新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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少し時間がかかってしまいました。プラネスフィアのメンバーを好きになってもらえると嬉しいです。


EP44 星座への道

 

Side:篠宮

 

 完全なオフの日。私は家の自室でお気に入りのアニメに出てくるロボットのプラモデルを作っていた。傍らには、リオンがいて作業を手伝ってくれる。趣味に付き合ってくれるいいパートナーに出会えたものだと私は常々思う。

 

「大丈夫?」

 

唐突にリオンが話しかけてくる。

 

「大丈夫って?」

 

「いつもより1パーツにかかる時間が、平均の1.6倍になってる」

 

「そんなに?」

 

私はリオンの言葉を聞いて、時計を見て終わった作業の量と比べる。確かにいつもより遅いような気もする。

 

「思ったより、前回の戦い気にしてるんだね」

 

「そうね……私自身も……案外人間なんだな……」

 

私は魔法少女の見る特別な世界、アニメの中のような世界に行きたくて

魔法少女になった。不純な動機で利己的な人間だと、自分のことをそう思っていた。

 

「いつも言ってるじゃん。本当に他人を想えない人間なら秘石は知世を選ばない。知世はちゃんと優しいから、無意識に失われた人と失った人に心を寄せてるんだよ」

 

そう自己分析とは違って、リオンは私に魔法少女らしい部分があると言ってくれる。そんな彼だから、私は好きになったのかもしれない。

 

「だといいけど……」

 

 私は頭がいいのか、先を読んで要領よく行動できた。だから体力に秀でているわけではない私でもここまでこれた。でも、ときどき思う、アニメの中のヒーローのような信念のない私がここにいてもいいのかと。自分が良ければそれでいいと考える自分を、そ魔法少女にふさわしくない人間なのではないかと不安になることがある。

 

「そもそも、自分のために戦うヒーローがいてもいいと思うよ。その結果みんな助かってるんだし、誰も傷ついてないんだし」

 

作業の完全に止まった私を見て、リオンはフォローを入れてくれる。

でも、助けられなかった人がいることが問題なのに、もう少し自己犠牲精神があるような人間だったら、何か変わったんだろうか。

 

「がむしゃらに自己犠牲に走るだけが問題解決の最適解じゃないって智世ならわかってるでしょ?」

 

「理屈ではそうだけど、例の忍者勇者(勝手にそう呼んでいる)がレールガンを捨て身で止めたりしてるのを見ると、ああいうのこそ本当のヒーローなのかなって思った」

 

「あれは凄かったね……文字通りの伝説の勇者ってところかな」

 

過去から来たと思われている謎の勇者、アニメなら物語のカギを握っていそうだ。シンセリー・テルスのような輝きもない私は、なにか役割が持てるだろうか?後ろから小手先で戦うような私が。

 

「でも僕らだって負けてないよ。あの戦いの中で分離させられた人をスムーズに助けられたのは僕たちがいたからさ」

 

卑屈になろうとしてきたところに、聞こえてくるリオンの言葉は心の雲間に差す、太陽の光のようだ。

 

「そうだね、私達がいるからできる無茶もあるってことか」

 

「そー、そー……魔法少女も勇者もそれぞれできることをできる限りやればいいんだよ。傷つくことだけが、頑張った証明じゃない」

 

いつもそうだ、リオンは私の世界を照らしてくれる。そのおかげで見える景色は、私の見たいものだったこともあれば、思いがけないものだったこともある。

 養成学校の時もそうだった。カリキュラムはともかく、周りになじめず自分の世界に閉じこもろうとしていた私を、外へ連れ出してくれた。

 私が教室でアニメを観ていた時に、『僕もそれ観たことある~』と話しかけてくれたことがすべての始まりだった。そこから、リオンを通してクラスで浮かない程度には、繋がりができた。(その流れでそもそも、勇者ロイドは前園博士の趣味で総じてロボットアニメオタクとしての英才教育を受けていて、女子も影響を受けたのでオタクにはずいぶん居心地のいい環境だった)

 リオン、私の太陽……私の勇者。彼の照らしてくれる世界を、それにふさわしい私になれるように走っていきたい。

 

「私なりに頑張ることにする。デヴァリオンのプラモも作りたいしね」

 

「へへ……」

 

リオンは照れ臭そうに笑う。私はきっと、陽だまりにいる。

 

 ※

 

Side:アーシュ

 

 俺のパートナー、鳳条真央はOIDO施設で射撃訓練にいそしんでいる。それはこれまでこいつが苦手だからと避けていた分野の訓練だ。短所を埋めようとする心意気は応援したいが、無理をしているようにも見える。高頻度だった鋼魔獣の出現が、今は極端に落ち着いている。こいつもこれから何かが起こるということを予感しているのかもしれない。

 そんなこいつに俺は何ができるだろう。

 

“バンッ!バンッ!バンッ!”

