅にある、穏やかで美しい夜の光景だった。
しかし、その静寂は突然、破られた。
「おい、てめぇら!全員大人しくしてやがれ!」
乱暴な声が響き渡り、バーの重厚な扉を蹴破る音がした。
ぞろぞろと現れたのは、ごつい男たち数名。
彼らは銃やナイフをちらつかせ、客たちを威嚇する。
音楽は途切れ、ヴィオレッタの歌声も、止まった。
「さっきから街中を探してんだ!
探してる奴がいんだよ!
ここにいねぇか、全部調べさせてもらうぜ!」
マフィアのリーダー格が叫ぶ。
どうやら、彼らは人探しのために所構わず家探しを繰り返しているらしい。
ヴィオレッタにとって、それはただの騒音ではなかった。
何よりも愛する「歌うこと」を、自身の存在を、そして彼女の大切な場所を汚す侮辱だった。
瞬間、ヴィオレッタの表情から優雅な微笑みが消え失せた。その瞳の奥に、凍えるような怒りの炎が宿る。
「あら、ごめんなさいね、お客様。ここでは、騒がしい演奏はご遠慮いただいているの」
ヴィオレッタの声は、先ほどまでの甘美な歌声とは打って変わって、冷たく、そしてどこか底知れない響きを帯びていた。
「てめぇ、オカマのくせに口答えしてんじゃねぇ!」
一人の男がナイフを構え、彼女に向かって突進してきた。
その瞬間、ヴィオレッタはわずかに舌打ちをした。
まるで虫を払うかのように、軽い音。
だが、次の瞬間、男の腕に目に見えない衝撃が走り、ナイフが宙を舞う。
男は「ぐあっ!」と呻き、腕を押さえてよろめいた。
別の男が背後から銃を向けた。
ヴィオレッタは、ちらりと視線を送り、指を鳴らした。
パチン、と乾いた音が響く。
その音の直後、銃を構えた男の体が大きく吹き飛ばされ、壁に激突した。
「な…なんだ、今のは…!?」
客たちが騒然とする。その驚きと恐怖の視線を受けて、ヴィオレッタはひるむことなく、優雅に身を翻した。
「あら、お見苦しいものを。
ちょっとした手品よ。
プロのエンターテイナーには、これくらいの小技は必須なの」
彼女は軽やかにそう言って、客たちに愛嬌のあるウインクを向ける。
その言葉に、客たちは安堵と興奮が入り混じったような表情を浮かべた。
男たちの中に、リーダー格と思しき男がにやりと笑った。
「マジックだと?
ふざけやがって、念能力者か!
面白れぇ。俺の拳で遊んでやるぜ」
男の拳が黒く光り、硬質なオーラがまとわりつく。
ヴィオレッタは一瞥すると、無言でその場から動くことなく、次の瞬間には彼の前に立っていた。
男は驚き、その拳を叩きつけた。
だが、ヴィオレッタは腕を交差させてそれを受け止めると、にやりと口角を上げた。
「ここは、私の大切な場所。
あなたたちみたいなお行儀の悪い子たちの遊び場じゃないわ」
次の瞬間、彼女は信じられないような膂力で、その男の体を掴み上げ、まるで人形のように店外へと叩きつけた。
男は店の扉を突き破り、裏路地へと転がっていく。
残りのマフィアたちも同様に、彼女の圧倒的な力の前になすすべもなく、次々と店の外へと放り出された。
ヴィオレッタはドレスをはためかせ、優雅に裏路地へと足を踏み入れた。
男たちは、目の前の光景に絶句し、ただ立ち尽くすことしかできない。
そこには、先ほどの優雅な歌手の面影はどこにもなかった。
彼女の喉の奥から、さらなる咆哮が響き渡る。
その声は、もはや優雅なアルトではなく、地獄の底から響くようなドスの効いた低音だった。
感情が爆発し、ヴィオレッタの優雅なドレスが、内側から弾けるように破れ飛んだ。
現れたのは、普段は隠されていた引き締まった筋肉質な肉体。
一瞬にして、彼女はまるで別人へと変貌したのだ。
「私の、最高の歌声を邪魔しておいて…
そして、その汚い口で…私のことを…!」
ヴィオレッタは、一番近くにいた男の首元を、その剥き出しになったたくましい腕で力任せに掴み上げた。
男の足が宙に浮き、顔が苦痛に歪む。
「さあ、お聴きなさい…これが、アンタたちへのレクイエムよ!」
彼女の口から、破壊のブレスが放たれた。
それはもはや声というより、重く、密度を持った純粋な音の塊だった。
男の体は、ヴィオレッタの手の中で激しく振動し、瞬く間に内臓が破裂し、骨が粉砕される。
その衝撃は男を通り越して、周囲の壁を粉々に砕き、アスファルトに深い亀裂を走らせる。
