系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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5:すぺりおるじょぶ

 <墓標迷宮>での初めてのファーム。

 そこからゲーム内時間で1日すら経たず──大体9時間後──に、下級職がカンスト。

 そのまま上級職の【猛戦鬼】に就職出来た。

 

 

 ■【猛戦鬼】

 ┣◯【猛戦士】のレベル50到達

 ┣◯戦士系統職の合計レベル100突破

 ┣◯亜竜級以上のモンスターのHPを

 ┃ 単独で50%以上削り、討伐する

 ┗◯1秒間に10回以上の攻撃をする

 

 

 見ての通り、また“グラインダー”様々なのは言うまでもないだろう。

 何時ぞやのキングが亜竜級であったのも幸いだった。

 

 そこから少し──4日ほど──遅れて、シアさんの持つ【司教】のカンストも達成。

 彼女が新しく採ったジョブは【教会騎士】だった。

 

 

 ■【教会騎士】

 ┣◯教会へ20万リル以上の寄付を行う

 ┣◯亜竜級以上のモンスターのHPを

 ┃ 単独で50%以上削り、討伐する

 ┗◯宗教施設を運営している団体の

   主要人物の推薦を受ける

 

 

 今回も推薦は快く承諾して頂き、寄付もあまり難なく達成。

 寄付総額は250万、とキング討伐における彼女の取り分と同等の金額を寄付した運びとなる。

 やりすぎな気もするが、彼女がやりたいと言ったので、その意志を汲んだ形である。

 善行ではあるし、止める理由もない。

 

 ◆

 

 そして、更に1週間と数日経った現在。

 シエンさんとのレベリングも挟みつつ、遂に漸く、【猛戦鬼】のレベルがカンストした。

 

 ……したは良いの、だが。

 

【【猛戦鬼】のレベルが100に到達しました】

【条件解放により、【猛王】への転職クエストが解放されました】

【詳細は戦士系統への転職が可能なクリスタルでご確認ください】

 

『えっ』

 

 これは流石に想定外すぎる。

 

「ど、どうかしましたか? ケガですか?」

『い、いえ、ご心配なく。ですが落ち着いて聞いて下さい』

「……はい……!」

『あの、何か、超級職の条件を満たしたようで』

「…………はい?」

 

「はいいぃぃぃぃ!?」

 

 ノズの森の奥深くに、甲高い叫び声がこだまして。

 

 ──そして何故か、今は正座をさせられている。

 

「ちょっと前に、私たち話しましたよね? 強くなりたいなぁ、って。超級職もいつかなりたいなぁ、って。そんなふうなこと、話しましたよね?」

「……はい、そうですね」

「覚えてるなら何で先に超級職なっちゃうんですか!! ずるい!!」

 

 ずっとこの調子。

 さっきから地べたの石や木の根が痛いのだが、それでも溜飲を下げてはくれない。

 

「いや。これは不可抗力でしょう、条件も知らなかったんですから。それにまだ就いてませんからね?」

「就いたも同然でしょう!!」

「そんなことは無いと思うなあ」

「あ・り・ますっ!!」

 

 無いだろ。

 しかし言った所で最早聞く耳は無さそうだ。

 言うだけ言うけども。

 

「試練をクリアしたわけでもないんですから、ね?」

「じゃあ成功させてきてくださいよ。それなら私の妬みも正当になるはずです!」

 

 凄まじい暴論。

 それでいいのか貴女は。

 

 ◆

 

 という訳で、転職クリスタルまでやって来た。

 

「はあ……」

 

 ……1人で。

 

 尚、シアさんは怒りながら1人で宿に戻っている。

 ぷんすか、という擬音の似合う後ろ姿の57歳であった。

 

 ……いや、まあ、試練の仕様を聞く限り、シアさんは参加出来ないだろうから良いんだけども。

 ええと、戦士系統のクリスタルは……これだ。

 

 

 ■【猛王】[転職可能]

 ┣◯【猛戦鬼】のレベル100到達

 ┣◯戦士系統職の合計レベル200突破

 ┣◯1秒間に100回以上攻撃をヒットさせる

 ┗◯1秒間に100回攻撃し、

   その1撃ごとに1体以上のエネミーを撃破する

 

 

 いやむっっっず何だこの条件。

 上2つはともかく、下2つの達成させる気がなさ過ぎる。

 ……ちょっと待てなんで1番下達成出来てんだこれ?

 

「ああ……ん?」

 

 もしかして、キングの持つダメージ伝播で、無理矢理達成出来た、のか?

