全裸偽イリヤ先輩。   作:ひつまぶし太郎

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読者の皆様におかれましてはかっこよくて疾走感のあるBGMを各自ご用意していただいてから読み始めてください。
もしかしたら主人公がかっこよく見えるかもしれません。


第六話。運命。

 

驚愕に目を見開く味方よりも、セイバーの方が圧倒的に反応が速い。

極めて業務的に、殺戮を実行しようとするその女の面は震えるほどに美しい。

 

だが、畏れるな。

笑え。

止まるな。

足を止めた先に、淀んだ停滞の先に。

 

未来など一つもないのだから───!

 

「はっはー!赤とか黒とかついでに正統派青も滅ぶべし!なんでって?宇宙でヒーローやってるやつ以外みんな解釈違いだからだよ!!過激派?知るかヴァーカ!あとマシュも後輩もよくやった!後で先輩として購買でなんか買ってやる!」

 

聖杯と繋がっているサーヴァントの宝具は連発可能。

膨れ上がる魔力と殺気を前に、俺は恐怖を押し殺して大きく踏み込む。  

 

「ヒャッハー!セイバーは皆殺しだ!まずはお前だぺちゃぱいオルタ!」

 

直後、世界が黒い魔力で薙ぎ払われた。

それは、反転してなお最強な神造兵器。

ブリテンで生まれた世界の頂点。

 

「無様だな、漂流者」

 

人影がそれに呑み込まれたことで、セイバーは酷薄に嗤って見せた。

その表情すらどこか義務的な、こうあるべきという意志を感じるのは果たして穿ち過ぎなのだろうか。

 

「じゃあんねんでぇしたぁー!外れでぇぇぇす!!!こちとらサーヴァントしかいねぇ宇宙から生還してきたんだよ!!舐めんな!むしろ恐れ慄け!」

 

とは言え、それを間抜けだと俺は笑う。

飲み込まれたのは俺ではなくキャスターのフード(恥部隠し)

 

セイバー忍法の変わり身。

ついでに土遁。

 

宇宙で宇宙人に教えてもらっといてよかった。

ハワイで親父に習うより確実だからな。

俺にハワイに連れてってくれる親父なんていないけど。

つーか親父がいないけど。

 

「一度生き延びたくらいでつけあがるな!」

 

一瞬の生存は、そのままその後も平穏であることを意味しない。

相手は宝具を連発してくるチート。

即座にその場所を破棄。

直後、予想通り即席で用意した安全地帯が消し飛んだ。

 

「…よ、みぃ゙、通…り───っ゙……なんすわ!」

 

その衝撃にわざと吹き飛ばされるように大きく空を舞い、その回避行動に合わせて、自分の身体の内を探りいつでも取り出せるように準備する。

 

勝負は一瞬。

視線の交差すらない。

歴戦の英雄のセイバーからすれば、まっすぐ自分に向かって獲物が落ちきているだけのイージーゲーム。

下段に構えられた聖剣が、俺の死だ。

 

英霊と力比べなんて、ただの人間には不可能だ。

出力を最大にした物理防御と魔法防御を展開しているが、紙のように引き裂かれることだろう。

 

やはり無謀。

ドラゴンに素手で立ち向かうが如き蛮勇。

 

だが、不可能だから諦めるのか?

否。

あり得ない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()、俺は宇宙の藻屑となってとっくに死んでいる。

 

諦められない。

認められない。

こんな終わり方では、俺は満足できない。

なら、正々堂々真正面からありとあらゆる手を使って暗殺しろ───!

