新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP05 古代からの呼び声

 

 私とアルニギアスがもう一か所の現場についた時、養成校の制服を着た女の子が倒れている。その子を守るように寄り添う汚らしい恰好の男がいた。付けているインカムからの連絡で大体の経緯は把握している。この二人が連絡にあった候補生と未登録の魔力反応を持つ勇者ロイド。

 そしてその傍らにあるクレーターのような道路のくぼみの中に鋼魔の核と思われるものが転がっていた。まだゼロ化がされていないようだった。

 まずは何よりも、ゼロ化を完遂させなくては。反射的にそう思った。私は跨っていた巡航形態のアルニギアスに二人を見張るように命じて地面に降り立った。

 

「あ、あんた、もしかしてヒトミの仲間だったりするのか!?だったらこいつを……」

 

「喋るな……そして動くな」

 

人型に変形したアルニギアスは謎の男に大剣を突き付けて牽制する。

 

「こいつみんなのために戦ってくれたんだぞ。見殺しにするのかよっ!」

 

しかし、男はひるまずに反抗の意思を見せてくる。厳つい見た目のアルニギアスに凄まれてひるまないとは、相当あの候補生を心配しているということだろう。

 

「だからこそだ!怪物と戦ったんだろ?その怪物はまだ死んじゃいない。放っておけば再生しちまう。それを完全に殺しきることが何よりも先だ。そうじゃなきゃその子の戦いも無駄になる……それに安全じゃなきゃ治療も何もないだろ」

 

「……」

 

アルギニアスの説明で男が押し黙る。私は事情しゃべりすぎだとも思ったが、どこまでもまっすぐなこの子だから伝わることもあると思って、何も言わずにやるべきことをやる。

 

「プラッテ・アドハック・アクア」

 

ステッキをかざしてゼロ化を実行する。無力化には成功していたらしく、すんなりうまくいった。候補生がぶっつけでここまでできたのなら上出来だったというべきか。

 

「ふー、これでこの鋼魔が再生することはない……あなた、その子を診てあげるから少し離れて」

 

目先の脅威が消えたので、頑張った後輩を放っておく理由もない。私は男が脱いだコートの上に寝かせられた彼女の様子を魔法で調べる。外傷はあるが深刻ではない。意識を失っている理由は……。

 

「魔力切れで気絶している。命に別状はない……病院に連れて行った方がいいのは確かだけど」

 

「そうかなら早速……病院へ……」

 

男が候補生を抱き上げようとしたとき、インカムに指令が入る。

 

「……アルニギアス……スタン」

 

“バチンッ”

 

「うぐっ」

 

  私が精神リンク込みでアルニギアスに送った指示を彼は間髪入れずに実行してくれる。振り下ろされる大剣からの電撃で謎の男は意識を立たれる。敵意のなさそうな相手への不意打ちに罪悪感があるのか、アルニギアスは気まずそうだ。あとでフォローを入れてあげないと。あの子は優しいのだから。

 

 ※

 

荒野で……は、黒いドレスの少女と向き合っている。

 

「勇者を自分から吹き飛ばして気でも違ったか!?」

 

「そうかもね。でも、あなたたちとの決着はわたし一人で十分だから」

 

「貴様!」

 

……の挑発的な言葉に黒い少女はさらに憎悪の感情を強める。黒い少女は怒りのままに魔力弾を乱射する。致命傷にはしない、嬲り殺すという決意で……を追い詰める。しかし……は碌に防ごうともせず平然としている。

 

「ふん、口ほどにもないじゃないか。お前だけで十分なんじゃないのか?命をつなぐだけでやっとって感じだぞ?」

 

「ねぇ、ミセラティー……一つ聞いて良い?」

 

「今の私は、ヒュブリスだ。ミセラティーは死んだ」

 

「そっか、じゃあ……あなたはやっぱり会えなかったんだね」

 

「……どういう意味だ」

 

「あなたは、私たちを裏切っても望むものを取り戻すことはできなかったってことだよ」

 

