新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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新章開幕というには地味な展開ですがよろしくお願いします。

投稿していたEP68ですがいったん没にししばらく連載を休止して書き貯めに入ろうと思います。読んでくださった皆さんには申し訳ないです。


EP67 回想

 

Side:碧乃

 

 時間を忘れるぐらい長い間、ノクスは泣いていた。3000年積み重なった想いは一夜泣き続けても、吐き出せるものではないはず。せめて、気が済むまで泣かせてあげよう……。私は夜明けまで付き合う覚悟だ。

 

「…………」

 

 彼も、勇者ロイドと同じように見た目通りの年齢ではないのだろう。私はその背中を撫でながら思う。肩を震わせて泣いている姿はまるで幼子のようだ。ゴーレムと人、同じような成長曲線ではないだろうが、それなりの精神を身につけるには相応の経験と時間が必要なはずだ。私は、彼の頼もしさに甘えて寄りかかり過ぎてしまった気がする。今みたいに彼を支えられる存在でいたい。けど、彼の抱える物に対してただの小娘ができることが本当にあるのか不安になる。

 

「ひと、み……」

 

「何?」

 

彼は喉を震わせて、とぎれとぎれに私に呼びかける。

 

「3000、年前の……最後の記憶……俺を遠くに逃がして、自爆する……契約してた魔法少女の背中、だったんだ」

 

「自爆……」

 

どんな場面だったのだろうか?私には想像もつかない。それを見ていた彼の無念も。

 

「思い出したのは、あいつに突っ込んでいく……ひとみの姿を、見た時なんだ……」

 

「……!?」

 

私は、その時に私を止めるノクスの声を思い出し、罪悪感が胸に湧いてくる。私はとても残酷なことを彼にしてしまっていた。

 

「前に言ったことがあると思う……最後に思ったのは怒りだって……」

 

ノクスの抱いた怒りは、一緒に終わらせてくれなかったことへの怒りということか。心中してもいいと思えるような絆が、かつての魔法少女との間にあったんだろう。その事実に対して私はどうすればいいのか分からない。

 

「あんな思い、は……もう、したくない……でも、あいつらのせいで……生まれた悲しみのことも胸の奥に残ってる。だから、戦いから逃げる道は俺には選べない」

 

傷つくのも死ぬのも、怖い。だけど戦いから目を背けて生きるには、奴らが生む悲しみは大きすぎる。それは、私が戦いに突き動かされる理由でもあった。

 だからきっと、私たちはお互いに死んでほしくないと願っても、戦うなと伝えることはできない。だから……。

 

「だから、せめて一人にしないでくれ、一実が死ぬようなことがあるなら、その時は俺も一緒に終わらせてくれ……頼むから……!」

 

私の背中に回されたノクスの腕に力が入る。まるですがってくるような彼の力は痛いほどだった。

 

「分かった。約束する……命を懸ける時は一緒ね……」

 

死ぬ覚悟なんて私にはない。それでもともに死の危機に立ち向かうことはできる。だから、一緒に死ぬ覚悟があると言ってくれる彼を信じて、運命共同体になろう。

 

「ああ、約束だ……必ずだぞ……」

 

何度も確認してく彼の様子は、楽しみな約束をしてもらった子供が、親にそれを何度も確認するようだった。それだけ彼の核に近い、切実な願いなのだろう。彼の魔法少女として、胸に刻んでおかなければ。前任者と違って、私は彼に嫌われる勇気はないから。

 

「……今話したことに、関係あることでもあるんだけど……倒した鋼魔は、俺たちを裏切った魔法少女、ミセラティーなんだ……」

 

「……!?」

 

一つ重いものを吐き出した彼だったが、まだまだ言わなければならないことがある。簡単に飲み込める過去ではないと思っていたが、その一発目にはさすがに驚いてしまった。

 

「勇者を失った彼女は、鋼魔人に裏切れば勇者にまた会えると誘惑されて、鋼魔人に取り込まれた……らしい……」

 

「…………」

 

