獅子王レオンとオーバーロード   作:野生の生蛇

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第8話

 

「という事で、今日は文字の勉強をしようと思う」

「どういう訳で?」

 

 エ・ランテルの宿でレオンとクレマンティーヌはソファに座り向かい合う。

 宿は先日のとは違い、ミスリル級に相応しいちょっと高級な宿だ。

 

「いや、よく考えたらこの世界の文字読めないままなのちょっとあれかなって思ってな」

「ん-、私が居るし問題なくないです?」

 

 クレマンティーヌはそう返す。

 実際クレマンティーヌは主要国家全ての文字を読み書き出来る為、クレマンティーヌさえいてくれれば問題ないのである。

 

「いや。それだとお前が寿命で死んだ後問題だろ」

「え、レオン様私より長生きする気なんです?」

「長生きというか、俺異形種で寿命ないぞ」

「異形種なんです?!」

 

 レオンが異形種である。と言う事にクレマンティーヌは驚く。

 この世界では異形種が人の姿になるなど有り得ないからだ。

 

「まぁ、ユグドラシルでも基本は人型に成れんかったからな」

 

 レオンが人化の特殊技術(スキル)を習得したのはユグドラシル後半期だ。

 プレイヤー人口が減っていき、このままではまずいと思った運営が急遽実装した特殊技術(スキル)が人化の特殊技術(スキル)だ。

 減った人口を取り戻すという口実の癖に習得難易度は鬼高く、そのくせ習得したところで人間種限定の街に行けたりクエストを受けれる訳ではないという外見変更用の特殊技術(スキル)でしかないのがユグドラシルのクソな所である。

 

 クレマンティーヌは内心、そりゃこんだけ強ければ人間じゃないか、と謎の納得感を得る。

 クレマンティーヌが知る二番目の最強である番外席次も森妖精(エルフ)のはハーフ、ハーフエルフという純粋な人間ではないのだ。

 

「ま、わかりました。じゃ、まずは教材買いましょうか」

「……出来るだけ難易度低いのを頼む」

 

 という訳で、二人は勉強をすることになるのであった。

 

 

 

 

 ■

 

「この依頼なんてどうですか?」

 

 とある日の朝。冒険者組合の一階。クエストボードの前でクレマンティーヌが依頼書を一つ手に取ってレオンに見せる。

 レオンは興味深そうに眺める。

 

「え~と。盗賊の退治依頼か……」

 

 レオンはどうにか覚えた王国語を読み解く。

 レオンの体はレベル百の超越者の肉体だ。中身が一般人だとしても肉体は最高峰のモノである。

 当然記憶力や情報処理能力もレベル百相応の人外の領域に突入している。元から異形種なので人外だが。

 流石に発想力等は変わらない。言ってしまえば瞬間記憶能力と完全記憶能力を得ただけである。

 その為まだ覚えてない単語もある為間を予想で埋め回答をした。

 

「そ、エ・ランテル近郊の森に盗賊の隠れ家らしきものを発見したから殲滅するって依頼」

「対人戦か。面白そうだな」

「ん-、レオン様が満足するような敵は居ないと思うけどねぇ」

「ま、そこら辺は運だな」

 

 という訳で、二人は依頼の受注処理をして集合場所であるエ・ランテルの外へ向かった。

 

 

 ■

 

「いやー、話題のミスリル級冒険者であるお二人に参加して貰えるなんて! この依頼はもう達成したも同然ですね!」

 

 レオンは来て早々そんな歓待の言葉を受けた。

 

 レオンたちが居るのはエ・ランテルの近郊の森。時刻は夕方に成りかけ。

 人数はレオンとクレマンティーヌを含め十人だ。

 

「まだわからんぞ。俺は戦闘力は世界最上位の自負があるが敵が魔法で転移とかされれば逃げられるからな」

「いや、転移魔法は階位高いから先ず使われないと思いますが……」

「世の中何があるかわからんだろ?」

「それでも警戒しすぎでは?」

 

 ユグドラシルじゃ盗賊の魔法詠唱者(マジック・キャスター)なんて珍しくないんだがな、とユグドラシルとの価値観の違いを修正していく。

 なまじユグドラシルと同じくレベルの概念があり、魔法の仕様も同じためゲーム感覚で考えてしまう事が多い。これは修正しなければ成らないな、とレオンは考える。

 

「えっと、このまま隠密して奴らの拠点まで近づきますが、何か意見はありますか?」

 

 この依頼での一党のリーダーである金級冒険者がレオンに意見を求める。

 

「敵の殲滅は俺とクレマンティーヌで充分だから、敵が逃げないよう包囲を作ってくれや」

「わかりました!」

 

