新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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プロローグから数えて60話目結構遠くまで来ました。これからもよろしくお願いします。


EP59 惑う刃

 

Side:碧乃

 

「見覚えがある?……確かにどことなくノクストスに似ているような」         

 

色々な補正がかかっているカメラの視界は夜でも相手の姿をはっきりと捉えられる。

 今の姿はメカに寄っているためまた違うが、相手の使っている鎧はいつものノクストスに似ている。

 3000年前の戦いに関係するものなのだろうか?やはり、彼女はノクストスの過去に因縁があるということか。ならば……

 

「あなた、会話が出来るんでしょ?お話しませんか?」

 

「話だと?」

 

私は孤立させられている状況だけど、それは相手も同じことだ。そして眼の前の相手以外の脅威はすでに排除は終わっている。

だから私たちはある意味じっくりと相手に向き合うことが出来る。

 ノクストスの過去のことを聞きたいのもあって、私は交渉人の真似事をすることにした。

 

「私は知りたい。あなたたち鋼魔について、ノクストスについて、そして戦う以外の選択肢がないのかも……」

 

「はんっ!」

 

私の言葉に、彼女は嘲るような声と振り下ろす斧槍で答えた。

 私たちはバックステップでそれを回避する。

 

「そんな問答、3000年前に散々繰り返して結論が出ている!個などというくだらんものにこだわる貴様らと我ら鋼魔は相容れん、とな!」

 

相手はそう言って、今度は横薙ぎに魔力の飛ぶ斬撃を放ってくる。

 私たちはそれをシンプルにジャンプで躱す。斬撃は、私たちの後ろにあったいくつかの建物を豆腐のように斬り裂いてしまった。

 生態反応がないとは言え、無視もできない。やはり話し合う余地はないのだろうか?

 愛を掲げて、そして慈愛の名を持つ戦士としてはふさわしくないのかもしれないが、それもいいと思ってしまった。

 鋼魔の野望と伝わる全知的生命体の統一。個という概念から脱却し、一つの知性体になるべきという敵の思想。鋼魔に取り込まれるということが即ち死ということでもないのかもしれないが、先輩やあのおばあさんが直面する現実を考えるとやはり許容できない。

 そして、私は単純に彼女たちをそんな目に合わせたこいつらが許せない。

 

「……行ける?ノクストス」

 

『ああ……』

 

対話のための言葉は尽くした。私はそう考えることにして刀を抜く。魔力を刀身に流し、ノクストスの思い描く戦いのイメージに合わせる。光る二つの刀身を八の字を斜めにしたように構える。

 

「先代よりも聞き分けが良いようだな……よかろう……過去の因縁ごと、ここで消し去ってくれる」

 

敵も魔力を武器に込め、構える。この場で私たちとの決着をつける気になったようだ。

 夜の街で、光る武器を携えた巨人が向き合っている。ショーをしているつもりはないが、決戦にはふさわしいシチュエーションではないか。

 

「せめて、名前だけでも教えてくれない?」

 

いつまでもあなたとふんわりとしか呼べないと、こちらも気合が入りにくい。そう感じた私はダメもとで聞いてみる。

 

「なに、名前だと?……何を言い出すかと思えば、そんなくだらない……いや、流石にそのくらいの作法はあっても良いだろう。なんせ……私らしくあるのもこれで最後であるのだろうし」

 

最後の言い分、私には理解しきれなかったが、名乗る気にはなってくれたようだ。それから一呼吸分黙り込んだ後、彼女は目を見開いた。

 

「我が名はヒュブリス!鋼魔第一の尖兵にして貴様らの希望を砕くものなり!」

 

「プラネスフィアの魔法少女、愛審聖裁マーシー・リブラ!」

 

「同じく、影光勇者ノクストス!」

 

「推して参る!」

 

「推して参る!」

 

私たちは時代劇のように名乗りを上げて、相手へ踏み込む。こういう見栄というのは精神と直結する魔法において有効だと習った。またそれに関係なく、私自身に勢いを付けたかった。

 

“ガンッ!……ガキンッ!”

