新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP14 疾走する絆 後編

 

 太い幹線道路で私は先輩たちと横並びになる。それに気づいたシンセリーの頭の中には次の一手が浮かんでいるようだ。

 

「ここから少し南に進んだところに自然公園がある。マーシー、あいつを高架下に落として動きを止められる?」

 

シンセリーが私に聞いてくる。

 

「あいつに追いつける?」

 

私は跨っているノクストスに確認を取る。

 

「楽勝……たぶん……」

 

どっちだよ、けどノクストスがこの状況でこう言うということは、試したことがないだけで、彼には行けるという実感があるのだろう。

 

「やれます。でもたぶんそれが最後の固有魔法になります」

 

次ハンマーを使った時、ゼロ化用の魔力が残っているかどうか、とても怪しい。

 

「分かった、私も次で最後だと思う……絶対に決めよう……陣屋さん聞こえる?自然公園でドミネイター・ノヴァを使います……周辺の人払い、お願いします」

 

シンセリーは片手にを耳に当て、司令部に通信を入れる。

 

『ど、ドミネーター・ノヴァ!?公園ごと吹き飛ばす気か?他の手段は……』

 

「ないから頼んでます」

 

シンセリーはぴしゃりと言った。

 

『ですよね~手続します……』

 

 テラ・ドミネーター・ノヴァ、アルニギアスの必殺技であるテラ・ドミネーターを、シンセリーの倍加魔法でそのまま増強し破壊的な威力を生む超必殺技。基本的に街中で使える攻撃ではない。

 まさかお目にかかれる日が来るとは、武者震いのようなモノが沸き上がってくる。

 

「じゃあ、行こうか。まずは誘導する、アルニギアス、魔動式ミサイル発射!」

 

その号令で横を走るアルニギアスの両側面が展開し、4発のミサイルが発射される。魔力を帯びたミサイルであり、鋼魔獣にも有効だ。

 

「私も!はぁーーー!」

 

私は片手運転で、ステッキを構える。

 

“ドドドドッ!”

 

私の魔力弾と先輩たちのミサイルが爆音と爆風を出して、ターベルフを目的の方向に誘導する。(私の攻撃は全く狙い通り当たっていない)

 

 時速数百キロの超高速チェイスは、なるべく太い道を選んで続いていき、ゴールへ近づいていく。

 

「見えてきた!」

 

 私は思わず声を出す。視界の中に市街地と山地の境目が見えてくる。人の気配も感じない、ここをやつの墓場にできる!

 

「じゃあ、頼んだよ」

 

「…………」

 

 私はその時になって緊張に襲われる。私が失敗した時のサブプランはない。失敗すればそれで終わりだ。私は一瞬完全に硬直していた。

 

“トン”

 

「大丈夫、あなた達ならできる」

 

いつの間にか横付けしていたシンセリーが私の肩を叩いて、背中を押してくれる。

 

「ああ、行こうぜ!マーシー!」

 

ノクストスも高まる鼓動のままに言ってくる。そうだ、やらなくちゃ……そしてできる。だって……私は一人じゃない!

 

「行こう!」

 

私の一言で、ノクストスは加速する。奴に追いつくため更なる超スピードに手を伸ばす。顔に感じる風が更に強くなる。

 

「ガァッ!」

 

後ろに迫る気配に気づいたのか、ターベルフは短く吠え、触手や放電で行く手を阻もうとしてくる。

 

「へっ!そんなんに捕まるかよ!」

 

 でもノクストスは恐れない。むしろさらに加速をかけ、縦横無尽にジャンプをし、攻撃の隙間に身体を滑り込ませていく。私は彼を信じて身体を密着させる、一つの弾丸になれるように。

 

そして時が来る。チャンスは一回、並ぶ一瞬。心を一つに。その瞬間、ずっと耳を揺らしていた風の音が消えたような気がした。

 

「はーっ!」

 

「オラァッ!」

 

“パコン♪”

 

“ドゴォッ!”

