全裸偽イリヤ先輩。   作:ひつまぶし太郎

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見た目ポニテイリヤのクソガキ男の娘主人公概念。


第三話。嵐の前の。

 

 

「よし、うまく話せたな」

「…どこがですか?」

「あれ、なんか怒ってる?」

「むしろあれで怒らないとでも…?」

 

うーん?と本気で理解できない顔で首をかしげるその子どもは、おでこにできたたんこぶをどこからか取り出した氷嚢で冷やしながら、考えるのがめんどくさくなったのかまぁいいかと切り替えたらしい。

それを白けた目で見るマシュの視線にすら気づかないクソガキへの藤丸立香からの評価は地の底だった。

頭が空っぽなのだろうか。

悩みとかなさそう。

 

実のところ、2人を部屋から追い出したオルガマリーからの評価は2人とも似たようなものであることを。

そして、雑に括ってるだけのはずの銀髪の尻尾が歩くたびに揺れて、うなじがあらわになる度にポニーテールを校則で規制していた学校は正しかったんだななんて考える頭のお花畑具合も似たようなものであることを、隣で呆れる藤丸立香は知らない。

知らぬが仏だった、とも言う。

 

「あと、なんでか追い出される直前の記憶がないんですけど何か知りませんか?」

「ここはカルデアだぜ?不思議なことくらい1つや2つ起こるだろ」

「そんなもんですか…?」

「そんなもんだよ。案外魔窟だからなここ。スマホとか仕組みよくわかんないまま使ってるだろ?それと同じ感じでここは動いてる」

「理屈わかんないまま動いてるんですか!?え、こわ!」

「そうだよ(適当)」

 

そうなのか…と、まだ若干霊子ダイブとやらの影響で眠気が消えない立香は言われるがままに納得する。

 

「とりあえず俺のことはサボ郎先輩とでも呼んでくれ。歓迎するぜ、バスターズ3号!」

「その変な組織にだけは絶対入りませんからね!」

「…えー、絶対うちのほうがまともなのに…」

「そんなわけなくないですか?」

「そんなわけなくなくないですか?予言するね、ここ絶対やばい組織だから。まじやべーから。なぁマシュ!いや、2号!」

 

ぽん、と、置かれたその手を迷惑そうに振りほどきながらマシュは立香へと笑顔を向ける。

 

「…先輩、この人はこのように適当なことを言っては騒ぎを起こす人ですが、決して悪い人では…悪い人…ではないので」

「なんだよ超いい人だろ。暴漢から助けた借りがあるだろお前は」

「……多少性格は悪いですが、人を無意味に害する人でもありません」

「うん、性格悪いけど悪い人じゃない気はする」

 

少なくとも、嫌われるような人ではないのだろう。

魔術で強制的に笑顔にされた3人も迷惑そうな顔はしていても、本気の拒絶は見せていなかった。

いや、金髪の人だけは心の底から愉快そうに笑っていた気もする。

 

所長とのじゃれ合いをニコニコと見守るスタッフすらいたのだ、悪人ならこうはいかない。

悪ガキとそれに振り回される姉、みたいな絵面だったのも多少あるだろうが。

 

「…おほん。とりあえずここが先輩の個室になります」

「案内ありがとうね!」

「えぇ。私も先輩とお話できてうれしかったです」

「フォウ!」

「危な!?…ってさっきの小動物」

 

別れ際、立香の肩を踏み台にしてサボ郎の頭の上に飛び乗るフォウを微笑ましげに眺めてから、マシュはその場をあとにした。

 

───運が良ければまた会えるでしょう、なんて。

 

天然な子だなぁ、と思う立香は自室に当たり前のように滑り込んだ先輩を止めようとして絶句する。

 

「はーい、入ってまー────って、うええ!?誰だ君は!ここは空き部屋だぞ、ボクのサボり場だぞ!誰のことわりがあって入ってくるんだい!?」

 

不審者がいた。

女子の部屋に無断で上がり込むところかのベッドに腰掛ける成人男性。

普通に通報案件である。

 

「サボ郎先輩出番ですよ!女子の部屋に不法侵入する不審者です!やっちゃってください!」

「何言ってんだ、こいつは下っ端1号。別名奴隷戦士ヒットマンだ」

「言ってる意味が何も理解できないんですけど…!?」

「こいつは人の部屋を勝手に占拠してサボり場にすることで、場所を汚染し占有権を主張し領土を奪う。拠点の殺し屋なのさ。特に女子部屋が狙い目だぜげへへ、って言ってたし。…お、ここの個室最高だな。冷蔵庫にどら焼きが入ってる」

 

うわ、最低…。

そんな視線に狼狽える不審者は泡を食ったように立ち上がる。

 

