獅子王レオンとオーバーロード 作:野生の生蛇
レオンは一人カルネ村の適当な家の屋根の上で寝っ転がっていた。
レオンはこの数日、カルネ村で楽しく過ごした。
柵を作る為の木材を得るために肉体労働したり、村の修復作業を多少手伝いしたりするなどして過ごした。
それ以外にもカルネ村に隣接するトブの大森林で鹿等を狩って村で調理してもらうなどをしてもらっていた。
「あ……?」
レオンの鋭い聴覚に馬の足音が入った。
この村では牛を飼ってはいるが馬は飼っていない。つまりは他所から来たという事。
また面倒事か? とレオンは疑問を抱きながら屋根から飛び降り、音のする方へ歩いて行った。
「……ありゃ冒険者か?」
レオンはふむ、と考える。
街道を真っすぐと進んで来るのは武装した一行だ。
皮の鎧で武装した者達であり、軽装だ。全身鎧などは着ていない。
彼らは馬車の御者を除いで全員が胸からプレートを下げている。銀のプレートだ。
彼らは冒険者パーティ漆黒の剣の一行と彼らに護衛されているエ・ランテルの薬師ンフィーレア・バレアレである。
馬車がある程度近づいた段階でレオンは声を上げる。
「止まれ! てめぇらこの村に何の用だ!」
その言葉にンフィーレア一行は大人しく止まり、代表者として漆黒の剣のリーダー、ペテル・モークが歩いて来る。
軽装鎧を纏った金髪碧眼の若者だ。顔立ちは整っているがそれ以外の特徴は特にない。
「私たちはこの村に薬草採取をしに来た者です……この村に何かあったのでしょうか」
レオンはその言葉に嘘はないと判断する。
先日のスレイン法国の件からの増援等であればこの程度の雑魚を寄越す理由がないからだ。
「そうか。この村はちょっと帝国の騎士に襲われてな。それ関係でちょっとナイーブになってんだ」
「帝国の騎士に? ……なるほど。この村も襲われていたんですね」
エ・ランテルでも話題には上がっている。エ・ランテル周辺の村々が帝国騎士に襲われているという事は。
だからこそ簡単に納得した。
「ま、念のため俺が着くだけだ。自由にしてもらって良いぞ」
「わかりました。仲間にも伝えてきます」
ペテルはそう言うと仲間たちの元に戻り、話を伝える。
納得した一行は馬車を進め村へと入る。
村の端に馬車を止め、御者が降りる。
降りたのは両目が髪で隠れている若者だ。歳はまだ二十にも届かない程だろう。
名をンフィーレア・バレアレ。エ・ランテル最高の薬師と名高いリイジー・バレアレの孫である。
ンフィーレアはレオンに近づき話しかける。
「えっと、この村が襲われていたと聞きました。一つ聞きたいのですが、エンリという人を知っていますか?」
ンフィーレアは緊張しながら話す。
エンリ・エモットはンフィーレアの思い人だ。もし襲撃で亡くなって居たら、なんて考えると寒気がする。
「ああ。知ってるぞ。なんか用があるのか?」
「よかった……! すみません、ちょっと話したいことがあるので失礼します!」
ンフィーレアはそう言うとエンリの家に向かって駆け出してしまった。
なんだったんだ、とレオンは疑問に思い、漆黒の剣一行は若いなぁ、と温かい目で見守った。
■
「ンフィーレア!」
エモット家の家で。玄関を開けたエンリは思わぬ来客に顔を明るくした。
「エンリ! よかった、無事だったんだね!」
レオンから多少は聞いていたが、実際に目にすると違う物がある。
「えぇ。私は無事よ。だけど……両親が……」
エンリは顔を一転して暗くする。
その後、エンリとンフィーレアは話し合った。
両親が亡くなった事。命の危機をレオンに救われた事など。
「何かあったら、直ぐに呼んでよ! 力になるから!」
そうンフィーレアは言い残し、エモット家を後にした。
■
「レオンさん。この村は帝国騎士に襲われたんですよね?」
レオンは村の端で漆黒の剣の一行の一人、ニニャに話しかけられていた。
ニニャは小柄な
男装した女である。
「ああ。そうだが」
レオンは一応スレイン法国辺りは隠しといたほうがいい、と思い隠して話す。
「……村人も犠牲になったんですよね?」
「ああ、そうだが。なんか問題でもあるのか?」
何が聞きたいのかわからない、と言った様子でレオンは話を続ける。
「それがどうかしたのか? ニニャ」
リーダーであるペテルもニニャが何を話そうとしているのかわからず問いかける。
「……エンリさんの両親も亡くなっているんですか?」
「死んでるな。俺が来た時には手遅れだった」
「そうですか……これはちょっとまずいかもしれません」
その言葉にレオンとペテルは頭にはてなマークを浮かべる。
「この村は今余裕がない。その状態で両親を亡くした子供が二人、生きていけると思いますか?」
その言葉にペテルはハッとし、レオンも遅れて納得する。
親を亡くした子供二人。正し助けてくれる者は居ない。
まず間違いなく真っ当に生きていけない。犯罪に手を染めるか、ワンチャンスをかけての冒険者か、素直に体を売るかの三択しかない。
「なるほどな。まぁそこまでは俺の関与するところじゃねぇなぁ」
レオンはカルネ村に大した興味を抱いていない。
金を貰った後は死のうが滅ぼうがどうでもいい事である。エンリが死のうとどうでもいい。
「これはンフィーレアさんに話した方がいいでしょう」
ニニャはそう言うとレオンにエモット家まで案内してください、とレオンに案内させる。
レオンたち一行はエモット家の家から出てため息を吐くンフィーレアを見つけた。
「ンフィーレアさん。話があります」
ニニャが慎重な面で話しかける。
その姿にただ事ではないと察したンフィーレアは「なんですか?」と緊張しながら答える。
「今すぐエンリさんと結婚してください」
「……はい?!」
突然の結婚宣言にンフィーレアは驚愕する。レオンも驚愕した。
「このままだとエンリさんとその妹さんは飢えて死にます。もしくは娼婦となって使い捨てられるかです」
「ま、待ってください。どうしてそんな話に?」
「エンリさんの両親が亡くなり、畑の管理もままならない。他の村人たちに助けてもらおうにも村が襲撃され村が立ち行かなくかもしれない状況。この状況で大人ではないエンリさんと幼い妹さんが食べていけるとお思いですか?」
「……」
その言葉にンフィーレアは黙りこくる。
正論だ。ぐうの音も出ない正論に黙るしかない。
「だからこそ、結婚です。結婚となれば正当にエ・ランテルに移住できますし、妹さんを養う事も出来る。村でエンリさんたちだけに援助する、言っておきますがなんてなれば他の村人が黙ってはいませんよ」
「そう……ですよね……」
ふぅー、とンフィーレアは深いため息を零す。
レオンはこの場に俺必要か? と疑問に思ったが人間の恋愛見るのも面白そうだと思って残る事にした。
ンフィーレアは駆け出し、エモット家のドアを堂々と開ける。
「エンリ! 話があるんだ!」
そう叫ぶと家の中に入り、会話が聞こえなくなる。
レオンは鋭どい聴覚で盗み聞きする事も出来なくはないが、さすがに出歯亀が過ぎるので辞めた。
そうして五分程待つと、顔を赤くしたエンリと同じくちょっと顔が赤くなったンフィーレアが出て来た。
「決めました。エ・ランテルで結婚します」
皆が祝福の拍手をし、取り合えずとレオンも拍手をした。