 

『セイバーを発見。業務的に処理します』

「───は?」

「ようやく、素の顔がでたなぁ!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見せつけながら、せせら笑う。

 

「そぉら注文通りの仕事だ、うまくやりなぁ!」

 

直後、地面に仕込まれていたキャスターのルーンが輝き、大空洞を覆い尽くすほどの砂埃が巻き上がり俺の姿は掻き消える。

その砂埃には魔力を混ぜ込んであり、要は簡易チャフの完成だ。

さすが魔術師のサーヴァント。

仕事が早いのに正確で完ぺきだ。

注文通りすぎて惚れ惚れするね。

 

行き先を見失ったロケットミサイルが逡巡するのが分かる。

無闇に打てば岩盤が崩壊するからな。

そして、見失う直前に俺が取り出したものへの驚愕も隠せない。

 

「なぜただの人間がその剣を持っている!?」

「宇宙で拾った」 

「よく囀る道化め…!」

 

着地し、バランスを崩しながらも足を前に。

転けるよりも早く次の足を出せ。

手すらつくな。

 

───足を止めたときが己の最期だ。

 

対魔力を持つサーヴァント相手に半端な魔術は妨害にすらならない。

だから、仕込みをするならサーヴァント本人ではなく環境に。

とは言え砂埃と魔力の霧で視界を殺して、空気を振動させて音の出どころを撹乱した所で、誤魔化せる位置の誤差などたかが知れている。

それでもなお、俺が未だセイバーの持つ直感から逃れられているのは、真面目なセイバーが目の前の俺という雑魚よりもマシュの後ろに控えるキャスターから意識が離せないからだ。

 

そう、雑魚。

生身の俺では武装が例え一線級でもセイバーには敵わない。

 

そもそもこれ、聖剣のパチモンだしな。

コインランドリーに誰かが忘れていった錆びついた聖剣のおもちゃなのだ。

宇宙の端に店を構える妖精を自称する痛々しい美人店主が洗剤と一緒におまけでくれた、DXゲーミングなんちゃらカリバー(偽)。

勇者の剣には程遠く、星の神秘は遥か彼方。

 

星の一撃でも砕けないが、丈夫な以外はただの鈍らな剣。

機能は喋って光る以外だと、担い手を守護する力も持つ。

俺があの爆発を切り抜けられたのは、俺自身の持つ別の力とこの聖剣の合わせ技一本って感じ。

詳細はまたいつか。

 

『シュインシュイン!!サイクロン!!ジョーカー!!!エクスカリバー!!!!…それでも!!!キュインキュインキュイン!ブリブリブリ!ユニコオオオオオオオオン!!』

「パチモンっていうかパチンコ聖剣だけどなぁ!!」

 

囮として投げられた、聖剣の担い手として絶対に無視できない虹色の光りに釣られるように、見当違いの方向に本物の聖剣が振り下ろされ、大きな隙ができる。

 

「っぅ゙───ガンド!!!」

「この程度…!」

 

その隙だらけの横っ面に、後輩が礼装に込められた魔術を叩きつけた。

…魔術を使ったこともないのに、マシュと契約したてで魔力という存在に翻弄され、マシュが身動きするだけで息が上がるほどへっぽこな魔術師のくせに無茶をする。

 

「はっはー!お前やっぱ最高だよ後輩!」

 

だがきっと、この勇気にこそ人は、英雄は。

力を貸すのだろう。

 

───自分の中で、今まで欠けていた歯車が噛み合うような感覚がする。

 

それは、死に瀕した己を騙すために頭が見せる都合のいい幻覚。

運命という強制力に後押しされるような奇跡でも、あるいは、冬木で死んでいった俺によく似た誰かの後押しでもきっとない。

 

とんだ美談だ。

無理矢理ハッピーエンドにする三文小説でもこうはいかない。

ピンチに、一度も物語に登場していない最強ヒーローが駆けつけてくる。

そんな未来なんてあり得るはずもない。

 

それでも。

ああ、本当に。

それでも、と。

俺は自分の口が弧を描くのを確かに感じ取った。

 

全てがスローモーション。

止まらないアドレナリン。

血液が沸騰し、麻薬を直接脳にぶち込んだような強烈な快楽と酩酊感。

発火する思考は、解けてばらけて星の海へと溶けていく。

 

これが思い込みではなく、運命だというのならどうか応えてほしい。

生憎こちとら宇宙で常識も因縁も捨て去ったただのクソガキ。

似ているだけで、全くの別物。

 

