獅子王レオンとオーバーロード 作:野生の生蛇
「採取依頼?」
「ああ。是非君たちに受けて貰いたい」
数日後の昼中。レオンたちはアインザックに呼ばれ冒険者組合の会議室に居た。
ブレインも冒険者登録をし、元からの名声と実力が合わさり既にレオンたちと同じミスリル級冒険者になっている。
「依頼内容はトブの大森林にあるという霊薬の材料であるどんな病も治すと言われる薬草の採取だ」
「採取依頼ね……俺たちにゃちときついと思うが」
レオンはそう返す。
実際問題、依頼の難易度は高い。
レオンたちのパーティには探知系能力が欠けている。レオンはモンクとしての気の探知系
ブレインも武技<領域>で探知出来るがそれも敵だけである。
「大丈夫だ。今回の依頼は共同依頼となる。なんとあの青の薔薇との共同依頼だ」
「青の薔薇? なんだそれ」
レオンは無知を晒す。
レオンが青の薔薇を知らない、という事にアインザックは驚く。
周辺国家全て、とまではいかないが少なくとも帝国と王国には名が知れた冒険者チームだ。そのことを知らないとは何処から来たのか、という疑問が出てくる。
「王国に二組しかいない冒険者チームだねー。女しかいないチームってことで結構有名だよー」
「女だけか……そりゃ大変そうだ」
生理とかで月の半分以上動けなさそう。等という失礼な想像をレオンはする。
「ああ。だが今回の依頼はかつてオリハルコン級がミスリル級チームを二つ連れていくことでどうにか達成した依頼だ。アダマンタイト級冒険者に依頼しても可笑しくない物だと思う」
「そりゃ大層な依頼だな」
ブレインがそりゃ凄いと本心から思う。
「ああ。青の薔薇が来るのは二日後。それまで英気を養ってくれ」
■
「はい。今日の勉強はここまで」
「疲れた……」
レオンは宿屋でクレマンティーヌを教師に王国語の勉強をしていた。
宿はエ・ランテルでも上から数えた方が早いぐらいには高級な宿である。流石に最高級宿屋である黄金の輝き亭には劣るが。
部屋も広く、三人居ても広さを感じられる。
レオンとクレマンティーヌはソファに座り机を前に勉強をしていた。ブレインは暇なのでベッドに腰かけ刀の手入れをしている。
ブレインが持つ刀はマジックアイテムの為手入れは本来不要だが念のためにとブレインは手入れをしていた。
「あんたほどの強者でも文字がわからないんだな」
ブレインはレオンが勉強をしている姿に驚愕し、ポツリと言葉を漏らす。
「そもそも俺はこの世界の出身じゃない。別世界の住人だ。文字ぐらいわからなくて当然だ」
レオンは自己弁護する様にブレインに言い放つ。
「別の世界? そんなものがあるのか」
へぇ、とブレインは妙な納得をする。
圧倒的な強者であるくせにこれまで一切その名を聞かなかった事にもこの世界の者ではないというのならば説明もつくというものだ。
「よし。俺は外に出てなんか食って来る。二人はどうする?」
レオンは勉強道具を仕舞い、すっと立ち上がる。
「俺は外にマジックアイテムでも探しにいこうかな」
ブレインも刀を鞘に納め、ベッドから立ち上がる。
「んじゃ、私はブレインに着いてコーかなー」
「おう。いいぞ。つってもショッピングだけだからつまらんかもしれんが」
「いーの。私もちょっと気になる事あるし」
という訳で、三人は出かけた。
■
エ・ランテルには冒険者向けの市場がある。
露店や床に布を敷いて商品を置いた店等が多数あり、活気もある市場だ。
販売しているのは冒険者向けのアイテムばかりだが、時折一般人向けのアイテムも売られるため一般人も少ないながらいる。
その市場をクレマンティーヌとブレインは巡る。
「ブレインはさー、レオンっちのどこに惹かれたの?」
「なんだ、藪から棒に」
ブレインが露店でポーションを見ているとクレマンティーヌが話題を切り出す。
