系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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今更ですが
評価者様がた、誠にありがとうございます


4:めいでん

 

 <エンブリオ>。

 目の前のカグヤさんは、自身のことをそう告げた。

 Wikiでギリギリ知識にはあるが、なるほどあれがメイデンというやつか。

 

「……月夜。少し席を外してくれる?」

「んぅー……わかった。込み入った話もあるやろうしなー」

 

 襖を開け、何処かへと足を運ぶ扶桑さん。

 ……込み入った話、か。

 人と<エンブリオ>の合いの子として、ある意味では親近感もあるが……一体何だ?

 

「どうぞ、座って」

 

 促されるまま、再び座布団へと腰を掛ける。

 ぶらんとした右腕の居場所が置きづらいが、まあ我慢しよう。

 

「……ああ。その腕、もう治してもいいと思うわ。あの子も気が済んだだろうし」

 

 良いなら先に言ってくれ。

 傍らに居るシアさんに任せれば、見る見る内に元通りになっていく。

 それを見留めて頷いたカグヤさんは、ゆっくりと口を開いた。

 

「初めまして。私たちに最も近く、そして最も遠い、<エンブリオ>にして<マスター>」

「……タカキ・ソウと申します」

「ええ。そしてその身体は【ヘファイストス】でもある」

 

 そこまで知っているのか。

 

 なんて呆気にとられていると、カグヤさんは両手を伸ばし、シアさんと僕と指し示す。

 

「2人とも、ね」

 

 ……何を、言っている?

 

「どういうこと、ですかっ?」

「貴女の身体には、彼が混じり込んでいる。正確には彼と同じ【ヘファイストス】が、だけれど」

 

 おい。

 ちょっと、待て。

 

「だからこそ、彼の一部があるからこそ、貴女は守られている。<マスター>と同等の保護を、同一の存在であるとして、受け取ることが出来ている」

 

 それじゃあ──

 

「蘇られるのも同じ。身体の再構成を、彼の体の一部として、受けることが出来ている」

 

 ──()()()()()

 

 ステータスを開き、スキルの説明を今一度読む。

 

 

 《プロテクト》

 このスキルは《コントラクト》の効果下でのみ機能する。

 《コントラクト》の対象へプレイヤー保護機能と同等の保護効果を与え、ログアウト時及び死亡時には対象の回収を行う。

 加えて対象が致死ダメージを受けた際・死亡した際に、代わりに死亡する。

 死亡後初めてのログイン時、対象の傷や欠損を再生し、HPを最大値の100%まで回復し、正常な状態へ復帰させた上で蘇生する。

 パッシブスキル

 

 

 やはり、今の話と食い違いが多すぎる。

 

「……どういう、ことだ……?」

「それが、私たちだから。人と共生し、共に生きる。それが<エンブリオ>。半物質半情報共生体の持つ特性」

 

 何だそれは。

 色々待ってくれ頭が追いつかない。

 

「そして貴方は、というよりその体は、それを模した。私たちの在り方を模し、人と共生し、だけど致命的に異なった」

「……何処が、でしょうか」

「それは自分で考えて。きっと貴方ならわかるはず」

 

 今の情報をヒントにしろ、ということか。

 ……奥が深い世界だことで。

 

「……私が言いたかったのはこれだけ。貴方はメイデンでも、アポストルでもないから、きっと知ることはなかったでしょうから」

「<エンブリオ>のTYPE、ですか?」

「そうよ。私はメイデン。そしてテリトリーの上位形態でもある」

 

 人であるだけ、という訳ではないのか。

 確かに僕と似ているが、そんなメイデンなんて文字は欄の何処にもない。何か知らんがアポストルも同様だ。

 

「じゃあ、また会いましょう」

 

 ふと、突然に。カグヤさんはそう告げて笑う。

 

「ちょっと待って──」

「質問はなしよ。これ以上を話すのは良くないし、本当は貴女にも席を外して欲しかった」

「…………」

「でも、貴女には知る権利がある。何と共に在って、どうなっているのかを」

 

 何と共に在るのか……僕が一体何なのか。

 変な<エンブリオ>手に入れただけの変人、という訳では無かったらしい。

 

 ああ、頭が痛い。

 

「……何なんだ全く……」

「ふふ、あまり深く悩まなくても良いわよ。結局はただのお節介だし、理解したところで……あなたたちなら、あまり関係ないだろうし」

 

 ……は?

