獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第5話

 

「で、宿はどっちだ?」

「ばい……ごっぢでず……」

 

 レオンはぼこぼこにボコりまくったクレマンティーヌに道案内をさせる。

 クレマンティーヌに傷はない。レオンの手持ちである最上位ポーションを使って全快させている。

 貴重な品だが奴隷一人手に入るなら安いもんだろと使ってしまった。

 

 結果、クレマンティーヌは反抗する気を無くし、大人しく従う他なくなった。

 気を見て抜け出そうという考えも抱けない。そんな真似をすれば即座に殺される。それだけの実力がある事を感じ取ったのだ。

 

 そんなわけでクレマンティーヌの財布でそこそこのランクの宿に入り、部屋に入る。

 

 部屋は広い。二人部屋であり、ベッドも二つある。

 綺麗なベッドにシーツがある宿だ。ユグドラシルでもよく見た普通の宿である。

 

「んで、お前一体何なんだ? ただの犯罪者か?」

 

 レオンは取り合えずという感じで聞いてみる。

 

「はい。私は──」

 

 

 

「……情報量が多い」

 

 レオンはこいつ奴隷にするの早まったかな、と早くも後悔を始めていた。

 元漆黒聖典の一員。現犯罪結社ズーラーノーンの幹部。

 

「まぁまずそのカジットというのは潰すとして、今日はもう寝るぞ。おやすみ」

 

 レオンはそう言うと布団に入ろうとする。

 

「……私を使わないので?」

「あ? つか……いや使わんが」

 

 レオンは多少たじろぎながら返答をする。

 因みにレオンは童貞である。店で捨てるのも怖くて捨てなかったよくいる童貞だ。

 思考がネメアの獅子に引っ張られ、性奴隷という考えが完全に抜け落ちていた。

 

「そうですか」

 

 クレマンティーヌはニヤリと笑い、多少残念そうに振る舞う。

 もし体で篭絡出来る様なら楽になるな、という考えが含まれていたが、それは無理そうだと考える。

 だが諦めるにはまだ早い。何時かは肉体関係を持ちもっと楽をしてやるとクレマンティーヌは計略を考えた。

 

 レオンもクレマンティーヌも大人しくベッドに貼り、灯りを消して眠りに着いた。

 

 ■

 

 翌朝。

 宿で朝食をとった二人はまずはカジットをどうにかしよう、という事で共同墓地に来ていた。

 共同墓地には巨大な門がある。これは万が一アンデッドの群れや強大なアンデッドが発生した場合に備えた防衛設備だ。

 この世界では死体を放置したり、一定以上死者を一か所に集めるとアンデッドが発生する様になっている。その為エ・ランテルの毎年行われる王国と帝国の戦争の死者を埋葬する墓地ではアンデッドが良く発生する。

 発生するのは基本夜だが、ごくまれに昼間にも発生する。その為レオンとクレマンティーヌは入り口で王国兵士に止められていた。

 

「あんたら、この先は墓地だが、何の用なんだ?」

「ちょっと人には言えない事だが気にするな」

「気にするしかないんだが……まぁ、あんたらなら大丈夫そうか」

 

 言うまでも無くレオンは筋骨隆々の大男だ。見るからに強そうな男であり、実際強者の風格を漂わせている。

 ならばアンデッドが多少沸いたところで大丈夫だろうと兵士は考え、門を通した。

 

 レオンとクレマンティーヌは雑談をしながら墓地を進む。

 

「レオン様って何処から来たんですか~?」

 

 それはクレマンティーヌが最も気になる事だ。

 周辺国家、というかスレイン法国が把握している中にレオンという強者の情報は無かった。だからこそ、気になってしょうがない。

 

「俺はユグドラシルつうところから来たんだ」

「……ユグドラシル?」

 

 その名に聞き覚えのあるクレマンティーヌは足が止まる。

 どうした、とレオンが問いかける前にクレマンティーヌは再度口を開く。

 

「……もしかして、プレイヤー様ですか?」

「プレイヤーだが、それがどうかしたか?」

 

 マジか、とクレマンティーヌは顎を外す程に開けて驚く。

 クレマンティーヌは信仰を捨てた身だが、それでも神々に関しては聖典の一員であったため詳しい。

 

