新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP11 影を裂く光

 

「なんで……あなたが?」

 

傷だらけで仰向けになっている蕨野さんは、目を見開いて私に訊いてくる。

 

「神名さんが、あなたがピンチだからってアミナ・ピースとノクスの牢のキーを渡してくれたの」

 

彼女の目線が私の後ろで奴らを見張っているノクストスに向いたのが分かった。

 

「何故?何故、私を助けたの?」

 

 質問に答えたつもりだったが蕨野さんはまだ不思議そうな顔をして私を見ている。彼女の言いたいことはなんとなくわかる気がした。

 

「バカにしないで。そりゃあ、あなたにはひどいこと言われてきたし正直嫌いだけど……私は魔法少女なんだよ!」

 

だから私は、好き嫌いで助ける助けないを決めたりしない。

 

「……っ!?」

 

蕨野さんは一瞬はっとしたような顔をして、

 

「蕨野さん、まだ戦える?さすがに私とノクスだけじゃ難しそうだから……」

 

「ええ……もちろん!私だって魔法少女だもの……戦い抜かなくては……」

 

そう言った蕨野さんは痛みに耐えるように、きれいな顔を歪ませて立ち上がる。背中まで伸びる紫に染まった髪を含めてホント憎たらしいほど奇麗な女の子だ。

 

「あなたもいけるわよね、レオリオス」

 

「もちろん」

 

ノクストスに蕨野さんと共に群れから救い出されていたレオリオスが、身体に食らいついたイナゴを潰し終えて、立ち上がった。

 

「マーシー、礼を言っておきます。それと、今の私はイケート・スコーピーです」

 

彼女はこちらではなく敵の方を見て、教えてくれた。

 

「分かったよ、イケート。例の倉庫は後ろの方にある。引き付けつつ走ろう」

 

「了解、レオリオスもそれでいいわね」

 

「うん」

 

仕切られることに彼女は反発するかとも思ったけど、彼女はすんなり提案を受け入れてくれる。少なくともこの戦闘中はうまくやれそうだ。

 

「それじゃ行くよ!」

 

私たちは、各々の遠距離攻撃で敵を挑発しながら、倉庫のある方へ走っていった。

 

「歯がゆいな、俺には飛び道具の類がない」

 

先頭を走るノクストスが悔しそうな声を上げる。

 

「この戦いで活躍すれば、OIDOもあなたを認めてくれて武器とかも用意してもらえるよ」

 

「……」

 

それは希望的な観測だった。正直神名さんの助力があったとはいえ、また命令違反をしてしまっている。私としてはイケートを見殺しにする選択肢はなかったのでこの後除籍されようが問題ないが、この行動でノクストスの解体が確定するかもしれない。一応そのリスクを解放前に説明したが、彼は二つ返事で戦うことを了承してくれた。けど、本当にそれでよかったのか?

 

「ギギィ!」

 

羽音に交じって牙を擦るような音が後ろから聞こえてくる。

 

 そうだ、今は戦いに集中しないと。群れはちゃんと私たちについてきているようだ。

 

『近づいてきてるな、ゲートを開ける。全部じゃなくていいができるだけ入れてくれ』

 

神名さんから渡されたインカムから、指示が下る。

 

『碧乃のことは神名から聞いてる……この状況じゃ、お前らに頼るしかない。頼むぞ』

 

「はい!」

 

これでいい、魔法少女と勇者の価値は何人救えるかで決まる。これ以上、犠牲は出させない。

斜め前から機械音が聞こえる私たちはそこに滑り込む。倉庫の中は廊下の十倍以上は広い。奥の方にはコンテナが山と積まれている棚があったが、手前にはスペースがある。ここなら、大技を使っても大丈夫そうだ。追従して虫たちが倉庫に入ってきて私たちを囲む。

 

「ここに誘い込んだのはいいですが、これでは私たちの方が追い込まれただけなのでは?」

 

「大丈夫、私に考えがある」

 

私は一人で倉庫の奥の方に、駆け出した。

 

「みんな!私の周りに虫を追い込んで!」

 

「いいの?」

 

私の頼みにレオリオスは心配そうな声を上げる。

 

「今は彼女を信じるしかありません。レオリオス、フルファイア!」

 

「了解!はぁー!」

 

イケートの指示でレオリオスは腕だけではなく方は足に仕込まれた砲塔を展開し、全身から魔力粒子砲を放つ。放射状に放たれた無数の光線は囲い込むように虫たちを追い詰めていく。

 

「よし!うまくいって!」

 

わたしは迫りくる虫を前にして、私はあのピコピコハンマーを取り出す。私の固有魔法が重力を操るモノなら、きっとうまくいく。

私は魔力を込めて倉庫の床を叩く。ピンクの円柱状のオーラが広がっていく。私はそこから飛びのく。

 

