獅子王レオンとオーバーロード 作:野生の生蛇
紅蓮の獅子一行はカッツェ平野に踏み入れた。
「聞いてた通り霧深いな」
「ま、そういう場所だからねー」
レオンとブレインは聞いてた以上の霧の深さに目を細め、来たことのあるクレマンティーヌは慣れたものだとながす。
「取り合えず進むか……目標は七つ砦だったか?」
カッツェ平野にはかつての文明の名残として砦が七つある。
ヴァディスの者達はこの砦を目印にし、探索をする。
「そうだねー、三つ目まで行って見ようか!」
「そうだな」
という訳で。一行はカッツェ平野を進む。
そうして歩く事十分。雑談をしながらもハムスケが警戒する事で安全は多少は守られている。
視界は悪いが聴覚に問題はない。ハムスケの探知能力は聴覚も優れているのでも問題ないのだ。
「何か来るでござる。数は五でござる」
「敵か」
ハムスケが指さす先からアンデッドが姿を現す。
最下位アンデッド、スケルトンだ。ウォーリアー系統でもない。
「そうだ、今回の依頼さ、レオンっちはあんまり戦わない方針でどう?」
不意にクレマンティーヌが話し出す。
「どういう事だ?」
「いやさ、私らレオンさんに頼り過ぎじゃない? だからたまには私たちだけで戦うって事」
クレマンティーヌの言葉にブレインも同意する。
「いいんじゃないか? 前のギガント・バジリスクの時も殆どレオンがやったようなものだからな」
「まぁ、お前たちが良いならいいが……」
レオンは渋々と言った様子で受け入れた。
スケルトンたちが襲い掛かる。
クレマンティーヌはサブ武器のモーニングスターを抜く。
スティレットでは刺突に対し完全耐性を持つスケルトンには効果が無いためだ。
斬撃にも耐性を持つが完全耐性ではない為ブレインはそのまま刀で戦う。
最初にハムスケが突進し、二体を吹き飛ばす。
骨がバラバラに砕け散り、偽りの生命力が消失する。
残る二体をブレインが斬り捨て、一体をクレマンティーヌがモーニングスターで頭部を粉砕させる。
「ま、こんなもんだよね~」
レオン以外の紅蓮の獅子の面々も強いのである。だてに元漆黒聖典や周辺国家最強の戦士と渡り合った男だとか森の賢王ではないのである。
「んじゃサクサク行くぞ」
■
そうして一時間程歩くと、何度かアンデッドの襲撃があった。
とはいってもスケルトンや
全てレオン抜きでも圧倒できる程度のアンデッドである。
歩いているとハムスケが鼻をぴくぴくしながら口を開いた。
「何か大型の物が近づいてくるでござるな。反応は一つでござる」
「大型……
レオンが知識の中から該当するアンデッドを探す。
戦闘力は巨体に見合った分あるが特殊能力や耐性は持ってないのでまだ対処しやすいアンデッドだろう。
霧の向こうからアンデッドが出現する。
「げっ。
クレマンティーヌが舌打ちをする。
現れたのは無数の人骨で構成された死の竜、
これまたクレマンティーヌとブレインに相性が悪いアンデッドだ。刺突に対する完全耐性に斬撃への耐性を持つ。
更には第六位階までの魔法の無効化能力を持つためハムスケの魔法も通じない。といってもハムスケは元からアンデッドには通じない魔法ばかり持っているが。
「俺が出るか?」
「いんや。私達で充分よ」
クレマンティーヌは舌なめずりをし、モーニングスターを構える。
最初にハムスケが突撃をする。
巨体に見合わぬスピードだ。同レベル帯では速い方だろう。
遅れてクレマンティーヌが走る。クレマンティーヌも速い方だが装備の質の問題でハムスケに劣る。
ハムスケが
そのままくるりと一回転しながら爪で攻撃し、
その右横からクレマンティーヌがモーニングスターで攻撃し、
遅れてやってきたブレインが武技<領域>と<瞬閃>を用いて
更にハムスケが爪による斬撃を放ち
そのまま身動き出来ない
「いやー、まさか
ミスリル級が対応するのが望ましいとされるアンデッドであり、充分強いアンデッドだ。
それがカッツェ平野に湧くのは非常に珍しいと言えるだろう。一ヵ月に一度程度だろう。
だからこそ、これで今日は終わりかと全員が思った。
「ふむ。また一体来るでござる」
「んじゃあ、今日はそいつ倒したら終わりにするか」
レオンが時計を確認しながら言う。
レオンが持つ時計はマジックアイテムの時計だ。この世界にも時計型マジックアイテムはある為左程珍しくはない。
マジックアイテムが示す時刻は十一時。朝から来ていた為昼飯もまだなので今からヴァディスに帰れば丁度いい時刻だろう。
「んじゃ、サクッといくますよー」
クレマンティーヌは敵影を確認すると顔を顰める。
「
現れたのはボロのローブを纏い、顔に皮膚だけが張り付いたスケルトン型アンデッド、
クレマンティーヌが苦手とするスケルトン型アンデッド、
「
指先をレオンに向け、第三位階の攻撃魔法を放つ。
バスケットボール程度の火球が生み出され、真っすぐレオンへと飛ぶ。
レオンは片手を突き出し
炎の爆発が起こる。爆炎が上がり、レオンが包み込まれる。
「どうする? 俺が出ようか?」
レオンは煙を腕で振り払い、無傷のままクレマンティーヌに問いかける。
「じょーだん。あの程度私だけでじゅーぶんだし」
「いや、俺らを忘れるなよ?」
クレマンティーヌの言葉にブレインとハムスケが主張しだす。
「いっきますよー!」