「貴様ーーー!!!」

 

……の言葉は黒い少女にとって図星であった。だからこそ少女は取り乱し、今度こそ目の前の相手を消し去らんと魔力を貯め始める。しかし、……の方が上手だった。

 

「私はあなた達には堕とせない。私があなた達を墜とすから」

 

そう言って……は左手に持っていた石を右手のハンマーで砕いた。

 

「それは秘石!?まさか貴様!」

 

砕かれた石のあった……の手のひらの上には黒く小さな玉が形成されていた。

 

「命と引き換えにした究極の魔法……もう誰にも止めることはできない」

 

「やめろ!それでは貴様諸共!」

 

……の目論んでいることを察した黒い少女が駆け出すがそれには及ばなかった。黒い球が周囲の全てを引き寄せ始めたからだ。それは……術者とて例外ではない。

 ……は意識が暗黒に堕ちる直前考える。これは先延ばしでしかないのだと。いつか魔は必ず表の世界に復活してしまう。

 

「あなたを残して逝くことを許して。あなたの勇気がきっと誰かを救うから」

 

その言葉が届くことはなく、すべては闇に呑まれた。

 

 ※

 

「はっ……」

 

 私の視界に白い天井が映った。変な夢を見ていた気がする。私は寝ていたのか……ここ、寮の部屋じゃないよね、ここ……私は何でここにいるんだっけ……?全身が痛いような気もする。私はぼんやりとした頭で何があったかを振り返ってみ……。

 

「……!ノクス!」

 

 すごい勢いで上半身を起こした最初に私の口から出たのは、鋼魔のことではなく彼の名前だった。その直後にゼロ化が終わってないことを思い出した。

 

「鋼……!」

 

「ここは病院だバカ、静かにしろ!」

 

そんな私を諫めるような声が聞こえた。

 

「きょ、教官……!?」

 

 声のした方にいたのは、候補生の全員が誰よりも恐れるミサト教官だった。彼女はベッドの横に置かれたパイプ椅子に座っている。教官の言う通り、私がいるのは魔法少女関連の病院のベッドの上のようだ。

 私はそう理解した直後、教官の眉間のしわを認識して、頭の中に彼女との最後の会話が再生される。

 

「きょ、教官……あ、あ、ああ……あの……」

 

「おい、電話の時の威勢はどうした?え……?」

 

盛大にどもっている私に教官はクリティカルなことをついてくる。

 

「ひぃ……」

 

あの時は後先など完全に考えていないから無敵でいられたのであって、冷静になってからは劣等生の私には黒歴史でしかなかった。

 

「お前なぁ……お前も戦士目指してんなら、自分のやったことの顛末はちゃんと自分で受け止めろ」

 

 教官は少しあきれながら言ってくる。そうだ、あの時私は、自ら周りの人の命を抱え込もうとした。私しかいなかったにしろ、私が選んだことには責任が伴うのだ。その結果がいいものにしろ、悪いものにしろ、知っておく義務が私にはある。私は一度息を整えて、教官に聞いた。 

 

「教官、気を失ってからどのくらい経ちましたか?私の戦った鋼魔はどうなりましたか?被害はどの程度ですか?ノクスは、私に協力してくれた勇者は今どうしていますか?」

 

「今度は質問が多いな。まぁ、いいだろう。順に答えてやる」

 

教官はやれやれといった態度を見せながらもどこか朗らかに思えた。

 

「まず、お前がぶっ倒れてから2日たった。で、お前が戦った鋼魔だが、お前が気絶した後こいつが駆けつけてゼロ化した。全く、ゼロ化分の魔力は常に計算に入れろと言ったはずだぞ!」

 

「ひぃ!すいませんでし……ん?こいつ?」

 

私は違和感に気づき教官が一瞬示した方に目をやる。ベッドのそばにパイプ椅子を置いて座っている人が教官の隣にもう一人いたことに、そこで気づいた。その、人物とは……

 

