【スピンオフ】天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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エピソード:クロコダイル

幻徳「もしもし…何のようですか香山さん」

 

真夏の日差しが燦々と顔を照らす頃。プロヒーロー、氷室幻徳の元に一通の着信があった。相手は香山睡(ミッドナイト)氷室幻徳(ローグ)相澤消太(イレイザーヘッド)山田ひざし(プレゼント・マイク)のひとつ上の先輩である。

 

香山『教師のお誘いよ。お誘い。山田も相澤も雄英に入ったし、あなたが入ればちょうど三人セットで入るじゃない。』

 

幻徳「誘いは嬉しいですが俺には親父からもらった事務所がありますし、当分は教師やる予定はないですよ。インターン生なら歓迎しますが」

 

香山『インターンって言ってもあなたのできない雑用をさせてるだけじゃないの?うちじゃ有名よ。2年の猿渡一海くんたちに事務作業させてるって。相変わらず世間知らずなところ治しなさいよ。いっそのこと教師になって学を身につけた方がいいんじゃない?』

 

幻徳「勉強のために事務雑用させてるんです。いざとなれば俺もできますがあえてやらないだけです。」

 

香山『切符も買えないって聞いたけど…』

 

幻徳「社会勉強です」

 

香山『…そう。まあ別にあれこれ言うつもりはないから別に構わないのだけど…』

 

何故か強気の幻徳に若干引き気味のミッドナイトは苦笑いをしながらそう答えた。

親の脛齧りではあるが、旧世界でも一応東都政府首相補佐官や東都先端物質学研究所所長などの役職に就いていたこともある。それなりの事務仕事はできるようだが、氷室幻徳には一般が通用しない。今も一海におんぶに抱っこなところがある。

 

香山『ま、とにかく考えておいて。生徒たちとの生活は楽しいわよ。それじゃあ私は授業あるから、考えておいてね』

 

ミッドナイトはそういうとプツンと電話を切った。幻徳ははぁとため息をつきながら革ジャンのポケットにスマホをしまう。

 

幻徳「…教師か…。白雲…お前だったらどうしたんだろうな…。」

 

懐かしき青い夏。あの日の出来事を思い出す。それはまだ氷室幻徳らがプロヒーローの卵だった頃の遠い記憶…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻徳「ふっ、なんだ相澤。傘忘れたのか。」

 

その日は朝から土砂降りだった。突然相澤がびしょびしょの状態で雄英高校ヒーロー科2年A組の教室へと入ってきた。その様子を見た玄徳が途端に茶化すために声をかけてくる。

 

幻徳「恥ずかしがることはない。安心しろ。何せ俺も忘れたからな。」

 

相澤「それのどこに安心できるんだ…」

 

幻徳は隣の席の相澤に鼻で笑いながらそう話しかけるが、その幻徳もまた傘を忘れたらしい。通りで制服じゃないわけだ。

 

相澤「…お前は少しは恥ずかしがった方がいいだろ。なんなんだその格好は」

 

幻徳「?何故恥ずかしがる必要がある?イカしてるだろ?」

 

山田「いやダセェー!!!超ダセェよ幻徳ゥ!」

 

相澤「そもそも体操服の上着の袖を破ってノースリーブにしているのも訳がわからないし、そのインナーの『親しみやすさ』Tシャツも意味がわからん。おまけになんでブルマを履いているんだ」

 

幻徳「体操服といえばこれだろ。揃いも揃ってお前らは本当にセンスねえな」

 

クラスメイト全員が心の中で『腹立つ!!!』と総ツッコミを入れる。

 

幻徳の壊滅的なファッションセンスは今に始まった事ではない。一番最初の戦闘訓練の『コスチューム』があまりにダサすぎてクラス全員と教師全員で説得させて無理やり変更したほどだ。何せ一番最初のコスチュームは頭に麦わら帽子、全身紫タイツだが左足だけ何故か露出されており、全身ラメや宝石で無駄にキラキラしている。胸に『プロフェッショナル』の印刷、背中にはワレモノ注意の札が貼ってあり、さらにその上から透明ビニールのピロピロしたよくわからない上着をきている。腰には万国旗を巻きつけ、終いにはケツからワニの頭の剥製が飛び出ていた。これらを自らオーダーメイドしたというのだから驚きである。

 

「バカどもさっさと着替えてこい。体操服を改造するな」

 

相澤「いや…いいです。こういう気分なんで」

 