人が、それも魔法少女が鋼魔になることがあるのか、その事実は驚きだったが、納得できることもある。鋼魔は感情、つまりリビドーを否定する存在のはずだ。それなのに彼女にはむしろ怒りをはじめとした激情、一つの生命体としてのエネルギーのようなモノを感じた。

 

「でも、彼女は鋼魔に取り込まれて、結局自分の勇者の抜け殻にしか会えなかったみたいだ」

 

「その勇者ってまさか……」

 

勇者、抜け殻、そしてノクスの反応……それらを合わせて考えると一つの存在が頭に浮かぶ。

 

「ああ、大きさこそ大分違うが、姿は間違いなくそのミセラティーの勇者だ」

 

最後に彼女が呼んでいた名前、そして……最期の挙動。

 

「ねぇ……よかったの?あの時とどめを刺して……」

 

ノクスの最後の同胞を殺してしまってよかったのだろうか。もちろん、彼女ら私たちにしたことを考えて許すわけにはいかないし、生け捕りにするような余裕はなかった。それでも、ノクスの手でとどめを刺してよかったのか。

 

「もちろんだ。あれはもう俺の仲間とは違うものだ。鋼魔の意志の中に溶けた後の名残みたいなもの……彼女たちの尊厳のためにも、あそこでとどめを刺すべきだと思った。だけど……最後のアレを見るとな……」

 

ノクスも引導を渡すべきとは思ったようだが、最後まるであの甲冑の魔法少女を庇う勇者のような挙動は、ノクスを動揺させているようだ。

 

「でも、やっぱり終わったことはしょうがない……過去も簡単に飲み込めない。でも鋼魔を野放しにする気もない。俺、頑張って前を向いてみる……」

 

ノクスの声に覇気が戻ってくる。辛くてボロボロのはずなのに、彼はまだ戦うと言ってくれる。それは、彼が強いからなのか、それとも彼が生きる今に価値を感じていることなのか……。どちらにしろ、彼は根っからの勇者ということだろう。

 

「うん、私も頑張る。ありがとう、私の生きる今を守ろうと思ってくれて……」

 

私にはノクスの過去を立ち入れるような図々しさはない。ただ、今と未来のことなら言える。せめて、生きていて良かったと思える未来を作ってあげたい。

 

「うん、俺一人だけ生き残ったのは……一実に会うためだったって、もう思えてるから……俺は止まらない」

 

「……!?きゅ、急に変なこと言わないでよ!」

 

驚いて離すまいと誓った腕を放して飛び退いてしまう。

 

「はは、嘘じゃない。心の底から思ってることだ……」

 

目を赤らめたまま、いたずらっぽく彼は笑っていた。ドキドキしている心臓と、彼が笑ってくれた安堵のギャップでどうにかなりそうだった。きっと顔もめっちゃ赤いはずだ。

 

「もう大丈夫?」

 

私は動揺してしまったことへの恥ずかしさを隠すように、ノクスに訊く。

 

「大丈夫じゃない……けど、少し楽になった。ありがとうな」

 

「そう……また辛くなった時、私にできることがあれば、何でも言ってね」

 

「ああ……そうさせてもらう」

 

彼の心の傷は一朝一夕で治るものではないことぐらい分かる。焦らずに少しずつ寄り添って傷を癒す手伝いをしよう。

 

「みんなにも話さないとな、俺の過去について……」

 

「大丈夫?もう少し落ち着いてからでも……」

 

辛いことを話させることになるのは間違いないから、少し間を置くべきかもと私は心配になった。

 

「逆だ。立ち止まったら辛くなる。いろいろやってた方が楽なんだ。それに、鋼魔を倒すためにできることをする。それは俺の過去と向き合うことでもある。だから、今すぐ動きたいんだ」

 

じっとしている方が辛いこともあるということか、涙に濡れた顔で笑うノクスはどう見てもやせ我慢しているように見えたが、動く方がいいという言葉を信じよう。

 

「分かった。隊長に相談してみる」

 

私はそう言って端末で連絡を入れた。

 

 




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