獅子王レオンとオーバーロード 作:野生の生蛇
「まずは私の装備どうにかしないとまずいと思うんだけど」
「……あぁ。お前の鎧冒険者のプレートくっ付けてるもんな」
クレマンティーヌが着て入るビキニアーマーは冒険者のプレートを張り付けて作った代物である。
その為こんな装備で冒険者組合に行こうものなら喧嘩を売っているのと同義である。
その為まずは装備を買いに、という事で二人はエ・ランテルの鍛冶屋に赴いた。
内部は木製のよくある店舗だ。店員は中年の男である。
「戦乙女の炉へようこそ。あんた、いい所に来たな」
「ビキニアーマー探してるんだけど、あるー?」
「……あるにはあるが、あんたが着るのか?」
「そうだよー、何かあるの?」
「いや、ないが……」
この世界ではビキニアーマーは道楽品として見られている。
何せ実用品としての力が足りないからだ。
魔化されたビキニアーマーならば露出している部分も魔法の力で守られるが、それでも防御力は普通の鎧より劣る。
更には露出が激しい。余程外見とスタイルに自信のある者しか着用出来ないだろう。
そも身軽に動きたいというだけならばチェインメイル等の手があるのだ。態々露出の多い鎧を着る意味が余りない。
「持ってくるから待ってろ」
「はーい」
レオンとクレマンティーヌは大人しく待つ。
レオンはこの世界の武器を興味深そうに見る。
「ほーん。こっちじゃ殆ど鋼鉄製なんだな」
「そりゃ、ミスリルとかの魔法金属は高いから余り使わないですよ」
「俺の居た所じゃミスリルとかもゴミ金属なんだがな……」
「……ユグドラシルって魔境なんです?」
「基本殺し殺されが日常だからな。死は日常だ」
レオンの言葉にえぇ、とクレマンティーヌはドン引きする。
そうこう話していると男が奥からビキニアーマーを手に持ってくる。
「持ってきたぞ。ここで装備していくか?」
「ん-、ここで着ていった方が楽そうね」
クレマンティーヌはそう言うと鎧を受け取り着替え室へと入って行く。
「兄ちゃん。いい仲間連れてんな」
男はグッと親指を立てる。
ビキニアーマーが似合う女戦士など早々いるものではない。
「そうか? まぁ、成り行きでど……仲間になっただけだがな」
レオンは軽くそう返す。
「着替えたよー」
着替え室からクレマンティーヌが出てくる。
これまでの冒険者プレートが付けられた鎧はレオンのアイテムボックスの中に仕舞われ、装備しているのは鋼鉄製のビキニアーマーだ。
と言ってもただの鋼鉄製の鎧ではない。軽量化の魔法が欠けられた皮鎧よりも軽い鎧だ。
これならばクレマンティーヌの戦闘方法である軽戦士の動きが出来る。
「じゃあ行くか」
「はーい。店主さんこれ代金ね」
「はい毎度。また是非寄ってくれよ!」
クレマンティーヌは店主に金を支払い、レオンに続いて店を出る。
クレマンティーヌに体を晒す趣味は余りないのでマントで体を隠して出ていく。
「冒険者組合はどっちだ?」
「こっちだよー」
道の分からないレオンにクレマンティーヌが道案内しながら冒険者組合へと歩く。
そうして歩く事十分。冒険者組合に辿り着く。
二人が中に入ると冒険者組合の中がにわかにざわつく。
見てくれのいい女を連れた筋骨隆々の大男である。すわ事案かと思われても仕方がない。
だがよく見れば女も男も実力は相応にあると感じ取れる為、気にはする程度で収まる。
冒険者組合の一階はロビーになっており、受付と座って休憩できる場所、依頼が張り付けられたボードがある。
二人は取り合えず受付に進む。
「冒険者登録をしたいんですけど」
「登録ですね。わかりました。手数料銀貨一枚になります。お二人ですので銀貨二枚ですね」
「クレマンティーヌ」
「はーい」
クレマンティーヌは自分の財布から銀貨を二枚取り出す。傍から見ればレオンは女に金を出させる屑である。周囲の目が少し悪いものになった。
「はい。受け取りました。名前をこちらに書いていただくのですが、代筆は致しますか?」
「クレマンティーヌ。書いてくれ」
レオンはこの世界の文字が読めないしかけない。一様文字翻訳のマジックアイテムは持っているので読もうと思えば読めるが。
「はいはーい」
クレマンティーヌはすらすらと王国語でレオンと自身の名を書く。
クレマンティーヌの出身は法国だが、主要国家の文字は読み書きできるよう勉学している。
「はい。ありがとうございます。冒険者に成った方には講習を受けてもらう事が出来ますが、如何致しますか?」
「受ける方向で」
「わかりました。では講習は二階で行いますので付いてきてください」
レオンとクレマンティーヌは二階に上り、小さな部屋に入る。
二階にはそう言った部屋が数多くある。これは冒険者パーティの会議所として使ったり、依頼主と冒険者たちが話し合う為にあるのだ。
「では──」
レオンはメモ帳を取り出しメモをしていく。