「ひどい言われようだな!?真に受けないでくれよぉ!?彼めんどくさくなるか糖分が切れると適当なこと言い出すから!」

「…………」

「くそぅ、疑惑の視線!初対面の印象最悪じゃないか!…その、ボクは医療部門のトップのロマニ・アーキマン。察するに君が最後のマスターなんだろう?キミたちの心身は必ず守ってみせるよ!…おまんじゅう食べるかい?」

「はい、よろしくお願いします。私の名前は藤丸立香です!」

 

…とりあえず悪い人ではなさそうだ。

これは決して餌付けされたわけではない、ほんとに。

少なくとも、私の冷蔵庫からどら焼きを強奪して頬張っているあの先輩よりはいい人だろう。

 

「…んぐ…ちょろくない?性善説でも信じてらっしゃる?お兄さんこの先心配」

「ほっといてください…ってお兄さん?あれ、いまそっちの人も彼って…?」

「あ?…あー…ま、サボ郎って名前でピンとこねえバカなお前さんは気にしなくていいことだ。テキストのミスか読み間違えだろ」

 

納得しかねながらも自室の椅子に腰掛ける立香は、そこでようやく自分が疲労のピークを迎えているのに気がつく。

そもそも説明会で寝落ちしていたのだって、何の説明もないままに霊子ダイブとやらをさせられたからで、そこから廊下で起こされてからもどこか現実感の薄いままではあったのだ。

疲労に気が付けば、あとは崩れるだけ。

一瞬、サボ郎のルビーのような赤い瞳と視線が交わった直後、立香は抗いがたい睡魔に襲われてまぶたが少しずつ落ちていく。

 

「…寝てな、後輩。それが例え一瞬のまどろみでも、お前は休んでいいんだぜ」

「……はい」

 

初対面の男性と子どもの前で眠る。

そんな普段なら絶対しない行為も、なぜかこの2人なら大丈夫だという不思議な安心感があって───。

 

「というかサボ郎くんまだレジスタンスごっこなんかやってたのかい?あんまりマリーをいじめないであげてね。君に感情を爆発させるようになってからちょっと安定してるけど」

「メンタルケアはそもそもお前の仕事だけどな?ガキンチョに頼むなよそんなこと」

「それはそう」

「ま、いいや。それよりこないだぺぺに取り寄せてもらったケーキがうまくてさ」

「いいねぇー」

「ところでこのケーキどうやってここまで運んでんだろうな」

「さぁ…?」

「生クリームって大丈夫なのか今更だけど」

「たぶん…?」

「おいお前医者だろしっかりしろよ!」

「そんなに不安ならこのケーキはボクが全部食べて上げよう。いただきまーす!」

「おいてめぇそれは許されねえだろぶっ飛ばすぞ!」

 

そんな会話を聞きながら、藤丸立香は机に伏せるようにして眠りについた。

本来なら部屋に着いた直後に起こるはずだった爆発。

 

それは一人の子どもに引っ掻き回された所長が宇宙猫状態になって一度小休憩を挟むこととなり、ファーストオーダーの開始が遅延。

結果として藤丸立香は三十分の安眠を得た。

 

そこに意味はない。

 

ただ、初めての場所に来たばかりの少女が体と心をほんの少しだけ休めることができた。

 

それだけのことを満面の笑み顔で喜ぶその子どもは、一足先に管制室へ向かう。

 

「行くのかい?」

「おう、ロマンはどうする?」

「とりあえず部屋を綺麗にしてからここを出るよ。女の子に臭いとか言われたらボクは死ぬからね」

「ふーんおっさんって生きづらそうだよな。…じゃ、また後で」

「うん、また」

 

()もまた補欠とはいえコフィンで待機しておく役目がある。

Aチーム以外英霊呼べねえのか暇だなぁ、そうだあのババアに後で貸してもらお、なんて考えながらコフィンに入った彼は、他のマスター同様爆発に飲み込まれた。

 

「あばー!?」

 

数奇な人生を辿った宇宙帰りの少年と、ごく普通の人生を丁寧に歩んできた少女。

2人の運命は、ここからさらに加速していく。

 

 

「ハッ……アッ!アーツィ!アーツ!アーツェ!アツゥイ! ヒュゥー、アッツ!アツウィー!、アツーウィ!アツー、アツーェ! すいませへぇぇ~ん!アッツ、アツェ!アツェ!アッー、熱いっす!熱いっす!アッツ! 熱いっす!熱いっす!アツェ!アツイ!アツイ!…アツイ!アツイ!アツイ!アー…アツイ!!!!呑気に匂わせエピローグしてる場合か!?…あかんこのままじゃ死ぬぅ!」

 

加速していく(無慈悲)

 

 

 




主人公が死んだ!この人でなし!!
これにてとりあえずプロローグ終了です。
いかがだったでしょうか。
真剣に読む価値はなく、暇つぶしに使うのが最適くらいな認識で大丈夫です。
良ければ感想と評価を慈悲で頂けると大変嬉しいです。
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