新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP23 力と知恵 後編

 

Side:星原

 

 隠ぺい魔法をかけていた鋼魔が消え、もう一体の姿が露わになる。

 

「おっしゃー!」

 

 フォルテは、雄叫びと共に拳を叩きつける。ヒビも入る。

 

「って、まだあせぇ!」

 

どんだけ硬いんだあの鋼魔……とはいえドミネイターが仕える状況でもない。だがいいこともある外装の部分には人間が含まれていない。つまり、取れる手段は多いと言うことだ。

 

「フルーデ、外装の厚さ分かる?」

 

「今調べます。硬度係数75……厚さは535.5mm……アーシュケリアさんにデータを送ります」

 

私の指示の裏まで完全に読み切って、データを私でなくアーシュケリアに送信する。

 

「データ受信しました。バンカー弾ですね、はい……魔力充填率25%で打ちます。薄皮は残す感じで行くからそれぐらいは割れよ、フォルテ!」

 

「へっ、誰に言ってやがる!」

 

彼はしっかり自分に求められていることを理解している。彼はライフルで打ち出す特殊な弾丸にエネルギーの充填を始める。それだけでなくその後の本命の一撃を担当する。フォルテと軽口をたたき合う。ここまで具体的な指示なしにやるべきことが分かるのは日ごろの訓練の賜物というべきか、彼女らの戦士としての才能故なのか。

 

「ギジャーーー!!」

 

しかし、相手もタダでは終わってくれなかった。

 

“グビュン!”

 

質量と速度が織りなす圧倒的な、衝撃を遠くからでも感じる。

 

「な……!?」

 

敵が跳ね上がってきた。数十m上にいたはずのアーシュケリアの少し上まで……!

まずいあの質量ののしかかりをもろに食らってしまえば、いくら勇者といえど……。しかも、弾を装填中だった彼は反応しきれていない……本当にこのままでは……。

 

「させねぇっ!」

 

“ボゴンッ!

 

その攻撃が着弾する前に、地上からもミサイルが放たれた。ロケットのように真上に飛び上がった。フォルテが、敵の下部にパンチする。その一撃は怪物にグレネードをもろに食らうような凄まじい衝撃を与える。

 敵は軌道を反らされ、着地場所から弾かれるように下のビルの隙間に落ちていく。フォルテは一応街の中にある比較的開けた場所に落とすようにしたようだが、その大質量が落ちる衝撃はすさまじく、付近一帯に自信のような揺れをもたらし、落下場所のアスファルトはクレーターのように抉れる。

 

「ちっ……落とす位置も慎重にならないとだな」

 

「……すまん、助かった」

 

敵を憎たらしそうに見つめるフォルテにアーシュケリアが謝罪する。

 

「守りあうのは当然だ、礼を言われるほどのことじゃねぇよ。余計なこと考えなくていいから……」

 

フォルテはリンクから何かを拾ったのか、アーシュケリアに戦いに集中することを促した。勇者を守る魔法少女、セオリーから少しずれた関係性の二人には、二人にしか分からない感情があるのかもしれない。

 

「……んなことより楔を撃ち込め!」

 

「ああ、分かってる!」

 

パ-トナーに促されたアーシュケリアは、、狙撃用につけられたカメラバイザーを下ろし、一つ目の狙撃手となる。彼は弾の争点の終わったライフルを構えて数舜の間無言になる。

 

“パァンッ!!!”

 

高めの破裂音とともにその一発が放たれる。

 

“パジュンッ!!”

 

敵の外装にめり込んだように見えた弾丸は、厚い外装の深さの中間地点で、爆発し、その周辺の外装に複雑なヒビを入れる。貫通した後に炸裂するバスター弾だ。決して人がいる内部を傷付けないように、貫通力と爆発エネルギー量もばっちり調整されている。

 

「今度こそ中身を見せな!」

 

落下と爆破の衝撃で怯んでいる敵に、フォルテはパンチの連打を浴びせる。すでにボロボロにひびが入った外装はたやすく剥がれ落ちていき、その崩壊は、ひびの入っていない部位にまで波及していく。

 

「まだだっ!ここからが本番だ!」

 

フォルテは休むこともなく、魔力の籠った拳を撃ち込んでいく。

 

「ギガァ!!」

 

敵の苦悶の叫びをあげている様子を見てこれ幸いと、魔力を撃ち込まれて波打ち分離しかかっている部位をはがす。

 

“ボドボドボド!!”