俺は、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンではない。

その失敗作。

あるいは成り損ない。

生まれて即座に、地球上に存在する全ての魔力と熱量をもってしてもその容積を満たせない不完全な杯として破棄されたプロトタイプ。

無駄に壮大な設定を背負わされてる割に、今まで特に活かす場面もなかったし今後も別に活きる場面はない、星野サボ郎を名乗る年齢不詳住所不定実質無職。

 

名付け親のババアが後悔するほどダサいと評判の偽名を起点に、砕けて散った自分を抱きしめて、俺は熱に浮かされるように、指をまっすぐ天へ向けて口を開く。

 

さぁ、叫べ。

 

呼べ。

 

そして、世界よ聞いていけ。

 

これが宇宙でバカみたいな理由で完成した、宇宙聖杯由来の奇跡───!

 

「やっちゃえ、バーサーカー!!!」

 

城との距離は1キロ以上。

分厚い岩盤に阻まれ、怨嗟と無念の死に溢れるこの街は、助けの声など何処にも届かない。

 

それでも。

俺は、()()()()()()()()()()()()()()()ことには長けている。

声を届かせる程度の奇跡なら、起こしてみせる。

 

「■■■■■■■■■ッ!」

「ははっ」

「再契約したのか!?シャドウサーヴァントと…!?」

 

───黒い極星を目掛けて、巨人が着弾する。

 

それはもう一つの嵐。

冬木市に存在し、敗北して尚ある場所を守り続けたとある英雄。

 

そこに、魔術的な理屈はない。

狂化を受け、さらには黒化した彼に、まともな思考などもう存在しない。

 

それでも、声は届いた。

助けてくれと。

力を貸してほしいという純粋な願い。

過程と距離をゼロにして届いた、なんの強制力も義務もないその救難信号に、その英雄は応えた。

 

たった一時、冬木市という場所と姿形だけを寄る辺にどこかの世界を再演するかのような、か細いその場限りの契約。

 

マスターは来ると信じて。

サーヴァントはその偽物の呼び声を仮初の主と認めた。

 

他人同士。

似ているだけの偽物の主と、すでに敗北し未練が形となった黒化英霊。

どれをとっても偽物だらけな主従は、消えかけの種火に等しい。

 

「だからどうした、あいつは来た、俺は見た!ならあとは、勝つだけだ!」

「■■■■■■■■■───!!!」

「赤の他人の俺が言っていいのか知らねーけどよ」

 

星の息吹を、巨人が真正面から叩き割り、超えていく。

一度膝を屈した試練に、その頼もしい男は二度と屈しない。

その背中に、彼女の面影があるのなら尚の事。

 

「バーサーカーは誰にも負けない。世界で一番強いんだぜ」

 

宝具の一撃を突破してきたバーサーカーの攻撃を剣の腹で受け止めようとして、セイバーが吹き飛ばされる。

本来ならありえないパワーバランスの逆転。

それが意味するのは。

 

「令呪───!」

「お前から生き残るための囮用パンツに一画。契約書に血判を押してくれたバーサーカーをここに呼ぶのにもう一画。そんで、最後はただの瞬間的な魔力の強化だ。どうだ?チャートに無駄がなくて美しいだろ?褒めてくれていいぞ」

 

乱打、乱打、乱打乱打───!

令呪どころか契約者の魔力を湯水のように使い、狂化されてなお陰りのない英雄の技がセイバーを打ち据えて、大戦斧がその華奢な身体を真芯で捉える。

 

空高く吹き飛ぶセイバーを見上げる俺という、ちょうど先ほどとはまるっきり入れ替わった構図。

 

今度は、視線が交わる。

その瞳にどうして、なんて疑問が浮かんでいるのを見て俺は思わず吹き出した。

 

真面目ちゃんめ。

これは、温存して次鋒のキャスターに備えようとしていたお前の勤勉さ故の敗北だ。

隣に誰もいないから全員を一人で倒さないとなんて使命感が生まれて。

全てを一人でなそうとするから優先順位が必要になって。

 

独りだから、負けるのだ。

 

「く───っ!」

 

