獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

15 / 17
誤字報告いつもありがとうございます


第15話

 

 翌日、紅蓮の獅子一行は再びカッツェ平野に踏み入れていた。

 冒険者組合の方から探索用としてオリハルコン級チームを追加しないかという話があったがハムスケが居る為充分だとし断った。

 

 カッツェ平野の赤茶色い大地を一行は歩く。

 

 道中、何度かアンデッドに遭遇する。

 流石に骸の竜(スケリトル・ドラゴン)死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は出ることなく、出ても精々が骸骨戦士(スケルトン・ウォーリァー)ぐらいだ。

 それ以外は単なるスケルトンやゾンビ程度でレオンは勿論ブレインやハムスケ、クレマンティーヌの敵ではない。

 

 そうして五つ目の砦までたどり着き一行はレオンのグリーンシークレットハウスで休む。

 不死者除けの芳香(アンデッド・アヴォイド・アロマ)<不死者忌避>(アンデス・アヴォイダンス)がある為警戒は余りする必要はなく、ハムスケもいる為全員ぐっすりと眠れた。

 ハムスケの感知能力は鋭い。元から一人──一匹で広大なトブの大森林の南地区を支配していただけはあるのだ。

 

 そして二日目の昼。軽く軽食を取り休憩をして進み始めた頃、ハムスケとレオンの聴覚に音が入る。

 

 剣戟の音だ。複数の音が鳴り響き、何かと戦っているのがわかる。

 

「なんか戦ってんな、どうする?」

「助けに行った方がいいんじゃないか?」

 

 ブレインがそう言う。

 

「いや、下手に手を出して因縁吹っ掛けられても困るっしょ、無視でいいんじゃない?」

 

 そう返すのはクレマンティーヌだ。

 実際、MMOなどでも横殴りは嫌われるし、マナー違反の行為でもある。

 

「某としては確認しに行った方が良いと思うでござるよ。何か苦戦しているようすでござるし」

「そうか……じゃあ確認だけして、苦戦してるなら加勢する感じで」

 

 という訳で、一行はハムスケ案内の元音の方へ向かう。

 

 

「イミーナ! 矢はまだあるか!」

 

 そう叫ぶのはまだ若い男だ。

 歳は二十代に入ったかどうか程度であり、鍛えている者だと一目でわかる。

 金髪碧眼の人並みの容姿をした百七十半ばの男だ。

 武装をし、ダガーを両手に持っている。

 

「まだあるけど、腕がつりそう!」

 

 そう返すのは女だ。

 女としては平坦な肉体を持っている。

 皮の鎧を付けた女弓使いだ。

 耳が他の者より鋭く、長い。森妖精(エルフ)程ではない為そのハーフ、ハーフエルフといったところだろう。

 

 他にはガタイの良い三十代程の男と少女が居る。男は髭が生えているが揃えているのかそこまで悪いとは感じない。

 モーニングスターを持った神官に似た服を着た男である。

 

 最後の女はまだ少女と呼べる年齢の者だろう。十代中盤程度の年齢である。

 金髪の艶かな髪を持つ少女だ。自身の身長程ある鉄の無数の文字が刻まれた杖を持っている。

 

 

「ありゃワーカーか? 下手に手を出すと面倒だな」

 

 レオンはそう呟く。音の正体である一行は全員胸に冒険者であることを示すプレートはついていない。

 ワーカーは一癖も二癖もある者が多い。何せその殆どが冒険者組合のルールに合わずワーカーとなった者達だからだ。

 つまりはレオン以上に規則や縛りに歯向かう者であり、我の強い者達である。

 

「うわ、あれ死の騎士(デス・ナイト)じゃん」

 

 クレマンティーヌが彼らが戦っている相手を見て呟いた。

 

 

 見れば一行──フォーサイトと名乗るワーカー一行は死の騎士(デス・ナイト)とそれが生み出す従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)と戦っていた。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)は計十二体存在し、ミスリルのプレートを付けた冒険者だった死体が四つに帝国騎士の装いをした者八体が居る。

 

死の騎士(デス・ナイト)……? あぁ、盾役のモンスターか」

 

 レオンは知識を絞り出し思い出す。

 ネクロマンサー系プレイヤーと戦った時によく使われた壁役として優秀なモンスターだ。

 レベル三十五のアンデッドだが攻撃性能レベル二十五相応、防御性能レベル四十相応のモンスターである。

 二百五十センチの長身に己の四分の三ほどは覆えそうなタワーシールドを持ち、赤黒いオーラを持つ百三十センチ程のフランベルジュを装備している。

 黒色の全身鎧を着ており、棘が付いている。ボロのマントを靡かせる様は正しく死の騎士だ。

 

 その死の騎士(デス・ナイト)は兜からにたにたとした表情をのぞかせ、自らの従者に生者を痛めつける様を眺めていた。

 

 さてどうするか、とレオンが考えようとした時フォーサイトのレンジャー、イミーナがレオンたちに気づく。

 

「そこの人! 出来れば助けてください!」

 