「ギアア!」

 

虫たちはその領域に、吸い寄せられていく。円柱を中心に引力が働いているのだ。吸い寄せられた虫たちが黒い玉のようになっていく。だがその引力は虫たちを潰しきるには至らない。あともう一手必要だ。決定的な一手が……

 

「イケート、お願い!」

 

「任されました!」

 

イケートは私の一声で何をしたいのかわかってくれたようだ。イケートはステッキをレイピアに変化させる。あれが彼女の固有魔法発動の道具だ。

 彼女の固有魔法は毒だ。レイピアを刺すことで毒のように作用する魔力を敵に浸透させられる、接近しないといけないという弱点はあるが、鋼魔獣が持つ再生能力を無効化することもできる一撃必殺の魔法だった。だが今回のような小さく数が多いタイプにはどうにも効きにくかったことだろう。けどこんな風にまとめてしまえば一網打尽だ……。

 

「……なっ!?」

 

“ギアアァァ!”

 

虫からは聞こえるはずのない叫びが聞こえる。玉は黒いオーラを帯びだす。

 

『魔力の反応が変わってる!施設に散らばってた分裂体が集まって来てる。警戒してくれ』

 

インカムから陣屋さんの焦った声が聞こえる。その報告の通り、通気口から他の場所にいた分裂体が集まってくる。

 

「一つに集まって融合してる!?」

 

「これでは、近づけない!」

 

私は固有魔法越しに圧力を感じる。イケートも魔力放出の勢いに押され近づけずにいるようだ。

 

別動隊の分裂体も潰されようとしていた玉に集まって融合していく。大きくなっていく質量とともに魔力も大きくなっていき、私の発生させた引力を押し返すまでに大きくなっていく。

 

「抑えられない!」

 

蠢いていた鋼魔獣の塊はどんどん大きくなり、やがて私の魔法を打ち破ってその姿を変化させていく。

 

“バリィンッ!!”

 

「ガオォォォン!!」

 

砕け散る魔力の壁の向こうにいたのは人型の怪物だった。だがその細部は歪んでいて顔はそのままイナゴのそれだ。そして、太く長い脚は逆間接になっていて、昆虫そのままのジャンプ力を想像させる。視界を埋めるイナゴの群れ、それは終焉の象徴のようだった。だが目の前のそれは、仮面の英雄のようだ。何の皮肉だろうか……。

 

“ダァンッ!!ドゴォ!!”

 

「イケート!!……ガアァ!!」

 

私が感じることが出来たのは、二回、続けざまの打撃音と、凄まじい風圧。そして金属のひしゃげる音。

 気づけば斜めイケートの後ろの方向の壁にレオリオスがめり込んでいた。右肩から脇にかけてが大きくえぐれており、引きちぎれた右腕が転がっている。オイルが血のように流れ、千切れたコードからバチバチとスパークしている。ただ、まだツインアイカメラには光があり意識はあるようだ。

 

「レオォ!?」

 

イケートがあきらかに動揺した声を上げる。三者の位置関係からの位置関係からレオリオスが、デストローカストの蹴りからイケートをかばったと分かる。でも何があったか、私には見えなかった。

 

「敵から目を反らすな!来るぞ!」

 

そう叫んだのはノクストスだった。デストローカストはなおもイケートを狙ってきたが今度は、ノクストスが割って入る。さっきの再現にならないか心配したが、彼は少し弾かれただだけで、腕を上げて蹴りを受け流したようだ。

 経験の差というものだろうか、記憶がないはず彼にそのような巧さがありえるのだろうか?

 

「やべぇ!なんてパワーだ!?骨ごと曲がりそうだ!」

 

 受け止めることが出来た彼も、動揺している。

 

“ダァン!!ガキンッ!!”

 

それでもノクストスは棚や壁を足場にして、デストローカストと激しい空中戦を演じだす。部屋中を跳ねまわりながら時折交錯し、手足を叩きつけ合い、火花を散らせる。一見拮抗しているようだがリンクから伝わる彼の焦燥感から、圧されていることが分かる。逆に言えばそこからしか戦況を掴めない。それほど異次元の格闘戦が目の前で繰り広げられている。

 

『私だ、碧乃君。君の勇者が使えそうな武器がその部屋のコンテナにある!5L2の位置だ』

 

急に神名さんの声がインカムから響く。そんな急に言われてもと思ったが、端末の方に具体的な位置が送られてくる。

私はその位置を探し、目的のコンテナを見つける。でもどうやってそれを彼に伝える?私がそのことでいた悩んでいた時、轟音と共にちょうどその位置にノクストスが墜落する。

 

「ノクストス!」

 

土煙が上がり、彼の様子は判然としない。

 

「ギニィ!」

 

ノクストスを倒せたと思ったのか、こちらに狙いを定める。

 

「くっ!」

 

どうする?あのパワーとスピードに私は太刀打ちできない。イケートも手負いだ。さすがに対応できそうにないこのままでは……。

 

“ギンッ……ザクッ!”

