「おぉー超級職! おめでとうございますー」
「ありがとうございます」
シエンさんとのファーミングにて、晴れて超級職に就いたことを報告してみれば、ご覧の通り。
拍手と笑顔が眩しい、流石の好青年である。
「…………」
どこぞのむくれている57歳と比べてしまうのは止そう。
それをすると何でも素晴らしい反応になってしまって、少しありがたさが薄れるのだ。
「……で、なんで怒ってんですかあの人?」
「怒ってないです」
「先に超級職に就かれたのが少し嫌だったようで」
「怒ってないですってば」
分かり易過ぎるにも程があるだろう。
シエンさんにも失笑されてるじゃないか。
「ぷっ、はははっ……わぁ、めんどくさい」
「あれで歳がごじゅう──」
「怒ってま、せんっ!!」
「──んぐっ!?」
鳩尾に激烈な衝撃。直後回復魔法の温かみ。
アフターケアは万全ってか。
「あぁ……エルフとしては若いけど人としては歳食ってる微妙な年齢ですね」
「何か言いましたか?」
「あっはいすいません」
余計な口は開かない方がいいぞ。
こんな具合に、蹲って悶えることになるからな……息が吸えねえ……。
◆
「んー……」
迷宮の中。
素振りしながら、少し首を傾げるシアさんの様子が気になった。
『どうかしましたか?』
「いえ、ちょっといつもより……速いなぁ、って」
『そんなに違いますか』
現在【猛王】のレベルは18。
上がり方は上々だが、それ以上にステータスの伸びが著しい。
そのお陰で僕の武器としての装備補正もどんどんと伸びている。
AGI偏重なジョブなのでそこばかり上がっているが、STRやHPもまずまずといった所。
「シアさんのそれとはケース違いますけど、ステータス高くなり過ぎるとちょっとギャップ出るんですよね」
『あるあるなんですか?』
「あ、はい。結構聞きますね。力加減間違えてドロップ品かっ飛んだりとか、魔法の余波で自滅したりとか」
『力を制御できない悲しいモンスターですか』
「ははは。でも割と<マスター>ってそういうとこありますよ? そもそも死んでも大丈夫とかオーバーパワー過ぎますからね。<エンブリオ>もそうですし」
「……確かにそうですね」
まじまじとこちらを見つめるシアさん。
こちとらその“オーバーパワー”の権化なので仕方がない。
「そう考えると、私は幸運だったんでしょうね」
「否定はしませんよ。ただ広まるとめんどくさそうなのは確かですね。やっかみとか」
『なら超級職を取るべきでは……いや、自衛の為には要るか?』
「そこは本当に諸説ありかと。超級職持ちという肩書きをネームバリューと取るか、示威行為と取るかで」
どちらも一長一短か。
まあ、取れる時に取っておいただけ良しとしよう。
「んじゃボスですけど……今回どうします?」
「今回は私が」
「はいはい、危なくなったらカバー入りますね」
「ありがとうございます」
今回のボスモンスターは、【スケルタル・ジャイアント】。骨の巨人であること以外に特筆するべき箇所がない。
人骨が組み上がったようなそれではなく、文字通りの巨人の骨。
現実でお目に掛かれぬことは確かだが、初見はまだしも複数回目であれば見慣れてしまう。
今回《パワープレイ》に食わせた量はざっと8割。2万弱のMPが残っているし──
「《フルスロットル》!」
──まあ、瞬殺だ。
駆動が止まれば、今度はMPがゆっくりと回復していく。
《マナドライブ》による回復挙動は2つあり、“一括消費はその直後から”、“持続消費分は消費が止まってから”となっている。今回は後者だ。
さて、レベルはどうなったか……おお?
「お疲れ様でーす」
「はい、ありがとうございました」
「いえいえこちらこそ」
『……第三段階か……』
「えっ!?」
「おっと! マジですか? おめでとうございますー」
いやはや、いつ上がってたのか全く判らんな。
何かそういう通知が来れば良いんだが。
最後に<エンブリオ>詳細画面を確認したのが……あー、シアさんが《再鍛》を使った直後か。
「あ、えっと、その、回数は……?」
『切り捨てみたいですね。増えてません』
「……そう、ですか……」
表情が一気に曇る。
《再鍛》の利用可能回数は到達段階の2分の1。端数切り上げであればカウンターが増えただろうが、未だに0のままだった。
『過ぎたことです。忘れましょう』
「……ごめんなさい」
あまり引きずらなくてもいい奴なので、気にしないで欲しいものだ。
こっちにも非はあるのだし、寧ろエリクサー症候群にとってはありがたいまである。
あの時は驚いと怒りが勝ったが、少なくとも今はそんな感じだ。
「え、なん、何の話ですか? 蚊帳の外なんですけど」
『ああすいません。気にしないで下さい』
「めっちゃ気になりますよそれ?」
『話せないので無理ですね』
「人を気にならせまくって殺す気ですか???」
奥の手だからな、不用意にはマジで言えん。
……今使えないけど。
◆
して、次の日の朝。
【至天鍛造 ヘファイストス】
到達段階:Ⅳ
「もう使えるじゃねぇかよ……」
「えっ……あっ! えっ!?」
インターフェースを覗き込むシアさんですらこの通り。
いや、フラグ回収が早過ぎるだろ。
……はは、朝飯ウマー……黒パン大好き。
ヘファイストス「確認したな? ヨシ!」
10/2 改行数を修正