何言ってんの?
なぜサボ郎さんがカルデアバスターズなんて組織を立ち上げたのか、ですか。
…自惚れでないのなら、私のため…になるのでしょう。
ええ。
3号である先輩には、話してもいいかもしれません。
……長い話にはなりません。
なので、別に場所を移す必要もパソコンを閉じる必要もありませんが…。
ええ、本当に。
お茶もお菓子も必要ないし、ベッドに横になる必要もありませんよ?
エミヤさんを呼んで夜食も用意しなくて…いえ、確かに先輩の溜まりに溜まった報告書を今から片付けるのは大変ですね…。
おほん。
なら、あくまで寝る前のほんの少しの気分転換に、お話しましょう。
ええ、楽な姿勢になってください。
報告書は明日、疲れをとってから行いましょう。
では、不肖マシュ・キリエライト。
先輩の気分転換が務まるように頑張ります。
●
彼はまだカルデアに来て2週間も経っておらず、にも関わらずとてつもない存在感を放っていました。
Aチームという、前所長に選ばれたということから普通は少しだけ遠巻きに見られたりやっかみを向けられる私たちに気安く接して、魔術師も一般枠も関係なく、そしてスタッフにすらその態度は変わらない。
好奇心の赴くままに振る舞って、感情のままに行動し、何にも縛られない。
くるくると、まるで踊るように。
けらけらと、無邪気な子供のように。
それでいて、まるで何十年も歳を重ねた老人のように人を見透かす。
不思議な人でした。
不思議な、魅力的な人でした。
きっと彼が自ら関わっていく人たちの中で、彼のことを嫌いな人はそう多くなかったことでしょう。
同時に、彼は敵と認めた人物に対してはとても苛烈だったのでいわゆる典型的な魔術師な方たちや、その眩しさゆえに嫉妬心を抱いてしまうひとたち、そして興味を持たれなかったひとたちは彼を苦手としているようでしたが。
さて、そんな彼と私は、とあるきっかけがあるまで、話したことは一度もありませんでした。
挨拶ならしたことがあります。
同じ空間にいたこともあったはずです。
タイミングが悪かったのもあれば、私の情報が秘されていたのもあるでしょう。
なんとなく、悪意を嗅ぎ分ける力のあるあの方は、私のことを避けてはいませんでしたが踏み込もうともしませんでした。
そう、あの日までは。
詳細は省きます。
…正直、あまり思い出したいことでもないので。
ただ、端的に言うのなら。
私はベリルという男性に、指の骨を折られて痛めつけられていました。
その場にサボ郎さんが居合わせたのは、私の短い人生の中でもきっと幸運な方だったのでしょう。
『───ゲロ以下の臭いがすると思えばよ、まさかゲロの擬人化がいるとは…お前、なんかトランプとか武器にして戦いそうな顔だよな(笑)とか言ってみたりして』
『ここに来るまでに見た資料だけでもやっぱここ終わってんなー。ま、なんだ』
『とりあえず大丈夫かよ、マシュ』
魔術師として、戦闘を熟せるはずのベリルさん。
あまりにも軽い足取りで医務室へ足を踏み入れてきた無防備なサボ郎さんに、ベリルさんは日常の延長と見紛うほど自然にナイフを振り下ろし、そのまま吹き飛んで壁に叩きつけられました。
『…あ、わり。あんまりにも普通に殺意向けてくるから殴っていいのかなって…やべーな。どうしよ。これ怒られるやつ?やだなぁ、このあと俺ぺぺとケーキ食べる約束してんだけど…とりあえず急にこいつの金玉が爆発した悲しい事故ってことにするために破壊するか。うんうん、俺ってば頭いいな!宇宙でもよく金玉って爆発してたし普通によくある事故だよな!』
泣いて許しを請うベリルさんを無視して、気絶するまで陰嚢を執拗に蹴り上げるサボ郎さんは、口元を笑みでゆがめていましたが、その瞳は決して楽しそうではありませんでした。
『おい、五月蝿えぞ黙れよ。バレるだろうが事故じゃないって!この、クソ!大人しくしろ!あーもう、このっ、いい、加減に!しやがれ!!!…はぁ…はぁ…ぺっ!あまちゃんがよ。宇宙人がいないところでイキってるだけの凡夫が!ったく、手間取らせやがって』
めきゃっ、と言う音を最後にベリルさんは動かなくなりました。
ちょっとどっちが悪者かわからない絵面ではありましたが、少なくとも私を襲っていた悪意は退けられたことに、ひとまずの安堵を私は覚えました。
『ありがとう…ございます』
『うん、お前さんは何も見なかった。ただベリルの金玉が急に爆発しただけの悲しい事故だったってことにしてくれたらそれでいいぜ。俺も何も見なかったし知らないってことで。ちょっと今からこの組織壊滅させてくるけど気にすんな』
その時でした。
私が、ひらひらと手を振りながら立ち去ろうとするその背中に、思わず手を伸ばしたのは。
『その…待って、ください……あなたは、カルデアで、一番自由に見えます。なので、一度話してみたかったんです』
『そうかぁ?つーか急だな。急な上に、こんな状況でする話でもなさそーだ』
『…………いえ、はい。なにも…』
話しかけて、返ってきた声と瞳。
そこには、私にない熱があって。
ルビーのような赤い瞳は、褪せていなくて。
だから私は、火に触れてしまった時に反射で手を引くように、火傷を恐れて思わず目を伏せました。
