系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

14 / 72
8:あとしまつ

「いやはや、そりゃ災難でしたね」

「どの口が言うか」

 

 持ってきたのはお前だろうに。

 ……いや、内容の変化については寄与してる訳もないか。

 元々小規模な巣の偵察という話ではあったが、成長速度を舐めてはいけない、という話だろう。

 

 後始末を援軍に任せ、僕ら4人は村から王都へとんぼ返り。

 援軍の治療師から治療や回復呪文を受けたとは言え、シアさんの容体は心配だった。

 

「本当に、疲れました……」

 

 今はベッドの上でピンピンしているが。

 

「して、報酬はどのくらいでした?」

「キングが居た、という点も加味して、1000万リルの山分けだ。何とか灰流さんらと1:1の分配で落ち着いたが……」

「少ないってごねられましたか」

「逆だ。多いって言われた」

「はは、嬉しい悲鳴ですね。貰えるなら貰っておけば良かったのに」

「駄目ですよ! 灰流様やミスティ様が居なければ、私たちではあれを倒せなかったでしょうから」

 

 その通り。

 ほぼほぼ僕らが削ったとはいえ、拘束ありきの持続攻撃だ。

 彼らの手腕と力量がなければ、確実に負けていた。

 

「……おっと、そうでした。はい、どうぞ」

「は?」

 

 手渡されたのは紙の束。文字が記され……新聞か? これ。

 

「プレゼントです。タダでモノを上げるなんてのは信条に反しますが、今日ぐらいは良いでしょう」

 

 ◆

 

 冷やかしに来たマルクスが去り、部屋にひとときの静寂が訪れる。

 

「……おお」

「どうかなさいましたか?」

「はい、これを見てください」

 

 <DIN>が発行する新聞記事。その1面の片隅には“3人の<マスター>とティアン、大手柄”の文字。

 スコト村での一件が、小さいながらも報じられていた。

 あいつがプレゼントと言って置いていったが、なるほどこういうことだったか。

 

 ふとシアさんの表情を見る。複雑そうな表情で、その笑顔に陰りを見せていた。

 

「お気に召しませんでしたか?」

「いえ、そういう訳では、ないんですが……救えなかった人々が居たのに、手柄と言われても、素直に喜べなくて」

「なるほど」

 

 まあ、確かにそうだろう。僕だって複雑だ。

 あの後確認した廃村の様子は酷いという言葉で表せぬほど、見るに堪えない惨状だった。

 あれがスコト村にやって来たらと思うとゾッとしないし、来なくて良かったと安堵してしまう自分が少し嫌だった。

 

「だから……もっと強くなりたいんです」

「はい?」

 

 体ごと、顔をずいと向けられ、ちょっと気圧されて身じろぐ。

 

「あの時、私は覚悟が足りていませんでした。ちょっと強い力を持って、浮かれてただけの小娘でした」

 

「力を持った、という自覚も、何もありませんでした」

 

 手を取られた。

 

「でも、あなたにいろいろ言われて、気づいたんです。逃げるべきじゃないって、戦えるんだって」

 

「あなたとなら、私は強くなれる」

 

 きゅっと、握られた手に力が込められる。

 

「だから、もっと強くなりたいんです」

 

「あんな理不尽を蹴散らして、不幸をはね飛ばせるぐらい」

 

 真っ直ぐな目を、向けられる。

 

 ……なるほど。決意表明か。

 

「では、僕はそれに応えましょう」

「はい! お願いしますね、タカキ様!」

 

 ならばそれに、応えるしか無いだろう。

 

 ◆

 

 夜が更け、月明かりが部屋に差し込む。

 穏やかな寝顔を尻目に、インターフェースとにらめっこタイムだ。

 レベルがカンストしていることは把握済み。次のジョブも決まっている。

 

 問題はこちら。

 いつ上がったのか不明だが、何か上がっている【ヘファイストス】の到達段階。

 そして何やら増えた、使い勝手の悪そうな、それでいて強力なスキルの使い所。

 

 

 《再鍛》

 このスキルは《コントラクト》の効果下でのみ機能する。

条件を満たしている場合、新たな装備スキルや機能の向上が発生する。

 利用可能回数は装備者1名につき(到達段階/2)回まで。また、条件を満たしていなかった場合は回数を消費しない。

 現在の残り回数は1回。

 アクティブスキル

 

 

「どうしたものやら……」

 

 本当に。いやマジで。

 僕はエリクサー症候群なのだ。




一区切り

9/22 表現を修正 誤字を修正
10/2 改行数を修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。