 

解放された人々が人の形を取り戻していく、私はほっと胸を撫でおらす。吸湿された人々はすぐ駆け付けたフルーデの使い魔が結界を張って守る。とどめは大丈夫そうなので、私はアルニギアスと市民を安全なところまで誘導する。

 

「さぁ、とどめの時間だっ!派手に打ちあげてやる!!アーシュケリアも準備しろ」

 

「了解、レールガンの準備をする」

 

パートナーの指示で狙撃手は、最後の一撃の準備をする。彼はアルニギアスと同様の機構を持つ。背中の加速器を解放し、高速発電を始める。そこで発生した魔力と電力を身の丈の2倍の長さのレールガンを出現させてそこに注ぎ込む。

 

「ぐぅ……アンカー……」

 

アーシュケリアの背中からつっかえ棒のようなモノが伸び足元のコンクリートに刺さる。

 

“バチバチッ”

 

相当なエネルギーを収束させているらしく、アーシュケリアの肩や首からスパークが上がる。

 

「角度はどうする?」

 

「……くっ、死んでも合わせる。ビルの上ならどこでもいい」

 

フォルテの問いにアーシュケリアが呻きながら答える。流石に街向けては放てない。上の方向に敵を投げ飛ばす必要がある。それができるのはフォルテぐらいだ。彼女はそもそも天賦の身体能力を持つ、それを高倍率の身体強化魔法でさらに高次元に引き上げられる。普通の魔法使いが10の身体能力を魔法で10倍に引き上げているとしたら、彼女は50に100をかけているようなモノだ。そんな彼女でなければ最初にのしかかられた時に死んでいる。そんな彼女の固有魔法を使うステッキの形態は四肢に分裂して装着されるガントレットとソルレットだ。手首足首を特に保護するように円柱状を取るそれは、彼女の有り余るパワーから彼女自身を守る為の物だ。

 

「たーまやーーー!!」

 

“グオンッ!!ガンッ!!”

 

フォルテは云百t単位の敵を両手で投げ飛ばし、それをさらに蹴り上げる。それはパートナーの指示とは裏腹に理想的な高さと敵の向き、角度に投げられた。

 

「ふ、確かに花火にしてやろう……穿星たる由縁を示す……『流れ星への一撃(シューティングスター・シュート)』!」

 

そのレールガンは、魔力反応に反応しやすくなる加工を施した徹甲弾を高電圧で撃ち出し、さらにらせん状の魔力の流れをドリルのように纏わせることで完成する究極の貫通攻撃。

 

“ジュウィン!”

 

その着弾音に硬い印象はない。ただ無慈悲に敵の頭部からしっぽの先へ貫通する大穴を開ける。弾丸はそれでは満足せずはるか上空の雲にまで円型の穴をあける。敵は核を残して全身を崩壊させる。

 雲一つない青空が見えた。

 

「しゃあ!」

 

「ぐぅ……」

 

落ちてくる核をフォルテがキャッチする。アーシュケリアは全身から蒸気を噴き出し反動に耐えている。濫用はできそうにない。

 

これで戦闘は終了したと思っていいだろう。これが新世代の魔法少女か……私とアルスが用なしになるのも近いかもしれない。私の胸に湧いたのは、安堵か一抹の寂しさか。

 

「おい大丈夫か?」

 

ゼロ化を終えた、フォルテがアーシュケリアの隣に寄り添う。

 

「正直、大丈夫じゃない。右腕が動かない……電装部品がたぶんイカれてる」

 

「おいマジか……悪い、軽率に使わせちまったな」

 

「気にしなくていい……迅速な殲滅は最優先事項。そのための選択を躊躇するな。それにお前と違って俺たちは替えが効く」

 

「そういう問題じゃねえ……」

 

飄々と答えるアーシュケリアにフォルテは複雑な表情を浮かべる。

 

「お~い!とりあえずスペアに変えとこう!」

 

フォルテのペアにデヴァリオンが近づく。このためにスペアパーツのコンテナを持ってきてもらってよかった。

 

「戦闘はできないけど、巡航形態になるには必要だからね」

 

「助かる……」

 

デヴァリオンはサブアームを展開し、アーシュケリアの右腕を付け替える。一応勇者の四肢は共通規格であり、緊急時には他人のを付け替えて使えたりもできるらしい。ノクスは違うだろうが。

 

「これで良し」

 

黒一色の細めの腕が付く。

 

「隊長、欠損した四肢をスペアで補った歪な姿、いいですよね。ふふ……」

 

私の隣にいたフルーデが少し意味不明なことを言ってくる。

 

「アーシュくんのこともあるし帰りはのんびり行こう」

 

「はい!」

 

みんなが賛成してくれる。

プラネスフィア、一方的な戦いだった。これなら人類の未来は明るい。

 




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