 ユグドラシルという上位世界から来訪する異邦の神々、プレイヤー。

 人類を救った六大神。世界を汚した八欲王。魔神の脅威を打ち払った十三英雄。

 百年ごとに来訪する神々は人類にとっての救い神であり、悪しき敵でもある。

 

「……そうだったんだ。へぇー」

「? さっさとカジットをどうにかするぞ」

「はーい」

 

 レオンに言われ、クレマンティーヌが案内し墓地の奥まで歩く。

 十分程歩けば目的地が見えてくる。

 神殿だ。墓地に相応しい作りの神殿が見えてくる。

 中には棺が一つあるだけの簡素な神殿ではある。

 

「こっちです」

 

 クレマンティーヌが案内しレオンはついて行く。

 クレマンティーヌが棺を何やら弄り、隠されたボタンを押すとゴゴゴ、と機構が動き、隠し階段が露わになる。

 

「この先か」

「はい」

 

 クレマンティーヌを先導させ、レオンも階段を降りていく。

 壁には髑髏の灯りがあり、おどろおどろしい雰囲気を出している。

 ユグドラシルにもこんなダンジョンあったな、とレオンが何処か懐かしさを感じていると螺旋階段の奥に辿り着く。

 其処は広間だ。何かの儀式に使うのか地面には魔法陣が描かれている。

 

「何を連れて来た。クレマンティーヌ」

 

 奥からぬるりと禿げた男が現れた。

 漆黒のローブを纏い、曲がった木の杖を持つさまは正しく邪悪な魔法詠唱者(マジックキャスター)といったところか。

 彼の名はカジット・デイル・バタンデール。ズーラーノーンの十二高弟、最高位幹部の一人である。

 彼こそがクレマンティーヌがこの国に来て得た協力者である。

 

「お前には死んでもらう。恨みも何もないがな」

「なんだと……クソ! クレマンティーヌぅ!」

 

 カジットは察した。己を殺しに来たのだと。

 やはり元漆黒聖典の一員。信用するのではなかったと後悔する。

 

骸の竜(スケリトル・ドラゴン)!」

 

 カジットは己の左手に持つマジックアイテム、死の宝珠を通じて支配下のアンデッドに命令を下す。死の宝珠は其処らの川辺にもありそうな有り触れた石に見えるアイテムだ。

 死の宝珠は死霊系統の魔法や特殊技術(スキル)を強化するマジックアイテムだ。この力でカジットは百体以上のアンデッドを従えている。

 

 地面がボコり、と盛り上がり骨の頭と頭部が出現する。

 骨の手が真っすぐとレオンに伸び、レオンは左手でそれを抑える。

 

「なんだと?!」

 

 地面から体を上半身分出しているのは骨だけで構成された竜だ。

 人骨や頭蓋骨等も混じっている骨の竜、この世界だと上位判定の実際は中位のアンデッド、骸の竜(スケリトル・ドラゴン)だ。

 能力として骨の翼による飛行と第六位階までの魔法無効化能力を持ち、スケルトン系アンデッド共通の冷気無効化と刺突無効を持つ。

 

 レオンは左手で骸の竜(スケリトル・ドラゴン)を引っ張り、自分の近くまで引き寄せる。

 

「ふん!」

 

 そのまま右手で骸の竜(スケリトル・ドラゴン)の頭部を殴り、破損させる。

 一撃で骸の竜(スケリトル・ドラゴン)は骨の残骸となって倒された。

 

「馬鹿な──!」

 

 骸の竜(スケリトル・ドラゴン)はミスリル級冒険者チームが倒せるアンデッドだ。例えアダマンタイト級──この世界最高位の冒険者──であっても真面な戦闘になる。

 だというのに、ただの拳一撃で倒された。そのことに驚愕しカジットは思考が一瞬止まる。

 

 それは致命的な隙だった。

 

 レオンは刹那で距離を詰め、カジットの眼前まで移動する。

 右手でカジットの胸を貫き、心臓を破壊した。

 

「お……か……ぁ」

 

 カジットはばたりと意識を失い、二度と意識が戻る事はない──絶命したのだ。

 レオンは腕を引き抜くとばたりとカジットの死体が倒れる。

 

 ころん、と死の宝珠が落ちた。

 

「なんだこれ」

 

 レオンはただの石にも見えるアイテムを持っていた事に興味を抱き、拾ってみた。

 

