【スピンオフ】天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア 作:いぷしろん
林間学校1日目。B組より一足先に施設へと辿り着いたA組は荷物を部屋に運び込んだあと、汚れを落とすために先にお風呂に入ることになった。と言ってもここは山間部。自然の温泉が沸いており、男子風呂と女子風呂は簡易的な仕切りがあるだけ。そうなれば邪な考えを持つ輩も現れる。
峰田「求められてるのはこの壁の向こうなんすよ…」
緑谷「何言ってんの峰田くん…。」
峰田実。ヒーローにあるマジき性欲の権化。俺が葛城巧として過ごしていた学生時代でもこんなに性欲はなかった。
男なら誰しもにある物ではあるが、実際にやるのは御法度。それはヴィランのやることだ。
戦兎「…そんなに見たいか?」
上鳴「いやナンパとかはおれもやるけどよ、覗き見てえな犯罪は流石にやんねえよ俺!」
いつも峰田と悪ふざけをしている上鳴に戦兎は尋ねる。同類だと思われたことに上鳴はちょっと悲しげな顔をして見せた。
飯田「峰田くんやめたまえ!君のしている事は己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!」
学級委員として飯田がきちんと叱るも『やかましいんスよ…』と悟りを開いた顔で一蹴。そして頭部のもぎもぎを板にくっつけながら高速で壁を登っていく。
止めたいのは山々だが今はベルトを置いてきている。戦兎ではどうにもならない。ただ上を眺めているだけだったが…
洸汰「ヒーロー以前にヒトのあれこれから学び直せ」
洸汰くんが仕切りからひょっこり登場。峰田を突き落として覗きはなんとか阻止した。
蛙吹「やっぱり峰田ちゃん最低ね」
芦戸「ありがとー洸汰くーん!」
芦戸がつい洸汰くんに声をかけてしまうと、一瞬そちらの方を見た。そこには発育の良いJKが6人。刺激が強かったのだろう。洸汰くんは板のてっぺんでふらつき転倒。それを緑谷が慌ててフルカウルでキャッチした。
切島「緑谷ナイスキャッチ!」
切島はそう言って親指を立てた。
緑谷「僕、マンダレイに洸汰くんを預けてくるよ」
緑谷はそう言うと洸汰くんを抱えて風呂を出て行った。
芦戸「洸汰くん落ちちゃったけど大丈夫だった!?」
切島「おう!緑谷のおかげでな!」
向こうから聞こえる芦戸の声に切島が大きな声で返した。しかしまあ峰田はどうして性のこととなるとああも貪欲になれるのだろうか。まぁ一応思春期だし仕方ない…。
そんなこともあったが、温泉で身体を癒した戦兎たちは風呂から出て、今度は腹ごしらえ。気がつけばもう18時なので腹が減って当然である。
「「「いただきます!」」」
用意されたのは天ぷら、煮物、刺身、鍋など料亭で出てくるようなものばかりで、どれもこれもプッシーキャッツたちの手作りだと言う。しかも米は土鍋で炊いており、いくらでもおかわり自由だった。
戦兎「このアジのひらきうっま!」
轟「珍しいな。戦兎がそんなにがっつくの」
戦兎「そうか?おれは結構食うぞ」
かく言う戦兎も好物のアジのひらきを堪能していた。ランチラッシュのご飯にも勝るほどの味。何より疲労と空腹がご飯の美味しさを引き立たせている。
八百万「アジのひらきが好物なんですの?」
戦兎「いいだろ?これくらい質素なものの方がうまいんだよ。」
目の前の八百万と斜め前の耳郎の質問にそう答えながら戦兎は卵焼きを口に頬張る。
轟「俺も和食好きだし、戦兎とは飯の趣味意外と合うかもな。」
戦兎「いっつも食ってる飯美味そうだしな」
戦兎はいつも轟や八百万と昼ごはんを食べている。轟は体育祭の時に仲良くなって以来、そして八百万とは期末試験対策や自身の"個性"の相談等をきっかけに一緒にご飯を食べるようになった。
切島「つっても男は肉だろ肉!うめえぞこのトンカツ!」
戦兎「うおっ!うまい…けど急に口にいれてくんじゃないよ!」
隣の切島は腹が減りすぎていつもとは違うテンションに。どこかの筋肉バカを彷彿とさせる。
