新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~   作:タナト

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リヴァリエは一実と逆の天才肌と表現しているつもりです。


EP81 秘石

 

“ドォーン?”

 

 光の軌跡が地面に到達したのか、地面が振動し鈍く低い音が響く。森林に阻まれ地平線は見えなかったが降る星が地表に落ちたのだろう。

 

「秘石が落ちてきたのか……」

 

「私、こんなに近くで落ちてくるの見たの初めてかも」

 

俺とリヴァリエは、消えていく光の軌跡を眺めながらそれぞれの感想を言った。

 強烈な魔力を秘めた、降る星、あるいは隕石。それが俺の根幹であり、そして魔法少女の、ハンターの鋼魔に対抗する者たちの切り札と言える重要な物体である秘石の正体だ。鋼魔が誕生する以前から時折、地上へ落ちてきて手に入れた人物に力を齎し、それが神話に伝わる英雄になったのだという。

 そして鋼魔の誕生後、世界に対抗手段を与えてくれるように、降る頻度が増し、妖精たちの貴重なファクターとなっている。

 

魔力の感じから言って近いな……入手すれば何か役に……。

 エネルギーソースにしてもいいし、売って路銀に変えてもいい。俺たちの目的に照らしても、邪魔になることはなさそうだが……俺はそんなことを考えながらも、切羽詰まっていそうな彼女に余計なことをさせるのが適切なことか分からないから、何も言わないことにする……。

 

「ねえ、行ってみない?」

 

意外な言葉がそばから聞こえてくる。

 

「ちょうど方角的にかぶってるし、持ってて損になるもんじゃないでしょ」

 

落ちた方向を眺めて提案してくる。その眼には、活力を感じる光が宿っているような気がした。

 

「ちょうど、俺も同じことを考えていた……リヴァリエがそう望むなら、俺に考えがある……」

 

 彼女の心が、ある種の現実逃避を求めているというのなら、全力でそれに付き合うことにしよう。して、一度そう決めたなら、誰かに譲ってしまう余地をつくる理由はなかった。

 

 ※

 

「アハハハハハッ!ハヤーイ!」

 

彼女は顔に当たる風を全力で、受け止めて笑っている。

 星と月の光にぼんやりと照らされた森の景色が、溶けて遥か後ろに通り過ぎて行く。今俺たちは、互いに変身し、俺の方はさらに黒豹を模した高速移動形態で、森をそれまでとは比べ物にならないほどの速度で進んでいく。

 なんというかいろいろ正解だったようだ。つながった精神リンクから、上に乗っている彼女が爽快感と言えそうなものを感じており、この状況を楽しんでいるようだ。

 他ではなかなか体感できないスピードが出ているが、彼女は怖がっていない。彼女がこの超スピードに対応できない可能性は懸念事項の一つだったが、これならばいろんな場面で多用できそうだ。

 最も常に使うというわけにもいかなそうで、今は荷物を抱えることができなかったため魔法で隠しておいてきた。あとで取りに戻らなければいけない、想定外の二度手間が発生した。

 それを差し引いても、良い高速移動形態のテストになった。何よりリヴァリエの、いや今はマーシーと呼ぶべき彼女のいい気晴らしになりそうだ。それはきっと無駄な移動をしないということよりもずっと価値のあることだろう。

 

「こんな暗いのによく地形見えるね?」

 

あえて上体を起こして風を受けている彼女が声をかけてくる。

 

「ああ、俺は隠密行動に特化してある。夜目も利くから、暗闇は何の問題もない。むしろ俺の得意なフィールドだ」

 

「へー、じゃあ私も暗視魔法とか覚えると便利かもね……!」

 

彼女は吹き付ける風に負けないように、大声で答えてくれる。

 

「ああ、それがいい。光や暗闇に関する魔法なら教えることもできるだろう。望むならレクチャーしよう」

 

「うん。よろしくー!……あ、森が終わるよ!」

 

「……っ!」

 

 自分よりも暗闇が見えるべきではなさそうだが、彼女はワンテンポ先に森のはずれに到達することを察知する。植物妖精特有の感覚か何かだろうか。

 

「おお……っ!?」

 

開けた景色を見てマーシーは驚きと喜びが混じった声を上げた。

 開けた視界の先にあるのはなだらかな丘陵を描いて、広がる草原があった。月光を受けた草がしなって風を可視化させている。降着点を目視することはできないが、まだ周囲に放出された秘石の魔力が周囲に滞留していて、向かうべき場所を見失うことはない。

