全裸偽イリヤ先輩。   作:ひつまぶし太郎

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主人公はレイシフトしたら服がなくなります。
描写は合ったりなかったりしますけど。
前回着てた服はそのへんの民家から適当にかっぱらった女性服でした。


第十話。聖剣解放。

 

 

───昔、ゴミ箱の底で一冊の本を見つけた。

 

ただ死を待つだけ。

腐っていくのを自覚しながら、朽ちていくための廃棄場。

 

そんな場所に俺の後に落ちてきた一冊の本。

 

俺の人生が歪んだのはその時だ。

まったくもって、ゼロ歳児の情操教育には悪すぎる。

 

その本は面白かった。

登場人物たちに訪れる危機にハラハラとして、胸が躍って、主人公と一緒に怒り狂って、時に主人公に苛立ち、彼らの結末に胸が締め付けられて涙すら瞳に浮かんだ。

骸に灯ったその熱はしかし、同時に不満も抱いていた。

不完全だ。

ナンセンスだ。

絶望して死んでしまう。

完全な存在、完全な人間、秩序と論理のみで構築された完全な物語。

それが面白くないのは理解できる。

悲劇だからこそ浮き彫りになる、不完全さ故の美しさも認めよう。

 

だが、俺はこれを認められない。

この身体を焦がすほどの珠玉の名作を、それでも駄作と呼んでみせよう。

もしまかり間違ってこの作者と出会えたなら、縛り付けて目を見開かせて、泥臭くてつまらない、退屈な三流の喜劇を嫌と言うほど食らわせてやりたい。

 

三流の喜劇の主人公。

下品で自分勝手ですぐにコケる無様な道化。

俺はそんな人生(駄作)がいい。

 

身勝手な、理不尽な怒りだ。

だが、その怒りこそが俺の原点。

とんでもないものを読ませてくれやがって、という魂の叫び。

 

俺はその日、ただ死んでいくだけのクソつまらない悲劇未満の怠惰をやめて、喜劇を求めた。

この穴蔵を出て、世界を見てやると息巻いた。

 

ピンチになるとワクワクする。

どう乗り越えてやろうとか、ここでアイツぶっ飛ばしたらさぞ気持ちいいだろうとか考える。

明日が来なくてもいいやと、今の一瞬のためにすべてを投げ出せる。

俺はきっとイカれてるんだろう。

 

 

…その結末がこれである。

何処にも届かなかった左腕が食い千切られて、地面に落ちる。

あとに残るのは血飛沫と沈黙。

凄惨な現場のみが、俺のいた軌跡である。

 

「おお勇者よ!死んでしまうとは情けない!かくして藤丸立香は人類最後のマスターになり、小さい悲劇を見てみぬふりを出来ぬ愚か者は、舞台から姿を消した…」

 

わかりきった、名作にはほど遠いただの凡作。

 

「そんな結末、実にくだらない!さぁ裸の勇者による、とびっきりくだらない宇宙でぐだぐだで凡作な喜劇をご覧あれ!」

 

そんなもの、認められるわけがない。

 

───直後、霊基を完全に破壊された際に発生する魔力の光が、街の()()から立ち昇った。

 

相変わらず左腕は落ちているが、血の池は消えている。

アイアンメイデンの中からは黒塗りの妖精が飛び出してきて、一仕事を終えた道化のように虚空に向かって大仰な礼を見せて掻き消えた。

 

驚愕で目を見開くのは、胸元から聖剣を生やす猫耳のアーチャー。

…なんだろうな。

聖剣の切れ味が上がってる気がするのは、シェイクスピアの強化だけではない気がする。

 

「ぐぅ゙っ……転移とはな…」

「奥の手ってのは、ここぞに使うから活きんだぜ」

 

なんのことはない。

シェイクスピアの見せる幻影と合わせて転移しただけ。

 

たぶん、それこそ本物の聖杯を身に宿して英霊になったやつとかいたらそいつも転移は使えるはずだ。

過程を飛ばすのは、アインツベルンの聖杯の十八番だからな。

 

「見事…に、騙されたというわけか…あとなんでずっと全裸なんだ…」

「いや、レイシフトしたときから全裸でさー。せっかく民家から服パクったのにワイバーンのブレスに燃やされて、もういいかなって」

「それ窃盗…」

「勇者行為って知ってるか?いい言葉だよな。元からない罪悪感が消えるから」

 

最初から使わなかったのは、広大な地域を探索するにあたって一番厄介なアーチャーの位置を割り出して、確実に不意打ちを決めるためだ。

そして、シェイクスピアの幻影を最後の最後で囮にすることで全員の注意を逸らした。

 

代償として脇腹に穴が空いて左腕千切れたけど、サーヴァント一騎持っていけたなら上出来だろう。

部品の欠損なんて、大した問題ではない。

 

ちなみにセイバー相手に使わなかったのは、近接戦闘のプロの後ろに飛んだところで滅多切りにされるのが分かってたからだ。

 

「毒を制すにはより強い毒を、ということか…。だが、いい。これでいい…まったく、厄介でどうしようもなく損な役回りだった。それでも、子どもを…宝を殺さなくてすんで、よか───」

 

アーチャーが魔力の光となって消滅する。

 

本来の彼女なら、矢を射かけた場所で立ち止まるなんてありえない。

ただ矢の軌道をなぞるような転移では捉えられなかったはずだ。

その神速をもって敵を翻弄し、居所を悟らせない、届かせない立ち回りをしたはずなのだから。

 

その下法に、今はただ感謝を。

その悪辣さ故に、付け入る隙を与えてくれたその迂闊さに免じて、ぼこぼこにするのは最後にしてやろう。

 

俺は一瞬だけ目を瞑り、彼女の無念に思いを馳せる。

 