 という訳で一様夜まで待ってから襲撃する事が決まった。

 

 

 夜。月明かりが照らす中。レオンはクレマンティーヌと共に襲撃に行く。

 付近の森には冒険者たちが隠れ潜んでいる。

 

 向かう先は森を抜けた先にある洞窟だ。

 結構深いと分かる洞窟であり、見張りが二名立っている。

 更には見張りの足元には紐が洞窟の中まで伸びており、紐には鈴がくっついている。

 いざという時はそれを鳴らし、内部に襲撃を知らせる仕掛けだろう。

 

「いくぞ」

「はーい」

 

 クレマンティーヌとレオンは左右に別れ、同時に攻撃を仕掛ける。

 クレマンティーヌも英雄級の実力者。高速での刺突は多少鍛えただけの盗賊には視認を許さず、眼球を貫き一瞬で絶命させた。

 当然レオンはそれ以上に速く動き、頭部を弾け飛ばした。

 

 レオンとクレマンティーヌは死体を適当にほおり、洞窟へと進んでいく。

 

「結構明るいな」

 

 洞窟の中は灯りがきちんとある。

 流石に<永続光>(コンティニュアル・ライト)などの魔法の灯りは無いが、ランタン等で闇視(ダークヴィジョン)が無くとも充分な程明るい。

 

 二人横になっても充分広い為横に並んで歩く。

 

 そうして歩いていると当然、敵と遭遇する。

 だが遭遇する端からレオンとクレマンティーヌは己の拳とスティレットで殺していく。

 

 そうして歩いているとまたも敵に遭遇し、クレマンティーヌが突撃をかます。

 

 だが、敵の男は刀を抜き、突撃を防いだ。

 スティレットの先端と刀の刃が衝突し、硬い金属音を鳴らす。

 

「へぇ」

 

 そのことにレオンは興味を抱く。

 クレマンティーヌのレベルは三十はある。その攻撃を防ぐという事は最低でもレベル二十五を超えているという訳だ。

 

「下がれ、クレマンティーヌ」

「えー。私にやらせて欲しいんだけどー」

 

 等と文句を言いながらもクレマンティーヌは大人しく下がる。

 

「出会い頭に攻撃とか、最近の女はぶっ飛んでるな」

 

 そんな軽口を叩きながらも男、ブレイン・アングラウスは冷や汗を流す。

 服の上からでも分かるほどには鍛えた体を持ち、染めているのであろう青い髪を持つ男だ。

 

 先の一撃で分かる女──クレマンティーヌの強さと見ただけで分かるレオンの圧倒的強者のオーラ。

 

 あかん。これは勝てん。ブレインは一瞬で悟った。

 

 存在としての格が違う。生物としての階位が違うのだ。

 

 目の前の女ならばまだ薄いが勝機はあるだろう。だがレオン相手に勝てるなどと思う程ブレインは己に過信していなかった。

 

 故、ブレインがとった行動は──

 

「……何をしているんだ?」

 

 ブレインは両膝を折り、頭を地面に擦りつけ、両の手も地面に付けている。

 そう。土下座のポーズだ。

 

「何って……土下座だが」

「土下座」

 

 レオンが呆れてオウム返しをする。

 ブレインとしては本気だ。決して叶わぬと分かる相手に馬鹿みたいに突撃して命を失うよりは、何でもして生き延びた方がいい。本気でそう思っているのだ。

 

「取り合えずそのまま頭踏み潰していいか」

 

 いかん選択間違えた。ブレインは早速後悔した。

 だがそれに待ったをかける者が居る。

 

「待ってください。この男、ブレイン・アングラウスじゃないですか?」

 

 そう。クレマンティーヌだ。

 彼女は風花聖典や独自の情報収集によって王国の強者の情報を仕入れている。その為ブレインの事も良く知っている。

 青い髪に南方で作られる刀を装備した男であり、かつ自身の攻撃を防げるものとくれば数えるほどにしかいない。

 

「ああ、確かガゼフの奴と同等に戦ったとかいう」

「そうですそうです。ここで殺すのはちょっとまずいですよ」

「なんでだ?」

「王国に数いるまだマシな実力者が減ると八本指とか腐敗貴族が勢いづきます。ここで殺すと後々面倒な事になりますよ。後対モンスター用の戦士が減るのは人類全体から見て損失です」

「ほーん。だが依頼は達成しないと不味いんだがな……」

 

 さてどうしたものか、とレオンは考える。

 もう面倒何で殺して終わり、というのも考えモノだが、かといって生かした場合の問題が大きすぎる。

 悩むレオンにブレインが口を開く。

 

