新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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思いのほか長くなったのでさらに前後編に分けます。

本文は完成しているため後編は明日投稿します。

また随時すでに投稿したものの時誤字修正なども行っています。見やすくなっているとは思うので、気が向けばどうか読み返してください。


EP45.5 3 星の影 後編その1(新作)

 

Side:碧乃

 

 目の前の魔法少女は武器を捨てろと言ってきた。けどさすがにおいそれとステッキを置くことはできない。考えたくはないが、彼女も敵かもしれない。そして、隣にいる勇者ロイド……名は堅盾(けんじゅん)勇者アスファード。

 

「マーシー・リブラ、安心してほしい。私はあなたの敵ではないし、あなたたちを助けに来たの……もっとも……その必要はなかったみたいだけど」

 

彼女、グレース・モノセールの目に敵意はないように見えた。どうするべきか。さすがにこの状況だと魔法少女だからと言って無条件には信用できない。でもどうしよう。ノクストスはともかく、私はグレースに勝てる気がしない。私よりはるかに多く死線を潜り抜けた彼女の技量には付いていけないだろう。正面から戦うようなことになれば、おそらく勝てない。でも……でもだからと言って大切なノクスを渡せない、渡したくない。

 

「こんなことに巻き込んで本当にごめんなさい。でも信じてほしい。私に害意はない。同じ魔法少女と勇者を傷つけたくはないから」

 

グレースはまっすぐ私の目を見て、謝罪の言葉を言ってきた。彼女の言葉を嘘だと思いたくはない。有力な魔法少女は、OIDOの中でも発言力を持つ。星原先輩が私とノクスの面会を果たしたように……グレースクラスの意志ともなれば、本部と言えど無下にはできないはずだ……でも……。

 

「今回の件に、アメリカが関わっているなら、あなたがどんなに主張してもノクスを狙う思惑は止められないんじゃないですか?」

 

ノクスを狙う思惑がOIDOの組織の外にあるなら、彼女はやはり、ただの小娘に等しい。

 

「アメリカにもそんなに強引な手は取るべきではないと考える人もいるし、日本もそう簡単に丸め込めるほど弱くはない。なにより、あなたに何かあれば、シンセリー・テルスが黙っていないでしょ?日米の対鋼魔戦力の連携が取れないのは避けたい」

 

仲間たちは、私を助けに来てくれるだろうか?そんな最低な疑念が私の中に沸いてくる。すでに最低限データがそろった現状では、OIDOとしてはごたごたを起こすことは避けようという話になるはずだ。

プラネスフィアのみんなは、先輩はどうするだろう……いや、今はそんなことを言われているわけじゃない。どう転ぶとしても先輩は、命令に従う模範的な戦士をやっているように見えて、その裏で揺れる心をちゃんと持っている人だ。グレースの言う通り、もう前のように2人が共闘することはできなくなるだろう。

 そんな状況を避けたいと相手が思っていることは間違いないはずだ。

 

「あなたが今日、この場で起こったことを忘れてくれれば、全て無かったことになる」

 

「…………」

 

それは、今回のトラブルを先輩含めて、誰にも話さずに私とノクスの2人だけで抱え込め、ということなんだろう。それはおいそれと了承できるほど軽いことがらじゃない。そもそも日本の諜報部は米国の動きを察知している。そんな状態で私一人がけろっとしていられる気はしない。そうでなくてもこういう事態を組織に報告しないのは裏切りに等しいんじゃないかとも思う。

でもここをやり過ごして、こそっと報告するような器用さも度胸も私にはない。目の前の少女は、少なくとも私にとっては、神聖視すらしてしまうような特別な存在だ。そんな人と約束してしまえば、理屈とは別のところで、裏切れなくなる。

 

「ここで私が分かった、と言えば、作業も予定通り終わらせてもらえますか?」

 

私は最低限のラインを確認する。傲慢な考えかもしれないが、今の日本には私とノクストスが絶対に必要だ。厳密には私たちが動かすインテグレーション・ボディの力が必要ということだけど。

 鋼魔人という脅威が、少なくとも日本を狙ってきているように見える以上、今はとにかく、巨人の力を備えておく必要がある。その裏にどんな歪みが生まれるとしても。

 

「もちろん」

 

帰ってきたのは端的な答え。それならばインテグレーション・ボディを日本が確保できることになる。彼女の言葉を信じるならだけど。

 

「…………」

 

私はまた意見を求めて、ノクストスを見てしまう。もちろん彼は私の選択を信じるという意思を伝えてきてくれる。そうすると、自分の選ぶことに根拠のない自信が湧く。

でもこれは甘えだ。人間ではない彼ら勇者が組織の中で信頼を得るにあたっては、建前だけでも魔法少女の支配下にいなければいけない。勇者の方が、判断の主体になるようなことがあってはいけないと、養成学校で教えられてきた。それは勇者を抑圧するためのルールというより、倫理的、道義的に不安定な立場にいる彼らを守るための一線だ。

 だから本当は、大事なことは私が決めなくてはいけない。でも私はことあるごとに、ノクストスの賛成を求めてしまう。彼に背を押されると、勇気が湧いてくるからだ。逆に言えば彼がいなければ私は自分の選択に自信が持てない意志薄弱な人間だ。

 彼のためにもそうであってはいけないと思う。彼はまだ、私以外には選択をする判断基準が持てていない。私の選択を信じることしかできない。だから私は間違えられない。

 そんな中で私が信じて選ぶものは何か。

 

「あなたは、シンセリーと同じように、ずっと世界を守るために闘ってきたんですよね?」

 

「そうね?」

 

