系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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9/28追記:
がっつり次々章を今日の日付で投稿しました
ごめんなさい




8:まじ

 今となっては懐かしい、何時ぞやの車窓。

 違うのは風景の速度と、乗っている面子。隣にはシアさんが、正面には秘書さんが。

 

 尚、シアさんのコンディションは恐らく最悪。

 珍しく目の泳いでいる秘書さんが見れたのは良かったが、これからおそらく控えるのは、予想が正しければ戦闘だ。

 勝敗がどうなるかは、正直解らない。

 

「……そろそろ、説明を頂ければと」

「畏まりました」

 

 軽い一礼。

 仕事モードに入ったらしく、目が泳ぐのを止めている。

 

「先ずは、此れを」

 

 懐から取り出したのは、小型のクリスタル。

 

「【ジョブクリスタル】です。エルヴンルード様には、只今よりメインジョブを【教会騎士】へ変更して頂きます」

「……だ、そうですが」

「…………はい」

 

 シアさんがクリスタルを受け取り、砕く。

 

「変更を確認致しました、説明を続けます」

 

 淡々とした声。

 いつも通りだが、今回は骨身に沁みる程冷たく感じる。

 

「今回、お二方に相手して頂くのは、<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>です」

「……なる、ほど」

 

 やはりか。戦闘だった上、しかも<UBM>と来た。

 

 <UBM>とは、世界に1体しか存在しない、特異な性質を持ったモンスターの総称。

 倒せば特典武具という、後付けかつ成長しない<エンブリオ>、といった具合の装備品が手に入るが、倒せればの話。

 基本的にどれもこれも強力で、生半可な力量で立ち向かえば死ぬ。

 

 そんな奴と、今から戦わされるらしい。

 ……行けるか?

 

「名称は【汚泥拘縛 ラトゥ=ノゥエ】、見た目としては……黒い、触手の生えた肉塊でしょうか」

 

 あまり想像したくない見た目だ。

 

「種族はアンデッド、故に《聖別の銀光》に依る特効の対象です」

 

 ……だからあんなに余裕綽々だったのか、クソが。

 とはいえ<UBM>だぞ? そんな簡単に──

 

「──お二方」

「……はい」

「は、はい」

「それ程難しい顔をされないで下さい」

 

「今回、真剣(マジ)で、楽勝ですので」

 

 ◆

 

 ■

 

 

 ──作戦を説明致します。

 

 先程受けた説明を、アレクシアは脳内で反芻する。

 聞いた限りでは実に簡単だったが、本当に上手くいくのだろうか。それだけが心配だった。

 

(ええと、まず……)

 

 ──先ずは《聖別の銀光》。

 

「……タカキ様」

『何時でもどうぞ』

 

 確認を取った上で、使うのは《聖別の銀光》。

 握った得物が光り輝き始め、少しずつMPが減少していく。

 

『ああ……! クッソ眩しいな全く……』

「早く終わらせます」

『いえ、慌てないで下さい。聞く限り、本当に楽勝でしたから』

 

 初めは重苦しい空気をまとっていたタカキですら、今はそう宣うのだが、やはり心配なものは心配。

 何より光源となったタカキそのものも心配だ。

 言われた通り慌てずに、しかし手早く手順を進める。

 

 視線の先には件の【ラトゥ=ノゥエ】。

 黒黒と輝く醜悪な肉の塊から、何本もの触手が生え、のたうち、蠢いている。

 その場から動かないのは説明の通りで、近づいた者のみに危害を加えるらしいのも同様。

 際の際まで近づいているが、一向にその腕はこちらに向かず、空を只管に切っていた。

 

 一度瞑目し、深呼吸。

 

 ──目前まで来たら《聖者の行軍》を。

 

「《聖者の行軍》」

 

 【教会騎士】の奥義。

 清浄なエネルギーを身に纏うことで、呪怨系及び制限系状態異常を跳ね除けながらの移動を可能とする。

 周囲の【教会騎士】と共に発動すれば、人数に比例したAGIへの実数加算型バフが与えられるが、今は1人。最低限の値に留まった。

 

 ──掛けたらそのまま突っ込んで、

 

 一呼吸置き、踏み出す。

 

「やぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 刹那、触手が殺到し、掻き消える。

 距離はどんどんと縮まっていき、5メテル、4メテル、3メテル……、そして目前。

 

「《フル──スロットル》ッ!!」

 

 ──後は《フルスロットル》で終わりです。

 

 振り下ろしながら、思い出すのはあの時。

 【ゴブリン・キング】と相対し、心が折れ、立ち直り、見事に屠った、あの瞬間。

 

 その時のように、駆動する刃の列は、【ラトゥ=ノゥエ】に吸い込まれていき。

 その時とは比べ物にならないほど、眼前の肉塊は──

 

 【<UBM>【汚泥拘縛 ラトゥ=ノゥエ】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【アレクシア・エルヴンルード】がMVPに選出されました】

 【【アレクシア・エルヴンルード】にMVP特典【拘縛修道衣 ラトゥノゥエ】を贈与します】

 

 ──酷く、脆かった。

 

 

 ■

 

 ◆

 

「……えぇ……? 弱い……」

 

 ばぢゃん、という水気の強い音の後、気の抜けた、困惑したような声が聞こえてくる。

 

『あの……何も、見えないんですが』

「あぁ! ごめんなさい!」

 

 光が消え、あのラ……なんたらも消えている。

 こうなるのは判っていたが、本当にこうなるとかなり呆気ない。

 

『まあ、お疲れ様です」

「ありがとうございます……」

「ちょっと釈然としてませんね?」

「それは……そうですよ」

 

 やった当人ですらこれだ、味気ない戦闘にも程があったろう。

 見えなくていっそ良かったやも知れない。

 

「お疲れ様です、タカキ様、エルヴンルード様」

「お疲れてもないですよ?」

「まあ、其れはそうでしょうね。【ラトゥ=ノゥエ】は範囲内の敵へ【呪縛】を掛け、其の儘引き摺り込んで喰らうしか能が無い様でしたので」

 

 故に、それを無効化して突っ込んで殴れば全部済んでしまった。

 可哀想な<UBM>である。

 

 ◆

 

「どうぞ、ご覧下さい」

 

 帰りの車内。

 無駄に仰々しい秘書さんが客車の扉を開けると、現れたのはシアさんだった、が……何と言うか、ゴスロリチックなシスター服に身を包んでいる。

 無駄にベルトが多いし、襟が若干高い。胴の辺りとか巻き過ぎてどうなってるんだ。

 まあ、この上から何時ものマントを羽織れば、シルエット自体は今までとさして変わらないだろう。中は別物だが。

 

 ……で、それを着た当人は実に満足げだ。

 どうだ似合ってるだろう!? 感が半端ないドヤ顔を向けてくれている。

 

「どうです? 似合ってますよね!?」

 

 口でも言ったぞこの人。

 ……確かにそうだが素直に認めるのが癪過ぎる。

 特典武具に身を包み、さぞ調子が上がっているのが分かり易過ぎるのだ。

 

「まあ、そういう風にアジャストされたんでしょう」

「…………そうですか」

 

 いい感じに胡乱な表現が出来たと思えば、ちょっとむくれて……何かこっちに来た。

 

「えいっ」

「なん──はい?」

 

 そのまま隣に座ったかと思うと、腕のベルトが一気に伸び、こちらに巻き付く。

 そのままベルトは縮んでいき……シアさんの真横で、ギッチギチに固定された。耐えれるが痛い。

 

「似合ってます、と言うまでずっとこうですからね」

「おいこら似非少女」

「何がエセ少女ですか! おとなしく素直に褒めてくださいっ!!」

「討伐前までのしおらしさは何処に行ったんですか全く……!」

「はぁ!? すっごい役に立ったんだからノーカウントですよもう!」

「調子が良すぎやしませんかね!?」

 

 秘書さん生暖かい視線を向けているのがわかるが、言い返さねば押し負ける。

 ……いたたまれない……いたたまれない……っ!!




一旦一区切り
毎日更新も一旦停止の予定
来月初が目処

休息ではありましたが
テコ入れの章、とも言います
というか1話からここまで全部テコみたいなもん

ビックテコで押し上げるべき


9/29 まえがきの位置修正
10/1 誤字修正
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