幻徳「以下同文だな」

 

「お前は本当に黙ってくれ」

 

担任に指示されるものの相澤はそれを無視して着席する。いつものように暗い顔で…

 

相澤「俺は無力だ…」

 

山田「出たァーっ!相澤消太のネガティブトーク!『俺は…ムリョクだ』って、HAHAHA!愉快な奴だぜ!!!」

 

そんな相澤をマイクが相澤をいじり倒す。

無口な相澤を幻徳、マイクが常にイジる。それが2年A組のいつもの光景だった。いや、正確に言えばもう一人イジる者がいた。

 

「おいおいひざしィ!なにショータいじってんだ!俺も混ぜろ!」

 

白雲朧。幻徳たちと同じ雄英高校2年A組のお調子者だ。外は土砂降り、教室は三階。にも関わらず"個性"の"(クラウド)"に乗って窓から入り、傘は持っているのに使わないという破天荒ぶりを見せる。

 

白雲「この傘お前ンだろ?落ちてたぜ!」

 

白雲はそういって相澤にほいっと傘を投げ渡す。

 

相澤「…白雲、この傘の下に…」

 

山田「ってヘイヘイ白雲!なんで全部脱いでんだヨ!」

 

白雲「だって濡れたパンツきもちわりーじゃん。でも安心してください。この"雲"でちゃんと隠してますから。しかし中にはとっても可愛いイキモノが…じゃん!」

 

そう言いながら白雲はゴソゴソと雲に隠れた局部周辺を触り始めた。これには女子をはじめとして大ブーイング。しかし実際に取り出されたのは小さくて可愛い子猫だった。『何故連れてきた!』としこたま担任に叱られはしたものの、かといってどうすることもできないので今日は一旦簡単な段ボールに入れて教室の後ろで過ごしてもらうことにした。

 

そして数日後…

 

「さて、例年二年次の夏期休業期にインターンを行う訳だが、それに伴いまだ受け入れ先が決まっていない者は少し焦らなきゃならん。相澤、白雲、山田、氷室。お前ら四人のことだぞ」

 

名指しで注意を受けるも幻徳は特に焦ってはいなかった。自分の父親が総理大臣である故か、親父とプロヒーローとのコネクションを頼ればいいと甘く見ていた。また"個性"の"クロコダイル"もこのクラスの中ではかなり戦闘向き。いざとなればすぐ見つかると油断しているのである。

 

相澤「…実際俺の"個性"は人の足を引っ張るだけの"個性"だ。」

 

その日の昼休み。屋上で相澤はカロリーメイトを口にしながらポツリと"個性"について口に出した。今日の戦闘訓練で『迷惑だ』『小細工するんじゃねえ』と散々同級生に言われたからだろう。

 

相澤「だから自分の"個性"を活かして何がしたいとか何ができるとか…そういうのがわからない。」

 

白雲「じゃあヴィランの足引っ張ればいいんじゃねえの?"個性"戦闘って相性の問題が多いけどショータなら相手が誰でも生身の格闘に持ち込めるだろ?」

 

幻徳「俺と組むか?遠距離攻撃もできるし相澤の"個性"有効範囲内に入らなくともヴィランに攻撃できる」

 

山田「根暗コンビってか!?じゃあ俺も混ぜてくれィ!」

 

白雲「ダメだ!俺も混ぜろ!俺たち四人なら最強だろ!」

 

相澤「まだ組むって決めた訳じゃ…って待て白雲。人間の食い物を猫にやるな。体に悪い」

 

話している途中、白雲が自身の弁当の一部を仔猫に上げようとしていたので相澤が慌てて仔猫を取り上げ、カバンから猫ミルクを取り出して仔猫に飲ませた。

 

幻徳「何故持ってるんなそんなもの…」

 

白雲「ゲントクも人のこと言えねえだろ?それに俺は相澤が世話してくれて助かってんだからセーフセーフ!」

 

相澤「ちゃんとしつけろ。ったく…」

 

白雲のいい加減な飼い方に呆れてため息をつく。猫好きとしては杜撰な管理が許せなかったのだろう。

 

「あらあらあなたたち、こんなところでご昼食?」

 

上から声がした。上を見るとそこには…

 

白雲「3年の香山先輩!」

 

香山「屋上は立ち入り禁止なのに勝手に入って…。そう言う不正行為は…青春っぽくていいわね!」

 

