新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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本当はもっと先まで行くはずでしたが長引きそうなので切りました。


EP34 死闘 前編

 

Side:碧乃

 

「ギャアアアァァァッス!!!」

 

咆哮と共にドレッドラは全身に強い魔力を巡らせて、私の重力魔法を打ち破ってくる。

まずい……このままでは……。

 

『致し方ない……魔導式誘導弾を発射する……巻き込まれるなよ……』

 

 陣屋さんの沈痛な声が聞こえる。

 次の瞬間、陸地の向こうからいくつかの光が上がる。花火のようなそれはこちらへ近づいてきて、ドレッドラに降り注ぐ。

 

「バリア!」

 

“ドドドドドド……!”

 

私たちは一斉に魔力障壁を張って爆風を防ぐ。爆炎で天が赤く染まるほど苛烈な攻撃がドレッドラを襲う。

 

煙が晴れた時、外殻の至る所がはげ落ちて、体液を垂れ流しにし、自慢の砲塔までひしゃげさせているドレッドラの姿があった。

 

「効いているようだけど……」

 

中の人たちのことを考えると素直に喜べる状況ではない。

 

「……っ!」

 

しかし、状況はまだ悪くなる。ドレッドラの体表が泡立ち始める。剥がれ落ちた体表だけではなく、砲塔までも再生成される。

 

「畜生、これじゃどうすれば……」

 

珍しくフォルテは弱音を吐き始める。

 

「ううん、待って!イケートが溶かした方が治りきってない。胸の傷も残ってるし」

 

フルーデの指摘の通り、イケートの毒が残っているのか、その部分は再生しきれていない。

 

「ダメージを与えて、そこにイケートの毒を与えて仕留める。ここからは勇者も火力制限を外して。取り込まれた人たちのためにもこれ以上の被害を出させるわけにはいかない」

 

隊長が作戦とともに檄を飛ばす。

 

「はい」

 

一同は決意とともに返事をした。

 

「まずは陸上へ完全に乗せる。フォルテ、マーシー!打ち上げて!」

 

「分かりました!」

 

「やってやる!」

 

海上では、魔法少女のために勇者はそうしても巡航形態でいないといけない状況が出てくる。すべての火力を出すためには、多少危険でも陸に乗せるしかない。

 

”ドゥン!ドゥン!”

 

みんなはドレッドラの顔を狙って魔力弾やミサイル攻撃を行い隙を作ってくれる。

 

「力の方向を重ねるぞ!」

 

「分かった!」

 

巡航形態になった私とフォルテはまたドレッドラの懐へ飛び込んで、真下から斜め上へ打ち上げる。

 

“パコン♪”

 

“ドォーン!”

 

「ゴアアァァァ!」

 

私の重力とフォルテのアッパーが、巨大な質量を空中へ打ち上げる。海中に隠れていたドレッドラの下半身があらわになりながら、岬の奥の平らなところに倒れ込ませることに成功する。

 

「畳みかけて!」

 

弓を構える隊長の合図で人型に戻って陸上に降り立った、ノクストスとアルニギアス、そしてレオリオスが近接武装を展開し、ドレッドラへ斬りかかる。

 

“ギリギリャギリャ!”

 

魔力のめぐる鋭い刃が、ドレッドラの外皮を切り刻む。

 

「行くよ!デヴァリアン!」

 

「任せて!」

 

砲台ユニットを展開した、フルーデとデヴァリオンが、ミサイルと魔力弾の雨を更に降らせる。

 

「ギャアアアァアア!」

 

ドレッドラの苦悶の声が聞こえる。しかし手は緩めない。私も、魔力弾での攻撃に加える。とことんまで弱らせたとこらで、イケートの毒で止めをさす。

 そのためにイケートは自らの獲物へ魔力を充填していた。

 

「行きます!」

 

「待って!」

 

イケートが決定的な一撃に踏み出そうとしたところで、観測ユニットでの情報取集を続けていたフルーデからストップが掛かる。

 

「どうしたというんで……」

 

“パシュパシュパシュ”

 

イケートがチャンスを逃すような言葉に抗議しようとした時、空気が噴き出す音を響かせながらドレッドラの胸部や方、ふくらはぎの外皮が展開する。

 

「ミサイルが来る!みんな防御して!」

 

フルーデの警告を聞いた私たちは、パートナーのそばに行き魔力障壁を張った。

 

次の瞬間、ドレッドラから打ち上げられたミサイルが周囲へと降り注ぐ。

 

「キャーーー!」

 

ノクストスが覆いかぶさってくれている。それでも大地が粉々になってしまうと思わせる震動に、私は声を上げてしまう。数十秒の間熱と衝撃が私たちの身を揺らしていた。私のシールドはひび割れて、かけてしまって、ところどころ熱波を直に通してしまっている。魔法少女としての身体強化とノクスの守りがなければ黒焦げになってしまっているかもしれない。