「あの場で逃げる事も出来たっしょ? 何で逃げなかったの?」
「いや。逃げたところで殺されただろ」
「確かに。じゃあ今も死にたくないから着いてきてるの?」
「ん-、それもあるが……俺は強さに惹かれたんだ」
「強さに?」
「ああ。これまで戦ってきた敵よりも圧倒的な格上、いやそれ以上の存在。そんな強さを持つレオンに少し憧れてな。近づけばその強さを知れるかも知れないと思ったんだ」
「なるほどねー」
(ん-、あんまり悪い事は考えて無さそうね)
クレマンティーヌはブレインをそう判断する。
一応奴隷と主人という建前があるので念のため主に近づく者に悪意が無いのかの確認をしたのだ。
まぁあったところでレオンならば何が来ても返り討ちに出来る為するだけ無駄な所があるが。
その後もブレインとクレマンティーヌは話を続け、仲を深めた。
■
青の薔薇が来る日。レオンはアインザックに呼ばれ冒険者組合の二階の会議室に呼ばれていた。
クレマンティーヌとブレインは居ない。リーダーであるレオンだけが呼ばれた。
会議室には既に二人の人間が居る。
一人は冒険者組合長のプルトン・アインザック。もう一人はレオンの知らぬ女だ。
生命力に溢れた女だ。金髪緑眼の貴族らしい容姿端麗な女である。
まだ若く、二十代ですらないが胸からは最高位冒険者の証であるアダマンタイトのプレートを下げている。
白銀と金で出来たユニコーンの装飾が施された鎧はかの有名な
「初めまして、レオンさん。私が青の薔薇のリーダー、ラキュースです」
女、本名ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラはそう名乗る。
今は貴族ではなく冒険者であるという主張の為名字は名乗らない。
ラキュースは右手を差し出し、握手をしようとする。
「ああ。俺が一党のリーダーのレオンだ。悪いがパーティ名はまだ決めてない」
レモンも断る理由がないため右手を差し出し握手をする。
どうぞよろしく、と挨拶もそこそこに三人は椅子に座る。
アインザックが口を開いた。
「さて。今回の依頼はトブの大森林に赴いて霊薬の材料となる薬草を採取する事だ。具体的にトブの大森林の何処にあるかは不明となっている」
「まぁ、簡単に見つかるようなら貴重とか言われねぇか」
「ああ。その為に依頼の期間は通常より長めにとっている」
「わかりました。では出発は直ぐの方がいいですか?」
「ああ。出来れば今日中に出発して貰えるとありがたい」
「わかりました。我々は準備が終わっているので直ぐに出れます。レオンさんは?」
「こっちも準備は終わってるから何時でも出れるぜ」
「ではすぐ出発します。アインザックさん、ありがとうございました」
レオンとラキュースは立ち上がり、アインザックに一言言ってから会議室を後にする。
レオンとラキュースは二階から降り、冒険者組合の一階に降りる。
一階では青の薔薇一行とブレインとクレマンティーヌが会話をしていた。
「みんな、お待たせ」
ラキュースがそう言い、青の薔薇の一行に話しかける。
青の薔薇は前評判通り女しかいないパーティだ。
筋肉が発達した女というよりは男に見えるがよく見れば女な女戦士ガガーラン。
髪はオレンジに近い金色。スラリとした肢体をしており、全身にぴったり密着する様な服装をしている三つ子の三姉妹にして忍者のティナとティア。
一応分かりやすいように服装の一部が赤いのがティナ。青い方がティアである。
漆黒のマントに身を包むは小柄な者。ともすれば幼子にすら見える小さい女は仮面で顔を隠し、何らかの手段で声すら偽っている。チームの
「来たか、リーダー」
ガガーランが顔を上げ、ラキュースの来訪を歓迎する。
「えぇ。すぐに出る事になったわ。みんなは大丈夫?」
「俺たちは大丈夫だぜ。そちらさんは?」