汚い字だが、自分が読めればいいだろと書いて行く。
クレマンティーヌはある程度知っているのでメモなどはしない。
(依頼を受けるときに二割とられるがそれは冒険者の安全の為の調査料だったり手続き手数料で──)
そうして三十分程で講習が終わる。
「これがお二方の冒険者プレートです。どうぞ」
受付嬢が
レオンとクレマンティーヌは受け取り、胸から下げる。
「ではこれで依頼を受けて貰って大丈夫です。ありがとうございました」
「ありがとうございました。行くぞ」
「はーい」
二人は階段を降りて一階に降り、クエストボードの前に着く。
二メートルを超える大男が立てばそれだけ邪魔になるが、レオンから感じ取れる強者の風格が有無を言わせなかった。
「……読めん。何かいい依頼はあるか?」
「ん-、銅級だと良い依頼ないねー。荷物運びとかドブ掃除ばかりだし」
「ドブ掃除は何かやだな……モンスター退治は無いのか?」
「ないねー。受けれるのは
「……鉄級に上がるにはどうしたらいい?」
「それならいい方法があるよ。モンスター退治をするの」
「? 依頼は受けれないだろ?」
「んー、ちょっと方法があってね」
クレマンティーヌは手招きし、クエストボードから離れる。
レオンもここで話すと人の邪魔になると察しクレマンティーヌに着いて行く。
「その方法ってのは?」
「黄金の姫様が冒険者組合に通した法案でね。モンスターを倒して証明部位を持っていくと報奨金が出るの。持っていけばポイントが上がる。流石にいきなりアダマンタイトとかは無理だけど鉄級にはあがれるんじゃないかな」
「成程。それで行くか」
という訳で、レオンとクレマンティーヌは依頼を受けず冒険者組合を出ていこうとした。
だが途中。レオンが通ろうとした道に椅子に座った冒険者が足を出して邪魔をする。
(うわ。かわいそー)
その者の顔を見たクレマンティーヌは憐れむ。一秒後の姿を思えば憐れむ心がクレマンティーヌにも残っている。
レオンはむかついたので足を踏み潰した。
「いてぇぇぇえええ!!!」
男は絶叫した。
男は冒険者であり、足も防御の為に鉄板を入れている。
その為鉄板事靴を踏み潰された為骨と鉄板がぐにゃぐにゃにくっつき、もはや斬り落とすしかない状態となった。
男の仲間たちは仲間の本気の絶叫に何かあったのか、と立ち上がる。
これは冒険者組合の慣習だ。
新人に対し肩をぶつけたり足を引っかけたりして因縁を吹っ掛け、喧嘩を売る。
その喧嘩に対しどう対処するのかを見るという冒険者組合のちょっと悪い慣習である。
エ・ランテルの冒険者たちの大半はこの慣習を乗り越えて冒険者をしている。
「てめぇ、仲間に何しやがる!」
仲間の男が立ち上がり、レオンを睨みつける。
レオンも負けずとにらみ返し、威圧する。
レベル百とレベル十程度では圧倒的差があり、男の方が負けた。
「こりゃ慰謝料貰わねぇとなぁ?!」
もう一人の男がレオンの肩に手を置こうとし、レオンが払いのけた。
レオンにとっては軽く叩いただけだが曲がりなりにもレベル百。腕に罅が入った。
その男も痛みに悶え、仲間が立て続けに二人やられたことに最後の男が驚愕に目を見開く中レオンは高速で男の前に移動。
男の頬を叩き吹き飛ばす。真横に吹っ飛び、壁にぶつかってようやく止まった。
「行くぞ。クレマンティーヌ」
「はーい」
死屍累々の者どもを無視し、レオンとクレマンティーヌは冒険者組合を後にした。
■
エ・ランテルの外れの森にレオンとクレマンティーヌは行くことにした。
モンスターの多さで言えばトブの大森林が上だが、まずは慣れるのが大事、という事で手ごろな森を選択した。
森に入ったレオンとクレマンティーヌはさっそくモンスターに襲われていた。
「ゴブリンとオーガか」
「ま、雑魚だね~」
遭遇したのはゴブリン十二体オーガ一体だ。
ゴブリンは緑色の肌に人の子供程度の体躯を持つモンスターだ。
オーガは反面巨体であり三メートル近い体に薄茶色の肌、牙を持つモンスターだ。
「ニンゲン! エサ! クウ!」
「殺セ!」
オーガとゴブリンたちがいきり立つ。
「いっきますよー」
クレマンティーヌはクラウチングスタートにも似た構えを取り、オーガに突撃。
頭部に向かって跳躍し頭部を貫いた。
「雑魚共が」
レオンはゴブリンたちに突撃しその手で殺していく。
頭を蹴り飛ばし、頭を掴んで握り潰す等で殺していく。
瞬く間に殲滅が終わり、残るのは死体と血のみ。
「んで、こいつらは何を回収すればいいんだ?」
「耳だねー。基本亜人系は耳が確認点だから」
「そうか」
レオンは外に出る前に買っておいた袋を取り出し死体から耳を引きちぎってしまう。
クレマンティーヌもナイフを取り出し死体から耳をとる。
五分もせずに耳の回収が終わり、袋に入る。
「このまま森をうろつくぞ」
「おっけー」