 

「……ぐぅ……」

 

攻撃が止んだと思った時、ノクストスのうめき声が聞こえた。

 

「え?大丈夫ノクス?……ノクス!?」

 

頭上を覆っていたマントがなくなったと思ったら、体勢を崩し、膝をつく彼がいた。

 彼は酷い状態だった。マントはもちろんボロボロ装甲も焼け焦げて、ところどころ剥がれ落ち、内部の機構が露出している。人間なら目をそむけたくなるようなグロテスクな様子だった。

 

「ノクス!?大丈夫!?動ける……?ご、ごめんなさい……私のバリアが弱いせいで……」

 

どうすればいい!?私の頭は酷く混乱してしまう。陣屋さんに聞いた話ではノクストスの装甲は魔力によって随時再生しているというが……私の魔力を注げば多少は直せるのだろうか?

 

 

「お前の……せいじゃない……みんなと違って……機械じゃない、から……」

 

プラズマシールドのことを言っているのだろうか、私と違って劣等感などないと思っていた彼にも、いろいろな葛藤や悩みがあるのか、そんなノクスに私は、私は何ができる?

 

「マーシー、敵から意識を反らさないで!ノクストスが動けなさそうなら彼を連れていったん離脱して!?」

 

隊長からの叱責で、一瞬で私は我に返る。ノクスは五体満足のようだがダメージが重いのか動けずにいる。リンクから熱と痛みの苦痛が伝わってくる。ここにこのままノクスを置いておくわけにはいかない。

煙が晴れて、クレーターだらけになったまわりの惨状があらわになるなか、私はノクストスの身体をハンマーで叩いて、重力が作用しない状態にしてここを離れようとする。

 

“グググッ……!”

 

またも地響きが鳴りあたり一帯を震わせる、奴が体を起こし始めた!?

 対応しなければ……しかし、周りも私たちのペアほどではないがダメージを負っているようだ。どうする?

 そうこうしている間にもドレッドラは頭をもたげて立ち上がる。水面下に隠れていた下半身と合わせて50mはありそうだ。見上げるだけで背筋が震える、正直怖い。

 

「ギャオオオォォォン!」

 

ドレッドラは天を見上げ、大きな咆哮を上げる。

 

「う、うう……」

 

その振動は身体に負荷を与え、私達を動けなくしてしまう。

 

“ギューン、ギューン”

 

やがて、低い電信音のようなモノが聞こえ始める。それは、テラ・ドミネイターの準備段階で聞く加速音に似ていた。

ドレッドラの背中の船首型の物体から、しっぽにかけて生えている背びれが光始める。そして光は口の中からも漏れ始める。さらにその光と一緒に2本の鉄の棒のようなモノが伸びてきた。

 

「あれ、まさか例のレールガン……」

 

フルーデの声が聞こえる。ドレッドラの規模から言って、兵器としての性能よりも鋼魔の力で強化されていそうだ。一体どんな火力を秘めているのか考えたくもない。

 

「グゥ……」

 

そんな想像もできない火力がこちらに向けられる。そう思っていた。しかし、ドレッドラの両眼が赤く光ったかと思うと、そっぽ向き彼方を眺めるようにする。

 

「まずい……あの射角、避難がされていないところに当たる」

 

「ええ……!?」

 

 フルーデはさらに深刻な分析を伝えてくる。

広範囲にわたって避難指示が出されているはずだが、それでもカバーできない範囲とはとんでもない射程だ。アーシュケリアのそれよりも大規模なものだとすると、地面に当たる衝撃だけでとんでもない被害が出てしまう。

 

「アーシュケリア!こっちもレールガンだ!」

 

怒声にも似たフォルテの声が聞こえる。

 

「今やってる……チッ……チャージに時間が……」

 

カウンターのレールガンも間に合わないようだ。アルニギアスのドミネイターの同様のようである。

 このままじゃたくさんの人が死んでしまう……。

 

「ダメだ……人が死ぬのは……悲しいことだ……命は守らなきゃ……なんだ!」

 

私が恐れをくみ取ったようにノクストスがうわごとを言い出す。

 

「ノクス……?」

 

“ギューンギューン!”

 

光と音が大きくなってその時が近づく。迫る危機に立ち向かえるものは……。

 

「俺が、行く……」

 

瞬間、瀕死だったはずのノクストスが立ち上がり、飛び上がる。

 

「ノクス!ダメ!」

 

彼は、ちょうど弾丸が発射されるタイミングで、ドレッドラの顔の前にいた。空中のノクストスは二本の刀をクロスさせて構える。

 

“バッキン!!”

 

強い閃光と破裂音が鳴る。

 

ドンッと複数回の震動が近くから響くのが分かる。

 

頭の震えに耐えてまわりを見ると、ノクストスが受け止め、切り裂いたであろう弾丸の欠片と、両腕を失って倒れ伏すノクストスが落ちていた。

 




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