 しかし状況は、思わぬ方向に転ぶことになる。

 

「ノクス……!」

 

「ああ……俺も感知している。鋼魔と、それに攻撃を受けていそうな、妖精の魔力を進行方向に見つけた。どうする……進路を変更して戻ってもいいが……」

 

 そんな会話をしているうちにマーシーの精神に刺すような敵意が浮き上がってくるのを感じる。俺と同じように魔法少女にも鋼魔に対しての感受性が強くなる術式が組み込まれている、それで捉えたのだろう、憎むべき敵を。

 

「そんなのダメ!襲われている妖精は助けなきゃだし、鋼魔は絶対に倒す!」

 

頑なな意志を反映して、マーシーは強く姿勢安定用のハンドルを強く握り込んだ。本来の目的とはいえ、俺も彼女も戦闘慣れしているとは言えない現状では戦闘には慎重になりたい。しかし、彼女の判断はどうあっても覆せないだろう。襲われるならともかく、こちらから攻めるなら気構えをつくることもできると考えるべきか……。

 

「分かった。……速度を上げる!敵は先日のやつよりも弱いが複数いる。覚悟を決めてくれ……!」

 

「言われなくても……!」

 

俺は魔力反応から分かる情報を伝えつつ。心の準備をするように促した。

 しかし、後半は不要だったかもしれない。彼女の精神は熱を持って闘争本能をむき出しにし始めている。さっきまでのやり取りで、出会った頃の俺のマントを気にしてくれた時のような、穏やかな精神を取り戻してくれたと感じていたが、早合点だったようだ。彼女の胸の中には、奪われたことに対する怒りが渦巻いている。

 彼女の精神の一部が、家族を奪われたときの時間に取り残されているようだった。些細なきっかけで彼女はあの日の続きをするように、張り詰めて荒んでいる精神に戻ってしまうようだ。

 すぐに戦う気になってくれるのは良いのかもしれない、と戦士としての自分は考えている。ただ従者としての自分は、よい状態とは思えていない。まだうまく言語化できないが、彼女自身のことを考えると危うい状態だと言えるのではないだろうか。

 

「近いな……飛ぶぞ!」

 

「え、待って!?どういうこと!?」

 

「安定するようにおれに抱き付くみたいに密着するんだ!」

 

「こ、こう……?きゃうっ……!アアーーーァ!」

 

俺の送ったイメージ通りにリヴァリエがしてくれたところで俺は、四本の足で同時に地面を蹴り身の丈の何倍もの高さに飛び上がる。

 

降着地点であろうクレーターのふちを走る人型の妖精と、それを追う歪な形の人型が複数。双方、秘石に引かれてかち会ったと言ったところか。

 

「み、見えた!目もあった、あの人まだ生きてる!」

 

ジャンプに驚いていっぱいいっぱいになっていると思ったが、しっかり状況を観察している。やはり彼女には、才能がある。

 

「マーシー、相手の組成に知性妖精は含まれていない……!」

 

「なら遠慮なくやれるってことだ!」

 

敵の状態は、知性妖精に敵対する魔物……ゴブリンなどを取り込んでそのままといったところだ。もともと意思疎通が不可能な敵対存在にまで配慮する気はない。

 

「私が牽制する……あなたは突っ込んで!」

 

俺が似たような内容を指示しようとしたところで、先んじてマーシーが命令してくる。

 

「わ、分かった!」

 

“ドドドドドドッ!”

 

断続的な発砲音が聞こえる、視界の中に無数のピンク色光弾が入ってくる。以前のそれよりも小さく、複数の敵に対応したということか。

 

「ギヤッ!……グアァッ!」

 

さすがに雑にばらまく形なので、直撃した弾は少ないが、相手の隊列の歩みを止めることには成功する。

 

「行って!もう妖精を奴らの好きにさせないで!」

 

「了解した」

 

マーシーは、俺の背から飛び退く。ここまで自己判断でやれるとは思わなかったが、俺はやることは一つ。主が望む結果を引き寄せるだけだ。

 

「うわぁっ!」

 

俺は救助対象の妖精のもとへ落ちながら人型へ変わり、刀を構える。そしてその勢いのまま、こん棒のようなものを振りかぶっている個体を切り伏せる。後ろで驚く妖精の声が聞こえた。

 

“ザァッ……!”

 

「あ、ああっ!」

 

妖精と鋼魔の集団の間に入る位置に着地する。

 振り返ると尻もちをついて震える黒髪の妖精がいた。見た目からしてリヴァリエと同年代の男の妖精だろうか。

 




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