こちら本日更新の2話目となっております
全話前書きに仔細を記しましたので、併せてお読み下さい
「あの」
「はいはい、どうかしましたか?」
「がんじす川、ってどんな川なんでしょうか?」
「あー……」
『……地元の方々に聖なる川として崇められている──』
「へぇ……!」
『──泳ぐとあらゆる病気に罹って死にかねない川です』
「……えぇ……?」
「よく生きてましたね」
『丈夫なもので』
◆
レベルの上がり方は結構早い。
下地があって火力が出せる分、ここの方がフィールドよりも効率がいいのだろう。
何より僕が下級職ということもあるかも知れない。この分ならカンストも早そうだ。
「よっ、と」
どこからとも無く生み出した、放電する黒い槍。
それを右腕の義手で投げつけ、空中に浮かんだ【スピリット】系モンスターを射抜くシエンさん。
「はっ、やぁっ!」
一方で僕らは地上の殲滅。
縦横無尽に駆け巡り、数多いるアンデッドを一掃していく。
こちらには属性攻撃の手段が……あるにはある──司祭系統の持つ聖属性攻撃魔法──が、近接戦に専念出来るのはありがたい。
「これで、最後! ……ふぅ、片付きましたね」
「いやーすいません。近接戦あんま得意じゃなくて」
『ああ、やはりそうですか』
「はいはい。下層階ならまだ良いんですけど、下に行くともうダメダメで。ボコられておしまいですね」
槍を生み出してはいるが、もっぱら攻撃方法は投擲。
おそらくはそれに特化した<エンブリオ>か、あるいはジョブなのだろう。
ついでに、現実でも槍投げか何かの選手をしていそうな雰囲気がある。
取材で見たことはあるが、門外漢故詳しいことは分からない。しかしフォームがそれっぽいのだ。
聞いてみたいものだが、今はファーミングと、エリアの確認が優先だ。
一掃した辺りから少し離れた位置に、階段があるのが判る。
「んで、この先がボスです。今回はボクが全部やるんで、お二方は休憩してて下さい」
「良いんですか? ではお言葉に甘えます!」
『ありがとうございます」
「うわあぁ気持ち悪い戻り方っ」
……そんな毎度毎度初見の人に言われるぐらいキモいのか、人へ戻る姿って。
項垂れつつも階段を降りると、出迎えてくれたのは【フレッシュゴーレム・ロット】。腐った生肉のゴーレムである。
何の肉かは知らないし知りたくない。
「……あー、休む暇無かったらサーセン」
また、どこからとも無く取り出される槍。
いや、発生する直前に黒いモヤが見えた。あれがタネの可能性は高い。
まあ考察は後にしよう。
そのまま、彼は槍を構える。やはり姿は堂に入っていた。
「《バレットスロー》──そぉいっ!」
そして、投げる。
先程までのウィスプ相手とは比べものにならない速さ。何なら空気を裂く鞭のような音まで鳴った。
勿論、着弾まではほぼ一瞬。
貫かれた勢いでそのまま爆散し、ゴーレムは光の塵となって消えた。
……確かに、これでは休む時間がないだろう。
「うん、やっぱそんなに休憩時間なかったですね、サーセンサーセン」
「す、凄いです! 今のがシエン様の<エンブリオ>ですか?」
「いや、違いますね、ジョブスキルです。超級職……【
「わぁ……!」
そんな彼の謎のポーズとキメ顔を迎えたのは、シアさんの無邪気な歓声と拍手。
……槍投げなのにジョブは野球なのか、とかそういうことは一旦置いておいて。
「……ツッコミ待ちですか?」
「あ、はい」
「えっ、あっ……ごめんなさい」
「いえいえいえ! 謝らなくていいヤツですからね? いたたまれないんで止めてください?」
ボケを天然で挽き潰す。
流石はグラインダーを振るうシアさんである。
◆
そこから大体15階までをゆっくり進み、時間もいいところだったので外に出た。
脱出方法は《エスケープゲート》と言うらしい転移魔法の詰まったジェム。
テレポートとはこれまたなんというか、ゲーム的なものだ。
「今日はありがとうございました」
「いえいえ、こっちも近接任せっぱでしたし、お互い様ってことで」
レベルも相当に上がっており、この分なら数日でカンスト……いや、この効率を今後にも求めてはダメか。
シエンさんはいつも居る訳ではない。前提としてしまっては相手も迷惑であろうし、失礼に過ぎる。
「んじゃ、連絡先交換しときましょう」
『ああ、そうですね」
「……ぅおぉっ、慣れないな」
あの、そんなかな? そんなになのかな?
……まあ良いけども。
「よし、これで登録、と」
「はい。ありがとうござい……あっ」
そう言えば、灰流さんとミスティさんとはフレンド登録をし忘れていた。
良い人たちだったし連絡先も知っておきたかったが……またいつか会えるだろう。
「どうかしました?」
「……ああ、すいません。こちらの話です」
「そう、ですか。じゃ、お疲れ様でしたー」
「はい、お疲れ様でした!」
「またご一緒させて下さい」
「もちろんっすよ、では」
手を振り、墓地を去っていくシエンさんを見送る。
使っている宿の位置的に、シエンさんと帰り道は逆方向だった。
歩きながら眺める墓地の夕景。
中々見るものではないが、あまり心躍るものでもない。
「お強い方でしたね!」
「ええ、到達段階は解りませんが、少なくとも超級職ではありますし、攻撃方法も洗練されている。正に強者、といった所でしょうか。灰流さんやミスティさんにも引けを取らないでしょう」
「そうですね!あぁ……」
天を仰ぎ、手を伸ばすシアさん。
憧憬の詰まった翠が、いっとう輝いている。
「……いつか私も、ああなれますかね?」
「なれますよ。きっと」
「……ふふっ、そうですよねゃ゛っ!?」
「あっ」
盛大にコケた。顔面から行ったな。
上なんて見て歩いてるからそうなるんだ、全くもう。
「いひゃい……はな、はなありますか?」
「回復魔法使えば良いでしょうに……ほら、立てますか?」
「うう、ありがとうございます……」
涙目の彼女に手を差し伸べる。
締まらないが、まあ、僕らにはこの位が丁度いいかも知れない。
9/29 まえがきの位置修正