獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第2話

 

 村長の家にレオンとガゼフ、村長の三人は入り窓を隠れる様に除く。

 窓の向こう側には頭部を隠すフルフェイスにマントを着用した魔法詠唱者(マジックキャスター)らしき者が居た。

 傍には天使系モンスター、第三位階魔法で召喚できる炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)が浮いている。

 

(ありゅユグドラシルの天使系モンスターか? ユグドラシルのモンスターもいるのか)

 

 レオンはふむ、と考える。

 レオンはモンスターに対してあまり詳しくはない。有名どころや第十位階でよく召喚されるモンスター程度は覚えているが、第三位階などという序盤の序盤でしか使わない魔法で呼び出されるモンスター等一々覚えていない。

 さてどうしたものか、とレオンは考える。

 

「多数の魔法詠唱者(マジックキャスター)……あれほど揃えられるのはスレイン法国、しかも特殊部隊の六色聖典のいずれかだろう」

「スレイン法国? この村を襲ったのは帝国の騎士じゃなかったって訳か」

「ああ。装備を変えた偽装兵だったという事だ……」

 

 ガゼフは一度ため息を吐く。

 

「レオン殿。良ければ雇われないか? 報酬は望む額を出そう」

 

 レオンはその提案にふむ、と考える。

 レオンにとっては悪くない提案であった。この世界での通貨を持っていない以上活動方法が限られる。

 無論レオンの手持ちにあるユグドラシル金貨を換金すれば大金が容易に手に入るが、ユグドラシル金貨の入手方法が限られた今換金はしたくない手だ。

 故、雑魚と戦うだけで金が手に入るというのは渡りに船である。

 

「いいぞ。報酬はあれだ、お前が払いたいだけ払ってくれればいい」

「なんと! ありがとう。必ずや見合った報酬を支払いましょう!」

 

 任せてください! とガゼフは胸を張る。

 

「では作戦を考えましょう」

「作戦? いらねぇだろそんなの。俺がちょっと行って皆殺しにすれば済む話だ」

「……相手は一国の特殊部隊。それに真正面から戦って勝てると?」

「俺なら勝てる。俺は最強だ」

 

 ただの驕りか? とガゼフは一瞬疑問を抱いたが、直ぐにそれは真実だとわかる。

 何せレオンが強いのが強者の感覚として分かる。

 この世界の一定以上の実力者は相手の実力がある程度読み取れる。その感覚をもってすればレオンはこれまで感じた事の無い力を持っていると分かる。

 レオンは普段探知阻害の指輪などを装備しない。というかマジックアイテムは基本装備しない。例外として装備品はマジックアイテムだが自動修復が付いている程度の下位のアイテムだ。

 

「……ならばレオン殿に先行して貰い、戦士団が後詰として突撃する形にするのはどうだろうか」

「それでいいんじゃないか? 流石に人数が多いから取り逃がしそうだしな」

 

 そう言いながらも逃がす気はない。

 余り使いたくはないが範囲攻撃系の特殊技術(スキル)も習得しているし、普段使いする範囲攻撃の特殊技術(スキル)はレベルにして二十以下は即死するだけの火力はある。

 

「うし。じゃあ行くぞ」

 

 

 ■

 

 

 カルネ村を包囲する様に囲うスレイン法国の特殊部隊、六色聖典の一つ陽光聖典。

 その陽光聖典の隊長ニグン・グリット・ルーインは特徴的な男だ。

 左目に傷がある優男と言った雰囲気の男である。

 そして当然隊長であるからには実力も相応に高く、第四位階の魔法の行使させ可能とする。

 この世界では第三位階が天才の領域。第四位階は天才の中でも一握りの領域。第五位階は超がつく領域の天才か傑物の領域。第六位階は人類の限界とされている。

 つまりは第四位階の使えるニグンは人類の中でも上位の存在である。

 

「……なんだ、あの男は?」

 

 そんなニグンは村から歩いて来る男に疑問を抱いた。

 

