獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第1話

 

 DMMORPGユグドラシル。九つの世界(サーバー)の内の一つ、ミズガルズ。

 ミズガルズの最難関ダンジョンの一つ、ネメアの森の最奥手前のセーフティゾーンに巨大な獣は居た。

 

 全長百六十メートルの圧倒的巨体を持つ獅子。

 ユグドラシルにおいてタイマン最強と名高いプレイヤー、レオンである。

 

(この世界も終わり……まぁ、楽しかったな)

 

 レオンはあくびをしながらそんなことを考える。

 レオンはこのユグドラシルにおいて最強と呼ばれるプレイヤーの一人だ。

 タイマンならば例え相手がワールドチャンピオン──ユグドラシル公式のぶっ壊れ職業──やワールドガーディアン相手だって打ち勝つことが出来る。

 ただしそれも一対一ならばの話であり、一体多となると意外と負けやすいが。

 

 そんなレオンは湖の前に広がる森で寝っ転がり、終わりの時を静かに待つ。

 

 そうして時間が過ぎ──ふとレオンは世界が終わる時間が過ぎてもログアウトしていない事に気づき顔を上げた。

 

「なんだ?」

 

 見れば、周囲の景色は変わっていた。

 先程まであった湖は無く、広がるのはただの草原。

 刃のように突き刺さる草が生えている訳でも毒の草が生えている訳でもない。

 

「……何が起こった?」

 

 そしてレオンは己の体の異変にも気づく。

 不調ではない。寧ろその逆。

 力が有り余って仕方がない。湧き上がる力を感じ取れる。

 

 レオンはふむ、と頷き人化の特殊技術(スキル)を行使する。

 

 人型となったレオンは筋骨隆々の大男だ。

 身長は二百二十センチ。野獣の如き風貌に獅子のような赤い鬣。

 丸太のように太い手足に割れた腹筋が良く見える肌に吸い付くタイプのスーツを着ている。

 獣の皮の腰みのにズボンを着用している。

 これこそが獅子王レオンの人化した姿である。

 

 レオンは手をぐーぱーし、体を感じ取る。

 

「あー、あ? あ~、なるほどな」

 

 何となく声を発し、自身の顎が動くのを感じる。

 ユグドラシルではあり得ない事だ。

 ユグドラシルはゲーム的な制約も多く、プレイヤーキャラクターの発音に応じて口パクをさせるという事が出来ない。

 だが、今はそれが出来ている──というよりはそれ以上に出来ている。ごく普通に声を発するのと同じ動きが出来ている。

 

「さて、どうしたものかね」

 

 

 ■

 

 レオンはそれからしばらく歩いた。

 草木の匂いを感じ取り、青い青い空を堪能しながら草原を歩く。

 そうして歩いているとある程度の整備された、とは言えないが道らしきものを見つける。

 この先に人が居るかもしれない。そう考えたレオンは道なりに進むことにする。

 

 そうして歩く事二時間。レオンは遂に人を見つける。

 

「穏やかじゃないな」

 

 だがレオンが見つけた人間は正に殺される寸前といった様子だ。

 全身鎧を纏った騎士らしき男二人と片方の騎士に剣を振り上げられ正に切られる直前の村娘といった風貌の女が一人と幼女一人。

 

 レオンは自身が就いている職業の一つストライダーの特殊技術(スキル)を使って騎士の後ろまで移動する。

 瞬間移動と見間違う程の速度での移動だ。

 

「おい、何してんだ」

 

 レオンは騎士にそう問いかける。

 声をかけられた騎士は驚き、数歩後ろに下がる。もう一人の騎士もレオンから距離を取る。

 

「な、なんだお前は!」

「質問してんのはこっちだぞカス。いいから答えろ」

 

 レオンは答えを返さぬ騎士に機嫌を悪くする。

 大男の不機嫌な様子はそれだけで威圧感を与える。

 しかし騎士はレオンの威圧感よりも命令を優先する事にした。

 

「悪いが答えられない。あんたには悪いが、そこの娘同様死んでもらうぞ」

 

 バハルス帝国の騎士の装いをした者はそう言うと剣を構える。

 

「ならてめぇが死ね」

 

 レオンはそう言うと騎士の頭を高速で掴み、そのまま握り潰す。

 騎士はバケツヘルムによって圧死され、歪んだヘルムから脳髄と血肉が漏れ出た。

 

 レオンはそのまま呆気に取られているもう一人の騎士の眼前に移動すると素手で騎士の心臓目掛けて拳を放ち貫通させる。

 心臓を破壊された騎士は絶命し、レオンが腕を引き抜くともう一人の騎士と同じように大地に倒れた。

 

「カスが。前菜にもならん」

 

 想定外の弱さ──特殊技術(スキル)で多少は分かっていた──相手に舌打ちをする。

 

(人をこの手で殺したのに何とも思ってねぇ。寧ろ殺したりないぐらいだ。心まで異形種になったのか?)