なんやかんやで皆無事に完食。速やかに歯を磨いて20時には大部屋へ。次の日は朝5時に起床とのことでかなり早い。せめて23時には眠りたいが…
上鳴「ハイハイハイハイ!林間合宿の夜といえば恋バナっしょ!!!」
上鳴がみんなを中央に集めるやいなやそう言い放った。爆豪は『くだらん!寝る!』と布団にくるまったが他のみんなは特にやることもなければ眠れないのでなんとなく会話に混ざった。
飯田「恋バナだなんて不純だぞ!」
瀬呂「つっても高校生だし恋愛の一つや二つくらいあるだろー。緑谷とかはどうなんだよ」
緑谷「えっ僕!?」
飯田が止めにかかろうとするもまあまあと言う形で切島が止めに入る。その隙に瀬呂が緑谷に尋ねた。
瀬呂「いっつも麗日と一緒にいるしなんかねーの?」
緑谷「えっいや、全然そんなことないよ!?ててて、てか恋愛なんてぼぼぼ、僕には早いって言うか、それにううう麗日さんが僕のことなんて、眼中にないってきっと!」
青山「そんなことないと思うけどね⭐︎」
狼狽えながらも緑谷はそう答える。年頃にしては焦りすぎだが。
砂藤「尾白とかはどうなんだよ。葉隠と仲いいだろ?」
尾白「俺かぁ…。まぁでも本人はあんな感じだし、俺に好意はないんじゃないかなぁ?そもそも姿見えないしね」
砂藤の質問に尾白は尻尾を抱き抱えながらそう返した。多少尾白は葉隠のことを好いているらしい。
障子「それより言い出しっぺの上鳴の方はどうなんだ?耳郎と一緒にいるところはよく見るが」
上鳴「いやそんなんじゃないって!それこそ友達としか見られてねえよ!なんか言ったら容赦なく叩いてくるしさぁ!」
障子の質問に上鳴が愚痴かのように喋り始めた。しかしどのエピソードも中が良くないと出ないものだ。しかし羽田から見るとお似合いではある。
峰田「羨ましい!オイラだって叩かれてぇ!」
瀬呂「峰田は相変わらずだな。アレで懲りてないのがすげぇ。」
峰田「てか、戦兎とか轟とかはどうなんだよ!お前らいっつも俯瞰して見てっけど、意外とオイラみたいにムッツリとかはねえの?」
上鳴「むっつりかどうかは知らねえけど確かにそこ気になるな!」
おっと、話の矛先がこちらに向いてきた。我関せずって感じで見ていたのだが…。
轟「気になる人か…考えたことないな。」
戦兎「俺もだ。そう言うの考える暇もなかったな。」
2人は口を揃えてそう言う。
そもそも戦兎は旧世界の年齢で27歳。そこから新世界に来て11年ほど。体感としては38年生きているしその分の記憶もある。自身の半分ほどしか生きていない高校生など、今更恋愛対象に入らない。
峰田「お前ら聖人ぶってんじゃねえよ!あんだけ近くでヤオヨロッパイ拝んどきながらそれはねえだろ!オイラだって…」
爆豪「うっせぇぞクソモブども!そういうのは静かに話せや!」
峰田は負け惜しみを立てまくるが、その最中でついに爆豪がキレた。あまりにうるさすぎたのだろう。大部屋なのもあって眠れなかったのだ。
瀬呂「そういう爆豪はモテなさそうだよなー」
爆豪「んだとモテるわ!!!」
結局いつものように爆豪の大荒れで恋バナは終了。最終的に皆が寝静まったのは日を越す頃だった。
一方同じころ、女子部屋でも…
芦戸「夜は恋バナっしょー!!!」
6人でA組女子会が始まっていた。こちらはみんながるんるんで参戦している。こう言うのは八百万もしたかったそうで、止めることはしなかった。
芦戸「早速なんだけどー!麗日!緑谷と飯田どっちが好きなの!?」
麗日「ぶふぉーっ!!!」
麗日は早速芦戸に問い詰められて飲んでいたお水を吹き出してしまった。
麗日「ちっちちちちっちゃうちゃう!そんなんやあらへんもん!」
蛙吹「あんまり無理に詮索するのは良くないけど…」
葉隠「でも一回こう言うのやってみたかったんだよねー!」
恋愛話に興味津々な芦戸、葉隠、耳郎。それに対して蛙吹は若干否定より。とはいえ興味がないと言うわけでもない。
麗日「ちゃうよ本当に!私そう言うのわからんし…そんなんじゃ…」
あまりの焦り具合に無意識的にゼログラビティを発動。ぷかぷかと浮きながら言い訳する。
八百万「蛙吹さんの言う通り、デリケートな部分に入り込むのは…」