 言ってからイミーナは気づいた。このアンデッド相手に戦ってもらうなど、無謀だと。

 ミスリル級のアンデッドを四体も従え、感じられる力強さはそれ以上となるアンデッドを倒す等、出来る訳が無い。

 頼むべきだったのはまだ若い少女を連れて逃げてくれと叫ぶ事だった、と。

 

 レオンは救援を求める声を聞いて眉を潜める。助けを求められたからって助けても後で面倒な事にならないか、と。

 

「レオンさーん。助けましょうよ。死の騎士(デス・ナイト)はほっといたらまずいですって」

 

 そこにクレマンティーヌが助け舟を出す。

 クレマンティーヌは死の騎士(デス・ナイト)の脅威をよく知っている。たった一体で王国を半壊にまで持ち込めるかもしれないモンスターだ。

 その厄介さは戦闘力よりも従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)を生み出す能力だ。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)は生前と同じレベル、能力を持ち更に動死体(ゾンビ)を生み出す能力を持つ。

 死の騎士(デス・ナイト)はゾンビパニックを起こせる能力を持つのだ。

 

 そして単純に、死の騎士(デス・ナイト)はレオン以外の紅蓮の獅子面々より強い。

 命を懸けて挑めば勝機は僅かにあるだろうが、それでも死ぬ可能性が高い敵である。

 だからこそクレマンティーヌはレオンの力を借りることにした。これが練習などなら多少迷った末自分で挑むだろうが、これは実戦である。

 自殺行為をする気はクレマンティーヌには無いのだ。ブレインは己の命を懸けても勝てないかもしれない相手という事で逆にやる気を出しそうだが。

 

「しょうがねぇな、でー、デスナイト? は俺がやるから、雑魚は任せた」

「いうてあれらも雑魚じゃない気がするけど……りょーかい!」

 

 レオンが駆け出し、遅れて紅蓮の獅子の面々も走り出す。

 クレマンティーヌは得意なクラウチングスタートにも似た構えから突撃し、元ミスリル級冒険者の頭を貫く。

 だがアンデッドに致命の一撃(クリティカルヒット)はなく、そこそこ体力を減らすだけに終わる。

 

 レオンは死の騎士(デス・ナイト)の盾を殴って死の騎士(デス・ナイト)を殴り飛ばし、ノックバックさせる。

 

 ただの一撃。常時発動型(パッシブ)特殊技術(スキル)をオフにしアクティブ特殊技術(スキル)も使わないただの通常攻撃。

 それだけで死の騎士(デス・ナイト)のHPは一にまで削られた。

 死の騎士(デス・ナイト)のHPが一残ったのは死の騎士(デス・ナイト)特殊技術(スキル)、どんな攻撃を受けてもHPを一だけ残すという特殊技術(スキル)の効果だ。

 それが無ければHPは全損していただろう。

 

 死の騎士(デス・ナイト)の盾は砕け散り、死の騎士(デス・ナイト)が再度構えようとした瞬間。

 レオンの蹴りが炸裂し、死の騎士(デス・ナイト)は消滅した。

 

(さて、クレマンティーヌたちに加勢に──)

 

 そこまで考えて、レオンはふと立ち止まった。

 クレマンティーヌは言っていた。レオンに頼り過ぎだと、自分たちの力で戦うと。

 それにブレインが仲間になった目的は力を得る事だ。その機会を奪うような事は避けるべきだ、と。

 

「……ガラじゃないが、見守るとするか」

 

 レオンはそう言うとポケットに手を突っ込み、観戦する事を決めた。

 フォーサイトの面々にとってはいい迷惑である。死の危険がまだ残っているのに最大戦力が観戦を始めたのだから。

 

 

 ■

 

 

「ほらほらほらほらぁ!」

 

 クレマンティーヌはスティレットを使い刺突を繰り返す。

 ミスリル級冒険者の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)を的確に突き、損傷を与えていく。

 攻撃をしてこようとすればその動き出しを止めるスティレット使いは正しく神業と言えるだろう。レベル三十の戦士は伊達ではない。

 だが、装備が悪い。武器こそ質がいい物を使っているが防具に金をかけていない。

 これは市販品では殆どクレマンティーヌに合った装備が無いのが原因だ。命の価値が重いこの世界で軽量でかつ魔化された鎧というのは珍しい。

 クレマンティーヌはヒットアンドアウェイを戦法とする戦士だ。軽量化に移動速度特化が付いた鎧はそこそこ高いのである。

 アダマンタイト級冒険者として依頼の報酬金を三分割している為資金はそこそこあるが、エ・ランテルの鍛冶屋では質の良い鎧が無いのだ。

 その為クレマンティーヌは王都か帝都にもで行こうかと考えていたりする。

 

「オオオオオ!」

 

 アンデッドは雄たけびを上げ、クレマンティーヌにロングソードを使って襲いかかるがスティレットでいなされる。

 

 ミスリル級冒険者の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)のレベルは十六から十八程度。クレマンティーヌとは十レベル以上離れている。

 ユグドラシルでは基本戦闘職間ではレベルが十も離れていれば戦いにならないという。それはこの世界でもある程度通じる法則だ。

 故にレベル三十という英雄の領域にいるクレマンティーヌは圧倒出来るのだ。

 