クレマンティーヌは腰を低く構え、クラウチングスタートにも似た独特の構えをとる。
スケルトン系には刺突が効かない為持つのはモーニングスターだが、攻撃手法はクレマンティーヌにとってやりやすい形だ。
突撃。風のように駆け出し、瞬く間に距離を詰める。
その一手があればクレマンティーヌには充分だ。モーニングスターで
「
だが制御が難しく、飛行するだけで魔力を消費する上飛行しながらでは他の魔法の行使が難しくなるという欠点もある。
だがそれは人での話であり、アンデッドである
モーニングスターを振るい、頭部を損傷させる。
流石に
放たれるのは魔法の矢。絶対命中という魔法特性を持つ矢はクレマンティーヌであっても回避不能だ。
だが防御出来ない訳ではない。クレマンティーヌは間にモーニングスターを器用に挟み、半分の二発を防いだ。
遅れてブレインとハムスケが
そのまま地面に押し付け、身動きできなくしたところをブレインが武技<領域>と<瞬閃>で斬り刻む。
あっという間に
「
召喚されるは
通常より階位の高い魔法で召喚した場合、通常より数を多く召喚できる仕様がある。
第三位階で召喚できるモンスターを第四位階で召喚した場合は数が増えたりするのだ。
その四体の
「邪魔だな」
だがすぐさまブレインが刀を振るい、四体のアンデッドを斬り捨ててしまう。
これがレベル差というものだ。ブレインのレベルは二十代後半に対し
瞬く間に
「おらっ! おらっ! 死ね!」
クレマンティーヌは
何度か振るえば生命力も削られていき、ついには
残ったのは
「まさか
レオンがしみじみと口にする。
本来
それが続けて出てきたことに異常事態だという事を強く実感する。レオン以外。
「取り合えずヴァディスに戻るか。このことを報告して、きちんと準備してアンデッド討伐に動くぞ」
レオンの言葉に全員賛同し、ヴァイデスに紅蓮の獅子の一行は戻るのだった。
■
「そうか……一度に
ヴァディスの冒険者組合長室でクレマンティーヌはイングラム相手に報告をしていた。
レオンは広場に行って何か良いアイテムが無いかとアイテムボックスを捜索中でブレインは何か良いアイテムが無いかと買い物に出かけている。
その為やる事が無かったクレマンティーヌが報告に来たのだ。
「そー、それで暫く探索するから、ちょっとの間帰ってこないと思う。そこんとこ注意してねー」
「わかった。他の冒険者チームやワーカーに声をかける必要は?」
「ないかな、下手な冒険者だと足手まといにしかならなさそうだし」
「了解した。そちらの検討を祈る」
「んじゃーねー」
クレマンティーヌはそう言い残すと組合長室を出る。
(さて、私はどうしようかな)
クレマンティーヌは考える。
これからの先を、レオンについて。
クレマンティーヌがレオンに従う理由として大きなものは恐怖心がある。あんな化け物に逆らえるか馬鹿野郎、という恐怖だ。
だが最近では恐怖以外もある。
レオンの強さだったり人格だったり行動などでクレマンティーヌは密かに惹かれているのだ。
恋する乙女とは言わないが、憎からず思っているのは確かだ。
レオンはそう言った事に鈍いので全く気付いていないが、クレマンティーヌが露骨にアピールしだしている事にブレインは若干気づき始めている。
(とりあえずレオン探すか)
クレマンティーヌは思考を追いやり、レオンを探す。
広場か何か探してくると言っていたので適当に探せばあるだろう、とクレマンティーヌは歩く。
だがここはアンデッドとの戦いの最前線の街、普通の街の様に公園等がある訳がない。
クレマンティーヌは歩き続け、最終的に広場というよりは修練場でレオンを見つけた。
レオンは長椅子に座り、何か袋を幾つか亜空間──アイテムボックス──から出したり戻したりしている。
何も知らぬ物からすれば奇妙な光景である。
少しばかりクレマンティーヌが眺めているとレオンは目的の物を見つけたのか顔を綻ばせた。
「見つかったのー?」
そんなレオンにクレマンティーヌは話しかけながら近づく。
「ああ。これだ」
レオンは手に持つ骸骨の頭の形をしたマジックアイテムをクレマンティーヌに見せる。
「趣味悪そうだね」
「作ったのは俺じゃないからな、拾いもんだ」
拾い物とは言うが、実際はレオンに挑みかかって来たプレイヤーを殺して得た
「名を
効果としては
使用してからクールタイムが十二時間かかるというアイテムではあるが、この世界では──特にカッツェ平野では有能なアイテムだろう。
「
クレマンティーヌは知らぬ魔法に疑問を抱き問いかける。
「ああ。第八位階のアンデッドを避ける結界を張る魔法だ」
「第八位階……そりゃまたとんでもないマジックアイテムだねー」
人類の限界である第六位階を容易く飛び越えるマジックアイテムに空いた顎が塞がらない。
「明日からはこれを使ってもっと探索するぞ。元凶を見つけるまでカッツェ平野から帰れないと思え」
「りょーかい。早く見つかるといいんだけどねー」
かくしてクレマンティーヌとブレイン、ハムスケに過酷な労働が強いられることが決まった。
エロ小説需要がありそうなのでちまちま書いて行きます
本編更新が妨げにならない頻度で書こうと思いますが、欲しかったゲームが出たので更新全体的に落ちるかもしれません