 だとすれば奇跡的に過ぎる気がする。狙っても割とキツイだろう。

 

 まあ一旦いい。

 とりあえず、ここを選択して……と。

 

 【転職の試練に挑みますか?】

 

 いよいよか、少し緊張するな。

 

「はい」

 

 相も変わらず音声認識。

 答えた瞬間、視界が書き換わるように、一瞬のうちに変化して──

 

「みぎゃっ」

 

 ──すっごい聞き馴染みのある少女の声が、隣から響いてきた。

 

 ……え?

 なん、え?

 

「えっ、ちょ、ここどこですか? 死んだ? 私死んじゃった?」

「生きてます。って言うか死んでも死ねないでしょうに」

「未だにそこは半信半疑なんですよ? ……じゃなくて! ここ! どこ!?」

「試練の間です」

「なんで私がここに?」

「…………なんでですかね」

「私が聞いてるんですけど!!」

「僕も聞きたいんだよ!!」

 

 両者、急に叫び散らして肩で息をする。

 実に情けない。本当に。

 

「まあとにかく……はい、っと!」

『なっ、おいこら勝手に人を武器にするんじゃない』

 

 人類初であろう叱責をするも、聞く耳は持っていない様子。

 この真っ白な空間の中心、そこへ鎮座する扉へ、真っ直ぐ近づいていく。

 《ウェポンシフト》というスキル群は例に漏れず彼女の意思でも使()()()()()()し、人から武器への双方向の変形を可能とする。しかしクールダウンが地味に1分ほどあるのだ。

 

 因みにどうでもいいが、人へ戻る場合は《ウェポンシフト:ヒューマン》である。

 人間は武器だった……訳ではなく、きっとヒューマンアンデッドへの変化、みたいなものだろう。

 

「えーっと、何々? “試練の球を十秒以内に千回攻撃し、破壊せよ”。“成功すれば、次代の【猛王】の座を与える”。“失敗すれば、次に試練を受けられるのは一か月後”……なるほどなるほど、この扉に触れたら始まりそうですね」

 

 声色は楽しそうなのに酷く冷たい。

 この人あれか、試練に介入出来るからって、わざと失敗させようとしているのでは?

 

「《パワープレイ》っ」

『ちょっ──』

 

 慌ててステータスを見れば、1万だけ残して全てを注ぎ込まれた姿が目に映……ん?

 

『えっ?』

 

 わざわざステータスを上げた?

 今や10万弱あるMPの、9割近くを使って強化した?

 

 い、意図が分からない……!

 

 困惑するこちらを尻目に、シアさんはにこやかなまま扉へと手を翳す。

 直後、ガタガタと音を立てながら扉が組み変わり、腰辺りの高さを持った球体へと変貌した。

 そのまま、表面に表示された10という数字が9に減る。あれが制限時間だろう。

 

「《フル──」

『ちょっと待っ──』

「──スロットル》っ!!」

『──てって分かんない分かんない怖い怖い怖い!?』

 

 何が嫌って意図が解らないのが一番怖い。

 うわぁガリガリ言ってるガリガリ言ってる、あでもこれ2列しか刃当たって無いから最悪失敗するんじゃ、えっこれどっちだ? どっちd

 

 ◆

 

 あと4秒の所で砕けた。

 

 ◆

 

 光が炸裂するようなエフェクトの中から姿を現したのは、

 

「はぁ……はぁ……」

 

 無駄に疲弊し、膝に手を付く僕と、

 

「ふぅ……よしっ!」

 

 何処か誇らしげなシアさんである。

 

「なん、え、何で、ですか?」

「何がでしょうか?」

「何で、成功させたんですか?」

「えっ、失敗したほうがよかったんですか?」

「いやそういう訳では」

 

 なんでちょっと驚いてるんだ。驚いてるのはこっちだよ。

 

「言いましたよね? “成功させてきてください”って。“そうすれば私の恨みも正当になる”って」

「ああ……」

 

 そっちに、振り切ったんですね。なるほど。

 

「それに下手に失敗されたら、私が悪いみたいじゃないですか」

「言動を顧みて下さい」

「うるさいです! でもまあ、とにかく──」

 

 シアさんがくるりと振り返り、こちらへ一礼をする。

 

「超級職の獲得、おめでとうございますっ!」

「……まあ、ありがとうございます」

「それはそれとして根に持ちますけどね」

 

 面倒くさいなこの57歳。

 

「面倒くさいなこの57歳」

「にあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? 忘れて下さいって言いましたよね!?」

 

 ああ、口に出てたか。

 ……いいカウンターを手に入れたもんだ。これからも擦ろう。




【猛王】は【搔王】などと併用したり
断続的にダメージを与え続けるような攻撃手段と併用したり
といった利用方法が考えられています
それ故にAGIでなく、ヒット数で適性が測られます

一番いいのは機関銃などなのでしょうが
銃側に【猛王】への適正があるのに対して
【猛王】に銃を利用する適性がありません

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