 歩いて来るのは筋骨隆々の大男だ。身長は二メートルを超えている。

 更には割れた腹筋が見え、丸太の様に太い手足を持っている。

 言うまでも無くレオンである。

 

「……風花聖典め。あのような者が居るとは聞いてないぞ」

 

 ニグンは内心舌打ちをする。

 風花聖典とは草、スパイの事だ。王国中に風花聖典は居る。

 それらの情報にあのような外見の実力者の情報は無かった。もしかしたら王国秘蔵の戦力かもしれないと警戒する。

 

「総員。天使を召喚し、あの男にぶつけよ!」

 

 ニグンは声高高に命令を下す。

 命令に従い陽光聖典の隊員が第三位階魔法<召喚天使3rd>(サモンエンジェルサード)を行使する。

 召喚されるのは何処か機械的な外見を持つ翼と光輪を持つ天使モンスター、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)だ。

 

 

「雑魚をいくら出した所で無駄だと知れ」

 

 レオンは好戦的な笑みを浮かべる。

 

 陽光聖典の隊員数は二十名を超える。二十を超える天使の突撃に対しレオンはポケットに手を入れたまま迎え入れる。

 

 天使の刃がレオンの体に刺さった。

 

「……思い過ごしだったか?」

 

 ニグンは成す術無く攻撃を受けたレオンに対し過大評価だったかと思案する。

 だがそれは直ぐに間違いだったと知る。

 

「カス共が……前菜にすらならん!」

 

 レオンはそう言うと自身の胸に攻撃を当てている天使二体の頭を掴み地面に叩きつけ、殺害する。

 召喚されたモンスターは倒されると光の粒子となって消える。天使は光となって消えた。

 

「さぁこい。殺戮ショーだ!」

 

 レオンは意気揚々と宣言し、天使に突撃する。

 

 天使の頭を殴って壊し、胸を殴って壊し蹴って殺しの蹂躙劇だ。

 酷いのはレオンの攻撃が碌に鍛錬も積んでいないようなものの動きであることだ。一見すれば素人の攻撃でやられている様にしか見えない。

 だがそれもレオンの圧倒的なステータスの高さによるモノだ。レオンはボスキャラ化したプレイヤー以外の全てのプレイヤーのステータスを上回る。

 そのステータスがあれば通常攻撃が一撃必殺にもなるという訳だ。

 

「ま、魔法も使え!」

 

 ニグンは慌てて追加の命令を下す。

 天使がやられることで放心していた隊員たちも隊長の命令によって心を取り戻し魔法を行使する。

 

 <魔法の矢>(マジックアロー)<衝撃波>(ショック・ウェーブ)<盲目>(ブラインドネス)<炎の矢>(フレイム・アロー)

 その他第三位階までの多種多様な魔法がレオンを襲う。

 

 レオンがとった行動は回避でも防御でも無く──またしてもポケットに手を入れての静観。

 

 全ての魔法がレオンに命中し、爆炎を上げた。

 

 やったか、とニグンを含めた陽光聖典の心が一致する。

 だがすぐに煙が晴れ、現れたのは無傷のレオン。

 先の魔法攻撃でレオンは1%のHPも削れていない。それどころか治癒能力で既に回復している。

 

「いくぞ──鏖殺だ」

 

 レオンはそう言うと駆け出し最も近い隊員に近づく。

 そのまま頭をねじ切り千切り、他の隊員に向けて投擲する。

 投げた頭は他の隊員に見事命中しその隊員も絶命する。隊員たちは遠距離攻撃に対する耐性を得る魔法を使用していたがその耐性をレオンの攻撃力が上回った。

 

 レオンの圧倒的な力を前に恐怖する陽光聖典に更に悪夢が襲い掛かる。

 

「ウオオオオオオオオ!」

 

 村からガゼフ・ストロノーフ率いる王国戦士団が馬に乗ってやってきたのだ。

 

「これは……まずい!」

 

 ニグンはすかさず切り札の使用を決意する。

 

 この任務を受けた時にスレイン法国の大神官から受け取ったスレイン法国の至宝の一つ。

 六大神──人類を救ったとされる神──が残した秘宝。

 