「ほほほほほほ、星原先輩ぃ!!??」

 

「だっからっ……!病院だっつってんだろ!声抑えろ!……というか気づいてすらいなかったのよ」

 

“バコンッ”

 

「痛っ……すいません……」

 

教官は小突いて注意してくる。しかし、少しは大目に見て欲しい。なぜなら地上の星が突然目の前に出現したのだ。

 我らの希望、天望愛齎シンセリー・テルス。現在世界にいる正規の魔法少女は12人。星原先輩はその中に最強という呼び声も高い。まさに希望の星。日本のアイドルと言って差し支えないが、私たち候補生からは半ば信仰の対象だった。

 さらに間近に相対してひしひしと感じるが、とにかくビジュがいい、変身してなくても超絶美少女だ。着ているのは養成学校の上位組織『OIDO』の地味な制服だが。それでも輝いて見えるほど、めっちゃ顔がいい。黒く長い髪もつやつやで綺麗。背も高い、同性でもキュンキュンする。これが命がけで世界のために戦っているのだ。そりゃあ、夢も見る。現実に救世主もヒーローも実在するのだと。

 

「初めまして、碧乃一実さん。あなたの行動は組織的には褒められないのかもだけど、私個人としては凄く尊い行いだったと思う」

 

 ああ、初めましてなんだ。一応、学校で先輩の講演とか聞いてたし視界に入ったことぐらいはあるはずなんだけどな。まぁ、私みたいな芋女、モブ生徒AどころかFとかGだし覚えてもらえるわけないか。少しがっかりしたが言ってもらえたことを考えると、どうでもいいことだ。

 

「ええ!そ、そんなことありません……私の後始末もしていただいて……ご迷惑をおかけしました」

 

「あなたの行動のおかげで助かった人もいると思う。早いタイミングであなたが分離させたから後遺症が残った人も、死者も出なかった。むしろ尻拭いをしてもらったのは私の方かもしれない」

 

「……!!!そう言っていただけると命を張った甲斐があったって思えます」

 

 推しに褒められた。ああ、死ぬほど嬉しい。今日の思い出だけで一生幸せに生きていけそうだ。死者も出ていないようで万々歳だ。

 

「おい、こいつをあまり甘やかすな……お前の今回の行動については、後に審議会で沙汰が下される。覚悟しておけ」

 

「はい……」

 

 冷たい言葉が、私の胸に刺さる。結果的に死者が出なかったとはいえ、私の攻撃で逆に被害者が出たかもしれないことを考えると、独断専行の責任は重い。

 

「それで、協力者の勇者はどうなったんですか?」

 

 仮にも魔法少女候補生としての矜持が私にもあるので、犠牲者のことを先に聞いたが、内心ではノクスのことを何よりも聞きたかった。

 

「アイツは今、OIDOの研究機関で拘束している」

 

「拘束って……彼は善意の協力者です!拘束なんて……」

 

確かにいろいろ不可解なことはあるが、私にとってあの時の彼はまさに勇者だった。不遇な扱いに置かれるのは、受け入れられない。

 

「まぁ、聞け。あの男についてお前はどこまで知っている?」

 

教官は動じることはなく、私をまっすぐに見てくる。今話すべきことがあると私に伝えているようだった。

 

「正直何も、記憶喪失だという話で、数日あの辺りを彷徨っていたらしいですが……」

 

振り返ればノクスは不審さの塊のような人だ。そんなことがどうでも良いと思えるほど、彼が勇者ロイドであるという事実は意味不明だ。

 

「我々と同じく、ほとんど何も知らないのか」

 

教官は神妙な顔をする。記憶喪失なのだから、彼自身の口から分かることは無いに等しいだろう。

 

「スキャンとかで、何か分からないんですか?」

 

「ああ、もちろんしたさ。で、余計意味が分からなくなった」

 

「はい?」

 

教官の言葉の意味が分からない。

 

「よく聞け碧乃、あいつは勇者ロイドじゃない」

 




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