系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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文量の少なさを加味し、ここから1日2話投稿にしてみます
色々試行錯誤していますので、生暖かく見守って頂ければ




3:ぼひょう

 その日は夕方ということもあって、一旦お開きに。

 その場で、後日待ち合わせをして出直すということで話がまとまってしまった。

 

 まあ、まとまったものは仕方がない。

 という訳で先ずは、店へ必要なものを買いに来ている。

 

「ええと……これか」

 

 よくわからない奥まった路地、そこにある怪しい店。

 位置はあの好青年から聞いていたが、まさか本当にあるとは思えない立地の悪さだ。

 人気もない辺り、採算が取れているのか心配になる。

 

 店内のショーケースには1万リル以上の商品が並び、その奥のカウンターには、これまたよくわからない人影。

 どうやらこれが店主であるらしく、「いらっしゃい」との声が掛けられた。

 

「【墓標迷宮探索許可証】を、2つ。頂けますか?」

 

 この許可証がなければ、待ち合わせ場所である<墓標迷宮>の入り口で駄弁って解散、という虚しい一日になってしまう。

 国が出す難度3のクエスト報酬などにも含まれるらしいが、待ち合わせにどう足掻こうとも間に合わないので、今回は購入する運びとなった。

 

「1つ10万リル、合計で20万リルになります」

 

 なお、適正価格でこれである。

 とりあえず金だけならあるので、手早く払って店を出る。

 

「まいどありー」

 

 記名式なので自分の分はさっさと書いて、片方をシアさんに渡そう。

 んで次は、ええと──

 

 ◆

 

 色々買い揃え、《パワープレイ》の調整も済ませ、翌日。

 今回は2万ほどを残し、残りを注ぎ込んだ具合だ。

 

「お待たせしましたー」

 

 待ち合わせ場所へ姿を現したのは、この前の好青年君。

 サスペンダーと右腕の義手が特徴的な、ポニーテールの似合っているこの青年は、名前をシエンというそうだ。

 表記的には“C&”なのだが、面倒なのでカタカナである。

 

「いえいえ、私たちもさっき来たばかりですから」

 

 何ならこっちもちょっと遅れかけている。ギリギリだった。

 

「んじゃー、行きましょう」

「はい」

「宜しくお願いします」

「はいお願いしまーす」

 

 昼間に歩く西洋風の墓地。

 この前歩いたばっかりなので割と怖くも何とも無い。何せ昼だし。

 

 因みに、この前手を合わせたシアさんのご尊父の墓とはまた別の場所であることは留意されたし。

 ……そのせいで2人して1回間違えたからな。

 

「夜に来るとけっこーフンイキあって良いんですよねー、納涼って感じで」

「そう、ですか……?」

「あ、そういうの大丈夫なタチですか?」

「まあ、【司教】ですから」

「へー上級職。いいですね~。お兄さんは?」

「今は【猛戦士】ですね。最近就いたばかりですが」

「あ、上級職コンビだったんですね、なるほどなるほど……」

 

 さすがは好青年、やはりコミュ力が高い。

 

「ちな、これ完全に自慢ですが、ボクは超級職です」

 

 そして自慢。やっぱ低いかもしれない。

 しかし、超級職か。それなら自慢する気持ちは分からいでもない。

 

「なるほど……それは、心強いですね」

「はいはい。強めのエネミーはボクがやっちゃうんで、雑魚出たら一緒にやりましょ」

「解りました」

「はい!」

「おぅ、いい返事っすねー……っと、そろそろ入り口です。皆さん許可証の準備を」

 

 バッグから取り出して手に取る。

 恐らくはあの見張りらしき衛兵に見せるのだろう。

 

「<墓標迷宮>を探索する<マスター>の方ですか? この地の探索には【墓標迷宮探索許可証】が必要となります」

「はい、そうでーす。お願いしまーす」

「次の方……おっと、そちらはティアンの方でしたか」

「…………えっ?」

 

 ……あっ。

 

「【司教】様であれば力量も十分でしょう。どうぞ、お入りください」

「ありがとうございます」

「そちらの方は……<マスター>様ですね、許可証を」

「はい、お願いします」

「確認できました。ありがとうございます、どうぞお進み下さい」

 

 階段を降りていき、迷宮の内部へ。

 そして降りきった辺りで、先頭に立っていたシエンさんが振り返り、声を上げた。

 

「ティアンって聞いてないんですケド!?」

 

 ……うん、そう言えば言ってなかった。

 

 ◆

 

 ティアンと<マスター>とを見分ける方法は、基本的に左手の甲を見るかしかない。

 極稀に判定機を使う場面もあるものの、本当に稀だ。

 それこそ、<墓標迷宮>の入場口ぐらいのもの。

 

 そして無用なトラブルを避けるため、シアさんは常から白い手袋を着用している。

 <エンブリオ>の内容が内容なんでな。

 そしてそれが、ある意味功を奏したと言えよう。

 

「えーと、つまり? 魔法適性の高いハーフハイエルフで【司祭】に就きながらド近接で戦う、<マスター>もどきティアンさん?」

「そう……」

『なります、ね』

「属性盛り過ぎじゃない!?」

 

 盛るも何も自然とこうなったんだよ。

 その反応に、ふとシアさんが首を傾げる。

 

「……別に属性の魔法は扱えませんが」

『ああ、そういうことじゃないです』

「うん気にしなくていいですよ。<マスター>の方言みたいな奴なので」

「そう、ですか」

 

 釈然としていないようだが、そうとしか言えないのでどうしようもない。

 

「でもまあ、死なないんだったら良いです。まかり間違って死なれると、あの、怖いんで」

「大丈夫ですよ! 私、結構戦えますから」

『それなりには、と保証します』

「ありがとうございます。しかしツーマンセルか……3人で戦う想定しかしてなかったぞー……?」

 

 ああ、余計な負担をかけてしまったようだ。

 これは行動で挽回するしかあるまい。

 まあ僕は何も出来ないので、シアさん。頑張って。

 

 ……さて。

 迷宮内部の道幅は広く、薄っすらと明るい。天井は低いので閉所恐怖症には辛そうだ。

 

 その先、曲がり角から現れた【ウーンド・ゾンビ】は実にリアルだ。

 関節はもげかけて、全身に蛆が湧き、ぐちゃぐちゃに腐った屍肉をぶら下げながら、もだもだとこちらへ歩いて来る。

 B級ホラーなんて何のその、といった具合である。

 

「せいっ」

 

 その姿を見るや否や、一足飛びに駆けていくシアさんが上段から叩き潰した。

 キング戦から暫くしたが、腕は鈍っていない様子。

 緊張は感じるが、震えも少ない。この分なら問題無さそうだ。

 

「どうです? 結構動けてますよね?」

「わーすごい、んですけど……あの、タカキさん」

『はい?』

 

 青い顔をしたシエンさんが、気遣わしげな視線を向けてくる。

 

「気持ち悪くないんですか?」

『何が……ですか?』

「いやあの、武器になってるとは言え、ゾンビに触って」

『あー……』

 

 その感覚を想像して……の、その表情か。

 確かに僕が当たった部分から伝わる感覚は、不快指数がかなり高めではある。あるが……。

 

『ガンジス川泳ぐよりはマシ、ですかね』

「自殺志願者ですか?」

『酔わされて乗せられたんです』

「……他殺だったかー……」

 

 人聞きが悪いな。下手人(総一郎)も引きずり込んだとも。





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