新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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EP78 影とかがり火

 

「確かにお前の言う通りだ。俺にはお前が失ったものがどんなものなのか、それがお前をどれほど傷つける結果になったのか、俺には想像もできない……すまなかった、助けてやれなくて……」

 

「あ……違うの、あなたを責めたいわけじゃなくて……結局私の家族が死んだのは鋼魔のせいであなたのせいじゃない……むしろあなたがみんなを助けるために、戦ってくれたのは本当だと思うから……ごめんなさい、やっぱり私まだ自分の気持ちが呑み込めていないみたい」

 

 彼女の中には今も様々な感情が渦巻いているのだろう、知性妖精にとって心というものが大きな意味を持つなら、そんな状態で次の行動を決めることが難しいのもうなずける。

 

「無理をすることはない……俺はお前の意志に従う。お前が迷っているのなら、その目的が決まるまで俺がお前を守る……だから今、お前を脅かすものは何もない。これからのことは、肩の力を抜いて、ゆっくり考えればいい」

 

 安全を求めることはあらゆる生物が求める第一の欲求、それが満たされなければ先を決めることなどできないはずだ。俺は彼女に選択を焦る必要がないということだけを伝えたかった。

 

「その言い方……やっぱり私にくっついていくのは決定事項なんだね。私ってあなたにとって何なわけ?魔法少女……私が変なのに変わったのと何か関係あるの?」

 

ある意味やっとやりたい話に入れるようになったと言える。

 

「俺……対鋼魔用ゴーレムにとって、お前は魔法少女もしくは契約者ということになる。魔力的なつながりで互いの意志の共鳴によって、膨大な魔力を生み、また意志力の拡大で……」

 

と俺は魔法少女とゴーレムの関係性について説明した。

 契約というつながりが何よりの力の源であり、俺が鋼魔の殲滅という目的を果たすためには、リヴァリエが付いてきてくれることが必要だということ。

 

「あなたが目的を果たすには、どうしても私が必要ってことなんだ」

 

 自分の説明は回りくどいらしいので伝わるかどうか不安だったが、要点はちゃんと伝わっているようだったので、安心した。

 

「あなたは、あなたをつくった人の命令で動いているのよね?どんな人なの?」

 

 それも、俺の目的に直結する情報だったため離さなければならないことではあったが、話しにくいことではある。だが話さないわけにはいけない、少なくとも運命共同体にならなければいけない彼女には。

 

「俺を造ったのはネジェシスだ。その高度な錬金術が俺に使われている」

 

「ネジェシス……って鋼魔をつくった人たちじゃ……」

 

 そう……俺の出自は、彼女の敵意の対象になりかねないもの。実際問題、鋼魔をつくったのはネジェシスの1個体でしかないのだが、パラレスはそのものの近親者であり、俺を創造した技術には鋼魔をつくった技術が流用されている。その事実は周囲に隠したい事実であった。だが、契約者には隠しておけない。

 

「鋼魔をつくった者は、ネジェシスの1個体でしかないということは分かってほしい。その責任はネジェシス全体にかかるものじゃないんだ。もっとも、俺を造った者は、その一人の友人だった……止められたかもしれない立場だった。だから、止められたかもしれないという後悔があった。その償いをするために俺は造られた」

 

「償い……」

 

 リヴァリエは俺の出自を聞いて複雑そうな表情をしていた。最悪のパターン……全面的な敵対、家族の敵として憎しみを向けられることはなさそうだが、だからと言って素直に信頼されることはなさそうである。

 

「あなたも、鋼魔みたいになるんじゃないの?」

 

冷たい視線を向けながら、リヴァリエはそう言ってくる。ネジェシスの技術の全てが、鋼魔に接続するものではない。俺たちはそうではない……というのが問題なのだが。

 

「心配ない……俺たちには、鋼魔とは決定的に違う点がある」

 

 大雑把に、鋼魔と一括りにされること。それは偏見による誤解と言っても良かったが、パラレスは、あえて鋼魔と一線を画する要素を俺たちに組み込んだ。

 

「それって、何……?」

 

 一歩間違えば、もう二度と信頼関係を築くことが出来なくなる。そんな緊張感のある会話だと思った。

 

「それは、お前だ」

 

「え……?」

 

「鋼魔は、有機物、無機物、生物、非生物を問わずすべてを取り込んで、己の一部とすることで、無制限の進化をする……だが俺は、お前という唯一の存在とのつながりが、全ての力の源だ。お前なくして俺は存在しえない」

 

 別に技術的な面で見た時に俺たちが鋼魔のような突然変異的な進化を遂げる恐れがある、というわけではない。それでもパラレスは、あえて楔となる要素を組み込んだ。ゴーレム単体では真価を発揮しえないという、ある種の欠陥を……。

 

「だから俺はお前を欲して、どこまでもお前に寄り添うんだ」

 