 はあ???

 つまりはあれか、意味深なこと言うだけ言ったってか。

 いやふざけんなよお前?

 

 そんなこちらの怒りもなんのその、カグヤさんは部屋を後に……しようとして、くるりとこちらへ振り返る。

 

「そうね。最後に一つだけ」

「……これ以上謎を増やす気ですか」

「違うわ。伝言のこと。マルクスとか言う男に、ちゃんと伝えてね」

 

 ……ああ、そうだった。

 情報の奔流ですっかりと飛んでいたが、そんな事を言われていたな。

 

「私も、あの男は大嫌いだから」

 

 そう言うと、カグヤさんはにっこりと笑った。

 ……流石は扶桑さんのエンブリオ、威圧感がよく似ている。

 

 んで。

 本当にあいつは何をしたんだよ。

 

 ◆

 

 ■

 

 

「本当に良かったの?」

 

 眼下の道を、仲睦まじそうに歩く2つの人影。

 最上階よりそれを眺めていると、ふと自らの<エンブリオ>よりそう問われる。

 

 帰りの間際、永仕郎に渡させたのはかの古文書の写し。

 それも、超級職への条件が載っている個所を切り取ったものだ。

 最初に宣った交換条件が条件ゆえ、確かに惜しいには惜しかったが……。

 

「まあ、別にええよ。あれだけ渡しても今はどうにもならへんし?」

 

 条件は4つだが、その内の1つは今のところ、あのティアンの少女……アレクシアにしか達成出来ない。

 そしてもう1つも同様で、1つは誰でもどうにかなり得るが、残る1つは自分が居なければどうにもならない。

 

「……今は、ね」

「何よ。含みのある言い方しよってからに」

「結構気に入ってるでしょう? あの子たちのこと。いつか心変わりするかも」

「まー、そんなこともあるかも知らんなー。例えば──」

 

 脳裏に浮かべるのは、あの男。

 何度か彼らに接触しようとして、その度に妨害を繰り返し、妨害し返したのも束の間、最終的には対峙する羽目にもなった準<超級>。

 

 ──アイツらはオレのなんで、手ぇ出さないでもらえます?

 

 下卑た笑みでそう告げる姿は、今でも目に焼き付いている。

 まるで、自分のおもちゃに手を出されたかのような、そんな言い草。

 

 尚、結果は痛み分け。

 こちらは勝ったが、もう1つの戦場……色々と工作し、彼男の商社が使う交通路に差し向けた<UBM>は、ものの見事に撃退された。

 他ならぬ、あの2人……タカキとアレクシアの手によって。

 

「──あのクソに吠え面掻かせたい、とか言ってくれたら、変わるかも知れんけど」

「……優しいわね」

「うるさーい」

 

 頭を撫でられ、子供扱いされた気分になってくる。

 居心地の悪さに抗議するも、どこ吹く風。

 

 カグヤはいつも通りに、微笑んでいた。




ある意味でヘファイストスも
“多機能”かつ“分裂能力”持ちで
“ステータス補正マイナス”です


以下駄文

お狐様は色々ありますが
自身の立場や柵も無ければ
割といい人だと思うんですよね
そもメイデンのマスターですしその能力も
自身に掛かる()()()()重圧や負担を減らし得るものです

自己以外の変な宗教を流行らせないように
根回ししきって牽制することで
社会を乱させない必要悪になろうとしている
そんな気がしています
なにせ国教があれなので

それはそれとして自分の趣味追求もしそう
教祖とはいえ年頃のお嬢さんですからね
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