 そうして何度も刺突していればついにアンデッドの偽りの生命力も削られきれ、ついに従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)は生命──生命じゃないので正しくないが──活動を停止……死んだのだ。

 

「残るは──、ん-、手出ししなくていいかな?」

 

 見れば、残る二体の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)をブレインが。ゾンビの群れと最後の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)をフォーサイトが相手している。

 これならば自分が出る幕はなさそうだ、とハムスケと共に周囲の警戒に移った。

 

 

 ■

 

 硬い金属同士がぶつかり合う音が響く。

 刀と鋼鉄の刃がぶつかり合う音だ。一撃一撃が必殺の刃であり、常人ならば即死させれるだけの威力を秘めている。

 

 ブレインは二体の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)の猛攻を武技<領域>を用いて防いでいた。

 攻勢には出ない。出ようと思えば出れるが、今は防ぎたい気分だった。

 

 そうして何度も攻撃を防いで、ブレインはふぅー、と息を吐く。

 

(大丈夫、俺は弱くない。強い)

 

 

 何度か、ブレインは依頼を受ける道中等でレオンやクレマンティーヌ、ハムスケと手合わせをしたことがある。

 結果は全て敗北。レオンにはデコピンで負け、クレマンティーヌとハムスケは普通に戦って負けた。

 ブレインのレベルは二十七であり、クレマンティーヌとハムスケ両方ともレベルで負けている。

 ただそこまで大きい差ではない。だが、経験という差で負けていた。

 クレマンティーヌは元漆黒聖典として激務の日々を送っていた。人類の敵たる亜人種や異形種は多い為、スレイン法国では基本レベルの高い者に休みは殆ど訪れない。

 その為各地を適当に放浪したりそもそも幼少期は農村でのほほんと暮らしていたブレインとは戦闘経験の数と質が違うのだ。

 農作業の傍ら片手間で適当に剣の稽古をして強くなったブレインは何気才能の塊ではあるが。

 

 故、ミスリル級相応の相手と戦い、自信を取り戻したかったのである。

 

 

「──せい!」

 

 ブレインは<領域>からの<瞬閃>の上位武技<神閃>を放つ。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)の胴体を斜めに切り裂き、多大なる損傷を与える。

 一体の動きが鈍った隙にもう一体に怒涛の連撃を放つ。

<斬撃>の武技も混ぜた攻撃により従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)の一体は倒された。

 

 残る一体もブレインは攻勢に転じることで斬り刻み、瞬く間に倒したのだった。

 

 

 

 ■

 

 

「おい、無事か、ワーカー共」

 

 レオンはワーカー、フォーサイトの面々に話しかける。

 死の騎士(デス・ナイト)従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)動死体(ゾンビ)も全て倒され、静寂がやって来る。

 ハムスケが警戒にあたっている為レオンたちは余り警戒する必要はないためある程度気楽に話す事が出来る。

 

「無事です、ありがとうございます、え~と」

「俺はレオンだ。其処の女がクレマンティーヌで、刀持ってるのがブレイン、あそこの獣はハムスケだ」

「レオンさん、救援本当にありがとうございます。俺たちはフォーサイト。俺がリーダーのヘッケランで、アーチャーのイミーナ、神官のロバーテイクと魔法詠唱者(マジック・キャスター)のアルシェだ」

 

 よろしく、と全員が挨拶をする。

 

「しかし災難だったねー、死の騎士(デス・ナイト)と遭遇するなんて、生き残れただけ儲けもんよ」

 

 クレマンティーヌの言葉にアルシェが驚く。

 

死の騎士(デス・ナイト)?! 師匠がどうにか封印したという……」

「知っているのか? アルシェ」

 

 ヘッケランがアルシェに問いかける。

 

「うん。……フールーダ・パラダインが高弟と共に対処に向かったという伝説級のアンデッド。あれがそうだったとは……納得も出来る」

 

 フールーダ・パラダイン。伝説級の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。

 帝国に二百年前から仕える老人であり、偉大なる魔法使いである。

 それが対処に赴くという時点で対称の難度の高さが伺えるというものだ。

 

 レオンはあれレベル三十程度の雑魚アンデッドなんだがな、と一人感覚の違いに難儀する。

 

「多分、あれが最近の強いアンデッドの発生源じゃないかな? あの難度のアンデッドは早々発生しないし」

 

 クレマンティーヌはそういい、レオン以外が納得する。

 立て続けに発生していた高難度のアンデッドモンスターの原因と考えればわかりやすい。

 

「とりあえず討伐したことを冒険者組合長に報告にいくぞ。あんたらはどうする?」

 

 レオンはフォーサイトの面々に問いかける。

 

「俺たちも一旦ヴァディスに戻ります。流石に疲れたので……」

「そうか、なら俺たちに着いてくるといい。いくぞ」

 

 

 という訳で紅蓮の獅子はフォーサイトを連れヴァディスに帰還した。

 

 

 

 

 

 

「作った死の騎士(デス・ナイト)の反応が消えた?それほどの強者がこの地に居たのか?……気になるが、王都に先に行くとするか」

 

 

不死者の王との邂逅の時は近い。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。