 

包丁で硬い野菜を切った時のような気味のいい音が聞こえ、目に刺さるような光を感じた。

 

「ギギィ?」

 

デストローカストも何が起こったか分からないようだ。

 

「え?」

 

私の目の前にはもう一つ、二振りの刀のようなモノを振り抜いたノクストスがいた。

 

「ガギィッ!?」

 

デストローカストの四肢がすべて斬り落とされている。一瞬遅れて本人もそれに気づいたようだ。

 

「やった!」

 

私はそれでチェックメイトだと思ったが、デストローカストは間を置かずに一度切れた手足を分裂体に戻し、接続した手足に再構築する。

 

「やったと思ったがもう一押し必要か、やれるかマーシー?」

 

「うん……イケートもトドメ行ける?」

 

「ええ、二人に死ぬ気で合わせますわ」

 

 ノクストスが斬撃で無防備にし、私が重力で動けなくし、イケートがとどめを刺す。

 

『その刀は、魔力を流すと反応して切れ味が格段に向上する』

 

インカムから神名さんからの追加情報が流れる。先に言って欲しかった。リンクでそれを伝えると、ノクストスの刀が光を帯び始める。

 決着の時だ。

 

「フッ……」

 

ノクストスは静かに構えてまるで日常の動作のように自然に音を立てず、けれど稲妻のように、デストローカストに襲い掛かった。

 先ほどとは間合いも攻撃力も段違い、すれ違いざまに四肢を斬りおとすどころか細切れにする勢いでデストローカストを切り裂いていく。

 次は私だ。私はハンマーを展開し、さっきよりも強く魔力を込める。

 

「やーっ!」

 

“ピコン”

 

ノクストスと同様に私もすれ違いざまにハンマーを振り抜く。相変わらず気の抜ける音だった。けど手ごたえはあった。空中にあった敵の身体は、地面に落ちていく。

敵はそのさなかにも、別れたパーツをつなぎ合わせていく。しかしそれは悪手だ。

 

「これで終わらせます」

 

デストローカストに毒のレイピアでとどめを刺そうとする。

 

「イケート!危ない!」

 

最初にすべてくっつけていたと思っていた四肢の一つを敵は伏兵としていたようだ。他の部位の構成物でその場を補ったのか。ともかく、数匹の黒いイナゴの集団が、彼女の顔に襲い掛かる。しかし、彼女は動じなかった。

 

「まだ、僕がいる!」

 

後ろで戦闘不能に陥っていると思われたレオリオスが残った左腕を上げ、魔力粒子砲で群れを撃ち抜き、その最後のあがきを叩きつぶす。

そうしてそのまま彼女のレイピアはデストローカストの胸に刺さった。四肢を繋げていたことが仇となり魔力という毒が一気に全体に回る。

 

「オギャァァァ!」

 

デストローカストはおぞましい断末魔を上げ核だけ残して溶けていく。

 

「ふぅ……やったー!」

 

“ピーピー”

 

ノクストスとハイタッチをして勝どきでもあげようかと思ったところで、またインカムに通信音が鳴る。

 

『蕨野、碧乃!3体目だ!星原が危ない!行けるか?』

 

「え!?」

 

星原先輩が挟み撃ちにでもなっているというのか、ならすぐにゼロ化を終わらせて救援に行かなくては……。

 

「ゼロ化は私が行います。あなたは早く行きなさい」

 

 

「え、でもその怪我じゃ……」

 

自分を置いていけというイケート。私は全身のいろんなところをイナゴに食われた彼女を見て心配する。

 

「だからこそです。レオリオスはもう動けませんし、あなたは魔力を温存する必要がありるでしょう。だから、行きなさい」

 

血を流しながらも毅然とこちらを睨む彼女の眼には頑なな意志が見えた。

 

「わかった。行ける?ノクストス」

 

「いけるが少し待ってくれ、あの箱の中に鞘っぽいのもあったんだ。取ってくる」

 

ノクストスはそう言って崩れた棚に向かっていく。

 

「ここは任せるね……その……気を付けて……」

 

「それは、こちらのセリフです。私たちの星を傷つけさせてはダメですよ」

 

私は、強くうなずいて外へ走った。後方で彼女が何か言っていたような気がしたがよく聞こえなかった。

 

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