獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第4話

 

 ガゼフ・ストロノーフは身軽な格好──腰に剣を下げただけの軽装鎧すら付けてない状態で馬を駆る。

 このような身軽な格好で馬を駆るのは当然理由がある。

 その理由はレオンの存在だ。

 

 突如現れた、自身より圧倒的に強いモンクのレオン。

 それが何故か自分を助けてくれた、という状況に混乱するも有難いとは思う。

 

 だが、安心しては居られないのが現実だ。

 

 現状レオンはスレイン法国とは敵対し、バハルス帝国とは関係が不明。

 

 もし、レオンがバハルス帝国に着いたら? 

 

 そうなった場合、真っ先に死ぬのは自分だろう。自慢ではないが、帝国が王国を攻め切れていない理由にガゼフ・ストロノーフの存在がある。

 そんなガゼフを一方的に打ち倒せる存在であるレオンが帝国に着けば、ガゼフは負けて死ぬ。そうなれば王国は帝国に滅ぼされる。

 それだけはどうやっても避けなければならない。

 

 ならばレオンを帝国より前に王国に取り込むしかないが、その方法が思いつかない。

 

 金に執着はあるようだが、それ以外は不明。だが金だって平民であるレオンに金を出したくないと貴族がごねる為王が直接払うしかないが、その金も少ない。

 となれば当然、王国より栄えていて貴族達の意志の統一が出来ている帝国の方が金払いはいいだろう。

 どうにか王国に着いてもらいたいが、その方法が無い。となれば最悪、暗殺するかとなるがレオンを殺せる存在などガゼフには思いつかない。

 

 それ以外にもエ・ランテルで拘束中の陽光聖典の隊員たちが暴れたりした時の為に拘束できるガゼフが離れるというのは問題だったが、レオンへの報酬を渡す方を優先している。

 ガゼフは王派閥であるエ・ランテルの都市長パナソレイに話を通し、一旦金を借りてきていた。

 

 どうしたものか──悩みに悩みながらガゼフは馬を駆け、一刻も早くカルネ村に着く為に。

 

 

 

 ガゼフが村に着き、レオンの居場所を村人に聞いてレオンの元まで走って来た時。其処は妙な場であった。

 拍手され、祝福される二人の若人。何故かレオンも拍手しているのが気になって仕方がない。

 

「ガゼフか」

 

 レオンはガゼフの存在に気づき、拍手を辞める。

 

 レオンの言葉にンフィーレア一行が驚く。

 噂に名高い王国戦士長の名が気軽に出たのだ。しかも敬称も付けずに。

 

「ああ。レオン殿。約束の報酬を持ってきた」

「ほー、殊勝なこって」

 

 レオンはガゼフの元まで歩き、片手を差し出し金を要求する。

 ガゼフは懐から袋を取り出し、レオンに渡す。

 渡したのは手のひらサイズの袋だ。

 

 レオンは無造作に袋の口を開け中身を確認する。ともすれば無礼とも思われる行動だがガゼフは気にせず、代わりにンフィーレアが気にした。

 

「ほー、金貨以外に宝石もある……これ現金足りないからって宝石で誤魔化してんのか?」

「ああ、すまないが急な事で現金を用意出来なくてな……私の紹介状も書くので、換金はそちらで出来ると思う」

「そりゃありがたい……そうだ」

 

 レオンは袋から宝石を五つ取り出し、ンフィーレアに「ほれ」と投げ渡す。

 慌ててンフィーレアは宝石を受け止める。

 その隙にレオンは袋をアイテムボックスに仕舞う。

 

「結婚祝い金だ。受け取れ」

「祝い金?! 受け取れませんよ!」

 

 そもンフィーレアとレオンは初対面である。その相手に宝石を渡す等どうかしている。

 

「まぁエンリとの結婚祝いという事で、だ。これから先苦しいだろうしな」

「そう言う事なら……ありがとうございます」

 

 ンフィーレアは深い礼をし、レオンに感謝を伝える。

 

「なんと、結婚するのか! 私からも祝いの言葉を送らせてもらおう。結婚おめでとう!」

 

 ガゼフも結婚の話を聞き、祝いの言葉だけを送る。

 

「ま、金も貰ったし俺も村を出るかね」

 

 レオンは背伸びをしながらそう言う。

 

