新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~ 作:タナト
書きやすさの関係上途中から、時制が変化しております。
2026年4月3日序盤に抜けていた情報を追加しました。
それから俺は配置先である木の地へ向かった。先に稼働していた兄たちも、とりあえずそれぞれの地域に向かわされていた。道中色んなものを見た。俺が稼働し始めた時には、鋼魔の侵攻開始からもう100年が過ぎていた。今のこの世界とは比べられないほど、鋼魔による侵略が進んでいた。
野生動物のように鋼魔獣が徘徊し、各地で知性妖精たちを襲っていた。もちろんそれに抵抗する人たちもいて、激しい戦いの後があったりして、辛い状況の中でもまっすぐ生きていこうとしている人たちもいっぱいいた。
今思えば、そういうものに心を割いて、学んでおくのも良かったんだろうが、当時命令遂行のことしか考えていなかった俺は、そういうのをほぼ全部無視して俺は目的地に向かっていった。
荒野も山も湿地も、そこに生きるものすべてを無視して、パラレスにしてみれば、そういうものを見ることも情操教育の一環とでも考えていたんだろうがな。
俺は隠密に特化した勇者だった。あらかじめ覚えさせられていた魔法で姿や気配を隠すことができた。だから余計、周りと関わることもなかった。
それでも細かい情報を手に入れるには人に聞く必要もある。
「そこのお前、人が集まる場所はどこだ?」
「なんだ、お前?鉄臭いぞ……そんな奴に教えることはない」
人が集まる場所を聞こうと、現地の知性に声を掛けたりはした。だが俺の金の気と不愛想なところのせいでうまく情報が効きだせなかった。人間の姿の時も、常にマントにフードだったしな……今思えば100%不審者だ。
“チャキ……”
「お、お前……」
俺には、何のための戦うだとか、人を守るだとかそういう道徳心は備わっていなかった。俺は武器で無辜の人を脅して情報を聞き出す。そういう真似も、何の葛藤もなくできていた。
「場所を言うだけでいい……ほかに要求はない」
「こ、ここから東に山二つ超えたところに大きな湖がある……そこのほとりの町はそこそこでかい……」
「そうか」
俺は必要なことだけ聞いた後、そいつの前から何も言わずに消えた。今考えると無礼な奴だよ。
言われた通りの場所に確かに町はあった。湖畔にサクラの林が年中咲き乱れているきれいな町だった。当時の俺はそんな感傷的なこと考えもしなかったがな。
え?勇者のみんなも学校に入ったばっかりの時はそんなもんだった?それは、救われる話だな。
そう言えばリヴァリエはサクラの木の精だったな。きれいな人だったかって?そうだな、まさにサクラの花みたいにきれいな女の子だったよ。でも一実の方が愛嬌あって、一緒にいて楽しいぜ。さて、そんな彼女ももうすぐ話に出てくる……。
その町は大樹を変化させて構築されていた。植物の精であるそこの住民たちは大地や植物を操る魔法に長けていた。
「聞いたか?」
「ああ、木の地にも鋼魔獣が現れ始めたんだってな」
「金の地から遠いここは当分大丈夫だって思ってたのにな」
「ハンターたちは何をしているんだ……!?」
距離が離れているために、木の地の被害はまだ少なかったが、町に噂が流れる程度には魔の手が迫っていた。さすがに鋼魔の話はただ町でその話を聞いた俺が思うのは適性者に被害が出る前に見つけなければいけないということだけだ。
その時だった。
“ドンッ……パジュン!”
「うわー!」
「……っ!?」
一瞬だけ意識を正面から外したことで目の前から来た女の子とぶつかってしまった。その拍子にその子の持っていた小瓶に入った刺激臭のする液体肥料が俺のマントにかかってしまった。
「ご、ごめんなさい!」
その子が……桜色の髪をしたその女の子がリヴァリエだった。ただその時に魔法少女適性者だと気づいたわけじゃない。
※
(年齢等は、要件に当てはまりそうだがアミナ・ピースが反応しない以上はずれだな……)
こちらの服を汚してしまって、慌てる彼女を見て、俺はそう判断した。
「あ、あの……マント洗わせてください!……ってあれ?」
彼女がそう提案した時には、俺は彼女の前から姿を消していた。捜索対象じゃない以上、関わる理由がなかった。
リヴァリエの前から消えた後も、俺はアミナ・ピースの反応を探して道をうろうろしていた。
「なんか臭わない……?」
「うわ!?なんだ?」
人ごみを歩くとき、人々は俺を避けるようにしてくる。マントがいくら汚れていようが気にはされないが、臭いは無視できない。
俺は不審がる視線を集めてしまっていた。こればかりは光魔法でいくら見た目を隠そうと、完全には気配を隠せないことになる。ネジェシスに連なる存在であることがバレたりするといろいろとまずい。
俺は、湖のほとりの岩場に行ってマントを洗おうとした。しかし、水洗いするだけでは、その臭いは落ちてくれなかった。
「あ、いたーっ!」
四苦八苦している俺の後ろから声がかかる。振り向くと、そこには桶と衣類を持って洗濯に来たように見えるリヴァリエがいた……その時はまだ名前も知らなかったんだが。
「お前は……」
「その肥料、なかなか落ちないし臭いしで大変でしょう?だから困ってこのあたりに来てるかなって思ったら、正解でした!」