 

私がハンマーで叩き、ノクストスが両後脚で横へ蹴り込む。下と横、二つのベクトルの力が働き、ターベルフは道路を抉りながら高架下の森林へ、斜めに吹っ飛んでいく。

 

「ゲビャ……!」

 

ターベルフの口から漏れた音はもはやうめき声とも言えないものだった。

 

“ズッドーーーン!!!”

 

轟音と共にターベルフは20mほど墜落する。巻き上がる土煙が目印だ。敵は重力の拘束で動けない。

後方でチャージしていた二人が高架の上から斜め下に狙いを定める。胸で光を溜めるアルニギアスの背後で、シンセリーが弓を構えている。

 

「テラ!ドミネータァー!……ノヴァッ!!!」

 

「テラ!ドミネーターー!……ノヴァーーー!!!」

 

アルギニアスに負けない勇ましい叫びでシンセリーは技の名前を告げる。

砲塔の先の射線に魔法陣が出現し、放たれる光線を何倍にも太くする。

 瞬間、音すら吹き飛ばすようなまばゆい閃光が私の視界を白く染める。何かを察したのか人型に戻ったノクストスが私をマントで包むように抱いた。足から震えは感じたが、彼は微動だにしなかった。

 

“ドドドド!ゴゴゴゴ!”

 

 道路の真ん中で、私は体験したことのないほど大きな轟音と振動に、彼にしがみついて耐える。マント中は暗闇だったが不思議と安心できた。彼が背中で守ってくれているからだろうか。

 

 数十秒に及ぶ余波の衝撃が収まって、私が道路の下を見てみると森林の中におっきなクレーターが開いていた。直径で10mはありそうだ。そしてその中心に光るものがある。私はそばのノクストスと顔を見合わせ、うなずき合う。

 ノクストスは私をお姫様抱っこで持ち上げ、クレーターまで飛び降りる。ちょうど同じタイミングで、先輩たちも同じ感じで降りてくる。

降ろしてもらってから近くで見てみると、クレーターの中心には二つの核があった。

 

「一緒にやろうか……」

 

隣に立つシンセリーが微笑みながら言ってくれる。

 

「はい!」

 

 私はもう正直、限界だったが自然と大きな声が出た。先輩とクレーターの傾斜を滑って核に近づく。

 

「プラッテ・アドハック・アクア」

 

「プラッテ・アドハック・アクア」

 

 私たちはステッキを構えて唱えた。魔力が足りるか不安だったが、魔力絞り終えた雑巾からさらに一滴ずつでも絞り出す。力んでいると二つの核は光を放って縮み、ゼロ化は何とか成功だ。残ったのは二つのレリック・ピース。

私、やり切ったんだ。

 それを実感した瞬間、膝から力が抜け私はその場にへたり込む。

 

「おい、大丈夫か?」

 

ノクストスが、いやノクスが駆け寄って来てくれる。気が抜けるのと一緒に変身も解けたようだ。褐色の肌の顔がこちらを心配そうにのぞき込んでくる。

 

「うん、でももう魔力も体力もすっからかんだよ~」

 

「よく頑張った……っと……」

 

「おっと危ない」

 

変身を解いた星原先輩が、労いの言葉を掛けてくれようとしたとき、彼女も限界だったようでよろけてしまう。幸い、倒れそうになった彼女をアルスさんが支えてくれた。

 

「組織の迎えが来るまで、休んでろよ。俺たちが見守ってるから」

 

アルスさんの言葉にノクスもうなずいている。このままお言葉に甘えて彼にもたれかかって眠ろうかと思っていた時、

 

「相変わらず厄介だな、ノクストス。そしてマーシーの継承者」

 

聞いたことない冷たい声が空から降ってくる。声のした方を向くと黒いドレスの女の子が宙に浮いていた。

 

 




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