「レオン様、村を出て行っちゃうんですか?」

 

 エンリがそう話しかける。

 

「ああ。村で見て回りたいもんは見たし、飯も作って貰ったりすんのも流石に申し訳なくなってきたからな」

 

 レオンはここ数日エンリの家に世話になっていた。

 流石に眠る家は別だが飯朝食等はエンリに用意して貰っていた。これも飯の作り方など知らないからである。

 代わりにエモット家に必要な水の汲み出し等はレオンがやっていたが。

 また獣を狩り獣の肉をカルネ村に提供するなどもしていた。

 

「そう言わずに、もっといてくれてもいいのに……」

「……どうせなら、世界を見て回ろうと思ってな。そう言う訳だ」

「レオン殿。もしよければ、王国に仕える気は無いか?」

 

 ガゼフがそう話を切り出す。

 その言葉にレオンはめんどくさそうな顔をする。

 

「悪いが国に仕える気はないぞ。んな面倒な事誰がするか」

 

 レオンはユグドラシル時代幾つかのギルドに誘われた事があった。

 流石にアインズ・ウール・ゴウンやセラフィムには勧誘された事はないが、それ以外の上位ギルドに誘われた事は一度や二度ではない。

 何せレオンは強いのだ。ワールドガーディアン相手にタイマンでなら勝てるプレイヤーというのは少ない。

 だがレオンは組織に属する事を嫌う。組織に属するという事はその分縛られるという事だ。自由に生きたいレオンにとっては邪魔なものである。

 

「そうか……だが気が変わったら何時でも行ってくれ。王都に来てくれれば最大限持て成そう」

「ああ。行く機会があったらな。んじゃあ俺はもう行くわ」

 

 レオンの言葉にエンリが目を丸くする。

 

「もう行くんですか? もう少しゆっくりしても……」

「これ以上長居するのも悪いだろ。じゃあな、エンリ。元気でやれよ」

 

 レオンは軽く手を振りながらその場を歩いて去り、エ・ランテルへと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 ■

 

 レオンはカルネ村で村長に軽く村を出ていく話をした。

 村長は盛大に祝おうといったがレオンは辞退。そんな面倒な事はしなくていいと言う。

 結果レオンは一人村を出て、エ・ランテルへと旅立った。

 

 街道を歩いているとふとレオンは面倒に思う。

 

(面倒だな……走るか)

 

 そう思うと行動は早い。レオンは駆け出す。

 

 レベル百の中でも最上位勢の走りだ。音速を超える。

 物理法則の違いでソニックブームを出す事はないがそれでも圧倒的な速さを以てしてエ・ランテルに辿り着いた。

 時刻は昼になったごろ。

 

 エ・ランテルは三重の壁に覆われた城塞都市だ。

 堅牢な壁に囲まれた都市であり、広さも充分以上にある。

 

 この壁作るのに幾らかかったんだろう、と変な事を考えながらレオンは街に入る為に順番待ちをする。

 以外にもレオンはこういう所は律義に守るたちである。

 

 そうして暫く待っていると列が進み遂にレオンの番になる。

 案内されたのは小さな個室だ。個室には槍を持った王国の兵士が三名いる。

 うち二名は壁に立っている。

 

「……旅人か? この街に何の用だ」

 

 兵士がレオンに問いかける。

 

「あー、観光と、仕事を探しに来た」

 

 レオンの鍛え抜かれた体を見て兵士は胸元を見る。

 冒険者ならば必ずつけているプレートが見当たらない。ならばワーカーかと兵士は考える。

 ワーカーとは冒険者組合を通さず仕事をする者を差す。

 自分で依頼を受け、依頼の裏どりをし、仕事をする。

 当然その分手間暇がかかるが本来組合がする仕事をする分報酬は並みの冒険者よりも多い。その分危険も冒険者の倍以上だ。

 自分には見合わぬ依頼を受けてしまう事も多々あるし、依頼主側がハメてくる事もある。

 

「そうか。通行料銅貨十枚だ」

「わかった」

 

 レオンはアイテムボックスを開きガゼフから貰った袋を取り出す。

 その姿に兵士たちはギョッとする。突如亜空間から物を取り出す大男である。眼を見開くなと言う方が無理がある。

 袋の中には金貨しか入っておらず、仕方なくレオンは金貨を一枚取り出す。

 

