新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP06 勝るべきもの

 

「勇者じゃないってどういうことですか?」

 

私は反射的に聞き返した。勇者でないならなぜ私は魔法少女になれたのか。

 

「碧乃、言葉を正確に捉えろ、私は奴が勇者でないとは言っていない」

 

「???」

 

教官は私の察しの悪さに、ため息をついて、

 

「はーっ、まだ厳密な調査が必要だが……奴は、原初の勇者であるゴーレムではないかと技術者たちは言っている」

 

「ゴーレム……あの人が妖精界で作られたものってことですか?」

 

 勇者とはそもそも3000年前に、魔法少女を支えるためにつくられた魔法の土人形。そしてその魔法少女に関するシステムを流用して科学技術で建造されたのが勇者ロイド。ゴーレムの勇者はより生身に近かったという話だ。そう考えるとあの人がご飯を食べられることにも納得がいく。

 

「ああ……あっちでも勇者新造の話は出ている。こっちの魔法技術であのレベルのゴーレムは作れん。作れるとしたら、あちら側だろうな」

 

「じゃあ、あの人は妖精界から何かの事故でこっちに来たとか?」

 

「それが筋なんだろうが、問題はまだある……奴の心臓、デマンド・サーキットはあちら側でも作れないレベルで出力が高い。お前の固有魔法が使えたのもそのおかげだろうな」

 

 たしか、現在使われているデマンド・サーキットは、先代が使っていたものがロストテクノロジーになっていて、復元できた現行品は大分出力が低いものになっているらしい。それで、妖精界もこちらも四苦八苦していると聞いたことがある。

 

「それって、あの人が先代そのままの可能性もあるってことですか!?」

 

 約3000年ほど前、鋼魔と戦った魔法少女と勇者は、鋼魔をその命と引き換えに封印し、全滅したのだという。実は生き残りがいたということか。

 

「分からん……ただあれがどういう経緯を持つものにしろ、技術的な価値がある。早くも解体調査の話も出ているほどだ」

 

「ダメです!」

 

デマンド・サーキットは、勇者の心臓であるとともに、自我そのものと言える部分でもある。そこを解体するならそれはノクスを殺すことを意味する。

 

「何故だ?あれはただの土人形だ。それに先日会ったばかりなんだろ?どうなろうと知ったことではないはずだ」

 

私はまた大声を出してしまった。教官はそのことを咎めることはなかったが、尋問のごとく私を責めてくる。

 

「勇者ロイドは人間と同じ心を持つものだと学校で同じ時を過ごして思うようになりました。あの人も同じだと思います。実験台にするような真似はやめるべきです。それに……」

 

「それに……?」

 

さらに圧をかけてくる教官、だが怯まないあの時と同じものが私を支えている。

 

「私はあの人のことを何も知りませんが、あの日あの時、あの人は私にとって確かに勇者だったんです。そんな人を死なせたくない」

 

あの人がかけてくれた言葉があったから、私は立ち上がれた。あの人が力をくれたから、私は戦えた。それが他の人をも救ったなら、彼はきっと……。

 

「つまり、私利私欲か……?自分の白馬の王子様を殺したくないという」

 

「……っ!?」

 

反論できなかった。私はあの時、救うべき無力な人々のためではなく、ただ、あの人のために戦っていたのだから。しかし、それでも……。

 

「そうかもしれません。でも彼が勇者になって戦ってくれれば、きっと……多くの人を救う力になってくれます」

 

それは半分出まかせだった。彼の意思も、覚悟も確認しないまま言うのは無責任なことだと思った。でもあの時の一体感、鋼魔の絶対に倒すという信念で繋がったようだった。もしかするとあの人なら……、そう思ったのことも間違いない。

 

「そうかもしれんな、だがお前はどうだ?」

 

「……え?」

 

「あれを戦線に出す方が解体して解析するより、人類の利益になるというんだろ?それはお前が立つということでもある。勇者がどれだけ強かろうと、魔法少女が無能では意味がない

 

魔法少女と勇者の契約、それは一度結んだら切り替えることはできない。彼が勇者ならその魔法少女は私しかいない。落ちこぼれの私しか……。

 

「……やれます、私がみんなと比べて劣っていてもいい。アイツらに負けなきゃいいんです。それならできるはずです。私は、魔法少女になれたんですから」

 

 今まで養成学校で積み重ねて来た成績は、私が他の候補生より劣っていることを示している。でもそれは奴らよりも劣っているってことじゃない。そして私の隣に彼が立ってくれるなら……。

 

「ふ、ふふっ、あの落ちこぼれのセリフとは思えんな……どうだ?星原、こいつはお前の隣でやれると思うか?」

 

教官は一瞬、参りましたとばかりに表情を崩し、隣の先輩に話を振る。

 

「それは分かりません。ただ、アルスがばらされるって言われたら、私も同じように言うと思います。そういう意味で、私はこの子のことが好きになれると思いました」

 

星原先輩が私に笑いかけてくれる。え?今私のこと好きって言ってくれた!?マジヤバい!頭沸騰するぐらい嬉しい!

 

「ふーっ、これだから魔法少女は……一応、この件も審議会の議題になる。1週間後だ。怪我を治して、言い分があるんならまとめておけ」

 

「はい……」

 

教官は、その言葉を最後に部屋を去ろうとする。その後を追おうとする先輩を私は呼び止めた。

 

「あの、星原先輩……どうして会いに来てくれたんですか?」

 

「私の最初の仲間になるかもしれないって教官が言うから、気になってね」

 

先輩は振り返っていたずらっぽく笑った。すげー可愛い。そして嬉しい。

 

「バカっ!余計なこと言うな!」

 

教官が今まで見せたことのない顔で怒っていた。

ああ、がんばろう。私はそう強く思った。

 

 




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