系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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5:ごぶりん

 臨戦態勢のまま、慎重に、かつ迅速に歩みを進める。

 この中でAGIが低いのは僕──壁役の灰流さんですら400は超えていた──なので、既に武器になっている。

 長く大きい得物は邪魔ではあるが、悲しいかな、シアさんに持ってもらった方が、僕が歩くよりはよっぽど速くなるのだ。

 

「待って」

 

 ふと、ミスティさんが小声で制止する。

 

「何か見えた」

「どこだ?」

「ここからこの方向に真っ直ぐ」

 

 ミスティさんが指差す先には、確かに何かが動いている。それも5つほど。

 きりり、と柄が握りしめられるのがわかる。緊張するのも已む無しか。

 

「作戦は、昨日のとおりね」

「了解」

「はいっ」

 

 返事のあと、各自が慎重に配置につき、合図を待つ。

 目配せと頷き。指での3カウント。2、1。

 

「《旧きは劣れり(タマテバコ)》ォッ!」

 

 合図と同時に、一気に飛び出す灰流さん。構えた盾の前面が開かれ、中から灰紫の煙が勢いよく噴き出た。

 指向性は聞いたとおりに無いらしく、煙は縦横無尽に広がっていく。

 

「《ウィンド・ジェイル》!」

 

 その煙に巻かれた敵集団ごと、ミスティさんの魔法が絡め取る。

 移動阻害効果と移動強制効果があるらしく、薄れ始めた煙の中でゴブリン達がのたうっていた。

 身に付けていた筈の装備品はボロボロ。灰流さんのスキル様々である。

 

 そして。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 拘束が解けた瞬間、シアさんが僕を振るい、敵を一掃する。

 横薙ぎに振るわれた一閃は5体を余すことなく捕らえ、まるで草刈りのようにその命を絶った。

 立ち上る光の粒子と、転がるドロップ品が、その何よりの証拠である。

 

 火力は十分なれど、敵が怖いシアさん。

 ならば動けなくして無力化してボコろう! というシンプルな作戦であった。

 まあ、噛み砕いてしまえばお2人がいつもやっているコンボの最後にお邪魔するだけなので、あとは彼女の度胸次第だったが……どうにか上手く行った。

 

「やった……やったぁ!」

「ナイスだ嬢ちゃん」

「おめでとう、シアちゃん」

「どうですか、タカキ様? 私やりましたよ!?」

 

 無邪気に喜ぶシアさんは実に可愛らしいが、どちらかと言えば安堵が勝った。

 具体的には、うん、まあ、これならさすがに行けたか、という感じの。

 

『……おめでとうございます』

 

 ……さて、動く敵相手はいつになるだろうか。

 

 ◆

 

 その戦法でさくさくと、しかし慎重に歩みを進め、暫く経った頃。

 コンボは未だに有効であるものの、少しずつ敵の数も増え始め、若干乱戦に近い状況も出てきた。

 こうなるとシアさんのメンタル面が危うい……と、思っていたのだが。

 

「やぁっ!」

「Gyaaaa……」

 

 何か、普通に、戦え始めている。

 若干手が震えているし、顔は青いし、息の切らし方も尋常ではないものの、動けている。

 ……さてとか何とか考えていた数十分前の僕よ、割と近いとだけ伝えておくぞ。

 若い子の成長を舐めてはいけない。

 

『お疲れ様です、水を」

「ありがとう、ございます……はぁ……はぁ……」

「あんまり無茶しちゃダメよ?」

「……ふぅ……はい、大丈夫です。なんだか、動きが止まって見えてきて」

 

 なるほど、軽くゾーンに入っているらしい。

 

「まあ、AGIの差がそんぐらいはあるからな」

 

 違った。

 

「……よし、休憩も済んだな。先を急ぐぞ」

「了解!」

「お手を」

「はいっ」

 

 気を取り直し、武器に戻り……いざ出発。

 

 

 ■

 

 

 砕いて、千切って、噛んで、飲み下す。

 砕いて、千切って、噛んで、飲み下す。

 砕いて、千切って──

 

「Gyagya──」

「■■■■■■!!!」

「──Aaaaahhh……!?」

 

 ソレは、邪魔されることが嫌いだった。故に慌てて入ってきた配下すら、磨り潰す。

 理由も何も知ったことではない。

 

 ただ、少し興が削げたらしい。食事を止め、部屋の外へと歩みを進める。

 螺旋の階段状になった塔を登り、拉げた鐘がぶら下がる塔の上へ。

 

 見晴らしはいいが、足りない。

 もっと上が必要だと、ソレは考えていた。

 その為には食らわねばならないことも、食い足りないことも、確りと理解していた。

 

「─────?」

 

 ソレの目に、ふと、何かが目に留まる。

 人影(食い物)が4つ。そのうち3つはどうでもいい。

 だがあれは、白くて細いあのティアン()は、上等で、とても、美味そうだった。

 

「─────!」

 

 アレは自分のモノだ。

 そう理解したソレは、鐘楼から飛び出す。

 グシャリと同胞たちを潰したが知ったことではない。落下の衝撃を転嫁されて何匹も死んだが気にも留めない。

 食えればそれでいい。ただそれだけでいい。

 

 涎を垂らし、欲望のままに。

 ソレが──小鬼の暴君が、やって来る。





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