「……わけわかんないのは、そのままだけど……それでもあなたが私と出会ってからやってきたことに一本筋が通る気がする」

 

 正直複雑な事情であることは確かなので大枠だけでもとらえてもらえたら、それでいいと思えた。

 

「ねぇ……私にもう、何もないの。だから正直、細かい事情とかはどうでもいい。あなたと一緒に行けば、鋼魔を滅ぼせる?」

 

 彼女の目には、強烈な敵意が浮かんでいる気がした。彼女に俺と同じ志が宿った。そう考えるなら喜ぶべき状況のはずだ。だが喜ぶことはできない、そんな気がした。望んだことではないが彼女の退路を奪ってしまったのか。

 

「魔法少女と、それと契約した俺の力なら、それができる。俺を造った奴はそう信じている」

 

「あなたをつくった人、じゃなくて……あなたはどうなの?」

 

 松明の光の中でも、彼女の視線の光は埋もれずに、俺を刺してくる。それを目の当たりにして、俺は逃げたくなるような衝動にかられた。だがきっと、逃げてはいけないのだ。俺はすでに彼女の大事なものを奪ってしまったのだから……。

 

「お前となら……リヴァリエとならそれができると思う」

 

 あの時、鋼魔と戦った時の高揚感、理屈では測れないどこまでも行けるような可能性を感じた。どうせ俺にはそれしか存在意義がないのだろうが、それにすべてを賭けることができる。そう思えたのは事実だった。

 

「……分かった。あなたと一緒に戦ってあげる」

 

リヴァリエは長い沈黙の後そう言ってくれた。

 

「……了解した。俺も、全てを掛けてお前を守ると約束する」

 

俺は、彼女の目をしっかりと見据えて宣言する。

 鋼魔殲滅のための第一段階がこれで達成されたと言えるのかもしれない。だがそれは俺の予想したものとはだいぶ違う、なにか急き立てられているようなそんな危うさがある。それは言葉で言い表せるようなものではなく、感覚としか言いようのないものだ。

 

「そういえば、あなたの名前ってなに?聞いてなかった……というか私の名前、教えた記憶もないんだけど何で知ってるの?」

 

「お前の名前は……精神がリンクしたときに情報として流れ込んできた。俺の名前は……無い」

 

 お互いの名前を認識するということ、これから行動を共にするというのならもっと早くしておかなければいけないことだったのかもしれないが、いろいろな出来事があったからか完全に失念してしまっていた。

 

「名前がないの?あなたをつくった人がいるんでしょ?」

 

「それが……契約者、つまり俺にとってはリヴァリエに付けてもらえと言われて、名前をもらっていない」

 

 ゴーレムとしての型式番号はあるが、それは名前ではないとパラレス自身に言われてしまった。

 

「なんでもいい……俺に名前を付けてくれないか?」

 

 俺自身でも、端的に自己を表す名前がないというのは、不便だと思う。リヴァリエがどうするかは分からないが、パラレスの指示通り彼女に頼んでみる。

 

「急に名前なんてそんな……ああ、ここで私が断ってもそれはそれで面倒なことになりそう……」

 

彼女は眉をひそめてため息をついた。

 面倒なこととは何だろうか?

 

「いいよ。考えてあげる」

 

「そうか、大仰なものでなくていい。ただまわりから浮かないような名前で頼む」

 

「はぁ……それはそれで難しい注文かも……う~ん」

 

文句を言いながらも、彼女は目を閉じて考えてくれているようだ。

 俺には、要望はあっても好き嫌いはない。ただ黙って、彼女が思いつくのを待つ。

 

「あなた、全体的に黒色な感じね」

 

彼女は俺の姿を分析しているようだ。

 俺の容姿はパラレスをベースにしているが、闇に紛れるという用途のためか、褐色と言える色の肌に調整してある。そして全身を覆うマントだ。黒色の印象があるのはその通りだろう。その印象から何か思いつきそうなのか。

 

「あなた……これからずっと私についてくるのよね……まるで……」

 

彼女はぶつぶつとつぶやいた後、その名前を呼んでくれた。

 

「ノクス……影っていう意味のノクスっていうのはどう?少し暗い印象だけど、あなたには合う気がする」

 

短く、それでいて分かりやすい響きの良さがあった。

 

「ノクス……それで良い。俺は、今からノクスだ」

 

 それが、その瞬間が、俺が俺になった時だと後から振り返ってそう思う。

 

※ 現在……

 

 「なぁ、一実……不思議だよな。リヴァリエと一実が俺に同じ名前つけたこと……偶然なのか、あるいは星の導きか……俺はリヴァリエにもらった名前()も、一実にもらった名前()も、どっちも同じくらい大切なんだと思う……それが俺にとってどういう意味を持つのか、分からないんだが。ああ、そうそう……そういえばまだこの話の時点では、勇者って称号は俺達には付いていなかったんだ。もちろんノクストスって名前の方も……」

 




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