「これで足りるか?」

「充分すぎる! もっと細かい硬貨は無いのか?」

「悪いが無い」

「そうか……釣りを用意するから待ってろ」

 

 兵士は部屋の棚を開け、釣銭を用意する。

 

「よし。釣りの銀貨だ……通ってヨシ!」

 

 兵士がそう言うとドアが開く。

 

 レオンは軽く礼を言うと部屋を出てエ・ランテルの街中へと進む。

 

「おお……」

 

 レオンは思わず言葉を漏らした。

 

 エ・ランテルの大通りに出たレオンは人の多さと街並みに感銘した。

 街の作りはヨーロッパ風だ。風というだけあってヨーロッパそのものではない。

 何処かそれっぽく作った偽物感が漂う街並みである。建築系に詳しい人間が居たらキレるかもしれない。

 

 レオンの鋭い嗅覚に肉の焼ける匂いが入る。

 ふらふらと誘われるようにレオンは匂いの方へと歩く。

 見れば屋台が出ており、串焼きを販売していた。

 レオンは懐から袋を取り出し金を出す。

 

「二つくれ」

「毎度!」

 

 レオンは牛の串焼きを受け取り頬張り食べる。

 

「美味い」

 

 もぐもぐとレオンは肉の味に感謝しながら食す。

 リアルでの食事はそれはもう酷い物だ。合成食材にゴムみたいな食感の肉。

 そこそこの値段の店に行けばまぁ多少は真面な飯になるが、わざわざ高い金払ってまでそんな肉を食いたくはないレオンは余り食を重視しなかった。

 だがこの世界に来てからというもの、レオンは食道楽に目覚めつつあった。エモット家で食べたスープではこの世にこんな旨い物があるのかと感動したほどだ。

 そしてこの串焼きも美味い。香辛料が欠けられた肉である。不味い訳がない。

 

「そうだ店主。財布と服を買いたいんだが何処かいい店は知らないか?」

 

 レオンが着ている服は普段装備の毛皮装備一式しかない。

 それ以外に装備品、服と呼べる物を所持していない。故服も買う必要があるとレオンは思い立った。

 財布に関しては必須品だろう。

 

「服と財布? だったらこの大通りを真っすぐ進んで──」

 

 レオンは道を聞き覚える。この体になってから記憶力も向上している。

 

「ありがとな、店主」

 

 レオンはそう言うと服と財布を買いに歩き出した。

 

 

 ■

 

「しまった。迷子になった」

 

 レオンはうーむ、と頭を捻らせた。

 

 レオンは目的の物を買う事が叶い、そろそろ宿でも取るかと帰る途中だった。

 だが途中でここを通った方が早いのでは? という好奇心に駆られ歩いた結果迷子になった。阿保の所業である。

 

 さてどうするか、とレオンは悩む。

 時刻も夜になりかけで暗くなってきている。レオンの種族ネメアの獅子の種族的特徴で闇視(ダークヴィジョン)を持っている為視界には困らないが。

 

 レオンは取り合えず音のする方へと歩く。そっちの方に人が居るだろうから聞けばいいだろ、という考えである。

 

 レオンは路地裏の方へ歩き、人影を見つける。

 よかった、と思ったのもつかの間。その人はもう一人の者の手によって殺された。

 

(レイピア……いや。スティレットか)

 

 ふむ。とレオンは考える。どうやら何かの事件の現場に遭遇したらしい、と。

 

「……あらら。運が無いね、あんた」

 

 スティレットを持つ者──声からして女がレオンにそう言い放つ。

 

「どうだろうな? お前の方かもしれんぞ」

 

 レオンは不敵な笑みと共にそう言う。

 そんなレオンに対し女は舌打ちをする。

 

(誰だ? こいつ。この街にこんな強者が居るなんて聞いてないぞ)

 

 女──名をクレマンティーヌは苛立ちを隠せずスティレットを弄る。

 

 

 クレマンティーヌは犯罪者である。

 しかもただの犯罪者ではない。スレイン法国の秘宝を強奪した殺人犯である。

 更に元漆黒聖典の一員という経歴もヤバい者である。

 漆黒聖典とは一人一人が英雄級の実力者で構成された英雄部隊の事だ。ユグドラシル換算で最低でもレベルがニ十五を超えている者達だ。

 無論レオンにとっては雑魚同然だが、この世界の住人にとっては充分脅威と成る者達だ。

 

