系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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本章より、2話を一括ではなく
12時と18時にそれぞれ1話ずつ投稿する形にしてみます

誤字脱字が怖いですが、心の余裕はかなり出来ました
そのせいで今は早く読んでほしい欲が出ています
一過性なので無視します




すぺりおるず
1:じばく


 

 かの<UBM>、ラ……ら……【ラトゥ=ノゥエ】か。

 それを倒して、早くも1ヶ月──現実換算で1週間強──が経とうとしていた。

 

 僕らのレベルもかなり上がっており、シアさんのジョブも今や7つ目。

 【僧兵】、【苦行僧】、【導師】と続き、現在は【信徒(アプレンティス)】だ。

 聖属性攻撃魔法、それも信仰を基とするものを多く覚えるため、遠距離攻撃手段の拡充に一役買っている。

 下級職故に初級魔法ばかりではあるものの、シアさんは元のMPが多いので、その分注ぎ込めば火力にはなるのだ。

 

 一方で、僕は【猛王】のレベルを未だに上げている。

 下級職や上級職の拡充をすべきだろうが、際限なく上がるせいで止め時が分からないのだ。

 尚、この事をシアさんに相談した所、凄く微妙な顔をされた挙句、無言で顔に拳を食らわせられた。

 相談相手を間違えたらしい。

 

 して。

 キリの良い所で止めようと思い、迎えたレベルはと言うと──。

 

『──よし、レベル150です』

「おー、おめでとうございます」

「……おめでとうございます」

『ありがとうございます』

 

 素直な称賛と、渋々の拍手。

 どちらが嬉しいかは言うまでも無いだろう。

 

 ステータスを確認すれば、燦然と輝く5000超のAGI。

 それを以てすれば、グラインダーのAGI補正は+80%を優に超える。

 【ヘファイストス】の持つマイナス補正を考えると、それが無ければ1万に、補正も+160%まで届いていた筈だ。

 

 因みに《コントラクト》していない場合、保持するスキルの効果でそこから更に6割減されていた。

 ……やっぱデメリット大き過ぎんだろ。

 

 まあ良い、その他には何か……あった。

 

『加えて、最終奥義が解放されました』

「最終奥義、ですか?」

「……うわぁ……」

 

 先ほどとは打って変わって、怪訝な顔と疑問を浮かべた顔とが並ぶ。

 シエンさんは超級職としては先達なので……流石に知っているらしい。

 

「何なんですか、それ?」

『一言で言えば……』

「まー自爆技、ですね」

「……そん、えぇ?」

 

 そうなのだ。

 説明を見る限り、相当な痛手を負うか、下手すれば死ぬ。

 シエンさんの持っているのだろうそれも、どうやら同様であるらしく、彼は遠い目をしていた。

 

『封印、ですね』

「その方が良いですよ!」

「いや、ぶっつけ本番で捨て身で使うよりは、事前に使っといてどうなるか知っとくほうが良いんじゃないっすかね?」

 

 ◆

 

 ──と言われてみたし、確かにそうだとも思ったので使ってみたら、

 

『ぐ、がっ……!?』

「……いっ、ぁっ……」

 

 このザマだ。

 

 恐らくは武器として使い物にならないレベルで破損した僕。

 腕がぐちゃぐちゃになったシアさん。

 大惨事である。

 

「っ! タカキ様っ! ご無事で──」

『一先ず、自分の治りょ、ご、あ゛……っ?」

「──タカキ、さ、ま……?」

「ちょっと待って待って待ってマズいってコレ!」

 

 駆け寄って来たシエンさんも、シアさんも顔面蒼白だ。

 人に戻った体がどうなっているのか判らないが、判らないほうが良い状態なのは判る。

 息が出来ないし体が動かず、上手く喋れない。

 

「いや……嫌ぁぁぁぁぁぁっ!!」

「シアさん! 落ち着いて! 《グレーターヒール》を──」

 

