獅子王レオンとオーバーロード 作:野生の生蛇
それからレオンとクレマンティーヌは結構な数のモンスターを倒した。
オーガ六体にゴブリン三十体。ハンキングスパイダー二体に
成果としては上々だろう。
「しまったな。もう夜遅い」
そして気づけば狩るのに夢中で日が暮れ始めていた。
やろうと思えばレオンがクレマンティーヌを担いで走ればエ・ランテルには間に合うだろう。
だがレオンは今から帰るのもな、と野営する事を決めた。
「ここで野営するぞ」
「ん、おっけー。だけど野営セット持ってるの?」
「持ってるぞ」
レオンはアイテムボックスを開きアイテムを取り出す。
取り出したのはグリーンシークレットハウスだ。
レオンが適当な地面にアイテムを投げると巨大化し、コテージとなる。
「なにこれ?!」
その様にクレマンティーヌは驚く。持ち運びできるコテージなど聞いたことも無い。
「何って寝床のコテージだが」
「普通コテージ持ち歩く???」
「ユグドラシルでは常識だぞ」
「ユグドラシルの常識どっか可笑しいよ」
そんなやり取りをしながら二人はグリーンシークレットハウスの中に入る。
「広っ」
中はクレマンティーヌが思わずつぶやく程には広い。
ソファがあり、テレビもクーラーもある。現代的なコテージである。
「そうか? まぁ、こんなもんだろ」
「前どんなとこに住んでたの?」
「湖」
「スケールでっかいなぁ……」
「あ、俺飯作れないから勝手に冷蔵庫から出してくれ」
「いやいいよ。私がなんか作るよ」
クレマンティーヌはそう言うとキッチンに行き、冷蔵庫を開く。
クレマンティーヌは冷蔵庫を見るのは初めてではない。魔法技術が発達している帝国や法国では口だけの賢者というミノタウロスが考案したマジックアイテムが多数ある。
冷蔵庫や扇風機、コンロなどはこの世界にマジックアイテムとしてあるのだ。
「うわ。ナニコレすご」
クレマンティーヌは冷蔵庫の中身を見るなり驚愕した。
見ただけで分かる質の良い野菜と肉が入っている。このような食材王侯貴族でも無ければ目にすることはないだろう。
これは腕が鳴る、とクレマンティーヌはさっそく腕を洗い調理を始める。
この食材はレオンが適当に買ったユグドラシルでの最下位食材であることをクレマンティーヌは知らない。
レオンは取り合えずクレマンティーヌが作るならいいか、とアイテムボックスからエンサイクロペディアを取り出す。
エンサイクロペディアにユグドラシルとのモンスターの違いを書き込んでいく。
そうして待つ事二十分。料理が出来る。
簡単に肉を焼き、野菜を切っただけのものだが食欲をそそる。
付け合わせにスープとパンもある。
「いただきます」
レオンはそう言うと食事を始める。
パンにスープを浸して食べていると食事をしないクレマンティーヌが目に入る。
「食わんのか?」
「あ、いや。神様も頂きますっていうんだなーて」
「……ああ。こっちじゃ習慣が無いのか?」
「いや。あるよ。そもそも今の人類の文化の殆どは六大神が齎した物だからね」
いただきます、とクレマンティーヌも両手を合わせて食事を始める。
食事をしながら二人は会話をする。明日は何処に行く、やらどのモンスターを倒す、等の冒険者らしい話だ。
その話し合いは奴隷と主人ではなく親しい友人同士の会話に思えた。
■
二日後。エ・ランテルの冒険者組合にて。
「これの換金を頼みまーす」
クレマンティーヌは袋を冒険者組合の受付に差し出す。
袋の中身は当然モンスターの討伐証明部位で一杯だ。袋を閉じていても臭ってくる血の匂いがそれを証明する。
「わ、わかりました! 少々お待ちください!」
という事で、クレマンティーヌとレオンは大人しく待つ。
そして待つ事十分。確認と換金が終わる。
「こちら、報酬金の金貨二枚と銀貨二十枚です。そして、こちらが新しい冒険者プレートです」
レオンとクレマンティーヌは新しいプレートを受け取る。
渡されたのは鉄級のプレートだ。
本来
「それと、冒険者組合長が個別に話したいことがあるようです。着いてきてください」
その言葉にレオンとクレマンティーヌは顔を見合わせた。
二階に上がり、冒険者組合長の執務室に受付嬢がレオンとクレマンティーヌを連れていく。
受付嬢がノックをすると「入りたまえ」と中か返事が返って来る。
返事に合わせ受付嬢がドアを開き、三人とも中に入る。
受付嬢は中に本来このような場にいるべきではない人物がいることに驚く。
「ようこそ。私がエ・ランテルの冒険者組合長プルトン・アインザックだ」
「ぷひー。ようこそ、レオン君」
中に居たのはアフロの男性と超えた豚の様に太り禿げた男だ。
片方は名乗り上げなかったがこの都市の都市長、パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアである。
失礼しますと言い残し受付嬢が去る。
「どうぞ。二人ともかけてくれ」
