獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第12話

 

「…………それで、世界を滅ぼせるという魔樹を逆に倒してきた、と?」

 

 数日後の昼中。冒険者組合の会議室で。

 

 部屋には冒険者組合長のプルトン・アインザックとラキュース、レオンの三人が居る。

 

 アインザックはラキュースから聞いた話にこめかみに手を当て頭の痛みを抑えようとした。

 なんという荒唐無稽な話か。だが話しているのがアダマンタイト級冒険者であり、名声もある青の薔薇のリーダーなのが質が悪い。

 むやみに嘘と断言出来る話でもないのだ。

 

「はい。ザイトルクワエの残骸はまだ残っていると思われるので、実際に確認できると思います……」

「そうか……そうなのか……」

 

 アインザックは胃が痛くなる思いだった。

 アダマンタイト級相応だと思われる男を引き入れる為にあれこれ考えていたらまさかの世界を滅ぼせるとかいう怪物を倒せる更にやべー奴だった。

 世界を滅ぼせる怪物を倒したという事は実質レオンは世界を滅ぼせるという事だ。インフレが凄い。

 

 アインザックは考える。青の薔薇の言葉に嘘はない。となれば、レオンについて今後を考えなければならない。

 

「わかった。彼が使役したという森の賢王を含めて功績を考え……アダマンタイト級冒険者としよう。だが問題は……チーム名だ」

「チーム名? んなもんいるか?」

 

 レオンはこれまでチーム名を決めずに来た。それに必要もないだろうと考える。

 

「必要だ。名というのは大衆にとって分かりやすい名義となる。名声があれば人々は安心して暮らせる」

「そういうものか……?」

 

 レオンは疑問に思うがまぁ偉い人が言うなら、と納得した。

 

「チーム名ですけど、やっぱ色は必要だと思うんです」

 

 ラキュースが目を輝かせながら言う。

 その輝きにレオンは面倒な事になりそうだ、とため息を吐いた。

 

「うむい。朱の雫に青の薔薇ときているのだ……色は必須だが、名をどうするかだな」

 

 アインザックも同意し、さてどうするかと悩む。

 

「あー、俺としては獅子がついているのがいいな」

 

 自分の種族であるネメアの獅子にちなんで獅子ぐらいは着けておきたいとレオンは言う。

 

「獅子か。いいな……赤の獅子。ううむ。それでは単純すぎるな」

「でしたら──」

 

 レオンを置いてけぼりにし、ラキュースとアインザックのチーム名を決める話し合いは続く。

 

 

「では、紅蓮の獅子で決まりだな!」

 

 話し合う事十分。ついにチーム名が決まり、アインザックが宣言する。

 

「紅蓮は分ければ紅と蓮。紅色って解釈も可能……! これで色つきのチーム名です!」

 

 ラキュースもニッコリ笑顔でチーム名の理由を言う。

 

「そうか……まぁ、うん。これからはチーム名そう名乗るわ」

 

 レオンも二人の勢いに押され、チーム名が決まった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 それから数日が経ち、青の薔薇は王都へと帰還した。

 レオンたちもアダマンタイト級になり宿を黄金の輝き亭に移し、依頼を受ける日々に戻った。

 

 

 そうしたある日、ラキュースは王都への帰りに犯罪組織八本指が保有する麻薬を育てる村を一つ焼き討ちしてから王城にいる友人、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフに会いに来ていた。

 

 王城のラナーの私室でラキュースは貴族用の正装服を纏い、椅子に座り優雅に紅茶を嗜む。

 

「それで、百メートルを超える魔樹相手にレオンさんが突撃して、一人で倒してきちゃったのよ」

「それはすごい! そんな大きなモンスターを倒すなんて、レオンさんはお強いのですね!」

 

 ラナーとラキュースは親しい友人として会話を楽しむ。

 従者であるクライムも席に座らせられ、話を聞く。

 その話はまるで荒唐無稽な話に思えた。

 森の賢王を力で従え、森の魔蛇を案内人にし、ドライアードと話して魔樹を倒す。

 まるで英雄談の一節の様だ。

 

 だが、ラキュースは嘘を言うような人間ではない。そのことをよく知っているラナーとクライムは真実だと判断する。

 

 つまりは新しいアダマンタイト級冒険者レオンは世界を滅ぼせる怪物を滅ぼせる世界を滅ぼせる存在なのだと。

 

 その後もレオンの話は続く。森の賢王ハムスケの事。ブレイン・アングラウスのこと。グリーンシークレットハウスの事。

 流石にプレイヤーについては話さない。世界の裏側、知らなくても良い事だからだ。

 

 話し合いが終わり、クライムが青の薔薇の一行に話をしにいき、ラキュースも遅れて部屋を出た後で。黄金と呼ばれる王女は考える。

 