 

 レオンはそんな事を考えていると視線に気づく。

 視線の正体は騎士に追われていた少女の物だ。

 

「なんだ、ガキ」

 

 レオンはつまらなさそうに言い放つ。

 

「あ、あの、助けてくださり、ありがとうございます!」

 

 レオンは感謝の言葉が来るとは思っておらず一瞬面食らう。

 

「俺が殺したいから殺しただけだ。礼を言われる事ぁねぇ」

「それでも、ありがとうございます! そして不躾な事ですが、私の願いを聞いてはくれませんか!」

 

 少女──名をエンリ・エモットは懇願する様にレオンに頼み込む。

 

「なんだ、言ってみろ」

 

 レオンはつまらなさそうに聞く姿勢だけは取る。

 

「私の両親を助けてはくれないでしょうか! 村が襲われているんです!」

「ほう……」

 

 レオンはその台詞にニヤリと笑う。

 来ているのは先のと同じ雑魚だろうが、数が多ければ多少は楽しめると考えたのだ。

 

「いいぜ。俺が敵を殺して来てやるよ」

 

 レオンのその言葉にエンリは顔を明るくする。

 

「ありがとうございます! ──よろしければお名前を教えてはくれませんか?」

「俺の名か……」

 

 レオンはふむ、と考える。

 ゲームキャラクターになってしまったが自身の本名は■■■■だ。

 だがここでそれを名乗るのは、家族に悪いと思った。人殺しが親の名字を名乗るのは不味いだろう、と。

 故、名はレオンで通すと決めた。

 

「俺はレオンだ。じゃあな、ガキ」

 

 レオンはそう言うと地面を蹴り飛ばすように跳躍し、村へと跳んで行った。

 

 

 

 ■

 

 

 ズドン、とレオンは村──カルネ村の中央に着地した。

 着地した影響で衝撃波が多少生じ、村に蜘蛛の巣上のクレーターが生まれる。

 

「ひーふーみーと……雑魚共が群れてやがんな」

 

 レオンはニヤリと好戦的な笑みを浮かべる。

 そんなレオンに対し騎士達は戸惑う。

 突如空から現れた筋骨隆々の大男相手に混乱するのは無理のない事だろう。

 

 レオンは混乱する騎士を眺め馬鹿な雑魚だな、と鼻で笑う。

 見るからに敵だろうに混乱するだけで行動に移らない。阿呆のする事だと嘲笑う。

 レオンは最も近い騎士に近づく。何の特殊技術(スキル)も使わないただの移動だが素のステータスの高さによって他の者にとっては瞬間移動とさして変わらない速度に見える。

 レオンは無造作に騎士の腕を掴むと鎧事腕を握り潰し、そのまま持ち上げる。

 そして投擲。高速で遠くに居た騎士にぶつける。

 硬い金属同士がぶつかり合った嫌な音と肉が飛び散る音がした。

 当てた方も当てられた方も当然死んだ。無惨な肉片となって。

 

「いくぞ──鏖殺だ」

 

 レオンは笑みを浮かべ、他の騎士に近づく。

 

 一人目。頭を掴みねじ切り殺した。

 二人目。肩を掴みそのまま左右に引き裂いた。

 三人目。頭をぶん殴り破裂させた。

 四人目と五人目。四人目の頭を掴みそのまま投擲。五人目にぶつけ両方殺した。

 

「オオオオオオ!」

 

 そのままレオンは逃げ出した騎士を襲い、皆殺しにした。

 

 残ったのは血肉に塗れたレオンとそんなレオンに怯える村人たちだけ。

 レオンは村の中央に集められた村人に近づく。

 ひぃ、という小さな悲鳴が聞こえてくるがレオンは無視する。

 

「うし。そこの人間。聞きたいことがある」

 

 レオンは適当な人間に指をさす。

 

「わ、私でしょうか?」

 

 村人──この村の村長である男は怯えながらも答える。

 

「そうだ。その為にお前たちを態々助けてやったんだ。まず、この村から外に通じる道にガキの女が二人いる。名は聞き忘れたが、そいつの両親を探したい。手伝え」

 

 有無を言わさぬ言動に村長はわかりました、と答えるしかなかった。

 よし、とレオンはこのロールプレイいつまですればいいんだろうかと変な事を考えていた。

 

 

 ■

 

 結論から言うと、少女──エンリとネムの両親は既に殺されていた。

 レオンが来た時には既に手遅れだったのだ。

 そしてレオンは蘇生手段を持たない。回復魔法の巻物(スクロール)短杖(ワンド)は持っているが、蘇生の短杖(ワンド)巻物(スクロール)も所持していないし、そもそも回復魔法が使える職業についていない。

