第四段階、それは上級と呼称される領域。
デンドロの<マスター>としては、初心者卒業のタイミング。
ここまでの道のりは長いには長かったが、あまり苦労せずとも来れる場所ではある。
……そんな世界に到達した、その7日後。
相も変わらず、僕らは今日も今日とて<墓標迷宮>にやって来ていた。
なお、都合が付かなかった為今回はシエンさん抜きである。
「……あ」
『はい?』
「いえ、ちょっとスキルを習得しまして」
『ああ、そうなんですか。おめでとうございます』
丁度【エルダー・ロットナイト】──腐った騎士、といった風貌のボスモンスター──を叩き潰した辺りで、シアさんからの嬉しい知らせが。
「いえいえ。ちょっと使ってみますね……《聖別の銀光》!」
『はい──うっわ眩しっ!?』
全身が輝いて……というか目の内側が輝いているような感覚。
かなり辛いので止めてほしい。
「す、すいません! 止めます止めます!」
『……ど、どういう効果ですかこれ?』
「一応、聖属性を付与したうえでアンデッドへの特効効果を得る……らしいです」
『そうなんですか……』
<墓標迷宮>の1階から10階はアンデッドの層。
そこを攻略しやすくなるのはありがたいが……我慢、いや、戦闘風景が見えなくなるのは……拙いか。
『使わずにいてもらうことって出来ますかね』
「そのつもりです……ジョブ消したのになぁ……」
──は?
『……何て言いました?』
「えっ、あっ!? な、なんでもありません!」
『ジョブ消したって言いましたよね?』
「…………はい」
『いつですか?』
「3日前の朝です……思い切って……」
『……マジで?』
思い切りが良過ぎる。
◆
良いことと悪いことは交互に来るなんて言うが、振り幅がデカ過ぎやしないだろうか。
……シアさんが言うには。
《聖別の銀光》の習得条件は“適正レベル帯のアンデッドを100体討伐”と言うもの。
教会の仕事関係でそれを知った彼女は、悩みに悩んで【司教】及び【司祭】を消去したそうな。
それが、つい3日前。
まあ、気付く訳がない。
シアさんのジョブ欄を確認は出来るが、そうそう毎日見るようなもんじゃない。
何より“動きがちょっと遅いかな?”とは思ったけどほぼ誤差なんだよ。AGI差のせいでな。
何ならこっちも、【猛王】の奥義が手に入る位にはレベルが上がってる。
ステータスも勿論上がっており、お陰で上がった装備補正のせいで、その僅かな誤差すら埋まっているのだ。
しかし……遅かれ早かれバレてはいただろう。いつかはレベルを上げ直さなければいけないのだから。
まあ、大胆なことである。
「……ごべ……なさ……っ」
「あーあーあー、大丈夫ですから。また上げれば良いんですレベルなんて」
紆余曲折した末【司教】に戻ったシアさんであったが、現在はご覧の通り。
強くなりたいのは判っているし、その方向性を今回は間違え……いや、全く間違ってはいない。
単純に、僕という特異性が邪魔になっているだけだ。
僕以外の武器であれば、眩しいとかいう謎の事由で封印せずに済んだだろう。
《聖別の銀光》
武器へ聖属性を付与し、アンデッドへ与えるダメージを10倍化する。
また、この効果はアンデッドの回復能力を阻害する。
アクティブスキル
こんな強スキルを封印…………まあ、我慢するか?
……我慢出来るか? あれを? マジできついんだぞ?
視神経が直接光ってる感じなんだぞ?
「もっと、つよく、なれると、おもっ、て……」
「わかってますから、その気持ちは」
あーもう、泣かないでくれ。本当に。
もうこれは主として僕のせいなんだよ。
◆
して、そんな日の昼下がり。
「大丈夫ですかい?」
「概ね」
マルクスに呼び出されたがタイミングが悪かった。
大方泣き腫らしたシアさんを見ての感想だろうが、一旦触れないでほしい。
「なら、話を進めますが。……ええと、まあ、仕事です」
「随分と質素だな。まあ説明無しはいつも通りか」
「いや今回は説明アリです。ちょっとね、楽しんでる暇無いんで」
大仰な椅子にもたれかかり、大きく溜め息を吐くマルクス。
こういう時はおおよそガチで不味い状況である。
「2つあって、片方は私が行きます。私じゃないと無理なんでね。で、もう片方は今のタカキさんとアレクシア嬢なら行ける……ハズのヤツです」
「筈、か」
……なるほど、拙いな。
「……何かあったでしょう、その顔」
「シアさんが3日前、【教会騎士】以外のジョブを消した」
「ハァ!?」
「……っ」
やっぱりか。
驚愕の声に、シアさんが身じろぐ。
どちらにしても無理は無いだろう。方や宛が外れ、方や落胆の末に怒号が飛んできた。
「何やってん、ああクソッ……まあ、タイミングが悪いコトで」
「悪い、責めないでやってくれ。スキルの取得条件に関わってた」
「わかってま…………」
妙な沈黙。
ぎっ、と骨が軋む音が立つような勢いで、マルクスの動きが止まった。
「何て言いました?」
「スキルの取得条件に関わっていた」
「スキルの名前は?」
「《聖別の銀光》」
「…………っしゃオラ勝ったァァァッ! セーフ! セーフッ!!」
そして、今度は狂喜乱舞ときた。
喜ぶのは良いが、急に大声を出さないで欲しい。
素かどっちかも解らないし、急に狂喜するのは友人でも普通に怖い。
シアさんも手が震えている。
さっきから袖掴まれてるんだよ。幼女か。
「オーケーオーケー。問題なくなりました。余裕で行けます」
「……本気か?」
かなり拙い状況そうだったが、今は一転して余裕綽々。
……キーワードは《聖別の銀光》。
即ち、それが必須の何かしら。
なるほどな。大方予想はついた。
それじゃあ答え合わせを──
「これならまあ、言わなくてもいいでしょうね」
「はあ?」
──とは、行かないらしい。
「んじゃ、竜車は手配してあります。早く行ってください? 時間は有限ですよ」
終いには怪訝そうな顔でしっしっ、と手で追い払われる始末。
自分から呼んだ癖に生意気だが、こうなったらもう終わりだ。取り付く島も何も無い。
……でも現実の方がもうちょっと愛想が良い。
ロールプレイに入り込み過ぎだろ。
「……判った。行きましょう」
「……はい」
手を引き、部屋を後にする。
……よし、後で殴りに行こう。勿論現実でな。
アレクシア的には
すごーい強ーいって言われるだろうなって所を
眩しいで終わっちゃった上に
レベル下がっちゃったのもあって
こうなりました
情緒が幼子
10/2 改行数を修正