 

【《ラスト・コマンド》効果時間超過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

 ◆

 

「二度と使っちゃだめです」

「……解ってます」

 

 宿のベッドの上で正座させられている。

 柔らかいが、心が痛い。

 

「どれだけ心配したか……」

「死んでも蘇ると判っていたでしょうに」

「それとこれとは話が別です。口応えしないでください」

 

 でもしかし、幾ら何でも取り乱し過ぎだった気がするが。

 ……もしや。

 

「……過去に、何か、ああなった人を見たことがあったりしますか?」

「…………母が、目の前で」

 

 …………。

 なるほど、フラッシュバックか。

 デリカシーに流石に欠けたな。

 

「命からがら、私だけでもと逃してくれた、その直後のことで──」

「──解りました。もう、大丈夫です。すみません」

「……はい」

 

 …………本当に、申し訳が無さすぎる。

 もう少し暈したり、誤魔化したりしてくれても良かったんだが、嘘の吐けなさそうな人だからなあ。

 

「わかって頂けましたか?」

「身に沁みる程には」

「では……はいっ」

 

 目の前に座り、両手を広げるシアさん。

 すぐに理解した。その上で、理解したくない。

 

「……何ですか?」

「ハグです」

 

 やっぱりか。

 

「何でですか?」

「怖かったからです」

「だからって何でですか」

「最近<マスター>の方に教えて頂いたんです。1日のストレスはハグで8割ぐらい減るって」

 

 誰だそんなの教えたやつ。

 

「そして私はストレスまみれになりました」

「さいですか」

「…………ん」

「…………」

 

 目を逸らす。

 

「んっ!!!」

 

 圧が強い。

 ……ああクソ恥ずかしいなあ全く。

 

「……はい」

「やったぁ……っ! はぁ…………」

 

 応えるようにして抱きしめると、惚けて溶けたような声が上がる。

 それは、想い人に甘えるような姿でもあった。

 

 ……いやまあ、理解していない訳では無い。

 この<Infinite Dendrogram>のNPCは自由意志を持つ。怒り、悲しみ、喜び……そして恋だってする。

 その矛先がほんのりと自分に向いている、そんな気がするのだ。

 

 しかしそうなると、ちょろい気がしてならないのは僕だけだろうか。

 精々が命を助けて、夢を叶える一助をして、今も共に進んでいる……何か十分な気がしてきたな。

 まあ箇条書きマジックだろう。多分。内容としては薄い筈だ。

 

 まあとにかく、である。

 所詮はゲームだ。この世界というものは、幾らリアルだとてゲームだ。

 そのキャラクターとの恋愛なんて流石に気が引けるし、かといって人と遜色ない存在の好意に応えずにいるのもどうなんだろうか。

 いっそ“シアたんは俺の嫁!”だのとほざける精神性なら、どれだけ楽だったろう。

 正直それでイケるだろうあいつが羨ま──

 

「……私にとっては」

 

「<マスター>様方の命も、我々ティアンの命も、等しく大切なんです」

 

「だから、死んでも大丈夫なんて、言わないで下さい……ね?」

 

 ……。

 …………。

 ……まあ、とにかく。

 

「……すみません」

「わかればよろしい。ふふふっ」

 

 一旦その想いを言葉にされるまで、この悩みについては保留で良いかも知れない。

 思い違いだったら痛々しいにも程がある。




UA1000件、お気に入り20件突破です
ありがとうございます

10/2追記:
感想で触れられたので補足

タカキのステータスは
“コントラクトしていない”“装備されていない”
このどちらか1つを満たす場合、スキルの補正と装備補正で5分の1になります
どちらも満たさない場合は、元のヘファイストスが持つ補正による2分の1だけとなります

その上での5000です
猛王のステータス上昇の方向性はネジが飛んでいます


10/2 改行数を修正
10/4 がっつり誤字してたの修正
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