「ふぅ…で、休ませてはくれないのな」

 

俺は千切れた左腕と、穴の空いた脇腹を押さえながら、三騎のサーヴァントたちと改めて対峙する。

 

「素晴らしい行いだ。蛮勇もまた勇気であると認めよう。だが、無意味だ。サーヴァントを一騎落としたことは驚嘆に値するが、死にかけ、奥の手も晒した。貴様の特攻に意味はあったのか?」

「意味はあったさ。敵が一人減った。それもアーチャーだ。これだけで、次の戦いは楽になるだろ」

「次があると?」

「俺が死んでも、次はある。そいつはおっかねーぜ。なにせこわーいサーヴァントがたくさんだ。赤いマントのロリコンとかな。もはや妖怪だろ」

 

黒いコートの偉丈夫は、その瞳に理知的な光を感じないでもないが、逆にその真面目さ故に容赦はしてくれないだろう。

 

「あら、自分から余計な皮を剥いて鍋に飛び込んでくれたんだもの。私たちは感謝して食べるだけでいいのではなくて?」

 

隣のアイアンメイデンを構える女の方はだめだな。

あれも多少従わせるために下法は使われてるようだが、元々持ち合わせている残虐性を後押ししているだけのように見える。

 

身内には甘そうだが、敵の俺はそんな甘さを期待しないほうがいい。

 

「………………………」

 

そんでもって、沈黙を貫く聖職者のような顔をした()()

あれはよくわからん。

なんか無理矢理抑え込んでるようにも見えるが、弾みでこちらがぶん殴られそうな気配がビンビンだ。

 

「私は、報告に戻るわ。後のことはあなたたちで十分でしょう?こっちはあの竜殺し相手に死にかけて、そろそろ限界なのよ」

「ああ、無論」

「ええ。むしろ、邪魔者が減って助かるわ」

「…………………そう。さようなら、カルデアのマスターさん。二度と会うことはないんでしょう」

 

まぁよくわからんが、相手が減るというのならこちらとしても願ったり叶ったりだ。

 

「おう、痴女ババアも気を付けてな」

「……………私は聖女…私は聖女…私は聖女…!我慢よ私……!」

 

それに、呼吸も整った。

さぁ、第2ラウンドと行こう。

 

「そもそもお前ら、何でもう勝った気になってんだよ。大英雄はうちのアーチャーに連れられてもうこの街にはいねーし、住民の避難は済んでんだよ。目的の八割は完遂してんだ。それで言うとお前らのほうが負けてんだからな」

「くくっ、言うではないか」

「単独行動って便利だよな。うちのサーヴァントはあんなでもアーチャーだから今頃もう一人のマスターのところに向かってるぜ。遠見でこっちを覗き見ながらなあ」

 

まぁ、嘘だけど。

あいつはキャスターだし、後輩がどこにいるかなんて俺たちは把握していない。

逸れてドクターと通信すら出来ていなくて、それでも存在証明をしてくれてるカルデアのシバに感謝。

まじ頭上がりませんわ。

 

「ならば手早く、淀みなく。貴様を滅ぼし、追いかけるとしよう。その骸を串刺しにし、もう一人のマスターとやらへの見せしめとしよう。堕落し、浅ましい姿を晒すことは恥ではない。しかし、敗北は何よりの恥だ。聖杯を求め、傀儡にこの身を貶めてもなお───余は不死身の吸血鬼を謳おう。それが虚構であろうとも、それしか残されておらぬのだからな」

「やってみろよバーカ!!狂わなきゃやってられない使命に準じるやつに負けるかってんだ!!!」

 

俺は聖剣を民家から拝借した布切れで右手に括り付けて、一息に相手の懐に飛び込んだ。

 

───直後、爆発。

天に向かって聖剣の光が立ち昇る。

 

「ファー!甘い甘い!こんだけ特攻してるやつが今さら自爆しねえとでも!?威力こそが正義!レゼ篇スタート!俺自身が爆弾の悪魔になることだってなぁー!」

「正気!?」

「うるせぇっ、今更止められねえよ!シリアスモードのスイッチオフだ!」

 

聖剣に魔力を大量に注ぎ込んでオーバーフローさせたことで起こった爆発。

当然担い手も巻き込まれるそれは、俺の血飛沫とともにとある呪いを周りに降り注ぐ。

 

神秘の冒涜。

英雄を貶める狂化の付与。

それを参考に即席で生み出した、相手の力を削ぎ、痛みを強要する呪いの力。

バーサーク・アーチャーの霊基を貫いたことで聖剣が覚えた新技。

 

『ちんぽじが決まらなくなる呪い』

 

どうやら、うちの鈍ら聖剣は鉄砕牙システムだったらしい。 

切れ味が上がったのもその延長。

 

そして今回、男女関係なく、ちんちんのあるなしにかかわらず。

ちんぽじが気になって戦闘に集中できなくなるという最悪な呪いが、この土壇場で完成した。

 

「さぁフランス春のデバフおちんちん祭りの開催だ!祝砲を上げろ!勝鬨を鳴らせ!凱歌は敵の悲鳴だ!自爆をトリガーにする必要があったけど、即席なら十分すぎる性能だろ!?()()()()の自爆芸に恐れ慄け!ちんちん万歳!下ネタ最高!ヒャッハー!狩りの時間だぜーい!」

 

反撃開始───!

 

 

 




今回も最後まで読んでくださってありがとうございます。

作者の中でなんかこれちゃうな感が出てきてしまったので一旦ローマ…思いつかなければフランスで終わろうかなと思います。
ちょっとライダーさんヒロインでプリヤ2次をするか、このすばで過去作リミックスをするかしてみたいのもあります。
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