 私の突然の質問にグレースは困惑しているようだったが答えてくれる。

時にはそのシンセリーなどと共闘する場合もあっただろうが、数がそろっていなかった期間は1組だけでの戦いだったはずだ。

私も今はチームが前提とはいえ戦場に出ている。だからこそ分かる。彼女たちのやってきたことがどれほどの偉業なのか、その中でどんな重圧に打ち勝ってきたのか。気高い精神性があったからできたのだと思う。

 グレースの目、先輩とは違う頑なな強さがある。きっと先輩と同じ心持ちでここまで来たわけじゃないと思う。でも、それでも……。

 

「分かりました。あなたを、魔法少女グレース・モノセールを信じます」

 

 ※

 

そのあと本当に何事もなかったかのように戦闘のあった部屋は片づけられ、私とノクスの方は整備場のインテグレーション・ボディの全身が見える位置で作業の様子を眺めている。とりあえず彼女は約束を守ったということか。

とは言え、この状況にどう立ち向かうべきなのか分からない。私のした選択が正しいのかも……今すぐにでも先輩に相談するべきなのかもしれないけど……そうする勇気もないんだ。

 マリア博士なんかはホントに何があったかも知らないみたいだ。

 だけど、この胸にはまだ不快なもやもやが残っている。私はそれを吐き出したくて口を開いた。

 

「ノクス、ごめんね。私、気持ちで決めちゃった」

 

「気持ちって?」

 

「私、グレースっていうヒーローを信じたくて、話に乗っちゃった。だから根拠とかこれからどうすべきとか、あんまり考えてなかった」

 

「信じたい、か……そりゃまた危なっかしい話だ」

 

壁に背を預けたノクスは少し笑っていた。

 

「でも、それでいいと思うぜ。あの人ら、この国の隊長さんとアルスみたいなもんなんだろ?隊長さんがアレなんだ。あの人達も相応にいいやつだろ……」

 

他者を想えない人間は、魔法少女にはなれない。でも人格の善悪は、行動の善悪には直結しない……と頭では分かっている。特に国家権力などという巨大で複雑な意思が関係しているなら、彼女の言葉を鵜呑みにするのは賢いもののやることではない……のかもしれない。

だからといって、それに対応する頭脳も器量もないのだから、綺麗事にかこつけて楽な方に逃げている。それが、今の私。

 

「俺の方こそ、ごめんな」

 

落ち込んだ声が、横から聞こえる。

 

「最初の一撃の時に俺がちゃんと動けてれば、お前が危ない目にあうこともなかった。初撃でためらわずにあの女の腕を斬り捨てていれば……悪い、今のは忘れてくれ……」

 

一瞬、ノクスの声色が急激に冷たくなる。言っていることは怖いが、理解はできる。銃を売っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけ、ともはや使い古された言葉があるが、あの時の私は殺されるようなことはしていない。ならば相手がある程度過激な反撃を受けたとしても文句は言えないはずなんだ……道義的には、だけど。

 

「でも、ノクスはちゃんと打ち合わせ通り、私を信じてじっとしていてくれた。だから丸く収められたんだよ」

 

陣屋さんからの忠告を受けた私たちは、何かあっても私が対応すると事前に話し合っていた。特にあのような状況の場合はノクスが下手に動くとより本格的な実力行使の口実を与えかねなかった。そういう意味では私が魔法で対応したのは、よかったんだろう。

 

「でも、怖かったんだろう?」

 

「…………!?」

 

私はハッとする。

 

「その顔、もしかして気づいてなかったのか?」

 

「目の前のことに対処するのに夢中で、気づかなかった……」

 

怖かった。理解し合えるはずの人間から向けられる殺意が。鋼魔に向けられる本能的な敵意とはまた違う、感情の籠らない、冷たい殺意。個人の意思ではないもっと大きなものから発されているそれは、目の前の一人を制圧したところで消えることはない。その殺意を向けられ続けることが終わることのない暗闇にはまってしまうようで、心底恐ろしかった。だから私は、その状況から何としても逃れたくて、深く考えることもせずにグレースの話に乗ったのかもしれない。

 

「私、まだ何もできない子供だったんだ。目の前のことを処理していくのが精いっぱい。先を読んだり、大人相手にうまく立ち回ったりは全くできない、小さな存在」

 

そんな風に自覚したとたんに、私は私がひどく情けなくなった。

 

「俺……、俺も、組織とかそう言うの、まだよくわかんないけど……さっきみたいに一実を傷つけようとする誰かがいるなら、俺はそれから何が何でも守るし、許さない。それが人間であっても。……だから、その……気休めになるかは分からないけど、そこだけは安心してくれていいから」

 

ノクスは言葉を慎重に選びながら、私を安心させようとしてくれているみたいだ。それはそうだと思う。ノクスなら私を、それが鋼魔の爪や牙だろうが銃から放たれた弾丸だろうが、あらゆる物理的な脅威から必ず守ってくれる。そう、信じられる。

問題は私だ。盾となってくれる勇者に対する魔法少女の役割は、物理的とは言えない、見えない脅威。人間の集団の悪意や思惑から人間として勇者を守ることだと思う。今の私にはそれが出来そうにない。国家や組織の思惑の渦中に飛び込むことから逃げたいと無意識に思っていたんだろう。だから、この選択が正しいものだと胸を張って言うことができない。

 

「ここにいたんだ」

 

「……!?」

 

唐突に横から声が聞こえる。その方向に視線をやった時、私は心臓が飛び出るかと思った。こんなになったのは、ベッドの横に先輩が現れた時以来だ。

 




本編再開は4月ごろになるかもしれません。申し訳ございません。

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