新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP31 荒波

 

Side:一実

 

「一実、俺さ……さっき魔晶を使わせてもらった時、少しだけど昔のこと、思い出せたんだ」

 

「ホントに!?どんなこと?」

 

 調査を終えビルの食堂で食事をとり自宅に帰って、お風呂に入り私はソファーの上で、怠 惰を謳歌していた。そんな時にテーブルをはさんで向かいの椅子に座ったノクスが声を掛けてきたのだ。お風呂上がりの彼は薄着でなんだかその、色っぽい……私の全身に一気にスイッチが入って背筋を上に伸ばす。

 

「いや、何か具体的に役に立つような言葉じゃないんだ。ただ俺にもいたんだなって思い出した」

 

「いたってなにが?」

 

役に立たないことでも彼の方から話したいと思っていることなら、何でも聞きたい。

 

「俺に人としての生き方を教えてくれた人。その人がいなかったら俺はきっと今よりもつまらなくて、嫌な奴だった」

 

「どんな人だったか分かる?」

 

私が具体的なことを聞こうとすると前もって彼が言った通り、分からないようだった。

 

「声も顔もはっきりと覚えてるわけじゃない。でも俺に大切なことを教えてくれた人だってそう思う。人を想うことで、思われる……そんな人間のかかわり方の根っこを……教えてくれた。多分、俺が一実に掛けてきた言葉もその人にモノかもしれない」

 

「そうなんだ……」

 

あの夜、泣いていた私を何よりも勇気づけてくれた言葉たち、愛審聖裁マーシー・リブラの礎になったもの。ノクスにも、そんな言葉たちに救われた日があったのあろうか、だとしたら、それが受け売りだったとしても、とても素敵なことだと思った。誰かの善意が、巡り巡って他の誰かまで届いたのなら。

 

「多分、その人に会う前の俺は相当嫌な奴だったと思う。その状態で、一実と会ってたらたぶん嫌われてたろうな……」

 

「ふふっ、何それ?むしろ会ってみたいかも」

 

私達は笑いながら、もしものことを話す。正直、ノクスのことを嫌う私が想像できない。

 

「ええ……なんか、今振り返ってみると相当痛い時代……今の言葉で言うと黒歴史ってやつ、記憶があったころからそんなような後悔をしたって感覚が残ってるから詮索しないで欲しいかも……」

 

じゃあ、なぜ私にそれを言ったのかあべこべなノクスの言動にまた少し可笑しくなる。

 

「ノクスにとって大切な人なんだね……思い出せるといいね!」

 

心からそう思った。

 

「ちなみに性別とかって分かる?」

 

最初は何気ない質問だった。

 

「声の感じからいって……たぶん、女?……だと思う……自信ないけど……」

 

その一言をノクスから聞いた時、これまで感じたことのない焼けつくような熱が胸に湧いた。

 

「……ふ~ん?そのほかに覚えていることは?」

 

単純な好意とは違う、ここにいないその人への興味、この気持ちは何だ?私にもよくわからない感情が私を突き動かす。

 

「芯があるような暖かいような、そう……一実みたいな……っ!?」

 

「……ええっ!?」

 

ノクスの口から私の顔が出たこともそうだが、褒めるような言葉に耳から顔が真っ赤になる。けど、彼の顔を見ると何か目を見開いてはっとした様子だった。

 

「今自分で言ってて気づいた……そうだ、記憶の中の誰かが一実に似てるって思ったんだ」

 

ノクスも自分の記憶について現在進行形で、探っていることに気づいた。呆けている場合ではない。私が鍵になりえるなら、しっかりと力になってあげたい。そんな気持ちが自己中な私を押し流して、パートナーとしての自分を取り戻させる。

 

「……優しくて、あったかくて、バカで、鈍くて……」

 

「え?ええ……?」

 

ノクスは両手で顔を覆って何やらブツブツと言い出す、聞けばそこには貶すような言葉も含まれている。私に向けられたものだろうか?さっきの誉め言葉で心が浮き上がっていたところから、心が一気に重くなる。

 

「……俺は何を、無くした……?」

 

ノクスがつぶやく、無くした。そうだ最初に出会った時も言っていた。その時は失った記憶そのものへの感覚だと思っていた。しかし、その一人へ向けられた言葉だったのか?

