全裸偽イリヤ先輩。   作:ひつまぶし太郎

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終わりを見定めた途端するすると書ける不思議。
先に言っておきますが、この作品で一番主人公の根幹に関わってるのはシェイクスピアです。
おじ×ショタとか何処に需要あんだよ。
BLではないのでご安心を。


第十一話。ちんぽじの勇者。

 

 

怖い。

 

「ハハ」

 

…怖い。

 

「ハハハハ」

 

目の前のただの人間が、ただ怖い。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ───っ!」

 

アイアンメイデンで転移させずに今度こそ捕らえた。

血の杭で串刺しにされていた。

その頭蓋に、この手を振り下ろした。

 

相手はもう瀕死のはずだ。

腸をぶち撒けて、自爆でリセットされたはずの左腕はまた無くて、右耳もなくて、片目は抉れて、右脚は落ちていた素槍を突き刺して無理矢理繋いで保っているほどに限界だ。

全身が血だらけ。

立っていられるはずがない。

聖剣を括りつけた右腕だって、力なく垂れ下がっている。

 

だというのに、壊れた楽器のような、千切れかけの弦を無理矢理弾いたような、耳障りな狂笑が響き渡るのはなぜだ。

倒れないのはどうしてだ。

あまりにも理解不能なそれを、人は。

 

「化け物───!」

 

思わず、自分のことを棚に上げてそんな言葉口をつく。

嗤ってしまう。

本当にどの口が言うのだろう。

 

隣のランサーの、後世に語られる悪辣な噂話による変性ではない。

私は誰もが恐れ、敬った血の伯爵夫人。

その完成形。

恐怖を喰らって反英霊となり、ここに居る。

 

そんな女が、ただの人間を恐れるなんて。

 

心底恐ろしい。

冷や汗が止まらない。

 

あとちんぽじも決まらない。

とてつもない不快感が、思考を鈍らせる。

動きを阻害し、足を止めて、絶望しそうになる。

ランサーはまだいい。

実物を動かせばまだ耐えられる。

だが私はどうすればいい。

位置を変えようと手を伸ばしても、私の手は虚しく空をきるだけだ。

なにせ、ついていないのだから。

 

「なんだ、どうした!その程度か!ええ、おい!」

「なぜ、動ける!?」

五月蝿(聞こえね)えなぁ!俺はただ、人間であるっていう思い上がりをやめただけだ!そしたらどうだ、痛みが消えたぞ!ただの器に痛みで蹲る機能なんていらねえもんなぁ!!!は!!!はは!!!!!!」

「ひっ」

「こちとら反骨精神だけの器でさぁ!世界救うとかついでなんすわ!喧嘩売られたから殴り返したいだけなんだからなぁ!!!気に食わない結末とかいらないんだよ!カットだカット!悲劇はリテイク!駄作のハッピーエンドにしてやんよ!」

「くっ、何が玩具だ。魂にまで響くこの痛み、本物の───!」

「優先順位を間違えたな、お前ら!それともなんだ、目が眩んだか!?可愛くてごめんなぁ!!!そりゃ勃起してちんぽじも決まらなくなるよなぁ!ギャハハハハハハ!!」

 

ランサーの槍が聖杯を磔にし、直後無理やり全てを引き千切って彼が飛び込んでくる。

 

血だ。

血だらけだ。

もはや、互いの返り血が混じり合って、誰の血が飛び交っているのかすら分からない。

 

あとちんぽじの直し方も、気にしないように意識から外す方法も分からない。

え、こんな縦横無尽に動くもん?

こんな不安定で不定形なもん収納してるの?

男の人って大変。

 

「お前らをたおせばさぁ!また聖剣が強くなって!そしたらまたお前らを殺せてさぁ!はは!おいおい俺の最強伝説始まっちまったなぁ!?」

 

あまりにも眩しい。

英霊となったからより強く感じるのか、目の前の少年から目が離せない。

あれ(聖杯)が欲しい。

その光に灼かれて乾いた喉を潤すために、翼を焦がし溶かしながらでも近づきたい。

孤独な牢屋で死の間際に見た、あの一筋の光を今度こそ、なんてノイズが走る。

 

『ああ!彼は松明に明るく燃えるすべを教えている!欲しい、欲しい!あれが欲しい!そう叫ぶ怪物たちの、なんと哀れなことか。その光こそが自分たちを殺す毒とも気付かずに、怪物たちは一心に羽を動かす!彼らが自分の過ちに気付くのは、その不出来な蝋の翼がなくなった時。自分たちは所詮、偽物だと彼らは地に落ちながら思い出す!』

 

先程から、過去の自分の所業を責めたられるような幻聴が聞こえる。

かつて愛した誰かの顔がちらつく。

そんな自分を苛む過去(呪い)を振り払いたくて、よりムキになっていく。

そしてムキになればなるほどちんぽじが決まらない。

最悪だった。

過去類を見ないほどにコンディションが最悪だった。

これならまだこの世全ての悪で汚染されたほうがマジだ、なんて弱音すら思い浮かぶ。

 

