新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~ 作:タナト
私も属しているOIDOという組織はOther-dimensional invasion defense organizationの頭文字でOIDO〈オイド〉日本語で言うと他次元侵攻防衛機構という意味だ。(もちろん私は何かを見ないと言えない)名前の通り別世界からの脅威である鋼魔に対抗するための組織だ。
現在の活動は魔法少女の育成と勇者ロイドの建造、そして両者のサポートだ。
養成学校も入院した病院もこの組織の管理下にある。私の今いる寮もそうだ。
あれから私は翌日には退院することが出来た。怪我の方は治療の出来る魔法使いさんが手伝ってくれたので治りも早い。魔法少女の存在自体もそうだが、それ以外にも魔法を使える者がいると知った時はそれなりに驚いたものだ。何でも妖精界と個人的にかかわりを持つ人間は結構いてOIDOの結成時にはそういう人たちが集められたらしい。ならそういう人にも戦ってもらえばいいとも思ったが例の力場のせいでそうもいかないのだ。物事とはうまくいかないものである。
「暇だなー」
今は寮に戻ってから2日、私は謹慎処分となっている。審議会で本当の処分内容が決まるまでの仮の処置。謹慎そのものはいいが、ノクスに会えないのがつらい。申請もしてみたが却下されてしまった。
「ノクス、大丈夫かな……」
ベッドの上でごろごろする私の頭にあるのは彼のことばかりだ。彼に会って言いたいことはいっぱいある。彼が何者にしろ、あふれるばかりの感謝と謝罪を伝えたい。
「大変なことになったよな……」
自分は魔法少女になれるにしてもモブAがせいぜいだと思っていた。実際はそれもかなわなかったわけだが、そこそこの勇者と契約し、星原先輩や蕨野さんたちエースの露払いができればなんて考えていた。
しかし、ノクスと戦うことになれば、私はただの魔法少女になるなんてところでは許されない。彼の価値を示すために特別な魔法少女にならなければいけない。
引っかかるのはノクスの意志だ。彼が見せた鋼魔への敵意。それを考えると戦場に立つことに乗り気になってくれることはあるかもしれないが、それでも互いの意志と覚悟の確認は必須だ。命を懸けるのだから。
“ピロンッ”
私の、端末に何か通知が来る。スマホの方でないということは、仕事関連ということか。謹慎中に誰だろうか?
星原『元気?』
「ふぇあああああ!!」
メッセージアプリに表示された名前に、私は慌てふためく。まるで本人が目の前に現れたがごとく、飛び起きて姿勢を正し慎重に返信を入力する。
『星原先輩、こんにちは。調子はそこそこです。何か御用ですか?一応、不要な通信はしないようにと言われているのですが』
後半の文言は送信するか迷う。でも怒られようが罰されようが、先輩のメッセージならいくらでも受けたい気持ちだ。それでも先輩のために血の涙を呑んで入力しておく。送信する前に何度も何度も間違いがないか確認する。どんな返信が返ってくるのか、胸がバクバクする。
星原『あなたの勇者に会いたい?』
先輩からの返信は端的で簡潔なもの。
『会えるなら、会いたいです』
私も素直な気持ちを送る。彼に迷惑が掛かるならやめておきたいが、私に罰がかかるだけなら、いくらでも受けるから会いたい。
星原『分かった。迎えを送るね』
相変わらず淡白なものだった。迎えとは誰だろう。先輩は何でそんなことを聞くのだろう。そんな疑問が浮かんだが、ほぼ間を置かずに鳴ったインターホンの音で心臓が跳ね吹き飛んでしまう。早すぎやしないだろうか、謹慎中の身のために出ていいか少し迷ったが、彼に会えるなら何でもいい。私は意を決してドアを開ける。
「え、ええと。こんにちは、お嬢さん。あんたが翼の言っていた魔法少女か」
ドアの外にはスゲーイケメンがいた。短く燃えるような赤髪に強い光を放つ奇麗な目、私が学校生活を通してイケメン慣れしていなければもの凄く動揺していたかもしれないレベルだ。
どこかで見た気がする顔だ。誰だ?私は頭をフル回転させ、返事をせぬまま硬直する。この魔力の感じ、多分勇者ロイドだ。しかし、学校にこんな子はいなかった。では誰だろう。先輩の名前が出たということは……。『先輩』と『勇者』という言葉が結びついて一つの名前が頭に浮かぶ。