その落下の先に待つ終着点を察知したセイバーが魔力放出で軌道を変えようとするも、先ほど取るに足らないと無視した後輩の呪詛が霊基に深刻なダメージを負ったことでようやく効果を発揮して、ほんの僅かに無防備になる。

 

スタンが付与され、バーサーカーの追い討ちの踵落としを空中でまともに受けたセイバーはくの字に折れ、加速。

 

「先輩…!」

「たぶん何も知らない俺たちより、なんならあんたのほうが正しいまであるんだろうさ。でも、それでも」

 

俺は、バーサーカーに魔力を一気に持っていかれたことで今すぐにでも手放してしまいそうな意識をなんとか繋ぎ止めて、鈍らの聖剣を下段で構えた。

そんな俺を包むように後輩から放たれた温かな光(全体強化)が、最後の力を与えてくれる。

 

視線の先には一直線にこちらに向かって落下してくるセイバー。

 

「俺達は、先に行く」

 

どんなに鈍らでも、折れないのなら、第三宇宙速度にも迫ろうかという速さの物体にぶつけるだけでぶった斬れる。

 

さぁ気合を入れろ。

最後の一踏ん張りだ。

 

俺は、その眩しすぎる黒い流れ星をしっかりと目に焼き付けて。

 

 

───すれ違うように剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

結果として、俺たちはその聖杯戦争を終わらせた。

 

シャドウサーヴァントとの一時的な契約。

難しいことはしていない。

身も蓋もないことを言えば、『死にそうなので助けに来てください』という手紙を契約書と一緒に出したに過ぎず、バーサーカーがそれに了承してくれただけ。

シャドウサーヴァントと再契約できる契約書を作って届けるまでが俺に起こせた奇跡で、それに彼が応えてくれたのは純然たる奇跡と言えるだろう。

 

後の大統領のことを考えれば、あそこで魔術回路が一時的な限界を迎えて、実働可能魔力がすっからかんになったのが結果的によかったのかどうか、それはわからない。

 

俺は後輩と所長を助けるつもりで、結局のところ後輩のみを助けた形になるのだろう。

 

「所長───!」

「所長…悪いな。あんたのその思いは、必ず未来に届けてやる」

 

ならば。

自分が選択したうえで失われた命だというのなら。

その後悔を、俺は果てまで背負っていこう。

遠い未来まで繋げて、必ずそこに届けてみせる。

 

「ハハハハハ!無様だなぁカルデア!!改めて自己紹介でもしてやろうか!私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類を処理するために遣わされた「うるさい死ね」…できもしないことを!」

 

邪視を警戒して、地面を畳返しすることで壁を作る。

 

───特異点が崩壊し、退去が始まる。

 

時間はない。

万全でもない。

もはや指一本しか動かせないほどからっけつだ。

 

だから、俺は後輩に支えられながらありったけの憎悪を込めて中指を立てた。

 

「首洗って待っとけ」

 

俺達はこれ以上ないくらいに敗北した。

 

これから始まるのは、敗者復活戦。

 

作戦名・人理守護指定グランドオーダー。

未来を取り戻すための旅路。

それは決して平穏なものではなかったけれど、それでも美しいものだったと。

 

振り返って俺はそう思う。

 

 




※ただし全裸である。
ぺちゃぱいオルタ「どうして(全裸なんですか)?」
アドレナリンドバドバ全裸「独りだから負けた」

・星野サボ郎
どこかの世界線で生まれたイリヤスフィール・フォン・アインツベルン…もとい、聖杯の失敗作であり、地球上に存在する全てのエネルギーリソースをもってしてもその杯を満たすことができないとして破棄されたプロトタイプ。
名付けられるよりも早く実質的に満たせない杯として失望され廃棄場に放置されて、あとは朽ち果てていくのみという状況に追いやられた過去がある。

…という無駄に壮大な設定を背負っているがぶっちゃけ意味はない。
そして、この設定が今後活かされることもない。

とりあえずキリの良いところまで死ぬ気で頑張りました。
なのでご褒美にどうか評価と感想、ここ好きを頂けると幸いです。
感想とか匿名で投げれるので…どうか…この卑しい作者めにどうかお慈悲を…。
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