…彼の言う通り私たちは優先順位を間違えた。

あまりにも魅力的な囮を前に、あまりにも容易く下せそうな獲物を前に、あまりにも馬鹿馬鹿しい呪いの効果を前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、揃いも揃って。

 

本来なら、さっさと増援を呼んで逃げ出した街の住人もサーヴァントも追撃するべきだったのに。

 

「その心意気、嫌いじゃないわ!!」

「今度は何だ…!」

 

新たな乱入者にランサーが忌々しげに舌打ちをするが、私は心の底から嫌悪するその存在に標的を即座に変更する。

 

「アイドルに一番大事なのは可愛さと常に笑顔なこと!その点で言えばあなた100点よ!なんで全裸なのかわかんないけどそういうキャラ付けもありよね!血化粧も似合ってるし!」

「邪魔をするな私……!」

「ふふん。アンタは私の本性。私の結末。私の、どう泣き叫んでも変えられない罪の具現。…アンタを否定するって事は、 自分の罪から目を背ける事と同じでしょう」

 

新手が来る。

援軍が駆けつける。

少年が命がけで稼いだ時間は無駄ではない。

 

迷いのある聖女が、戦乱の気配を察知して来る。

逃げてきた誰かの頼みを聞いて、聖者が来る。

ただ熱に引き寄せられるように蛇になった恋する乙女が来る。

王女とそれに付き合う音楽家が、喝采の歌を奏でながら駆けつける。

 

敵を惹き付け、多くを救ったちんぽじの勇者の下に人が集う。

 

「でも、そうよ!だからといって自分の不始末を放っておけない!その結末を認められない!これがどんなに醜い自己欺瞞でも、私は叫ぶわ!」

「くっ───!」

「私は、あんたみたいになりたくないって!!魔力を寄越しなさい、初対面のキッズ!!最高のコンサートをしてあげる!」

「嫌だぁ!またお前かよ!もう通算何度目だよ!何度もでてきて恥ずかしくないんですかぁ!?ちくしょうわかっててもやるしかねえのか!くそが、持ってけドロボー!もう終わりだこのフランスは!俺知らねーからな!ひゃーはっはっは!みんな死ぬがいいさ!」

 

後輩が来る。

 

「先輩、サボ郎さんを発見しました!」

『マシュ、立香ちゃん!周りのワイバーンもサーヴァントも無視していい!今はサボ郎君を…!バイタルの数値がもう消滅寸前なんだ…!』

「簡易召喚・アーチャー!蹴散らして、エミヤ!!!…行くよマシュ!」

「はい、先輩!武力介入開始します!」

 

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)!!!!」

 

そして、全員の耳が死んだ。

覗き見していたキャスターも死んだ。

ジークフリートは呪いが悪化して死にかけた。

簡易召喚されたシャドウサーヴァントで、意識はないはずのエミヤも崩れ落ちた。

 

片耳がつぶれていて、なおかつ彼女を知っていたことで先の展開が読めていたおかげで難を免れたサボ郎だけが、無事だった。

 

「あーわり、後輩。間に合ってくれてうれしいぜ。ある意味間に合わなかったみたいだけど」

「───!───!?全然何言ってるか聞こえないんですけど!?」

「ははは、まじかよ今なら何言ってもいいのかこれ。やーい馬鹿たれ、クソバカ、来んのがおせーんだよ。…あ、お前こないだ下着コインランドリーに忘れてったろ。廊下に飾っておいてやったのあれ俺な」

「下着展示犯お前かぁぁぁああ!」

「おいなんでそこだけ聞こえんだよふざけんな!…あ、足取れた」

「!?マシュー!メディアさんサークルきて召喚呼んでぇ!」

「おいおい日本語無茶苦茶だけど大丈夫かぁ?唾つけときゃ治るんだからあんま騒ぐなよ」

「そんなわけ…!」

「はい生えた」

「うわー!急に宇宙的な理不尽振りかざさないでくださいよ!というかそれができるなら早く服着てくださいよ!」

「えーもうよくね?一回着たのに燃えたんだぜ?だりーよもう。あれだよ、もうあれだから。……なんかもうあれだからね」

「何も思いつかないままとりあえず従いたくないって意思表示だけするとか、どこまで反骨精神の塊なんですか」

「マシュー、後輩がいじめるんだマッシュルー。ブリンバンバンぼんしてくれよぉ〜」

「意味わかんないしうざいので近寄らないでください」

「辛辣すぎない?」

 

かくして、小さな悲劇は防がれた。

聖者が二人同時に集まったことでジークフリートの呪いは速やかに解かれ、戦力が一箇所に集まったことで撤退戦も必要なくなった。

誰かが殿となって犠牲になる展開はなく。

 

ただ俺とシェイクスピアが死ぬほど怒られるという結果だけが残った。

 

実にくだらない。

三流以下のその結末に、俺は満足げに笑うのだった。

 

 




今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
読んでくださってる上に感想までくださる読者の皆様のためにも、完結までは頑張ります。
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