 故、エンリとネムの両親を蘇生する事は出来ない。

 そのことに舌打ちをしたが、その程度だ。まぁいいかで済ませた。

 その後レオンは村長と共に村長宅に訪れ、幾つかの質問をした。

 

 まず、この世界の名前を聞いたが世界の名前など村長は知らなかった。

 ならば、とレオンはこの国の名前を聞いた。それは村長もわかっておりリ・エスティーゼ王国だと判明した。

 レオンは聞いていないが周辺国家にバハルス帝国とスレイン法国がある。

 次に通貨。ゲーム内の通貨が使えるか聞いたが当然違っており、使う事は不可能。

 正し金としての価値と美術品としての価値がある為換金すれば使える事が判明した。だが村では換金用の現金が無いため交換不能である。

 

 その後、モンスターの存在や冒険者という職業。魔法について聞いたレオンは満足し、白湯の味に感動していた。

 

 その後レオンは殺した騎士の装備を剥ぎ取り村の倉庫に入れ、死体はアンデッドになるとかいうので一か所に集めて土に埋めた。

 村人たちの死体も埋め、簡易的な葬式にもレオンは参加した。単にやる事無くて暇だったのである。

 

 そしてやる事が一旦無くなった為レオンは適当な家の屋根に上った。

 屋根の上に寝っ転がり、腕を枕にして空を見上げる。

 

(現実でもユグドラシルでもあり得ない青空……いや。確かナザリックとかいうギルドには青空あるんだったか?)

 

 青空を面白そうにレオンは眺める。

 現実では一度も見た事の無い空だ。絵や漫画でしか見た事の無い空である。

 空には雲が当然あり、面白い形をしていると満足そうに眺める。

 

 そうして暫く待っているとレオンの鋭い聴覚に多数の足音が耳に入る。

 それは馬が走る音だ。レオンは現実の馬の音は聞いたことが無いがゲームなどで走るSEを聞いた事がある。

 ちっ、とレオンは小さく舌打ちをし屋根から降り、村長の元まで歩く。

 

「おい村長。問題発生だ」

 

 村長はレオンの声に振り向き、顔を暗くする。

 

「レオン様! 問題とは?」

「なにか知らんが馬が複数こっちに来ている。増援か何かかもしれん」

「そんな! どうすれば……」

 

 村長はレオンの言葉に更に顔を暗くし、絶望に顔を染める。

 

「まぁまた俺がぶっ殺してやる。村人を一か所に集めとけ」

「わかりました!」

 

 村長はレオンの言葉に了解の意を示すとすぐに行動に移る。

 

 

 その後、レオンと村長は二人そろって村の中央に立っていた。

 レオンは当初村長も村の倉庫に入れておこうとしたが村長が「もしかしたら国からの騎士かもしれない」という言葉によって共に立つことになった。

 レオンではこの国の騎士かどうかわからない為同席しているのである。

 

 そうして待っていると村の中央に向かって十数名の者達が馬に乗って走って来た。

 

 その者達は良く言えば歴戦の戦士、悪く言えば野盗のような者達だ。

 まず統一された武装という物が無い。軽装鎧から重装鎧を纏った者がいるし、武器だって剣を持っている者からモーニングスターや斧を持っている者がいる。

 その為レオンは火事場泥棒の類か? と警戒を強める。

 

 その者達から一人の者が代表者として出てきて、馬をレオンたちの前に止める。

 王国の紋章を付けた胸当てを纏った男だ。黒髪黒目の容姿をしている。

 背中には両手剣を背負っている。

 

「私はリ・エスティーゼ王国王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ! 周辺の村々を襲う帝国の騎士を倒しに来た者である!」

 

 その台詞に村長は「王国戦士長……」と顔を明るくする。

 

 ガゼフは口を開く。

 

「そこに居るのは村長だな。隣にいるのはいったい誰だ?」

「この方はレオン様です。この村を襲った騎士を倒してくれた方です!」

 

 村長の言葉にガゼフは「なんと!」と驚く。

 ガゼフは馬から降りる。

 

「この村を救ってくださったことに感謝を!」

 

 ガゼフは馬から降りると頭を下げ礼を言う。

 

「礼って言うなら現ナマ(現金)寄越して欲しいもんだが」

「ならば必ずや貴殿に相応の金銭を払う事を約束しよう」

 

 半分冗談で言ったことが通じ、レオンは軽く驚くがまぁいいかとスルーした。

 その二人に割って入るように王国戦士団の者が走って来る。

 

「戦士長! 村を囲うように複数の人影が接近してきています!」

 

 また面倒事か、とレオンは内心ため息を吐いた。

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