 それは第十位階までの魔法を閉じ込め誰でも使えるようにするという破格のマジックアイテム。魔封じの水晶。

 名の通り水晶上のアイテムである。

 

 ガゼフたちも馬上から攻撃したり馬で突撃するなどで隊員たちと戦い、レオンは虐殺で夢中で気づかなかった。

 気づけたのはガゼフのみ。

 気づいたガゼフは馬から飛び降り、武技──戦士にとっての魔法のような物──を行使する。

 

「<空斬>!」

 

 使われるのは斬撃を飛ばす武技、<空斬>だ。

 使用者の実力によって威力と飛距離が変わる武技である。更には距離によって威力も減衰する。

 その為ニグンに届くころには威力は殆ど減り、ニグンが纏う装備の効果にもよって多少のけぞらせる程度で終わってしまった。

 これがガゼフの最強装備であるレイザーエッジ等であれば違っただろうが、たらればを話しても意味がない。

 

 結果、ニグンにとっての切り札が発動される。

 

「みぃよ! 、最高位天使を! ──威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!」

 

 魔封じの水晶が砕け、魔法が発動される。ニグンが召喚していた監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)は送還された。

 中空に天使モンスターが召喚される。

 一見すればそれは光り輝く翼の集合体にも見える。だがはっきりと体はあり、両の手で笏を持っている。

 体はあるものの頭や足は無い。

 

 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)常時発動型(パッシブ)特殊技術(スキル)によって周囲が光照らされ、空気が清浄なる物へと変わっていく。

 

 それを見たレオンは一言。

 

「雑魚天使じゃねぇか!」

 

 レオンは怒りと共に跳躍。浮いている威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)に向かって跳ぶ。

 刹那で距離を詰めたレオンはそのまま威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)の体に向かって殴打。一発拳を入れる。

 

 たったそれだけで、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)のHPはゼロとなり、死亡した。

 

 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)が光の粒子となって消えていく。

 

「は……?」

 

 その光景がニグンには信じられず、間抜けな声を漏らす。

 あり得ない。あり得てたまるものか。最高位天使がたった一撃で滅ぼされるなど──

 

 ニグン、いやスレイン法国の殆どの者は監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)を最高位天使だと思っているが実際は違う。

 たかが第七位階で召喚される程度の天使だ。更に上にセラフ級の天使等がいる。

 

「トップはてめぇだな!」

 

 レオンは空か地面に降りるとニグンに向かって駆け出す。

 呆けたままのニグンは行動が一手遅れ、レオンの接近を許した。

 

 しまった、と思った時にはもう遅い。レオンがニグンの頭を掴んでいた。

 

 レオンはそのままニグンの頭を体から引きちぎり絶命させた。

 

 それを見たガゼフは声高々に叫ぶ。

 

「お前達の指揮官は死んだ! 抵抗は辞めて大人しく縄に着け!」

 

 その言葉に死にたくないと思った陽光聖典の隊員たちは召喚魔法を解除し両手を上げた。

 

「ちっ。つまらん」

 

 これ以上殺せないことにレオンは舌打ちをするも追撃する気はなかった。

 

 

 

 ■

 

 カルネ村にて。

 王国戦士団は陽光聖典を拘束し、カルネ村から最も近い都市エ・ランテルに護送する事が決まった。

 

「レオン殿。貴殿には感謝しても足りない。必ずやこれに見合った報酬を渡そう!」

「ああ。しばらくはカルネ村にいるから、まぁぼちぼちくれや」

 

 レオンは興味なさそうに振る舞う。というか金以外大して興味がない。

 一国の特殊部隊だというから期待して見ればレベル二十以下の雑魚共ばかり。やる気も失うというものだ。

 レオンは弱者の蹂躙が好きだが、雑魚過ぎるのも考え物である。

 

「じゃあな、ガゼフ・ストロノーフ。また会おう」

「ああ、直ぐに会いに来よう!」

 

 そうして王国戦士団はカルネ村を旅だった。

 

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