「あ……もしかして、翼から何も聞いてない感じ?俺はアルニギアス……」
「もしかしてアルニギアスさん?」
私の声と、しばらく黙り込んでいたことを不審に思った彼の声が被る。
「あ……」
「おう……分かってくれたか。この姿の時はアルスって呼んでくれ」
「は、はあ……」
最強の魔法少女を支え、最強の勇者それが私の迎えとは、落ちこぼれからの待遇の変化にくらくらする。しっかし星原先輩もそうだが、アルスさんもオーラあるなー。星原先輩と並んで歩くと絵になるだろうな。
「例の勇者に会いたいんだろ?着替えたら行こう、各所に話は通してやる」
「そんな、いきなり…………い、いえ、すぐに準備します」
私は部屋の奥に戻って、制服に着替える。会えるならそれが一番いい。
「どうして、急に許可が下りたんです?」
アルスさんと一緒にノクスのいる施設に向かう途中、私は彼に聞いてみる。
「翼があんたが奴に会いたがってるって聞いて翼がとりなしたんだ。条件は俺と翼が立ち会うこと」
「なるほど、ありがとうございます」
後で星原先輩にもお礼を言わないといけないと思いつつ、納得する。最強の二人がそばにいてはどんな悪党も動けまい。許可が下りるのも当然と言ったところだ。
「お礼なんかいいよ。翼はあんたに興味があるようだし、俺も奴に興味がある」
勇者同士感じるものがあるのかもしれないが、私の場合は……
「あの人ならともかく、私は期待されるほど特別じゃない……と思います」
「特別かどうかは重要じゃない。翼はあんたがあの状況で立ち上がった。その事実を何よりもすごいって尊敬してる」
「それほどでも……」
「謙遜することじゃないさ、翼はあの時にあんたみたいな人がいてくれたらって思ってる。だから、あんたみたいな人がいることがすごく心強いって」
あの時……心当たりがある。星原先輩は人類最初の鋼魔獣襲撃事件の生き残り、その気に先輩は天涯孤独の身になった。その時に立ち向かう人がいたらと考えたりするのだろうか。
「私が戦えたのは先輩が道を示してくれたから、立ち向かう術があるって身をもって教えてくれたから勇気が出せたんです」
その言葉は精神的な面も強いが、より具体的に候補生の糧になっている。養成学校のカリキュラムには、星原先輩をはじめとする魔法少女からのフィードバックが積極的に取り入れられている。
「それ、本人に伝えたいな。あんたが言ってたって翼に言っていい?」
アルスさんは自分が褒められたみたいに喜んでくれる。
「ぜひ」
本当は恥ずかしかったが、伝えるべきことだとも強く思う。勇気が次の勇気を生む。それはとても素晴らしいことだと思うから。
「その服、かっこいいですね。アルスさんが選んだりしたんですか」
勇者ロイドの私服というものを見たことがなかった。彼は黒いシャツの上にグレーのジャケットを羽織り、ボトムスはジーンズ、靴は動きやすそうなスニーカー。細かいアクセも付けている。勇者ロイド特有の長身と合わせて大人っぽいイケメンといった仕上がりだ。施設間の移動は街中を通るので街行く人になじむ姿をするのは当然だと思うのだけど、失礼な見方になるがロボットである彼らがそのようなセンスを持ちうるものか気になる。
「お、これいいだろ?翼に選んでもらったんだ」
「あ~、そうなんですね!とっても素敵だと思います」
アルスさんは少年のような自慢気な顔をする。やはりそうなのか。その時の私はアルスさんにセンスがないことへの納得というよりも、二人がプライベートな服を選ぶような関係であることへのある種の喜びの感情を抱いていた。ヒーローコンビが裏でも仲がいいというのは夢のあることだ。
「着いたな……あ、翼!来たぜ~」
アルスさんの手を振る先にはアンニュイな表情をする星原先輩が待っていた。
「星原先輩、こんにちは!……あ、あの!今日はありがとうございます」
「気にしないで、私とアルスが気になるだけだから」
私たちは窓口で手続きをし、エレベーターで遥か地下へ向かう。
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