獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第16話

 

 レオンとクレマンティーヌはイングラムに死の騎士(デス・ナイト)討伐の知らせを伝えていた。

 恐らく元凶であろうアンデッドを討伐した、と伝えたがイングラムの顔は明るくならない。

 まだ仮の元凶であり、本当にそれが原因だったか不明だからだ。その為一週間は紅蓮の獅子にカッツェ平野の探索を頼むことにした。

 これにイングラムは胃が痛くなる思いがする。アダマンタイト級冒険者を更に一週間も拘束するとなればその報酬金は高くなる。

 だからと言ってここでケチるような馬鹿な真似をすることはないが。

 

 冒険者組合を出たレオンたちは出先で直ぐフォーサイトと遭遇する。

 

 フォーサイトのリーダー、ヘッケランが「俺がおごるので、飲みに行きませんか?」と提案してきた。

 相手がワーカーという危険人物ではあるがただ飯とただ酒にレオンとブレインが釣られ、クレマンティーヌは仕方がないなと承諾。

 一行はヴァディスに多数ある飲食店の一つに向かう。

 

 ヴァディスには冒険者やワーカー向けの飲食店が多数ある。

 冒険者の殆どは料理なんて出来ないものだ、その為に飲食店には需要があり、数も多い。

 

 フォーサイトがヴァディスに来たらよく行くという飲食店に誘われレオン一行は中に入って食事を待つ。

 食事が進み、酒も程よく回り──レオンは酒というか毒が効かない為酔えないが──レオンが常識の範囲内で少しだけ多く食べ、お開きという事になった。

 

 一行は店の外に出て別れた。

 

「しかし変な縁が出来たな」

 

 宿へと歩きながらレオンが口を開く。

 

「ま、考えようによっては悪くないんじゃないですか? 有力なワーカーとのコネですよ」

「コネなぁ。余り使い方とかわからねぇんだよな……」

 

 等と話しながら一行は宿屋へと戻るのだった。

 

 

 

 ■

 

 それから一週間が経った。

 一週間の間紅蓮の獅子はカッツェ平野を探索したが強大なアンデッドが発生する事はなかった。

 精々が骸骨戦士(スケルトン・ウォーリァー)が一体湧いたぐらいであり、平穏其の物だった。

 その為に依頼は終了となり、紅蓮の獅子はエ・ランテルに帰還した。多額の報酬と共に。

 

 

「私の装備さー、もっといいのにしたいんだけど」

 

 紅蓮の獅子が泊っている宿、黄金の輝き亭のロビーでクレマンティーヌがぼやいた。

 

ここ(エ・ランテル)じゃいいのは無いのか?」

 

 レオンがそう問いかける。

 

「無いんだよねー、私用に合うのってなるともうオーダーメイドするぐらいなんだけど、腕のいい職人も居ないし」

「そうか……どうしたものか」

 

 レオンは考える。仲間の装備となればそれは金をかけた方が良いだろう。

 だがレオンのコネに武具職人は居ない。その為無難な回答をすることになる。

 

「それなら王都に行くのはどうだ? 王都程の都市ならいい職人ぐらいいるだろ」

「王都かー、確かにね。青の薔薇も王都で活動しているって聞くし……」

「いいんじゃないか? 俺も王都に行きたい用事あるしな」

「なんだブレイン、王都に何の用があるんだ?」

「ちょっとガゼフ・ストロノーフに会いたくてな。今の俺とあいつ、どっちが強いか勝負したい」

 

「んじゃあ、行くか、王都リ・エスティーゼに」

 

 かくして紅蓮の獅子は王都に向かう事が決まったのであった。

 

 

 ■

 

 王都は遠い。

 一ヵ月も掛かるような距離ではないが、馬車で二週間とちょっと、と言ったところだろう。

 だが、紅蓮の獅子には移動手段がある。ハムスケの事だ。

 ハムスケの移動速度は高く、更に異形種である為スタミナも高い。

 その為ハムスケにクレマンティーヌとブレインが騎乗し、レオンは走る事にした。

 レオンまで乗ると流石にハムスケには荷が重いし、単にレオンがハムスターに乗れるかボケ、というのがあった。

 

 爆走するジャンガリアンハムスターと大男という傍から見れば怪しい事この上無い。

 

 だが、幸運にも誰にも見られることなく、モンスターや盗賊の襲撃を受けることなく一行は王都に辿り着いた。

 

 王都にも当然検問はある。

 一行はハムスケを外に置いて検問所の中に入り、受付を済ませる。

 其処に丁度一人の兵士が通りかかり、レオンの顔を見るなり「あ」と声を漏らした。

 

「レオンさんじゃないですか! 王都に来られたんですね!」

 

 兵士はレオンに話しかけるが、レオンは兵士を知らなかった。

 レオンは取り合えず誰か問いかける。

 

「誰だ、お前」

「ああ、知らなくても無理はないでしょう。私は王国戦士団の一員です。戦士長と共にカルネ村に赴いた者の一人ですよ」

「ああ、なるほど」

 

