系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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6:とうたつ

 

「おぉー超級職! おめでとうございますー」

「ありがとうございます」

 

 シエンさんとのファーミングにて、晴れて超級職に就いたことを報告してみれば、ご覧の通り。

 拍手と笑顔が眩しい、流石の好青年である。

 

「…………」

 

 どこぞのむくれている57歳と比べてしまうのは止そう。

 それをすると何でも素晴らしい反応になってしまって、少しありがたさが薄れるのだ。

 

「……で、なんで怒ってんですかあの人?」

「怒ってないです」

「先に超級職に就かれたのが少し嫌だったようで」

「怒ってないですってば」

 

 分かり易過ぎるにも程があるだろう。

 シエンさんにも失笑されてるじゃないか。

 

「ぷっ、はははっ……わぁ、めんどくさい」

「あれで歳がごじゅう──」

「怒ってま、せんっ!!」

「──んぐっ!?」

 

 鳩尾に激烈な衝撃。直後回復魔法の温かみ。

 アフターケアは万全ってか。

 

「あぁ……エルフとしては若いけど人としては歳食ってる微妙な年齢ですね」

「何か言いましたか?」

「あっはいすいません」

 

 余計な口は開かない方がいいぞ。

 こんな具合に、蹲って悶えることになるからな……息が吸えねえ……。

 

 ◆

 

「んー……」

 

 迷宮の中。

 素振りしながら、少し首を傾げるシアさんの様子が気になった。

 

『どうかしましたか?』

「いえ、ちょっといつもより……速いなぁ、って」

『そんなに違いますか』

 

 現在【猛王】のレベルは18。

 上がり方は上々だが、それ以上にステータスの伸びが著しい。

 そのお陰で僕の武器としての装備補正もどんどんと伸びている。

 AGI偏重なジョブなのでそこばかり上がっているが、STRやHPもまずまずといった所。

 

「シアさんのそれとはケース違いますけど、ステータス高くなり過ぎるとちょっとギャップ出るんですよね」

『あるあるなんですか?』

「あ、はい。結構聞きますね。力加減間違えてドロップ品かっ飛んだりとか、魔法の余波で自滅したりとか」

『力を制御できない悲しいモンスターですか』

「ははは。でも割と<マスター>ってそういうとこありますよ? そもそも死んでも大丈夫とかオーバーパワー過ぎますからね。<エンブリオ>もそうですし」

「……確かにそうですね」

 

 まじまじとこちらを見つめるシアさん。

 こちとらその“オーバーパワー”の権化なので仕方がない。

 

「そう考えると、私は幸運だったんでしょうね」

「否定はしませんよ。ただ広まるとめんどくさそうなのは確かですね。やっかみとか」

『なら超級職を取るべきでは……いや、自衛の為には要るか?』

「そこは本当に諸説ありかと。超級職持ちという肩書きをネームバリューと取るか、示威行為と取るかで」

 

 どちらも一長一短か。

 まあ、取れる時に取っておいただけ良しとしよう。

 

「んじゃボスですけど……今回どうします?」

「今回は私が」

「はいはい、危なくなったらカバー入りますね」

「ありがとうございます」

 

 今回のボスモンスターは、【スケルタル・ジャイアント】。骨の巨人であること以外に特筆するべき箇所がない。

 人骨が組み上がったようなそれではなく、文字通りの巨人の骨。

 現実でお目に掛かれぬことは確かだが、初見はまだしも複数回目であれば見慣れてしまう。

 

 今回《パワープレイ》に食わせた量はざっと8割。2万弱のMPが残っているし──

 

「《フルスロットル》!」

 

 ──まあ、瞬殺だ。

 

 駆動が止まれば、今度はMPがゆっくりと回復していく。

 《マナドライブ》による回復挙動は2つあり、“一括消費はその直後から”、“持続消費分は消費が止まってから”となっている。今回は後者だ。

 

 さて、レベルはどうなったか……おお?

 

「お疲れ様でーす」

「はい、ありがとうございました」

「いえいえこちらこそ」

『……第三段階か……』

「えっ!?」

「おっと! マジですか? おめでとうございますー」

 

 いやはや、いつ上がってたのか全く判らんな。

 何かそういう通知が来れば良いんだが。

 最後に<エンブリオ>詳細画面を確認したのが……あー、シアさんが《再鍛》を使った直後か。

 

「あ、えっと、その、回数は……?」

『切り捨てみたいですね。増えてません』

「……そう、ですか……」

 

 表情が一気に曇る。

 《再鍛》の利用可能回数は到達段階の2分の1。端数切り上げであればカウンターが増えただろうが、未だに0のままだった。

 

『過ぎたことです。忘れましょう』

「……ごめんなさい」

 

 あまり引きずらなくてもいい奴なので、気にしないで欲しいものだ。

 こっちにも非はあるのだし、寧ろエリクサー症候群にとってはありがたいまである。

 あの時は驚いと怒りが勝ったが、少なくとも今はそんな感じだ。

 

「え、なん、何の話ですか? 蚊帳の外なんですけど」

『ああすいません。気にしないで下さい』

「めっちゃ気になりますよそれ?」

『話せないので無理ですね』

「人を気にならせまくって殺す気ですか???」

 

 奥の手だからな、不用意にはマジで言えん。

 ……今使えないけど。

 

 ◆

 

 して、次の日の朝。

 

 

 【至天鍛造 ヘファイストス】

 到達段階:Ⅳ

 

 

「もう使えるじゃねぇかよ……」

「えっ……あっ! えっ!?」

 

 インターフェースを覗き込むシアさんですらこの通り。

 

 いや、フラグ回収が早過ぎるだろ。

 ……はは、朝飯ウマー……黒パン大好き。





 ヘファイストス「確認したな? ヨシ!」

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