 

「チッ……!だめだー!全然当たんねー!」

 

 射撃ブースに入って数十m先の的を練習用の拳銃で狙う彼女の弾は、人型の的にかすりもしない。こいつが手を抜いているわけではない。その後ろ姿にはこれまでの俺のアドバイスをなるべく取り入れようとする努力が見て取れる。それでも、俺にプログラムされた最適なフォームには近づけてないように見える。

 

「くっ……何でうまくいかねーんだ!」

 

けが防止のためにつけていたゴーグルを、真央は乱暴に外す。こいつ自身も焦っている。

 

「落ち着け、真央。お前は頑張ってる……お前はよくやってる……」

 

「んなっ!なんだよ気持ち悪い……!」

 

あまり俺は、真央を素直に褒めることがないからか、彼女は慌てながら悪態をついてくる。そこそこの付き合いだ。それが照れ隠しであることが分かる。

 

「一つ、考えたことがある。これを的に投げてみろ」

 

俺はあらかじめ用意していたゴムボールを渡す。

 

「ボール?ボールじゃ敵は殺せないだろ……?」

 

彼女は、首を傾げて聞き返してくる。

 

「お前なら……そうとも限らん。いいから投げてみろ」

 

彼女の頭にはまだ疑問符が浮かんでいるようだったが、俺を信用してくれたのか、的へ向き直って投げてみた。ポニーテールが揺れるその背中が綺麗だと思った。

 

“ビューン!ダァンッ!”

 

風を切るボールは、勢いを保ったまま的に衝突した。銃が前提の距離でゴムボールを投げたというのにプロ野球選手じみた強肩だ。

 

「当たった……銃は当たんねーのに……」

 

遠くの的に投げるという射撃と同じような技術が必要な行為に成功するというちぐはぐな結果に真央自身も困惑しているようだ。

 

「これは推測だが、お前は自分の肉体の操作は完璧だが、何かが挟まると途端にコントロールが狂うタイプだ。サッカーはできるが、テニスなんかは苦手だろ?」

 

「な、なんでわかるんだよ!?」

 

 真央は小学生のころからその身体能力を見込まれて色んなスポーツを試し、活躍してきたらしい。反応から言って推測した通りの傾向があるようだ。こいつは距離感の調節や狙いをつけることが苦手なわけではない。でなければ、あのロードローラーの化け物を最適な位置に飛ばしたりできない。

 

「得意、不得意というより特性に近いな……俺としては、射撃は切り捨てて、投擲主軸にする武器や戦術を考えた方が良いと思う」

 

「そういうものでいいのか?苦手なことから逃げてることになるんじゃないか?」

 

真央は不安そうな顔をしながら言う。スポーツマン的な気質があるこいつは壁を避けるということに慣れていないのだろう。

 

「別の道に進むだけだ。無理に短所を埋めようとするより、長所を伸ばした方がいい。お前の長所にはそれだけの価値がある……俺は、お前は誰より強い魔法少女になれると思っている。シンセリーにも負けない才能が、お前にはある」

 

「なっ!?何だ急に……ホント……気持ち悪いぞ!」

 

俺の言葉に、真央は顔を赤くして慌てる。

 

「俺の素直な気持ちだ。それに、お前の苦手な距離は俺が埋める。そのために俺はいる」

 

「……そう言うもんか……うん、お前を信じる。頼りにしてるぜ、相棒……」

 

 困惑を見せていた真央は、しばらく考えて納得したのか、照れながらも、嬉しいことを言ってくれる。それを見て、俺の胸に湧いたのは罪悪感だった。俺は安心している。自分の役割が明確であることに……嘘こそないが、こんな勇者で良いのだろうか?

 

「…………」

 

「…………」

 

二人のテンションのギャップが微妙な空気を生む。その沈黙を終わらせたのは、第三者だった。

 

「おーい、鳳条さん!アーシュくん!」

 

そんな声と共に、碧乃一実とノクスが駆け寄ってきていた。

 

 




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