新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP61 乱舞

 

Side:碧乃

 

 視界が、敵で埋まっている。逃げられないかもしれない。けど全く怖くない。さっきよりもずっと、ノクストスを近くに感じているから。彼は今、恐怖と戦っている。自分が体験した喪失感を思い出してしまうかもしれないと恐れている。先日、先輩の悲しみを聞いて、私は他人事として表面をさする程度のことしかできなかった。でも、ノクストスは違う。リンクを通して心に直接触れている。だから、彼の悲しみを一緒に背負うこともできる。他ならぬノクストスのためなら、喜んで背負ってやる。むしろ、絶望から救ってくれた彼に寄り添えることが嬉しいとすら感じている。

 きっとそんな思いが、インテグレーション・ボディの力を引き出している気がする。

 

“ギュインギュインギュインギュイン!!”

 

四方八方の触手から、魔力の斬撃が放たれる。さすがに全て避け切ることはできない。魔力障壁とインテグレーション・ボディを介することで使えることになったプラズマ・シールドを重ねることでそれを防ぐ。

 

『防げているが、長くは持たないかもな』

 

ノクスが状況を分析する。

 

「らしくないかもだけど、力押しで行こう!」

 

私たちはそう決めて、ヘイロー・システムを起動、身体をハンマーで叩いて浮き上がるための力を、全力で働かせる。

 

『近づいてきたそばから切り刻んでやる!』

 

そして抜刀、魔力を流す。そして、こちらを押しつぶそうと包囲を狭めようとしている敵の身体を“掘り進む”。

 

“バシュン!”

 

進行方向である、上の方から破裂音がなり、天井みたいになっている紫の結界が見える。敵の上に逃れることが出来た。

 

「往生際の悪い……!」

 

ここで決めるつもりだったのか、ピンピンしている私たちに対して悪態をついてくる。

下からまた拘束しようと触手を伸ばしてくるが、その体積はとりあえず魔力を通しているだけで構造としてはほぼ人工物そのままだったのでバリアなりで弾くのは楽だった。

 

「あんまり重くなると、潰れちゃうよ!」

 

“パコン♪”

 

私たちは右手にハンマーを持ち、近くの触手を軽く小突いた。そこから私の魔力が浸透していき、その部分に作用する下向きの重力が増大していく。大きな質量は、重力の影響を受けやすくなる。大きな体積=質量は私たちにとって有利に……。

 

“バシュン!……ドゴン!!”

 

ヒュブリスは、全身に魔法が作用する前に私の魔力が滲み込んだ部分を、切り離してしまった。魔力という繋がりを失ったがれきが大きな音を立てて地面に落ちる。

 

「お前の魔法はよく知っている!貴様の重力魔法、魔法をかける対象の重さに比例して魔力の消費が大きくなっていくんだろ?」

 

「……!?」

 

見抜かれている!?私の固有魔法の性質が。

 

「確かにお前の魔法は、巨大で重い敵に有効だが、それが弱点にもなる。さぁ、根競べとしよう……私のエネルギーが尽きるのが先か、お前たちが潰れるのが先か……!」

 

『敵の本体の位置は見えてるな?乗ってやるしかないみたいだ……』

 

もはや人型を保っていない敵の身体の中に、魔力の濃度が高い部分がある。あれが敵の核、少女の姿をした部分ということだろう。

 

「分かった……魔力を全開にする!」

 

刀、ヘイロー・システム、二重のバリアに全力で魔力を流し、私たちは一点突破を目指した。

魔力反応だけを頼りに、視界が完全に敵で埋められた暗黒の中をがむしゃらに斬り進んでいく。

 

“ズズズ……ググググ……”

 

掘っても掘っても、先が見えない。おそらくまわりの人工物を、とりあえず取り込んで補充することで、肉壁のようにしているのだろう。もはや進めているかすら、分からなくなっていく。

 

「負けてぇ……たまるかぁ……!」

 

私はノクストスが思い描く腕の動きの思考を限界まで追いかけて、腕の動きを正確に素早くインテグレーション・ボディに実行させていく。さらに自分の命をすべて絞り出す覚悟で、魔力を吐き出していく。

 

“ゴゴゴゴ……!”

 

感じる魔力はじりじりと近づいていく。

 

「いっけーーー!!」

 

ついには先がその部分に達して、それと同時に相手の身体を貫通して、向こうの景色が見えるようになる。

 

『やったか?』

 

「ううん……ダミーをつかまされたみたい……!!」

 

可能性は頭にあったがあの状況ではとりあえず突っ込んでみるしかなかった。

 

「粘ったようだが……残念だったなぁ……」

 

着地した私たちの背中に、嘲笑うような声が掛かる。

 

「もう一度試すか?私は何度でもできるぞ?」

 

「くっ……!」

 

相手の言葉が今度こそ胸に刺さる。高揚感で麻痺していた疲労感が、冷静になって襲ってくる。さっきは無限に出てくるように思えた魔力もそう都合よくいかない。ダミーの形成にかなりの力を使ったのか、相手にめぐる魔力量は減っている。ダメージは与えられているみたいだけど、こちらの消耗も激しい。

 

「だが、そう何度もお前たちとのお遊びに付き合ってやるほど私も暇ではない……」

 

“グググゥ……!”

 

ヒュブリスの言葉と共に周囲から轟音が響き始める。狭まりはじめた結界が、建物を轢き倒していく音だった。壁と肥大化する身体で、私たちを押しつぶすつもりなのか。

 まずいな……一旦結界の方も突破を試してみた方がいいか……。

 

『それがいい。敵の反対側へ逃げるぞ!』

 

「了解!」

 

私たちは、背後にいる敵から逃げるように今度は結界の方向に突っ込んでいく。相手の言う通り軽い気持ちで倒せるほど、相手の存在は小さくないようだ

 

「そう簡単に逃がしはせんぞ!」

 

ヒュブリスは私たちの動きを読んでいるのか、進行方向のその先に触手を伸ばし、肉壁を形成する。

 

『捕らえられるわけにはいかんな!』

 

私たちは、後先考えずに魔力を使い全力で駆け、飛び、斬っていく。さすがに相手は無限にも思える物量でそれなりの壁を展開するが、中心に向かっていたさっきとは比べるべくもない。突破は簡単にできた。

 

“ギィン!”

 

刀と魔力の壁がぶつかって、甲高い音が鳴る。薄くだけどひびが入る。刃が食い込んでいく音がする。歯が立たないわけではないみたい。でも一瞬で破れるほど薄い壁ではないようだ。

 

“ググググ……”

 

相手からしたら、その一瞬持てば十分なようだ。ヒビを埋めるように、ヒュブリスの身体が結界に取り付き、壁と刃の間に湧きだしていく。

 

“ガギン!ガギン!”

 

私たちは壁から刃を離し、何度も斬りつけることで突破を試みる。後ろから瓦礫の濁流が押し寄せて、バリアを圧迫していく。

 果たして、潰れるのは結界か私たちか……。

 

 




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