 

「……ノクス……!?」

 

私は彼の指の下の顔に、流れる雫を見た。それを見て思った。自分の一部と言える人のことを思い出せない感覚、どれだけ切ないものだろう。それを計り切ることはできないが、どうしようもなく辛いと想像できる。

 

「ノクス……」

 

喪失感に苛まれているであろうノクスに、私はどうしてあげたらいいのか分からない。一応ソファーを立って彼のそばに立つが、そこから一歩踏み出せない。しかし、何もしないのは薄情だ。私はまたあの夜のことを思い出した。孤独に震える中、背中を撫でてくれた手の温かさがどれだけ私を癒してくれたか。

今こそ恩返しをしなければと彼の丸まった背中に手を伸ばした時……。

 

“ヴーヴー!”

 

空気の読めないアラーム音が、テーブルの上の端末から鳴る。何だというんだ全く。

 アラームのなり方から、出撃案件であることは分かる。だが沸き上がってくる苛立ちは抑えられない。私だったけど、通知の内容を見て風呂で温まった身体まで冷え切る内容が書かれていた。

 

―相模湾沖にて鋼魔獣の発生を確認、周辺情報からして、巡回中の会海上自衛隊の艦艇複数を取り込んでいる可能性、危険性は極めて高いと考えられる。プラネスフィア各員は指定する場所へ集合せよ―

 

そのような通知とともに、前線の仮拠点になるであろう座標が指定されていた。

 

「どんな感じ?」

 

私の表情から出撃案件だと察したノクスが気を取り直してこちらを見ていた。

 

「正直ヤバそう」

 

 ノクスをそっとしておいてあげたかったが、それが難しそうとすぐわかる程度にはヤバい。

基本的に鋼魔は人口密集地域で発生する。逆に言えば海のような超過疎地域、それも水上では発生しないと言えるだろう。それが今起こっている、しかも自衛隊の艦艇を取り込んでいるときた。

 偶然というには出来すぎている。以前一度だけ、戦車を取り込んだ鋼魔獣が北米で現われたが、隊長含めた各国の魔法少女を集めて対処しなければならないほど、強力な敵だったのだという。民間人はおろか魔法少女にも犠牲者が出るほどの激戦だった、養成校と聞いた。ただ鋼魔獣の現れ方がランダムなこともあって兵器を取り込んだ個体が現われたのはその1回だけで陸の事例だ。2回目が来たと思うよりも、あの黒い少女あたりによると敵な発生とみる方がいいだろう。

 

“ピロン♪”

 

『ヘリが屋上に来る、一緒に行こう』

 

以前と同じように隊長からのメッセージが届く。

 

『了解です』

 

慌てることなく、短く返信する。

 

「行こう」

 

ノクスの目を見るとすでに覚悟が決まったらしく。外に出ることを促してくる。心の方は大丈夫かと訊きたかったが、それでは彼のプライドを傷つけてしまう気がしてできなかった。

 

「うん」

 

 ※

 

 制服に着替えた私たちが、屋上に上がった時にはすでに隊長とアルスさん、そして篠宮さんとリオンくんとがそこにいて、ヘリが下りてくるのを待っていた。他のペアは別々のところに住んでいる。

 

「来たね。察してると思うけど、今回すごく危なそうだから覚悟して」

 

「はい」

 

やはりそうなのか、こちら予測があったっていた。けれど予想以上に隊長から、緊張を感じる。

 

「相手の取り込んだ艦は実弾を積んでいるし、イージス艦まで取り込んでるから、ミサイルを使ってくるかも……」

 

一同が迎えのヘリに乗り、現場へ向かう途中、座席の上で、PCを弄る篠宮さんはうっとうしそうな顔で教えてくれた。

 

「み、ミサイルですか!?」

 

流石に怖気づいてしまうような怖いワードだ。

 

「戦車の奴とやった時も、その戦車の武器をバリバリ使ってきたから警戒しないとだね」

 

「もっと悪いことがある。その艦隊、新型のレールガンの実験中だったみたい……アーシュくんが使ってるのと違って魔力は使われてないけど、何倍もでかいから……」

 

篠宮さん更なる解説でモニター越しに見た鋼魔獣の大穴を思い出しすくみ上ってしまう。

 

「10人全員でやらなきゃ勝てない。プラネスフィアの総力戦だ」

 




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