男の体はドス黒い吐血を撒き散らし、ぐったりと力を失った。
ヴィオレッタはまるでゴミのように投げ捨て、残りの男たちに冷酷な視線を向けた。
「さあ、次の子。
貴方たちに、私の本当のメロディを聴かせてあげる…!」
裏路地に、ヴィオレッタの低く、しかし悍ましいまでに力強い声が響き渡り、マフィアたちの悲鳴が木霊した。
キャラクター設定:ヴィオレッタ・シンクレア
基本情報
* 名前: ヴィオレッタ・シンクレア (Violetta Sinclair)
* 本名: エリオット・シンクレア (Elliott Sinclair)
* 性別: 身体的には男性だが、精神的には女性であり、普段は女性として振る舞うオネェ。
* 念能力系統: 強化系よりの放出系
* 能力名: アンチェインド・メロディ (Unchained Melody)
容姿
普段は完璧なメイクと、体のラインを隠すような優雅で女性的なドレスを身に着けている。しかし、その華奢に見える装いの下には、女性とは思えぬ広い肩幅と、鍛え上げられた筋肉質な肉体が隠されている。このギャップこそが彼女の大きな特徴である。
性格と価値観
普段は、言葉遣いも立ち振る舞いも上品で華やかなオネェ。
プロの歌手として、最高のパフォーマンスをすることに何よりも誇りを持っている。
そのため、自身の歌やステージを邪魔されることを最も嫌い、その際には一転して冷酷で暴力的な一面を見せる。
過去のトラウマから、自身の男声と男性的な肉体を深く嫌悪しており、常に女性的な美しさを追求している。
念能力:アンチェインド・メロディ
この能力は、彼女の声から放たれる音波を念として操ることに特化している。
1. 声による強力な能力
* ハミング・ブレード (高音・ピンポイント攻撃)
* 普段の女性的な声で発動する、超高音の指向性衝撃波。標的の体内に直接振動を与え、骨や内臓に致命的なダメージを与える。
* グランド・バウンス (低音・指向性/無差別範囲攻撃)
* 低音の指向性衝撃波。通常は制御して使用するが、嫌悪する男声を伴うため、極力避けている。
* 感情が昂り「ブチギレた」状態では、嫌悪する男声が意図せず発現し、制御不能な無差別爆撃と化す。この時の威力は通常時を遥かに超える。
2. シングルアクションによる使いやすい小技
* タング・スラッシュ (舌打ち・ピンポイント攻撃)
* 素早い舌打ちで、至近距離の相手に衝撃を与え、体勢を崩す。
* フィンガー・ブラスト (フィンガースナップ・指向性範囲衝撃波)
* 指を鳴らして小型の衝撃波を放ち、敵を吹き飛ばして間合いを取る。
* クラップ・スタン (柏手・平衡感覚阻害)
* 両手を叩くことで、一瞬だけ相手の平衡感覚を狂わせ、隙を作る。
* ソニック・ステップ (足踏みによる短距離高速移動)
* 数回足を踏み鳴らしチャージすることで、その歩数分の距離を高速で移動する。
制約と誓約
* 静止の代償: 歌声による能力は、足を止めて集中している時に最高の威力を発揮する。
* 喉の酷使: 連続使用すると喉が枯れ、能力の効果範囲が短くなる。
背景と物語の要点
ヴィオレッタの本名はエリオット・シンクレア。
少年期には美しい高音で少年合唱団のスターだったが、声変わりでその地位を失った。
この経験が、自身の男声と男性的な体への深い嫌悪を植え付け、女性的な歌手「ヴィオレッタ」としてのアイデンティティを確立するに至る。
戦闘スタイルと心理
* 平常時: 普段は、小技で相手を翻弄し、間合いを確保してから「ハミング・ブレード」で精密に仕留める。冷静かつ優雅な戦術で、自身の優位を保つ。
* ブチギレ時: 感情が爆発すると、嫌悪する男声と筋肉質な肉体が露わになり、能力は制御不能な「グランド・バウンス」へと変貌する。この時、強化系の素養が最大限に発揮され、敵を掴み上げてからの至近距離爆撃という、最も危険な必殺コンボを繰り出す。
作っていたキャラが剥がれて、掴み掛かって怒号をあげるオカマって怖いですよね。
マップ兵器の様な大技だけだと不便なので小技を増やして調整した形。
願望でもある高音の声と嫌悪する低音の声という、このキャラクターの精神性を象徴する二つで能力の方向性がピンポイントと面攻撃と変わるスタイル