言われるがままレオンとクレマンティーヌはソファに座り、四人が向かい合うように座った形になった。
「さて。私がエ・ランテルの都市長パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアだ……まずは私個人として礼を言わせてくれ」
先程までの豚のような雰囲気は消え、そこには切れ者の男が居た。
「王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ殿を助けてくださり本当に感謝する。彼の無事が無ければ王国は今頃どうなっていた事か……!」
「……ああ。そのことか」
その言葉に当事者ではないクレマンティーヌが驚く。あんたそんなことやってたんか、という驚きだ。
「さて。それで君のプレートなんだが……本来君はアダマンタイトにも相応する実力を持っているはずだ。だが、君には実績が無い。だからといって、君のような実力者が下位のプレートのままは組合にとっての損失だ」
そこまで言うか? とレオンは疑問を抱きながらも話を聞く。
「そこで、君たちには墓地のアンデッド退治の依頼を受けて貰い、そこで
「……組合が嘘の実績をでっちあげると?」
「ああ。だが、君ならば
「まぁ、倒せるが……」
というかつい先日倒したばかりである。
「それで君のプレートをミスリルまで引き上げたい。どうだろうか?」
──プルトン・アインザックがこのような事を提案するには当然裏がある。
それはこの都市、最低でも王国に居を構えて欲しいからだ。
何時だってどの時代どの場所でも実力者というのは評価され、のどから手が出る程欲される物だ。
更にはレオンは王国戦士長から聞いた話ではスレイン法国の特殊部隊を一方的に倒せるほどの実力者。
その様な人物が帝国に行くよりは冒険者として実績を持ち、冒険者として活動してもらいたいという物がある。
最悪を考えればレオンが王国の敵として君臨し、絶望を振りまく事になるかもしれないのだ。ならば多少優遇してでも王国に縛りたいと思う者である。
無論愚者ならばそう思わないだろうが。
「いきなりミスリルか……急な昇進に他の者が文句を言うんじゃないか?」
レオンはそう疑問を問いかける。
昇進大いに結構。だが他の者に文句を言われ足を引っ張られるのは御免である。
「そこは君の実力を示して貰いたい。事実として君はアダマンタイト相応の実力を持っているのだから」
だがレオンはアダマンタイト相応の実力しか持っていないが。
依頼解決能力を言えばレオンはアダマンタイトには相応しくないのである。
何せレオンのパーティは戦士二人というモンスターを倒すだけならばいいが、ダンジョン探索やアイテム捜索能力は大幅に欠けているパーティだからだ。
「ま、いいぜ。俺もとっととアダマンタイトにまで上がりたいんだ。受けてやるよ」
上からの目線にアインザックとパナソレイは少し顔を顰めたが、それに相応しい実力を持っているので黙った。
「ではそう言う事で頼む」
■
同日。夜。エ・ランテルの共同墓地にて。
「……なんか夜の墓地ってどことなく怖くないか?」
「そう? ただの墓地じゃん」
「いや、なんか幽霊とか出てきそうじゃん」
「レイスくらい殴り倒せるでしょ」
何を言っているんだお前は、という目でクレマンティーヌはレオンを見る。
実際レオンはレイスどころかハイ・レイスが沸いたところで一方的にぼっこぼこに出来るぐらいには強い。
だが戦闘力と恐怖心は別である。レオンはジャンプスケア系ホラーが苦手であった。その為地下墓地ダンジョンであるナザリックに行ったことは無かったりする。アインズ・ウール・ゴウンのメンバーと戦った事はあるが。
「それはそれとして回るわよー」
「お、おう」
クレマンティーヌが灯りを手に歩き出す。
遅れてレオンもついて行く。
レオンはおっかなびっくりしながら歩く。
その姿がクレマンティーヌには少し微笑ましく思った。
己を嬲り拷問したとは思えぬ男だが、こういった小さな弱点を集めていつかは上回ってやると息巻いているのである。
そうして歩いているとモンスターに遭遇する。
現れたのは腐臭がするアンデッド、ゾンビだ。
レオンは鋭い嗅覚故その臭いに顔を顰める。
「はーい。スッといってドスってねー」
クレマンティーヌはスティレットを抜き、刺突を繰り出す。
変な体勢で繰り出した刺突だが威力は充分。アンデッドの偽りの生命力を奪うには充分なダメージが入る。
アンデッドは倒れ、動かなくなる。
「……出てくるのがこの程度の雑魚なら楽な仕事だな」
「あ、ちょっと思ったんだけどさー、カジッちゃんの死体を提出しない?」
「あ? ……なるほど。ズーラーノーンの幹部を倒したってことでより昇進を狙うのか」
「そゆことー。てなわけでれっつごー」
という訳で、レオンとクレマンティーヌはカジットの死体と
結果、昇進する内容は変わらなかったものの、相応の実力者であるとエ・ランテルの冒険者たち一同に知らしめることが出来たのであった。