ガガーランはブレインに問いかける。
「こっちも大丈夫だ。直ぐにいこうか」
ブレインとクレマンティーヌも立ち上がる。
「では行きましょう。トブの大森林へ」
■
レオンと青の薔薇一行は半日でトブの大森林前まで進んだ。
時刻も夕刻と成り野営の準備をする時刻。
レオンはアイテムボックスからグリーンシークレットハウスを取り出し、地面に置いた。
街道の脇にコテージがポンと生え、青の薔薇一行とブレインは混乱した。
「え、家?」
「コテージが生えた」
「不思議過ぎて言葉も出ない」
青の薔薇一行はその様にグリーンシークレットハウスを見て言う。
レオンは冷静に告げる。
「これが俺たちの野営拠点だ」
「野営とは……?」
ブレインは疑問を口にする。
「待て、これは……グリーンシークレットハウスか?」
仮面をつけた
「そうだが、よく知ってるな」
レオンはアイテム名を当てられ驚く。
すわプレイヤーか、と疑問を抱く。
「ああ、昔り……知人がこれとよく似たアイテムを使っていた事がある」
「へぇ」
幼子が言う昔ってどれくらい前なのか、とレオンは要らぬ疑問を抱く。
だがイビルアイの本当の年齢を知っている青の薔薇一行は十三英雄時代の物だと当てる。
そう。イビルアイはかつて世界を魔神の脅威から救った十三英雄の一人なのだ。実際は十三人以上いるが。
「取り合えず俺らはここで寝泊まりするが……部屋は空いてるし、そっちもこっちで寝るか?」
「いいのか、なら遠慮なく!」
ガガーランがそう笑顔で言い、コテージに上がる。
「ちょっと、ガガーラン」
「いいじゃねぇか。歓迎してくれてるしよ」
まったく、とラキュースは溜息を吐く。
「わかりました。私達もお邪魔させてもらいます」
「おう。遠慮するな」
そうして青の薔薇とレオンたちはグリーンシークレットハウスの中に入る。
青の薔薇とブレインは外見以上の広さを持つグリーンシークレットハウスにまたも驚く。
「取り合えず飯はどうする?」
「ん-、青の薔薇から一人人手が欲しいな。私が作るよ」
クレマンティーヌが名乗り出て料理を始める。
「私は食事は要らない。飲食不要のマジックアイテムを持っているのでな」
「そう? じゃあ七人分か」
クレマンティーヌとティナがキッチンに赴き料理を開始する。
その間情報交換という事で、レオンたちと残る青の薔薇は巨大なテーブルに席を付ける。
「レオン、あなたは……プレイヤーなのか?」
イビルアイがそう問いかけた。
「ああ、そうだが」
レオンは軽く返す。
レオンにとってプレイヤーであることは隠すべき事ではない。言いふらす気はないが聞かれたら答える程度の事だ。
「そうか……突如現れた実力者というのも納得がいく」
「イビルアイ、プレイヤーって何?」
プレイヤーの名を初めて聞いたラキュースたち青の薔薇が疑問を口にする。
「かつての六大神や八欲王、十三英雄の幾人かの事だ。ユグドラシルから来たとされる異邦の神々……」
「へぇ……!」
ラキュースはキラキラと眼を輝かせる。
ラキュースは中二病を患っており、そう言った事には興味津々なのである。
「ところでよ、俺からも聞きたいんだが……レオン、あんた……童貞だな?」
レオンは固まった。
そう。レオンは童貞である。捨てる機会も無く、店に行くには恐怖心が勝ったよくいる童貞だ。
「…………それがどうかしたのか?」
「どうだい、俺と一発! あんたほどの強者なら楽しめそうだ!」
「心の底から遠慮する」
「そう言わずに一発だけでも!」
「遠慮します」
思わず敬語に成るほどにレオンは拒否をする。
そうこうしているとラキュースがガガーランの頭にチョップを見舞いする。
「仲間が失礼を……」
「いやこちらこそ……」
何故かレオンも敬語に成る。
そうこうしているうちに料理も運ばれ、一行は会話を楽しんだ。