「なら、俺を仲間にしてください!」

 

 その発言にレオンもクレマンティーヌも驚く。

 

「あん? どういう動機だ?」

 

 話してみろ、と威圧感を強めながらレオンが話をさせる。

 

「俺は力を求めて武者修行の旅に出ました。そして、最も強い貴方に出会った! ならば貴方に師事し、より力を得たいと思った所存です!」

 

 ブレインは一生けん命己をアピールする。

 失敗すれば己の頭と胴体は泣き別れである。全力でアピールもしようもの。

 

「どう思う? クレマンティーヌ」

「ん~、いいんじゃない? まぁ私を仲間にしている時点で経歴に問題ある奴しかいませんからね!」

「それもそうだな。俺の仲間ってことにしてやる。感謝しろ」

「ありがとうございます!!!」

 

 ブレインは今生最大の感謝の言葉を述べた。

 

「じゃ、ここの盗賊皆殺しにするぞ。着いてこい」

「はいっ!」

 

 という訳で、レオンはブレインとクレマンティーヌを連れて洞窟を歩く。

 そうして歩いていると奥の広間に辿り着く。

 敵も馬鹿ではなく、広間にあったテーブル等を使い簡易的なバリケードを作り、そのうえで何人もの盗賊がクロスボウを構えている。

 

「俺が行く」

 

 レオンはそう言うと先頭に躍り出る。

 

「うてぇ!」

 

 元ブレインの雇い主である死を撒く剣団の頭領が号令を出し、一斉にクロスボウが発射される。

 クロスボウの矢の速度は時速約百五十キロ。視認するのは可能だが、対応するには速すぎる。

 だがレベル百の人外の中に人外であるレオンにとってはむしろ遅すぎるくらいだ。

 

「ふん!」

 

 レオンは範囲攻撃の特殊技術(スキル)も行使し腕を振るう。それだけで全ての矢が暴風に煽られ、吹き飛んだ。

 それだけではない。破壊の渦はバリケードにまで及び、バリケードをも破壊した。

 

 其処にすかさずレオンとクレマンティーヌが突撃。レオンは頭領の胸を貫き殺し、クレマンティーヌは副頭領を殺した。

 遅れてブレインも突撃し、殺戮劇が始まった。

 

 レオンは文字通りに千切っては投げ千切っては投げの殺戮。クレマンティーヌは逃げ出そうとする者に向かって突撃し心臓を一刺しで殺す。

 ブレインは安定した戦いを見せ、彼オリジナルの武技<領域>を用いて神速の剣戟を持って敵を葬る。

 

 五分も経てば殲滅が終わり、残るのは無傷のレオンとクレマンティーヌ、ブレインと死体の山である。

 

「頭領はこいつだ。こいつの首持っていけば討伐証明になるだろ」

「そりゃ結構。じゃあずらかるぞ」

「あ、待ってくれ。性処理用に連れて来られた女たちが居る。そいつらもどうにかせにゃならん」

「何? ……ブレインは使っていたのか?」

「いや、俺は余りそう言うのに興味はないから使ってないから顔は覚えられてないはずだ」

「なら結構。クレマンティーヌ。女たちを助けてきてくれ。男の俺が行くとこじれそうだ」

「おっけー」

 

 という訳でクレマンティーヌが性処理の女が居る場所に向かい、暫くすると布で体を隠した女を四人連れてクレマンティーヌが出て来た。

 女たちは屈強な大男であるレオンを前に恐怖するがクレマンティーヌが「大丈夫」と優しく諭す事でどうにか正気を保つ。

 

「んじゃ出るぞ」

 

 

 レオンたちは洞窟を出ると其処には包囲を作っていた冒険者一行が居た。

 

「おう。ご苦労さん」

 

 レオンがそう声をかけると一党のリーダー各である金級冒険者が安堵した表情を見せる。

 

「レオンさん! 盗賊の殲滅は終わりましたか?」

「ああ。こいつが頭領の首だ」

 

 レオンは死体から引きちぎった頭領の頭を見せる。

 

「流石はレオンさん。こんなにも早く倒してくるとは……! ところで、そちらの男性と女性たちは?」

「ああ。男はブレインっつて武者修行で偶々ここを襲撃してた奴だ」

 

 レオンは適当に考えたカバーストーリーを話す。

 流石に盗賊の仲間だったのを無理矢理に仲間にしました、では外聞が悪い。

 

「んで女共は盗賊の慰み者にされてた奴らだ。保護してやってくれ」

「わかりました!」

 

 こうして死を撒く剣団の討伐依頼は何も問題なく達成されたのであった。

 

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