「はっはっは、いやいやいや。まさかそんなわけないでしょう、所長。今日はカルデアの記念すべき第一歩。その軌跡を末席とはいえ、さらにはかなり途中からとは言え眺めてきた人間がまさかそんな…居眠りなんて、しているわけないでしょう?」
「……あなたがもったいつけた喋り方をする時は言い訳を考えながら話している時…と経験則で知っています」
寝癖まみれの頭を掻きながら、居眠りを指摘された子どもが立ち上がる。
その子どもは美しかった。
密かに雪の精と呼ばれるくらいには美少女であり、小柄で、気まぐれだった。
そして男だった。
その口もとにはよだれの跡がくっきりとついており、ついでに目もとにはアイマスクという居眠りしていたことを隠そうともしないその子どもの様子に、オルガマリーは震え上がる。
もちろん恐怖でではなく、臨界点を超えそうな自身の怒りでである。
「…チっ。おいおい、誰だよバラしたの。最低だな…。普通に寝てたのバレたじゃねえか。ふざけんなよ…!絶対許せねぇ!」
「最低なのはあなたですけど!?」
「そう言いながらも笑顔じゃないか、ええ?おい、そんなにかまってもらえてうれし───っぶねぇ!?いきなりガンドをぶっ放すやつがあるか!」
「今すぐ魔術を解きなさい、補欠バカ!」
「俺にはサボ郎っていう素敵で愉快でアイコニックな名前があるんですけどねぇ!」
「ガンド!!」
「あぶなっ!ちょ、馬鹿野郎!所長誰を撃っている──!?助けてぺぺッ!」
「あらー…私、大事な任務の前に巻き込まれるのはごめんよぉ?」
「裏切り者ー!」
放たれる黒い呪い。
それをひょいひょいと小柄な身体も活かしてかわしながら、近くにいた、今しがた自分と同じ理由で怒られたばかりの一般枠のマスターの肩を掴むと盾にする。
小柄なその子どもは少女の背後に回れば完全に身を隠すことができ、安全を確保できると踏んだのだろう。
一方、盾にされた方はたまったもんじゃない。
先程から天井や床に傷が入る威力の、正体不明な力の籠もった指を眼前に突きつけられて顔を青くする少女。
その肩から顔を出すクソガキは、中指を立てながら笑う。
「いいんですかぁ?カルデアの責任者たる所長が一般枠の、しかも素人呼ばわりしたマスター候補生傷つけてぇ?」
「くっ…卑怯よ!」
「ちょ、巻き込まないでください!?」
「あ、こら暴れんな。暴れんなよ…いいか?どうせお前こっから所長の評価は回復しねぇ。待ってるのは冷遇だ。つまり、俺と組んだほうが得ってわけよ。このカルデアバスターズ代表の俺とな!」
「サボ郎あなたそんなこと考えてたわけ!?許さないわ…許さないわよ!あとこの『
「なんでだよ素晴らしい創作魔術だろうが。ほぼ暗示だけど。この魔術を使えばほら、あのしかめっ面のカドック君も仏頂面なキリシュタリアまでこれこの通り」
「………………………」
「あっ」
へらり、と笑うこの少年は他人をおちょくることに命でもかけているのだろうか。
眼前に突きつけられていた指先が握りこぶしに代わり、大きく引き絞られたの見た少女は咄嗟にしゃがむ。
「緊急回避!」
「───出ていけえええええええええ!!!!」
「ぶべらぁ!?」
少年のおでこが真正面から拳を受け止める。
それだけならまだ良かった。
いや、子供が情け容赦なくぶん殴られる絵面は全然PTA的に良くはないが、まだ健全だった。
だが、しかし。
このクソガキが出す被害はこの程度では収まらない。
「あー!セイバー忍法が暴発して服が脱げちゃった!」
「なんで!?」
ブカブカでサイズが合っていなかったからなのか、それともそういう法則でも働いているのか、グルメ漫画並みに吹き飛ぶ制服と解放されるショタボディ。
あと、まろびでるショタTINTIN。
「ファー!?」
「大変です先輩が気絶しました!」
少年は当然追い出されたし、美少女にTINTINが生えてるという事実に記憶が消し飛ぶレベルのショックを受けて気絶した少女も巻き添えで退室を命じられることになる。
そんな2人を案内する役目を担うマシュが気合いをいれるのを尻目に、魔術が解けていつもの真顔に戻った一人があきれたようにため息をつく。
「相変わらずバカすぎるなあいつ。才能のあるやつは余裕があってうらやましいね」
「…ふむ、やはり彼は逸材だな」
「恐れ知らずなだけだろ」
「……………」
(あのバカ目立つなって言ってるのに…ったく、後で説教ね)
そんなズッコケ三人組が世界を救うキーパーソンになるとは、誰も思うわけがなかった。
今はまだ。
星野サボ郎。
合法ショタ。
見た目はだいたいイリヤ。
クソガキで、食べ物につられやすく、割とすぐ人になつく。
年齢は不明でたぶん戸籍もない。
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