「いやはや、そりゃ災難でしたね」
「どの口が言うか」
持ってきたのはお前だろうに。
……いや、内容の変化については寄与してる訳もないか。
元々小規模な巣の偵察という話ではあったが、成長速度を舐めてはいけない、という話だろう。
後始末を援軍に任せ、僕ら4人は村から王都へとんぼ返り。
援軍の治療師から治療や回復呪文を受けたとは言え、シアさんの容体は心配だった。
「本当に、疲れました……」
今はベッドの上でピンピンしているが。
「して、報酬はどのくらいでした?」
「キングが居た、という点も加味して、1000万リルの山分けだ。何とか灰流さんらと1:1の分配で落ち着いたが……」
「少ないってごねられましたか」
「逆だ。多いって言われた」
「はは、嬉しい悲鳴ですね。貰えるなら貰っておけば良かったのに」
「駄目ですよ! 灰流様やミスティ様が居なければ、私たちではあれを倒せなかったでしょうから」
その通り。
ほぼほぼ僕らが削ったとはいえ、拘束ありきの持続攻撃だ。
彼らの手腕と力量がなければ、確実に負けていた。
「……おっと、そうでした。はい、どうぞ」
「は?」
手渡されたのは紙の束。文字が記され……新聞か? これ。
「プレゼントです。タダでモノを上げるなんてのは信条に反しますが、今日ぐらいは良いでしょう」
◆
冷やかしに来たマルクスが去り、部屋にひとときの静寂が訪れる。
「……おお」
「どうかなさいましたか?」
「はい、これを見てください」
<DIN>が発行する新聞記事。その1面の片隅には“3人の<マスター>とティアン、大手柄”の文字。
スコト村での一件が、小さいながらも報じられていた。
あいつがプレゼントと言って置いていったが、なるほどこういうことだったか。
ふとシアさんの表情を見る。複雑そうな表情で、その笑顔に陰りを見せていた。
「お気に召しませんでしたか?」
「いえ、そういう訳では、ないんですが……救えなかった人々が居たのに、手柄と言われても、素直に喜べなくて」
「なるほど」
まあ、確かにそうだろう。僕だって複雑だ。
あの後確認した廃村の様子は酷いという言葉で表せぬほど、見るに堪えない惨状だった。
あれがスコト村にやって来たらと思うとゾッとしないし、来なくて良かったと安堵してしまう自分が少し嫌だった。
「だから……もっと強くなりたいんです」
「はい?」
体ごと、顔をずいと向けられ、ちょっと気圧されて身じろぐ。
「あの時、私は覚悟が足りていませんでした。ちょっと強い力を持って、浮かれてただけの小娘でした」
「力を持った、という自覚も、何もありませんでした」
手を取られた。
「でも、あなたにいろいろ言われて、気づいたんです。逃げるべきじゃないって、戦えるんだって」
「あなたとなら、私は強くなれる」
きゅっと、握られた手に力が込められる。
「だから、もっと強くなりたいんです」
「あんな理不尽を蹴散らして、不幸をはね飛ばせるぐらい」
真っ直ぐな目を、向けられる。
……なるほど。決意表明か。
「では、僕はそれに応えましょう」
「はい! お願いしますね、タカキ様!」
ならばそれに、応えるしか無いだろう。
◆
夜が更け、月明かりが部屋に差し込む。
穏やかな寝顔を尻目に、インターフェースとにらめっこタイムだ。
レベルがカンストしていることは把握済み。次のジョブも決まっている。
問題はこちら。
いつ上がったのか不明だが、何か上がっている【ヘファイストス】の到達段階。
そして何やら増えた、使い勝手の悪そうな、それでいて強力なスキルの使い所。
《再鍛》
このスキルは《コントラクト》の効果下でのみ機能する。
条件を満たしている場合、新たな装備スキルや機能の向上が発生する。
利用可能回数は装備者1名につき(到達段階/2)回まで。また、条件を満たしていなかった場合は回数を消費しない。
現在の残り回数は1回。
アクティブスキル
「どうしたものやら……」
本当に。いやマジで。
僕はエリクサー症候群なのだ。
一区切り
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