サイバネティクス・ラブ   作:スナエ

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サイバネティクス・レスキュー

 記憶(メモリ)が途切れている。

 

「ここは……?」

 

 キャラは、身を起こそうとしたが拘束されていることに気付いた。

 

「チッ。起きたか」

 

 見知らぬ男が舌打ちをする。

 

「キミ、誰?」

「人拐い」

「へぇ。ボクになんの用?」

「お前が欲しいんだとよ」

「うえっ。ボク、お人形じゃないんだけどぉ」

 

 外部と通信しようとしたが、不通になった。

 

「ジャミングか……そりゃそうか…………」

 

 サイボーグを拐えって依頼がきたのだろうから当然のことか、とキャラは溜め息をつく。

 ここは、おそらく走行中の車内だろう。

 

「ボクが欲しいってさぁ、“どの”ボクが欲しいんだよぉ?」

「……さあな」

 

 現在、キャラのボディは中性型である。男性的な特徴も、女性的な特徴も排除された体。

 嫌な記憶がフラッシュバックした。

 

“あなたは×××××なんだから”

“カッコいい×××××!”

“可愛い×××××だね”

“×××××みたいで気持ち悪い”

“×××××じゃねぇか、騙しやがって”

 

 ノイズがかった記憶は、やがて鮮明になり、キャラの精神を蝕む。

 吐きそ。

 

「ボクは…………」

 

“キャラちゃん”

“キャラ”

 

 ふと、マックスとカートの声を思い出した。

 ああ、そうだよね。ボクには、大切なふたりがいるよね。

 

「おい、人拐い! こんなことしてると、ボクの彼氏たちが黙ってないぞ!」

「はぁ?」

「なんかスゴいんだからな! えーと、技と力が! オマエなんか一撃なんだからな!」

「なに言ってんだか————」

 

 男が運転する車が、急停止した。

 

「なんだ?!」

 

 困惑する男。そこに、機械の腕が車体を突き破って伸びてきた。

 

「ぎ……あ…………」

 

 ギリギリと首を絞め上げられる人拐い。

 

「キャラちゃん! 無事?!」

「マックスくん!」

 

 ドアを開けたのは、見知った人物だった。

 

「はぁ~。間に合った」

 

 マックスは、キャラの拘束を解きながら言う。

 

「カートくん、ソイツは縛り上げといて」

「了解」

 

 気絶した男は、カートに車内から引きずり出された。

 

「キャラちゃん、怪我とかない?」

 

「ないよ! ありがとう!」と、マックスに抱き付くキャラ。

 マックスは、キャラを抱き締め返して、頭を撫でた。

 

「ボク、ふたりが来てくれるって信じてたよ!」

 

 キャラが外に出ると、カートが、拘束された人拐いの上に座っているのが見える。

「カートくん! ありがとう!」と、カートにも抱き付く。

 

「ん。無事でよかった」

 

 カートは、キャラの頬に優しく手を添えた。

 

「その男、どうすんの?」

「俺らが処理しとく」

「うん。分かった」

 

 ここでキャラは、ひとつの疑問を浮かべる。

 

「どうしてボクを助けに来れたの?」

「あーそれは……」

 

「俺が、キャラちゃんの位置情報が途切れたのに気付いたから」と、マックスが答えた。

 

「そこから、経過時間から現在地を推測して、しらみ潰しに怪しい車体を調べてったの」

「なるほど? ボクって、位置情報把握されてたんだ?」

「有線で繋いだ時に、追跡プログラムを仕込ませてたんだよね」

「ふぅん。まあいっか。おかげで助かったもんね!」

「……いいのか」

「改めて、ふたりとも、ありがとうね! 大好きだよ!」

 

 キャラは、ふたりの手を取って笑っている。

 

「ボクの彼氏たちって、最高~!」

 

 夜空の下で、3人はしばし笑い合った。

 暗い過去なんて、吹き飛ばしてしまえそうだった。

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