 深いローブを被り、ローブの中には冒険者プレートを使って作ったビキニアーマーを着用している。

 ローブの下の顔は猫科を思わせる愛くるしい顔つきをしている。ボブカットの金髪赤目の女である。

 プレートの中にはミスリルやオリハルコンも入っており、彼女の実力の高さが伺える。

 

「……女。俺は迷子なんだ。道案内してくれるなら今のを見なかった事にしてもいい」

 

 レオンはそう言い放つ。

 これはレオンの本音だ。もう面倒な事件はこりごりなのである。だからこそ殺人事件が起こってようが己に関係ないなら無視すると決めた。

 だが当然、相手に其処まで伝わる訳が無い。クレマンティーヌは挑発と受け取った。

 

「……お兄さん。相当強そうだけど、私に勝てるかなー?」

 

 クレマンティーヌはそう言うと腰を低く死、クラウチングスタートにも似た構えをとる。

 尻を突き出し、左手で地面に着いた構えだ。レオンとクレマンティーヌの距離は十メートル以上あるから出来る。

 

「向かうのか。雑魚が。身の程を弁えろ」

 

 対しレオンは思考を戦闘に変える。

 

「いっきまーす──よ!」

 

 クレマンティーヌは疾風の如き勢いで突撃した。

 何の武技も使用しない素の身体能力によるモノだが、それでも常人では視認もままならぬ高速での突撃だ。

 スティレットを前面に突き出した最高速度の突きは例えアダマンタイト──人類最高位の金属──だろうと貫く自信がある。

 鋼鉄のスティレットにオリハルコンをコーティングした一品だ。攻撃力はこの世界基準では非常に高い。

 

 だがレオンの前には無意味である。

 

「阿呆」

 

 突撃してきたクレマンティーㇴの頭を横から殴り、壁に衝突させた。

 壁がへこみ、クレマンティーヌは頭から血を流す。

 

「が、はっ……!」

 

(んだ、この痛み……! っ尋常じゃねぇ!)

 

 クレマンティーヌはようやく悟った。相手がこれまで戦ってきた敵どの全てよりも圧倒的に上だと。

 いや。そも最初の遭遇の時点で多少は察する事が出来たのだ。だがそれでも元漆黒聖典の隊員であるというプライドが邪魔し力を正確に把握できなかっただけ。

 

「まだ息があるのか。しぶといな」

 

 ともすればガゼフより強いのかもしれん。とレオンは多少考えを改める。

 まぁ多少上程度ではレオンには天地がひっくり返っても勝てないが。

 

「ま、まって! 降参! 降参する!」

 

 クレマンティーヌはふらつく頭をどうにか気合で乗り越えながら懇願する。

 体を動かせるほどには回復しておらず、地べたに這いながらの懇願だ。

 

「降参? 殺そうとしてきたのに随分と都合のいいことを言うんだな」

 

 レオンはクレマンティーヌの頭に足を置き、多少力を籠める。

 それだけでクレマンティーヌの頭は破壊されそうになる。レベル百の中でも最上位の脚力を舐めてはいけない。

 

「な、なんでもするから! 奴隷にでもなるから!」

「この国奴隷制あるの?」

「な、ないけどなるから!」

 

 リ・エスティーゼ王国ではかつて奴隷制があったが撤廃されて久しい。撤廃したのは黄金と名高い第三王女である。

 

 ふむ。とレオンは考える。

 これから先この世界で生きていくにあたり水先案内人が居るかもしれない、と考える。

 

「いいぞ。俺に従うなら生かしてやってもいい」

「本当ですか!」

 

 やっぱ男ってちょろいわ! とクレマンティーヌは歓喜する。

 

「その為に圧倒的な実力差って言うのを見せつけておこう」

「へ」

 

 レオンはクレマンティーヌの頭を左手で掴み、持ち上げる。

 そのまま右手でクレマンティーヌの左手を掴み、引きちぎる。

 

「全快のポーション持ってるからこのまま拷問行くぞ」

「た、たすけ!」

 

 その後、クレマンティーヌは三回ぐらい両手両足を捥ぎ取られ反抗する意志を奪われた。

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