(世界を滅ぼせる怪物を滅ぼした男……危険ね。金に興味を持つという事は王国では雇えないわね。下手したら次の戦争でレオンが帝国との戦争に来る可能性が高い……いや。ガゼフ・ストロノーフの話からすると国家に所属する可能性は低いと考えていいわね。

 となると、レオンに関してはこちらで取り込み策を考えるだけにして、出来れば良し程度にすますべきね。……欲を言えば彼に八本指を殲滅して欲しいところね。それに──)

 

 知性の怪物、ラナーは考える。己と子犬がしあわせに生きれる未来を。

 

 

 

 

 ■

 

 

 青の薔薇が王都に帰還し、レオンたちは新たに依頼を受けていた。

 その依頼の道中で一泊する事になり、彼らはグリーンシークレットハウスで休んでいた。

 

 各々好きに時間を過ごす。レオンは読書、クレマンティーヌとブレインは武器の手入れだ。

 

 そこにグリーンシークレットハウスにノックがかかる。

 

 近くにいたクレマンティーヌがドアを開けると其処に居たのはハムスケだ。

 ハムスケはグリーンシークレットハウスに入るよりも外にいることを選んだ為外で寝ている。それ以外にもハムスケはレンジャー技能を有し探知能力に優れている為探知の為外に居たのだが。

 

「どしたのー?」

「何かが近づく気配がするでござる。明確にこちらを目指して歩いているでござるよ」

 

 ふむ、とその言葉にクレマンティーヌは考える。

 時刻も夜。モンスターの時間だ。だというのに出歩くという事は後ろ暗い事がある者だろう。

 それがこちらを目指しているとなれば穏やかではない。

 

「なんだ、じゃあ外で警戒でもするか」

 

 レオンは本を置き、椅子から立ち上がる。

 

「某が対応した方がいいのではござらんか?」

お前(モンスター)だと変に話がこじれそうだから、人間が居た方がいいだろ」

「わかったでござる」

 

 という訳で、レオンとクレマンティーヌは外に出る。ブレインは次に買うマジックアイテムの事で頭がいっぱいだったためグリーンシークレットハウスに残して来た。

 

 外に出て、レオンたちはしばし待つ。

 待っていれば、レオンの聴覚にも足音が聞こえてくる。

 その数は一人。何者かが歩いて来る。

 

「灯りを出すか」

 

 レオンは懐からマジックアイテムを取り出す。

 提灯のようなマジックアイテムだ。名を昼の光(ディタイム・ライト)。一定範囲を昼の様に明るくするアイテムだ。

 闇視(ダークヴィジョン)を持つレオンには不要なアイテムだが、暗闇を見通す目を持たないクレマンティーヌには必須のアイテムである為使用した。

 一日の使用回数制限こそあるがそれ以外はMP消費も無く使えるアイテムである。

 

 そうして周囲が昼の様に明るくなると、歩いて来る者の姿も見える。

 

 年齢は二十代後半だろう男だ。金髪に赤目の容姿をしている。

 優男の雰囲気を醸し出す男であり、何処か胡散臭さが出ている。

 

「げっ」

 

 その姿を見たクレマンティーヌは渋い顔をする。

 

「知り合いか?」

「あ~、えっと、その……」

 

 クレマンティーヌは言いよどむ。

 

「私はクレマンティーヌの兄ですよ。久しぶりですね、不出来な妹よ」

 

 クレマンティーヌの兄──クアイエッセ・ハゼイア・クインティアはにっこりと笑顔で言い放つ。

 

「兄貴が妹に不出来だなんだというもんじゃないと思うが」

 

 レオンは眉を潜めながら言い放つ。

 これだけでレオンのクアイエッセに対する印象は下がった。兄妹に対し使う言葉ではないと。

 

「すみませんね……ですが家族の事情という物があります。あまり深くは言わないでくれると助かります」

 

 クアイエッセは笑顔を絶やさず言い放つ。

 レオンも「そうか」と軽く返すだけにすます。

 

「で、何の用だ? 要件次第じゃ殺すぞ」

 

 レオンは殺気を込めて言い放つ。

 それだけでクアイエッセは冷や汗が止まらない。生物としての圧倒的な格の違いを感じたのだ。

 クレマンティーヌも武器に手をかけ、外にいるハムスケも警戒態勢をとる。

 

「……私の用事は妹が奪い去った叡者の額冠というアイテムの回収です」

「……ああ。確かクレマンティーヌは国を出るときに強盗したんだっけか」

 

 そうだったか、とレオンは思い出す。

 

 