葉隠「そういうヤオモモこそ戦兎くんとか轟くんとかとはどうなの!?」
八百万「わ、わたくし!?」
突然話をふられてしまいヤオモモもタジタジに。頬を赤く染め上げた様子を見て芦戸はどっちかが好きなんだと確信する。
八百万「気になる…程度でしたら…戦兎さんが…」
芦戸「えっ!?戦兎くんなんだ!てっきり轟くんかと!」
顔を茹でダコのように赤くしている八百万にさらに圧をかける芦戸。しかし戦兎が気になるとは意外である。
八百万「初の訓練でも体育祭でも期末試験でもずっとお世話になりましたし…いや、あくまで気になるくらいなんですけど…」
葉隠「えぇー!?いつからいつから!?」
芦戸「どこが好きになったのー!?」
八百万「も、もういいでしょう!?」
これ以上ないくらいに顔を赤く染め上げながら無意識下でぽこぽことマトリョーシカを出す。このまま話を進めれば部屋がマトリョーシカで埋まってしまいかねない。
耳郎「まぁまぁそこまでにしときなよ。」
芦戸「じゃあ今度は耳郎ちゃんの話ね!上鳴とはどうなの!?」
耳郎「ちょっ、急に進めんなし…。てかなんで上鳴?」
葉隠「だってずっと一緒にいるでしょ?」
耳郎「そりゃまぁ一緒にいるけど…。実際話し合うし…。でもそんなんじゃないって!」
芦戸「じゃあもし告白されたら?」
耳郎「…そりゃ…まぁ…なくはないけど…」
耳郎も耳を赤くしながらプラグをくるくると巻いて照れ隠し。目をうろついている。
耳郎「でもみんなも告白されたらオッケーするかもみたいな人いるでしょ?」
麗日(デクくんなら…)
葉隠「んー確かに。尾白くんならオッケーしちゃうかなぁ」
芦戸「えっ!?ホント!?」
難しい顔をして考えていた麗日とは対照的に葉隠はそう言い切った。その発言に芦戸は驚いて詰め寄る。
葉隠「うん。普通だけど頼りになるし、男らしいしね!」
八百万「ところで芦戸さんには気になる殿方はいらっしゃらないのですか?」
麗日「そっ、そうだよ!私たちばっかりでズルい!」
芦戸「んー私あんまり恋ってのが分かんなくてさー。いないかな!強いて言うなら…切島?」
耳郎「あーでもイメージわかるかも。恋っていうの明確には分かんないわ。」
葉隠「結局そうだよねー。そこらへんちゃんとしてないって言うか、そこまでドギマギできる麗日とヤオモモがすごいって言うか!」
そのセリフで再び顔が赤くなる2人。改めて2人の意中の人を想像させられて相当な辱めを受けている。
芦戸「でも緑谷女子慣れしてない感あったし押せばいけそうじゃない?」
耳郎「逆に戦兎は…なんかすごい難しそう…」
全員の脳内にボトル採集して喜ぶ姿が浮かぶ。ある意味上鳴のようなアホさをたまに感じるところもあるようだ。
蛙吹「良い意味でみんなのことを俯瞰して見てるわよね戦兎ちゃん。実際頭も良いしなんでもできるからそれはそうって感じなのだけれど…」
耳郎「でもヤオモモが好きになるの分かるよ。ウチも入試の時助けられたけどあん時はカッコよかったもん。…入ってからあんな変な奴とは思わなかったけど」
八百万「私は逆に初対面が酷かったですわ…。」
初めましてでボトルを向けられる八百万。成分採取のためとはいえいくらなんでも荒技がすぎる。
八百万「でも、戦闘訓練や体育祭、期末試験を経て、ようやく戦兎さんがどのような人かっていうのがだんだん分かってきました。でももっと知りたいってそう思ってますの。どうしてヒーローになりたいのかとか…。」
蛙吹「なるほど、そういう意味で気になってるのね。でもそれも立派な恋よ」
改めて言葉にされると恥ずかしくなり顔が赤くなる。しかし八百万が戦兎のことを意識しているのは事実だ。もっとも、戦兎は全くもってその気ではないが…。
葉隠「ってやばいみんな!もう12時超えてる!もう寝なきゃ明日起きられない!」
芦戸「ホントだ!じゃあ今日はここまで!ヤオモモ!また進展あったら聞かせてね!」
八百万「えっ、えぇ…」
慌てながらも睡眠の準備をする6人。最終的に全員少し寝坊してしまったのだが、男子も女子もこれを機に仲を深めたのは間違いない。
そんな甘酸っぱくて青い夏の夜を送っていたのだった。