『──』

「あ? なんだこれ」

 

 死の宝珠には隠された能力がある。

 それは人間種に限定した精神支配能力だ。

 だが当然、異形種であるレオンに通じるはずがないし、そもそも状態異常に対する耐性が非常に高いレオンには通じえない。

 

『何故通じぬ!』

「お前、喋れるのか。ほーん」

「レオン様?」

 

 アイテムと会話しだしたレオンにクレマンティーヌが疑問を抱く。

 

「まぁいいや。壊すか」

 

 レオンは手に力を入れるとぴしりと死の宝珠に罅が入る。

 

『ま、待て! 話をしよう!』

 

 己の体が砕けそうになることで死の宝珠は慌てて声を上げる。

 

「なんの話をするんだ?」

 

 レオンはめんどくさそうな顔をする。

 

『我を生かしておけば死霊系の魔法を行使できる! 負のエネルギーさえあれば使い物になるはずだ!』

「それは魔法詠唱者(マジック・キャスター)じゃない俺でも使えるのか?」

『誰であっても使える!』

「へぇ……」

 

 死の宝珠の言葉にレオンは興味を抱く。

 ユグドラシルでは魔法を使いたければ魔法詠唱者(マジック・キャスター)の職業に就くしかない。

 それ以外で魔法を行使するには魔封じの水晶のようなレアアイテムを使うしかないのだ。

 ならば死の宝珠は魔封じの水晶のようなレアイテムだと判断出来る。そも喋る時点で普通のアイテムではないが。

 

「いいぞ。お前を俺の物にしてやる」

 

 レオンはそう言うと死の宝珠をアイテムボックスに収納した。

 

「クレマンティーヌ、帰るぞ」

「はーい」

 

 クレマンティーヌはスティレットを仕舞い、レオンの後に続く。

 クレマンティーヌはレオンが死の宝珠と話している間暇なのでカジットの高弟を殺していた。こうやって仕事をするのも奴隷の役目である。

 レオンとクレマンティーヌは階段を登っていく。

 

「んでさー、私を追う風花聖典はどうするの?」

 

 クレマンティーヌは最も気になっている事を問いかける。

 正直、このことを話した時点で捨てられるか殺されると思っていた。だがレオンはそんなことをせず、手元に置いている。

 

「んなもん追手が来た端から殺してけばいいだろ」

 

 まさかの脳筋回答にクレマンティーヌは絶句する。

 

「えぇ……?」

「何が来ても俺なら返り討ちに出来る。だから大丈夫だろ」

「えぇ……?」

 

 それでいいのか。と思ったがクレマンティーヌはまぁ大丈夫だろ、と思う。

 それこそクレマンティーヌが知る限りでは番外席次のあんちくしょうでも来ない限りレオンは例え漆黒聖典全員が束になってかかったとしても勝てないだけの実力を持っている。

 そしてそんなことは万が一にもあり得ない為、大丈夫だろうと判断出来る。無論国からの追撃部隊との戦いが常に続くことになるが。

 

「取り合えず旅しながら仕事したいんだが、何かないか?」

 

 レオンの話題に切り替えにクレマンティーヌは答える。

 

「それならやっぱ冒険者じゃない? 組合が人類国家にはスレイン法国以外にはあるし」

 

 冒険者組合は二百年前の魔神戦争が終わった後スレイン法国が援助して作り上げた組織だ。

 その為に人類の主要国家の殆どに組合がある。

 王国、帝国、法国に聖王国、都市国家群全てに組合があるのだ。

 金を得ながら旅をするにはこれほど最適な職業は無いだろう。

 

「冒険者か……組織に属するってことだろ? しがらみとかありそうで嫌なんだよな」

 

 レオンはそう答える。

 組織に属するという事はそれだけ利益と共に不利益があるという事だ。

 

「ん-、でも冒険者は結構自由だよ? それに最高位のアダマンタイトにもなれば結構自由に出来るし」

「アダマンタイト? ……ランクの事か?」

「そうだよー。銅級(カッパー)から始まって、最高位がアダマンタイトなの」

「ほーん。なら、暫くはエ・ランテルでランク上げでもすっかね」

 

 レオンは今後の予定を決め、まずは冒険者組合に行く事にした。

 

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