香山睡、若き日のミッドナイトが出入り口の上に立っていた。香山は飛び降りて4人の元へ行く。

 

相澤「ところで先輩…コートの下に服は着ないんですか?」

 

香山「これが服よ。」

 

相澤「もしかしてバカには見えない服とかですか」

 

白雲「良かった!俺バカだから見えない!」

 

幻徳「俺もバカだから見えないな」

 

山田「皮肉だなこの〜」

 

香山「分かってないわね。大胆にして実用的。機能美そのもの。私の"個性"とアクションのサポートを追求した結果たどり着いたこのデザインはやましく思うところなんてないはずだわ!」

 

相澤「少しはやましく思った方がいいですよ…」

 

幻徳「いや香山先輩の言う通りだ。ところで香山先輩、この後俺とホテルでコスチュームの機能性とデザインについて朝まで語り明かしませんか?」

 

相澤「お前はもう少しやましさを控えろ」

 

香山「あら、あなた幻徳くんよね。残念だけど私にはあなたのデザインセンスは理解できないからまた今度ね」

 

山田「HAHAHA!振られてやがんぜ幻徳!!!」

 

幻徳「振られた?わかってないな。偶然都合がつかなくなっただけだ」

 

白雲「それを世間じゃ振られるっていうんだぜゲントク!肝に銘じておきな!」

 

香山「…って、私の話はどうでもいいのだけど…その仔猫どうしたの?」

 

白雲「ショータと俺が拾いました」

 

香山「でも学校に持って来ちゃダメでしょ?ちょっと貸しなさい?」

 

香山に言われるがままに白雲は仔猫を渡す。

 

香山「ふわふわでかわいい〜〜〜!!!この子なんていうの?」

 

相澤「未定です」

 

香山「じゃああなたたちの好きな食べ物」

 

白雲「寿司!」

 

山田「からあげ!」

 

相澤「特には…」

 

幻徳「いちごパフェだな」

 

山田「ヒゲ面なのにいちごパフェかよ!似合わぇー!!!」

 

香山「その中だったら私もお寿司かな」

 

と言うわけで仔猫の名前はおすしに決まった。

 

白雲「そういえば仔猫の飼い主募集中ッス!」

 

香山「残念だけどこの子の世話をする余裕はないわよ。一人暮らしで猫飼うと婚期を逃すって言うし」

 

幻徳「俺と結婚すれば問題ないですね」

 

香山「それは遠慮しておくわ。そう言うわけで長くは預かれないからさっさと正式な里親を探しなさいね!」

 

そういうと香山は出入り口からいそいそと猫を連れて出て行ってしまった。どうやら飼う予定のようだが…どうしようもない上、自分たちでは飼う余裕もないので取り返すこともしなかった。

 

そして翌日の昼休み。

 

白雲「よく考えたら俺たち猫飼ってる暇ねえよな。インターン先決まってねえし!」

 

相澤「山田がついさっきインターン決まったらしいが…」

 

幻徳「ふっ、情けないなお前らは」

 

白雲「ゲントクも決まってねえんだけどな!」

 

再び屋上で弁当を貪りながらインターンについての話をしていた。結局3人ともインターン先が決まらなかった。かなり戦闘向きの"個性"だが本人が選りすぐりしているのと、受け入れ先のヒーローがインターンを許可しては幻徳の常識が無さすぎて送り返してくる事案が度々発生しているためでもある。

 

香山「おっ、いたいた屋上少年団」

 

白雲「香山先輩!猫がお世話になってます!」

 

香山「みて!今日のおすし!」

 

そういうとスマホの動画を見せつけてくる香山。そこに映っていたのは『うんちいっぱいでまちたね〜』とおすしにデレデレな香山の声と大量のうんちを踏ん張るおすしであった。

 

相澤「人が飯食ってるときに…」

 

香山「しつけのこと気にしてたでしょ?」

 

白雲「それで動画見せに来てくれたんですか?」

 

香山「いいえ、今日は『行き場のない子はうちで引き取るわよ』ってことを言いに来たの」

 

相澤「別に毎日猫拾ってるわけじゃあないですよ」

 

香山「そうじゃなくて…インターン未定組3人、うちの社長がまとめて面倒見てくれるってさ」

 

「「「えっ…?」」」

 

突如として舞い降りてきたインターンの受け入れ先に3人は固唾を飲む。このインターンがこの先、悲劇を引き起こすとも知らずに…

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