 さてどうなるか。クアイエッセは緊張していた。

 実のところ、レオンのこれまでの行動──クレマンティーヌを仲間にしてからの行動はスレイン法国に監視されていた。

 起点は叡者の額冠だ。叡者の額冠に対し第六位階魔法<物体発見>(ロケート・オブジェクト)を起点とした探知魔法を使っていたのだ。

 これによりクレマンティーヌの行動は把握されていたのだ。

 当然クレマンティーヌがレオンに同行する様になってからはレオンについても探知魔法が使われていた。レオンは探知対策をとっていないので見られ放題である。

 

 その為レオンの戦闘力は既に把握されている。

 

 当初はレオンこそが破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)ではないのかと疑われた。

 陽光聖典を容易く壊滅させた英雄級を超えた力の存在。

 更には元漆黒聖典であるクレマンティーヌを大幅に上回る力を持っている。

 だが、トブの大森林でザイトルクワエとの戦闘を監視した結果破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)とは別物ではないかとの話も上がった。

 

 破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)はザイトルクワエであり、レオンはプレイヤーではないのか? と。

 

 だが、プレイヤーだったとしてもスレイン法国に──人類に利と成るかは別だ。

 

 何せ人類の為に動く陽光聖典を壊滅させ、明確な犯罪者であるクレマンティーヌとブレイン・アングラウスを仲間に引き入れている。

 すわ犯罪組織でも作り出すつもりかと問われても可笑しくない所業である。

 

 だからこそ、叡者の額冠の奪還は慎重に動くべきだ。

 

 その為にクレマンティーヌの兄であるクアイエッセが来たのだ。最低でも会話を成し、相手の人格と目的を聞き出す。

 無理な場合は最低でもクレマンティーヌの殺害を目的として。流石にレオンを殺せるとは思っていない。

 叡者の額冠の奪還はサブ目標だ。出来ればいいな、程度しかない。重要なのはレオンの人格と目的を聞く事であり、クレマンティーヌも叡者の額冠も些事だ。

 

「ま、奪ったままというのもあれだからな、返してやる」

 

 レオンは何でもない事のように言い、クレマンティーヌにアイテムを出すよう促す。

 クレマンティーヌも渋々と言った様子で叡者の額冠を取り出し、レオンに渡す。

 

「ほらよ。受け取れ」

 

 レオンは受け取った叡者の額冠をクアイエッセに放り投げ、クアイエッセは慌てて叡者の額冠を受け取った。

 

「それで用事は終わっただろ? 帰れ」

 

 しっしと虫でも払うかのようにレオンは手を振る。

 

「……確かに主目的は果たしました。ですが、巫女姫を殺害した裏切り者の処分が終わっていません」

「クレマンティーヌを殺すって言うなら俺が相手になるぞ」

 

 レオンは怒気を込めて言い放つ。

 その姿にクアイエッセは圧倒される。生物として、魂の階位の違いを、存在としての格の違いを感じ取ったのだ。

 

「……今は辞めておきましょう。ですが、大神官たちが何を言うか、私でもわかりません。常々気を付けてください」

 

 等と言うが、クアイエッセとしては大神官は動かないだろうな、という確信にも似た予想がある。

 何せ陽光聖典が壊滅したのだ。その被害は大きい。

 特に竜王国へ派遣する戦力が消えたのがデカい。下手したら竜王国が滅亡するかもしれない事態になるのだ。

 その穴埋めをするために大神官たちは躍起になっており、叡者の額冠さえ回収できれば大神官側は破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)級の怪物と戦おうと等しない。

 番外席次絶死絶命を動かせばどうにかなるかもしれないが、動かせば今度は評議国との戦争待ったなしである。出来る訳が無かった。

 

「それでは私はこれで……いつかまた会うでしょう」

「俺としてはもう会いたくないがな」

 

 レオンは溜息を吐く。

 その姿に人間らしさを感じながらクアイエッセはその場を去るのだった。

 

 

 

 クアイエッセが去ったグリーンシークレットハウスの前で、レオンはクレマンティーヌを気に掛ける。

 家族間に対して並々ならぬ感情を抱いているのはレオンでも察しがつく。だからと言って、何か気の良い言葉をかけれる程レオンは人が出来ていない。

 

「……塩でも撒くか?」

「何それ?」

「俺の故郷じゃ嫌な奴が帰ったら塩を撒くのが通例なんだ」

「なにそれ」

 

 ふふ、とクレマンティーヌは笑った。

 

「ま、戻って寝るかね」

「そうだねー、そうしよっか」

 

 そうして二人はハムスケにおやすみを言い、グリーンシークレットハウスに戻り、就寝するのだった。

 

 




ストック亡くなったんで本当に完全不定期更新になります

レオンがクレマンティーヌに逆レからの逆転クレマンち〇負けR18小説に需要りますか

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