 ならば相手が自分を知っていても不思議ではない、とレオンは納得する。

 

「ここは通行税を私に支払わせてください。命を救ってくれた恩を少しでも返したいのです」

「そうか? なら今回は頼むわ」

「ありがとうございます」

 

 という訳で一行は三人と一匹分の通行税を代わりに払ってもらい、王都へと進む。

 

「今日、戦士長は非番なんです。良ければ戦士長の家まで案内しましょうか?」

 

 兵士はレオンにそう問いかける。

 レオンとしては断ろうかと思ったがブレインがキラキラした目をし出したので大人しく受け入れる事にする。

 

「わかった、頼むわ」

「畏まりました! どうぞ、こちらです!」

 

 王都の広い大通りの車道にはハムスケが通り、歩道にはレオンたちが通る。

 向かう先は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの邸宅だ。

 

 

 これが王都か、とレオンは謎の感動をする。

 車道をハムスケが歩き、歩道をレオンたちが歩く。

 周囲の人々はハムスケの異様に恐怖と畏怖をし、ハムスケを連れているレオンの胸元に光るアダマンタイトのプレートを見て安心する。

 その様を見てレオンは(こいつどう見てもハムスターなんだが)と疑問を抱く。

 

 そうして歩いていると王都の一等地に入り、ガゼフの邸宅に到着する。

 作りとしては素朴だ。大きくはあるが、飾られてはいない。王国最強の者が住まう家としては非常に質素と言えるだろう。

 同行してきた兵士が呼び鈴を鳴らすと召使の老いた男が出てくる。

 

「何用でしょうか?」

「ストロノーフ隊長に会いに来ました。レオン殿が来たとお伝えください」

「わかりました」

 

 男は邸宅に戻る。

 暫くするとガゼフが出てくる。

 私服ではあるがこれもまた王国最強には相応しくないような、そこらの平民が着るような服である。

 ガゼフはレオンの顔を見ると顔を喜ばせる。

 

「レオン殿! よく来てくださった!」

「ああ、暇だったんで来てやったぞ」

 

 レオンはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「よく連れて来てくれた。今日は仕事だろう? 業務に戻れ」

「はっ! わかりました!」

 

 レオンたちを連れて来た兵士は敬礼をすると去っていく。

 

「それで、お連れの方はレオン殿の仲間ですかな?」

「ああ、俺の仲間の──」

 

 レオンが紹介しようとした時、ブレインが一歩前に出る

 

「ブレイン・アングラウスだ。久しぶりだな、ガゼフ・ストロノーフ」

 

 ブレインの顔を見て、ガゼフは目を見開いた。

 

「ブレイン……アングラウスか! そうか、冒険者になっていたんだな!」

 

 ガゼフは顔を明るくする。

 

「ああ、どうだ。後で一発やりあうってのは」

「いいぞ。あれからお前がどれだけ強くなったのか、俺も興味があるからな」

 

「なんだ、結構仲いいじゃないか」

「どっちかというとライバル関係っぽいですけどねー」

 

 

 

 

 ■

 

 

 その後、レオンたちはガゼフの家で歓待を受けた。

 軽く昼食をとり、では早速という事でブレインとガゼフが庭に出て試合をすることになった。

 

 

 

「クレマンティーヌ。どっちが勝つと思う?」

「ん-、ここは仲間を信じてブレインが勝つってことで」

 

 レオンとクレマンティーヌは観戦の姿勢だ。

 

 ガゼフの家の庭は広い。二人が試合をするのに問題ない程度の広さはある。

 

 お互い、武器を構えての戦闘だ。

 ガゼフは予備の剣、ブレインは何時もの刀だ。

 

 流石にブレインはポーションを飲むことによるバフは無しでの戦闘ではあるが、武技の使用も禁止しないほぼ実戦形式の戦いだ。

 

「いくぞ!」

 

 先手はガゼフ。

 

 剛剣を以てして果敢に攻めかかる。

 それをブレインは武技<領域>で感知ししのぐ。

 刃を刀の腹で捌き、時に足さばきで除け、攻撃を防ぐ。

 

 何十合という剣戟。見る者を魅了しかねない、剣豪同士の戦いだ。

 クレマンティーヌは想定以上のガゼフの剣に舌を巻き、レオンは雑魚同士がなんかやってんな、で終わらした。

 

 そうしていると、次はブレインが攻めに転じる。

 狙うは手首、手首を斬り落とした程度ならば手持ちのポーションで繋げられる。

 

 武技<領域>からの<神閃>

 

 だが、ガゼフはそれを読んでいた。

 同時に<四光連斬>を発動し、ブレインの刀を弾くと同時に体にダメージを与える。

 

 そのまま蹴りを加え、ブレインを倒す。

 

「勝負あったな」

 

 ブレインの首に剣を置き、勝利宣言をする。

 

「ああ、俺の負けだ」

 

 ブレインは潔く負けを認めた。

 

 

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