ある程度、目星がついていたらしく、その少女は推理が当たってうれしそうな表情をしていた。
「洗剤も持ってきたんで私が洗いますよ」
彼女は俺の隣に座り、マントを渡すように促してくる。
「俺を探していたのか?」
俺は、彼女の意図が分からず警戒しながら訊いた。
「探してたっていうか、私も洗濯しに来たんですけど、洗い物するにはここらへんがいいのでもしかしたらってうろついてみたら、臭いがしたので」
普通に隠密に失敗していて少し動揺してしまった。
「結構臭ってますよ?臭いがよく落ちる洗剤を持ってきましたから、遠慮せずどうぞ」
さすがにこのままはまずいと思ったのでおとなしく頼むことにした。
「では、頼む……」
「はい!」
彼女はそれこそ花みたいに笑った。それを見ると自分の中の警戒感が、和らぐ気がした。
「その恰好、旅の方なんですか?」
「…………」
「無視はひどいじゃないですか?何か話してくださいよ」
彼女は慣れた手つきで、マントを洗いながら文句を言ってきた。
「……そうだな、そんなところだ」
別に答えなくてもよかったが、純粋に興味を寄せてくる彼女を見ていると無視しているのもいたたまれない気分になった。
「この町には何を?」
「人を探しに……」
「へ~、私、顔が広いんで力になれるかもしれませんよ。どんな人ですか?」
「いや、一般的な探し方はしていない。お前が役に立てることはない」
「そんな言い方しなくてもいいのに……」
気遣いというものがまるでない俺に彼女は不満を募らせているようだった。
「……はい、汚れと臭いは落ちたと思います」
しばらくして、洗い終わったようだ。シミは落ちているし、臭いもなくなっているようだ。それは彼女が用意したという洗剤の力か、彼女の手際のよさゆえか。
「確かにきれいになっている。……ではな……」
俺は、マントを受け取ってとっととその場を去ろうとした。
「あ、ちょっと……!?こういう時、お礼の一つも言うもんなんじゃないんですかぁ?……いや、今回はそもそも私が悪いのか……ともかく!もう少しお話しませんか?今日の宿とか決まってます?マント干す場所とか必要でしょ?」
彼女は絶対に逃がさないという歩調で俺を追いかけてくる。
「何故、追いかけてくる……?」
「別になんでって理由はないけど、あなたのことなんだか気になっちゃって……あなたの方こそ、なんで逃げるの?こんなに可愛い女の子が話し掛けてるのに、しかも花の精だよ?」
「知らないし、逃げてはいない。一緒にいる理由がないだけだ」
歩調を速めてもあいつは、合わせてきて言葉を掛けてくる。俺の方も煩わしさを感じ始めていた。だが不思議と無理やり突き放す気も起きなかった。
「そんな冷たいこと言わなくても……で、宿あるんですか」
「ないが……野宿でいい」
俺は、人間ではない。雨風や寒さ程度が体調に影響することもない。ただそれが彼女の怒りに触れた。
「そ、そんなのだめですよっ!風邪ひいちゃいます!親にもらった大切な体なんですから大事にしないと」
怒ったような声で俺を諫めてくる彼女に俺もさすがに、苛立ちを覚えた。この身体を造った者はそもそも雨風にさらされても大丈夫なようにしたのだからな。マントが濡れていても問題はない。
「なんなら私の家に……あっ、ちょっと……!?」
俺は彼女を置いてその場を去った。俺は休む必要もない身体だ。夜目も効く。反応を探してその町、ククノチを歩き回った。しかし、反応はなくその町に該当者はいないのか、と思いかけた時……
「鋼魔が来たぞぉー!」
その町に、鋼魔が襲撃しに来たんだ。
「空から襲ってくるぞ!」
「ハンターは何をしている」
その時襲ってきた鋼魔は、空を飛び、火を噴く、分かりやすく言えばドラゴンのような鋼魔獣だった。妖精界の鋼魔獣は、魔物とかモンスターとか呼ばれる獣を取り込み、依り代にしていることが多かった。
そして、それに抵抗するハンターと言われる戦士たちもいた。彼らは秘石を持ち、それを使って自我と魔力を強化して対抗していた。俺たちと違って遮断フィールドを張ることはできなかったが。
その時の鋼魔獣は、凶悪でハンターも対抗しきれずにその町は火の海になってしまった。俺は契約前でもある程度鋼魔に対抗できたが、パラレスからは契約するまで戦闘は避けろと言われていた。俺は、鋼魔獣に捕捉されないように身を隠しながら、その町に該当者はいなかったと判断して、そこを去ろうと決めた。
抵抗すれば、救える命もあったんだろうが、その時の俺に命を救わなければいけないなんて使命感はなかった。
“キーン!”
「……!?」
その時だった。近くの命に、魔力にアミナ・ピースが共鳴し、俺の契約者がどこにいるかを示してきた。俺は該当者が近くで危険にさらされていると察して助けに向かった。
反応を追って、駆け付けた場所には、壊された家屋、今まさに食われている妖精。そして、それを呆然と眺めるリヴァリエがいた。
その手には箒が折れたものらしい、棒きれが見える。腹部には打撲の傷のようなものが見える。戦おうとしていたのか、あの鋼魔獣と自分の身を守るために。
そう思った時、俺は理解した。あの妖精が『そう』なのだと。
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