系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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前話で色々言いましたが
最新話を誤って投稿した戒めとして連続投稿です
多分またやります

伴って、明日以降の投稿もこの時間と相成ります



2:ろざりうす

『失礼致します』

 

 3回のノックの後、アンドリューさんの声が響く。

 慌てて立ち上がるとドアが開き、現れたのはアンドリューさんと、見知らぬ男性。

 

「お連れ致しました」

 

 質素ながら豪奢、という矛盾した感想を抱くような、そんな衣服を身に纏った、妙齢の人。

 

「ベルディン枢機卿閣下!?」

 

 おっと。有名な人らしく、シアさんが驚いている。

 枢機卿、となると、言い方は悪いがトップに次ぐナンバー2にあたる方か。

 ……いや、トップの称号(【教皇】)が<マスター>に持ってかれてるなら実質トップか? しかも他宗教に持っていかれていた筈だ。

 ……本当にそれでいいのか国教。

 

 でも、とりあえずこれはあれか、最敬礼か。

 

「いえいえ、畏まらずとも構いませんよ、お二方」

 

 明朗なよく通る声で、逸る心を宥められる。

 さすがは聖職者、人の心を掴むのは得意であるらしい。

 

「どうぞ、お座り下さい」

「し、失礼します!」

「失礼します」

「では、私はこれで」

 

 アンドリュー神父は部屋を出ていった。

 でもちょっと居て欲しかった。主に上の人との緩衝材として。

 上の人というのは関わりが薄くとも、それだけで妙に緊張するものなのだ。

 

「さて、何処から話せば良いものか……そうですね、アレクシアさんの御尊父について、お話ししましょう」

「ご、そん……?」

「ああ、お父上のことです」

「……すいません、お願いします」

 

 恥ずかしそうに頬を赤らめるシアさん。

 ……一旦、伝わらなくて良かったかもしれない。

 

「アレクシアさんのご父上、デイビッド・ロザリウス様は、私の先代にあたる枢機卿でありました」

「そ、そうだったんですね……」

 

 ああ、知らなかったんですか?

 あんま仕事のこととか話さない人だったのか。

 

「それなら、今は、どこに?」

「……数年前に御逝去なされました」

「…………そう、でしたか」

「活力に溢れた方でしたが、寄る年波には、やはり」

 

 ……ああ、クソ。さっき伝わってたほうが良かったか。一瞬期待を持ったのが声色で分かった。

 期待で上がってから落ちるのは、傍目に見ても結構辛いものがある。

 こちらの平均寿命も、シアさんと最後に会った際の年齢も判らんが……まあ、大往生であったのだろう。

 

「……お父上は、私に良くして下さいました。そして顔を合わせれば、決まってご息女様……貴女のお話をされていました」

 

「“故郷に残してきた娘がいる”、“きっと美人に育って、立派な道を歩むんだ”……と」

 

 なるほどレジェンダリア出身で、色々あってアルターに来たのか。

 ……何があったかは知らないが、そう言うぐらいだ。のっぴきならない、やむを得ん事情があったんだろう。

 ついでに子どもを拵え、暫く育ててからアルターに来た、の流れなら、ば枢機卿であったことを知らずとも辻褄が合う。

 

 考察はさておき、一先ず、洟を啜る音の出処へと、ハンカチを渡す。

 

「……ぞゔ、でづか……うぅ……」

「……<マスター>様」

 

 え、あ、はい。

 

「貴方は、アレクシア様の後見人であるとお聞きしました。どうか……アレクシア様を、かの御仁の忘れ形見を、よろしくお願いします」

 

 ああ、そういうことか。

 

「はい。謹んで、お引き受け致します」

 

 そんな事、言われずとも、だろうよ。

 

 ……部屋には暫く、啜り泣く声が響いていた。

 

 ◆

 

 【司教】への推薦については、快く了承を頂いた。

 これで晴れて、シアさんも上級職へ転職する……のだが。

 

「…………」

「…………」

 

 今は一旦、裏手の墓所へとやって来ている。

 墓標に刻まれた名は、“David Rosarius”。

 言わずもがな、シアさんのご尊父である。

 

 僕は手を合わせ、シアさんは瞑目し祷を捧げる。

 一際大きい墓である辺り、重要人物であったことは確かなようだった。

 

「…………ん?」

 

 ふと視線を感じて顔を上げる。

 優しそうな老年の男性が、笑顔でこちらにお辞儀をする。

 そしてそのまま……溶けるように消えていった。

 

 シアさんと同じ翠の瞳が、やけに印象的だった。

 

「どうか、なさいましたか?」

「いえ……何でもありません」

 

 ……現実ではろくすっぱ見たことがない()()

 しかしこちらの世界なら……まあ、そういうこともあるのだろう。

 

 ◆

 

 墓参りも終わり、日も少し傾き始めた頃。

 

「レベルを上げましょう!」

 

 余韻も束の間、シアさんが拳を掲げている。

 意気込むのは良いが、往来でやるのは止めて欲しい。他人のふりをしなければいけなくなる。

 

「いや、あ、あの、無視するのやめてくれませんか?」

「人違いです」

「タカキ様!?」

 

 騒ぐな。腕を掴んで振るな。

 STR的に逆らえないんだよ。

 

「……ねぇあの人……」

「やぁねぇ……」

 

 ほれ見たことかふざけるなよ。

 

「はい……はい、はい。何ですか」

「だから、レベルを上げるんです! 聞いてなかったんですか?」

「聞いてましたよ」

「じゃあ無視しないで下さいよ!」

「あのー、すみません」

 

 ああもう、最悪だ。

 邪魔になってるのは判ってる。声を掛けられた辺りでも明白だ。

 

「すいません、今退きますので」

「いやぁ、そうじゃなくて……レベリングの話、してますよね?」

 

 ……おっと、早とちりだったか。

 

「ああ、はい」

「よかったら……一緒にやりませんか? レベリング」

 

 これに声掛けて誘おうと思えるってどんなコミュ強だお前。

 僕だったら避けるぞ。絶対。

 

「良いんですか?」

「はいはい、ずっとソロでやってたんですケド、若干辛くなってきちゃって……」

「じゃあ一緒にやりましょう!」

「勝手に話を進めないで下さい?」

「え、嫌なんですか?」

「そういう訳では──」

「じゃあ決まりですね!」

「──…………」

 

 頭を抱え、ちょっとばかし天を仰ぐ。

 ……凄い、なんか、デジャブを感じる。

 ああ、あの時だ。マルクスからゴブリンの巣のクエストを受け取ったときも大体こうだった。

 

「あ、アハハ……」

 

 苦笑してないで助けてくれよ、好青年君。




UA500、お気に入り10件達成と相成りました
今後ともご愛顧お願いします

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