怖かったのです。
自分のような者が触れたら、焼き尽くされてしまいそうなその眩しい光が。
ですが、その人は自分の返答に棘があったことを反省するように顔を一度手で覆って、そこからゆるゆると息を吐き出しました。
思えば、状況として気が立っていておかしくもなかったのです。
目の前で人が悪意によって傷つけられている。
そんな状況で、何をされているかも理解できずにただ蹲るしかできない私という存在。
生み出され、捨てられたにも関わらず、優しい心を手放さなかった彼からすれば、地雷しかない状況だったのですから。
『あーいや、悪い。別にあんたに苛立ってたわけじゃねーんだけど…んー、自由。自由ね…まぁそりゃ、身も蓋もないこといやぁこんな実家で暮らしてる奴に比べりゃあねえみたいなとこはあるけど』
『…………』
『…ふーん?そこで怒んないなら別に帰属意識はねーのな。俺もそーなの。ろくでもねぇ誰かに作られたこれまたろくでもねー命で、まぁぶっちゃけそのままゴミ溜めで死んでく運命だった』
『……………あなたが?』
『でも世界の広さを知って変わったと言うか。…いやなんかもうめぐりあい宇宙だったけど』
『……?』
『ま、要は俺はやりたいことしてるだけだよ。衝動的なの。よくない例というか、普通に不良だからあんま参考にしないほうがいいまであるんだけど…』
『………その』
『あーうん…まぁ、羨ましくなるよな。なんかこの世の楽しいこと全部知ってるような笑顔でさ、衝動に任せて全力でかっ飛んでくやつって。人が困ってたら口で色々言いながら手を差し伸べるし、喧嘩っ早いし、やりたいことは明確だし。…絶対に負けないヒーローを見てると…自分と比べて、生きてるって感じがするというか』
私にもわかるように言葉を選んでいる、というより。
ただ自分が昔思っていたことを口にしているだけ。
そんな風に話す彼だったからこそ、私は、自分の中にも小さな熱が生まれたんだと思います。
生きてるって感じ。
確かに、このカルデアの誰よりもサボ郎さんは生きるって感じがしていました。
明るいという意味でならペペロンチーノさんま当てはまりそうなのですが、直感的に何かが違うような気がします。
人間的な普通の善性とはまた違う、そんな眩しさがありました。
『まずはやりたいことを見つけねーとな。どうする?とりあえずマシュもベリルに金的してく?』
『…いえ、それは別にやりたくない…と思います』
『ばっちいもんな。俺ももうこの靴捨てようかなって。なんか汁ついたし』
『そういうわけでは…』
彼が冷めた瞳を向けるのは、泡を吹いて気絶しているベリルさん。
彼はカルデアでAチームに所属していて、チーム間の緩衝材というか、間を取り持つようにひょうひょうと立ち回る、器用な印象の人でした。
そんな人がどうして、私に暴力を振るったのか。
彼が私に告げた言葉のすべてが、私には理解できないものでした。
理解できない。
理解できないものは、怖い。
そんな自分に、やりたいことを見つけて選択するなんて、とても───
『やりたいことがわかんなかったらとりあえず何でもやってみな。やり方わかんなかったら聞きゃーいい。お仲間としてレクチャーくらいはしてやるぜ?』
『お仲間…』
『そう、あれだな。……うん。カルデアバスターズ2号ってことで親切にしてやるよ』
くしゃり、と笑う彼はそれこそ本当に少女のように美しくて。
それでも、なぜかとても“男の子”で。
『バス…ターズ…』
『実家っていう箱庭をぶち壊して外の世界を謳歌する的な。…うん。名作だよな、リトバスって。べ、別に最近見たからその名前にしたってわけじゃないんだからね!』
『………?』
兄、のようなものなのかもしれません。
普段は煩わしさすら感じる時もあります。
巻き込まないでほしいと思うことも。
感謝はしていても、尊敬は全面的には難しいです。
ですが、それでも。
私の異変に一番最初に気づくのはいつだって彼でした。
訓練でかすかな損傷を負った時も、夢見が悪かった時も、いつだって。
おほん。
最後に少し話はそれてしまいましたが、これがカルデアバスターズの誕生秘話で…おや。
ふふっ。
おやすみなさい、先輩。
良い夢を───。
●
その日の夜、カルデアに特大の警報が鳴り響きました。
犯人はサボ郎さん。
ちょっとシェイクスピアと二人野球してたらホームラン打っちゃって…という子供のような理由でカルデアスに、野球ボールをぶつけたサボ郎さんは、それはもう怒られに怒られて。
翌日、『私は夜中に野球をして皆さんに迷惑をかけました』という札を持たされて廊下にバケツを持って立たされているサボ郎さんに、私は深いため息をつくのでした。
こんな感じて思いついたら需要はないけど書き殴っていきます。
連載という責任から解き放たれて無責任に幕間を書いていく(ゴミ宣言)
そして性癖煮詰めたようなお手軽脳死小説だけ書いていく(いつもの)
・ぼざろ。ただの性癖丸出し博覧会クズバンドマンお姉さんたち×ショタ。怪文書のノリで思いついたら書く。
「駄目バンドマン製造機は脱姉したい」
https://syosetu.org/novel/389155/