系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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こちら本日更新の2話目となっております
全話前書きに仔細を記しましたので、併せてお読み下さい




4:ぴっちゃー

「あの」

「はいはい、どうかしましたか?」

「がんじす川、ってどんな川なんでしょうか?」

「あー……」

『……地元の方々に聖なる川として崇められている──』

「へぇ……!」

『──泳ぐとあらゆる病気に罹って死にかねない川です』

「……えぇ……?」

「よく生きてましたね」

『丈夫なもので』

 

 ◆

 

 レベルの上がり方は結構早い。

 下地があって火力が出せる分、ここの方がフィールドよりも効率がいいのだろう。

 何より僕が下級職ということもあるかも知れない。この分ならカンストも早そうだ。

 

「よっ、と」

 

 どこからとも無く生み出した、放電する黒い槍。

 それを右腕の義手で投げつけ、空中に浮かんだ【スピリット】系モンスターを射抜くシエンさん。

 

「はっ、やぁっ!」

 

 一方で僕らは地上の殲滅。

 縦横無尽に駆け巡り、数多いるアンデッドを一掃していく。

 こちらには属性攻撃の手段が……あるにはある──司祭系統の持つ聖属性攻撃魔法──が、近接戦に専念出来るのはありがたい。

 

「これで、最後! ……ふぅ、片付きましたね」

「いやーすいません。近接戦あんま得意じゃなくて」

『ああ、やはりそうですか』

「はいはい。下層階ならまだ良いんですけど、下に行くともうダメダメで。ボコられておしまいですね」

 

 槍を生み出してはいるが、もっぱら攻撃方法は投擲。

 おそらくはそれに特化した<エンブリオ>か、あるいはジョブなのだろう。

 ついでに、現実でも槍投げか何かの選手をしていそうな雰囲気がある。

 取材で見たことはあるが、門外漢故詳しいことは分からない。しかしフォームがそれっぽいのだ。

 

 聞いてみたいものだが、今はファーミングと、エリアの確認が優先だ。

 一掃した辺りから少し離れた位置に、階段があるのが判る。

 

「んで、この先がボスです。今回はボクが全部やるんで、お二方は休憩してて下さい」

「良いんですか? ではお言葉に甘えます!」

『ありがとうございます」

「うわあぁ気持ち悪い戻り方っ」

 

 ……そんな毎度毎度初見の人に言われるぐらいキモいのか、人へ戻る姿って。

 項垂れつつも階段を降りると、出迎えてくれたのは【フレッシュゴーレム・ロット】。腐った生肉のゴーレムである。

 何の肉かは知らないし知りたくない。

 

「……あー、休む暇無かったらサーセン」

 

 また、どこからとも無く取り出される槍。

 いや、発生する直前に黒いモヤが見えた。あれがタネの可能性は高い。

 まあ考察は後にしよう。

 そのまま、彼は槍を構える。やはり姿は堂に入っていた。

 

「《バレットスロー》──そぉいっ!」

 

 そして、投げる。

 先程までのウィスプ相手とは比べものにならない速さ。何なら空気を裂く鞭のような音まで鳴った。

 勿論、着弾まではほぼ一瞬。

 貫かれた勢いでそのまま爆散し、ゴーレムは光の塵となって消えた。

 ……確かに、これでは休む時間がないだろう。

 

「うん、やっぱそんなに休憩時間なかったですね、サーセンサーセン」

「す、凄いです! 今のがシエン様の<エンブリオ>ですか?」

「いや、違いますね、ジョブスキルです。超級職……【首位投手(エース・ピッチャー)】のね!」

「わぁ……!」

 

 そんな彼の謎のポーズとキメ顔を迎えたのは、シアさんの無邪気な歓声と拍手。

 ……槍投げなのにジョブは野球なのか、とかそういうことは一旦置いておいて。

 

「……ツッコミ待ちですか?」

「あ、はい」

「えっ、あっ……ごめんなさい」

「いえいえいえ! 謝らなくていいヤツですからね? いたたまれないんで止めてください?」

 

 ボケを天然で挽き潰す。

 流石はグラインダーを振るうシアさんである。

 

 ◆

 

 そこから大体15階までをゆっくり進み、時間もいいところだったので外に出た。

 脱出方法は《エスケープゲート》と言うらしい転移魔法の詰まったジェム。

 テレポートとはこれまたなんというか、ゲーム的なものだ。

 

「今日はありがとうございました」

「いえいえ、こっちも近接任せっぱでしたし、お互い様ってことで」

 

 レベルも相当に上がっており、この分なら数日でカンスト……いや、この効率を今後にも求めてはダメか。

 シエンさんはいつも居る訳ではない。前提としてしまっては相手も迷惑であろうし、失礼に過ぎる。

 

「んじゃ、連絡先交換しときましょう」

『ああ、そうですね」

「……ぅおぉっ、慣れないな」

 

 あの、そんなかな? そんなになのかな?

 ……まあ良いけども。

 

「よし、これで登録、と」

「はい。ありがとうござい……あっ」

 

 そう言えば、灰流さんとミスティさんとはフレンド登録をし忘れていた。

 良い人たちだったし連絡先も知っておきたかったが……またいつか会えるだろう。

 

「どうかしました?」

「……ああ、すいません。こちらの話です」

「そう、ですか。じゃ、お疲れ様でしたー」

「はい、お疲れ様でした!」

「またご一緒させて下さい」

「もちろんっすよ、では」

 

 手を振り、墓地を去っていくシエンさんを見送る。

 使っている宿の位置的に、シエンさんと帰り道は逆方向だった。

 

 歩きながら眺める墓地の夕景。

 中々見るものではないが、あまり心躍るものでもない。

 

「お強い方でしたね!」

「ええ、到達段階は解りませんが、少なくとも超級職ではありますし、攻撃方法も洗練されている。正に強者、といった所でしょうか。灰流さんやミスティさんにも引けを取らないでしょう」

「そうですね!あぁ……」

 

 天を仰ぎ、手を伸ばすシアさん。

 憧憬の詰まった翠が、いっとう輝いている。

 

「……いつか私も、ああなれますかね?」

「なれますよ。きっと」

「……ふふっ、そうですよねゃ゛っ!?」

「あっ」

 

 盛大にコケた。顔面から行ったな。

 上なんて見て歩いてるからそうなるんだ、全くもう。

 

「いひゃい……はな、はなありますか?」

「回復魔法使えば良いでしょうに……ほら、立てますか?」

「うう、ありがとうございます……」

 

 涙目の彼女に手を差し伸べる。

 

 締まらないが、まあ、僕らにはこの位が丁度いいかも知れない。





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