 

一足で数十mの間合いを詰め、両方の刀を振り降ろす。ヒュブリスは自らは足を動かすことはなく、その獲物で斬撃を受け止める。

 

「ずいぶん大胆に踏み込んでくるじゃないか。もっとおっかなびっくり来るものだと思ったがな」

 

互いの刃が、摩擦を起こし火花を散らして鍔競り合いになる。そんな状態でも彼女は落ち着いた声で話しかけてくる。

 

「私は一人じゃないから、勝てない道理なんてないもの!」

 

確かに私は、いつになく大胆になっているのかもしれない。まず第一にあふれるばかりの闘志がある。やはり怒りがある。私は自分のことは別に情に厚いわけではないと思っている。だが、合同葬儀の場にあった悲しみを、先輩の涙を自分なりに受け止めて考えた時、身勝手な鋼魔に怒らない人間ではいたくない。そう思った。

 そして第二に私は一人ではなく、相手は一人であるという状況だった。敵の鎧がインテグレーション・ボディに対抗したものかどうかは分からないが、大きさが同じぐらいというだけで脅威度は結局鋼魔人一人分であると感じた。

 インテグレーション・ボディは、魔法少女と勇者という二つの魔力の源を共鳴させることでより強大な力を生み出すことが出来る。

相手は本当にデカいだけで、でくの坊とすら言えると思えた。その上で相手が一対一を望んでいるのなら私が恐れる理由はない。

 

「……っ!そうだ貴様らはいつも絆だ繋がりだと戯言を喚き、その脆弱さから目を反らす!」

 

怒りからか、ヒュブリスの鎧にめぐる魔力が大きくなり、こちらの攻撃を跳ねのける。

 

「くぅ……!」

 

『マーシー、テンションが上がってるのは分かるが、さすがに落ち着け……』

 

飛び退いて距離を取り、体勢を整える。その時ノクストスが冷や水を掛けるような言葉を掛けてくる。

 

「う、うん……」

 

その言葉は正しいものだと思ったが、何処か苛立ちを覚えてしまう。

 

「お前たちは自分たちのつながりが絶対とでも思っているんだろうが、そんなものは思い込みにすぎん!」

 

ヒュブリスは左手の手のひらから、魔力弾を発射してくる。私たちは体の軸をずらすことで最小限の動きでそれをかわし、再度踏み込んで接近を試みる。

 

「ノクストス!貴様はそれを身をもって知ったはずだがな!それを忘れて気楽に生きているとは、先代が泣くぞ。ふははは……!」

 

『……!?』

 

ヒュブリスの嘲笑するような言葉で、ノクストスの心に大きな波が立つ。繋がり、幻想、先代……そこから連想できることは……。彼の動揺が私に伝播してくる。ただでさえ心理状態が戦闘力に影響する魔法少女システム、二つの心で一つの身体を操るインテグレーション・ボディは、心が乱れれば当然動きも鈍る。

 

“ババババッ!”

 

「なっ……!?」

 

躱したと思った魔力弾が空中で停止し、散弾のように細かく分裂する。この身体の身のこなしは、ノクストスに大きく依存している。動作の最中であったこともあり、今度は躱しきれない。

 

“ドドドンッ!”

 

前段というわけではないが背中に被弾してしまう。フィードバックで実際に痛みが走る。

 

「さっきまでの威勢はどうした!」

 

ヒュブリスはひるむ私たちに、飛ぶ斬撃を放ってくる。食らうわけにはいかない。私は無我夢中で右手の刀を投げ捨てハンマーを出し、自分を叩き無理やり空中に逃げる。

 

「ノクストス!しっかり!」

 

『……!?ああ、すまん。集中する……』

 

彼はそう言って態勢をまた整えてくれる。でも、心はまだ揺れている。過去に近づく心が冷静沈着な彼の心を乱しているのか?

悪いことはそれだけではなく、敵を倒したい私に対して、彼の戦意が小さくなっていっているように思えた。二人の心が離れ始めているような気がする。

 私が未熟でも、すごいノクスがフォローしてくれる。そんな私の戦いのあたりまえが崩れ始めていた。ヒュブリスの言う通り威勢がなくなり、不安が湧いてきてしまう。

 




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